エイガ・デイズ このページをアンテナに追加

「お世辞をいうのは、愛情のない証拠です。お世辞をいうぐらいなら、皮肉をいってあげた方が愛情です」(川島雄三)

2016-08-30

Kurobaku2016-08-30

[]ディアスポリスDIRTY YELLOW BOYS(日:エイベックス・ピクチャーズほか2016 熊切和嘉監督)

東京に住む密入国者たちを守る裏都庁の警察組織・ディアスポリスである主人公の活躍を描く原作コミックおよびそのTVドラマシリーズの映画版。

マンガもTVドラマの方も見ていないのでよく知らないが、この映画版もおなじみディアスポリス松田翔太と浜野謙太のコンビが密入国者がらみの事件を解決するというフォーマットは同じようだ。しかし映画が始まってみると、二人が追う凶悪なアジア人犯罪組織:ダーティ・イエロー・ボーイズの二人の中国人(須賀健太とNOZOMU)に比重がかけられていて、主役の松田翔太たちはほとんど傍観者と言ってもいいくらいだ(おそらくTVドラマのレギュラーであると思われる柳沢慎吾などは、前半で出番がバッサリ終わらせる気持ちよさ)。故国の貧しい環境で育った二人が日本に留学するもうまくいかず、反社会組織と関わって誘拐ビジネスを請負う。金ほしさに雇い主のヤクザを殺し、さらに現金輸送車を襲い、最終的には大阪にある裏組織の地下銀行の襲撃を計画する。そういう裏社会に生きる中国人二人の暗黒ストーリーが回想混じりに描かれ、かなり面白い。

前半のアジア人犯罪組織が田舎で一人暮らしする老人の家に押し入ってそこを根城にする設定や、そこで行われる相撲取りみたいなボスの血なまぐさいバイオレンス描写などリアリティがあって凄い迫力。他にも出番は少ないが安藤サクラ演じる大阪のヤクザの女も実際にいるような感じですごくイイ。

それだけにクライマックスの地下銀行の設定が急に絵空事っぽくなり、また金庫の横に都合よく扉があるなど、脚本の詰めの甘さが目に付いたのは残念だ。しかしそれでも虫けらのようなチンピラが一攫千金の大逆転に賭ける暴力まみれの青春という感じが二人の中国人にあり、高級ブティックでいい服を買うも途中で似合わないと思ったのか、道頓堀川に投げ捨て、戎橋の上を駆け抜ける場面にはグッとくるものがあった。

全体的に井筒監督の『ガキ帝国』や『ヒーローショー』といった諸作品やかつての東映セントラル作品および東映Vシネマといったアウトローもののテイストを思い出させる。それゆえに今の若い子にはおっさん臭い懐古映画に見えるかもしれないが…こういうジャンルはどうすれば復活させることができるのだろうか。

最後に、ダーティ・イエロー・ボーイズの中国人・周を演じた須賀健太の迫力ある好演が素晴らしかった。ほとんど原型を留めていないほどのメーキャップ(片目が白い)で、『ALWAYS 三丁目の夕日』の吉岡秀隆んところのガキとはまったく気づかなかった。本当の中国系の俳優だと思ってみていたほどである。それに比べて松田翔太は父親のTVドラマ『探偵物語』や兄貴のTVドラマ『まほろ駅前番外地』を意識したようなところがあるが、ちょっと貫禄不足に思えた。ギプスをしたままのアクションなど面白いのだが、ところどころ青臭さが見えるんだよね。

<8/30(火) なんばパークスシネマ シアター7、座席L−19にて鑑賞>

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