エイガ・デイズ このページをアンテナに追加

「お世辞をいうのは、愛情のない証拠です。お世辞をいうぐらいなら、皮肉をいってあげた方が愛情です」(川島雄三)

2016-08-10

Kurobaku2016-08-10

[]8月に見た映画(その1)

『ヤング・アダルト・ニューヨーク』(米2014 ノア・バームバック監督)→ドキュメンタリー映画監督のベン・スティラーは新作がなかなか完成せずスランプ中。ある日、ファンだと訪ねてきた20代の若者A・ドライバーと意気投合。彼らのライフスタイルに理解を示し、まだまだ自分も若いと上機嫌。だがドライバーの真の目的はスティラーを足がかりにして新人ドキュメンタリー監督としてデビューすることだった。体よく利用され、おまけに妻のナオミ・ワッツまで取られ(自分はドライバーの元彼女A・サイフリッドと浮気している)、さあ、スティラーはどうする? というお話。いうなれば若者にしてやられる中年の話で、コメディとして作られているものの、見ていて痛々しくつらい。どこの業界でもありうる話だが、ニューヨークで活躍するドキュメンタリー映画作家周辺の話、という設定が渋い。フレデリック・ワイズマンとかいった名前が会話の中でポンポン飛び出したりする。しかしチャーミングなセンスが炸裂していた前作『フランシス・ハ』よりはずっと落ちる。<8/1月 大阪ステーションシティシネマ・5、H-8>


『好きにならずにいられない』アイスランドデンマーク2014 ダーグル・カウリ監督)→空港の荷物配送員をしている43歳独身、親と同居、趣味ジオラマ作り…の冴えないデブ男が、ダンス教室で出会った中年女性に初めて恋をする、というラブストーリーだが、こういう北欧の厳しい風土が舞台になっている作品は絶対甘い話にならない。案の定、主人公とつきあったとたん、女性は精神が壊れ始める。仕事に行けなくなるほど塞ぎこんで、何日もトイレに閉じこもったりする。つきあい始めた頃は普通の、いい女性だったのに…やはりいい年齢なのに結婚していない女性というのは、何かあるというわけだ。しかし、愛の力は強し。主人公は仕事を休んで、彼女の世話を甲斐甲斐しく始める。彼女の仕事を引き継いで、掛け持ちをしたりする。何もできないと思っていた気の弱い男が、意外なまでに男気を見せ始める。それから彼は、職場の同僚からバカにされていたのが友達づきあいできるようになったり、変質者扱いされた近所の住人とよい関係を築いたりして、少しずつ周辺が好転してくる。あとは彼女がマトモに戻って、一緒に新婚旅行へ行ければと願うのだが…やっぱり北欧圏の映画は現実と同じくらい厳しいな。主人公の幸せを願わずにはいられなくなる、いい映画だった。<8/5金 シネ・リーブル梅田2、D-6>


裸足の季節(仏、トルコ、独2015 デニズ・ガムゼ・エルギュベン監督)→両親を亡くし祖父母の家で育てられた5人の姉妹。だが年頃になると外出を禁止され、祖父たちの決めた結婚相手の元へ強制的に嫁がされる。昔の日本の田舎の名家でもあったような女性の人権無視の、封建的な慣わしが、現代のトルコの地方村で行われている。家を脱走して、サッカー観戦に行く場面は『オフサイド・ガールズ』というイラン映画を思い出した。やはりイスラム圏というか、中東あたりはまだまだ女性は虐げられているのだろうな。結局二人の娘が嫁ぎ、一人は自殺。残った二人がイスタンブールまで逃げのびる。ただお世話になった教師の家に行くというラストは現実的だが、また連れ戻される可能性もある(この教師がまったく描かれていないので何もわからない)。二人だけで自活していくくらいの覚悟がほしい、というのは無理な話なのだろうか。/ところで私は男なので、女の子を肩車で乗せてみたいと思うし、その程度には彼女たちをハシタナイと思う。また途中、つきあっている男たちに助けを求めないところも不自然に思った。<8/5金 テアトル梅田1、H-4>


『下衆の愛』(日:Third Window Films 2015 内田英治監督)→ワークショップの女優に手をつける監督、いい役を得るために枕営業する女優の卵…インディーズ映画業界に集まってくる下衆な人々を描いた欲望喜劇。「下衆」はわかるが、この「愛」っていうのは…驚くことに「映画愛」なのである。確かにただ単に女や金がほしいのであれば、映画業界に行く必要はないか。渋川清彦が堕落したインディーズ監督を好演。体で役を得ようと必死な女優役の内田慈もよかった。こういう懲りない人々が主役の映画ってなんか久しぶりに見たような気がする。かつての今村昌平森崎東とかの映画がそうだった。そのぶん、古くさい感じがするのは致し方ないか。<8/5金 第七藝術劇場


『花芯』(日:東映ビデオほか2016 安藤尋監督)→瀬戸内寂聴が1957年に発表した原作小説は「エロ小説」だと叩かれたらしいが、この映画化されたものを見るとそれほど大したことはないように思う。愛のない夫を裏切って、好きになった夫の上司と性愛に溺れる話などもはやありふれてしまっている。なにを今さらという感じで、乗れず。役者に関しては浮気される夫役の林遣都がよい。こないだまで子役だと思っていたのにすっかり貫禄がついた。安藤政信毬谷友子もいいが、いかんせんヒロインの村川絵梨に魅力がない。濡れ場だけで精一杯という印象である。<8/10水 テアトル梅田2、F-2>