『婚前特急』(2011)

・いくらなんでもこんな自己中というか、ここまで自分のことを良く考えている男で、調子に乗りすぎで、ここまでわがままが当然という男はいないだろう、と思うのだが、ここまでダメダメ、言ってることを理解しない男を見ているともういらいらしてくるし、ぶった切って視界から抹消してしまいたくなる。さらに、なんでそんな男との縁をいつまでもこの女は切れないのかとこれまたいらついてくる。

・なんだかあまりに男と女の我が侭が強烈過ぎて、コメディーなのに笑えないんだよなぁ。「もうここまできたらあり得ないだろう」っていう言動ばかりだから・・・・。空気読めないどころか、人の気持ちなんて全然考えていない、空気なんて感じてもいない、ただ自分の思ったことだけを正しいと思って周りに押し付けている、言ってみればこういうのはモンスターであり、手に負えないモンスターペアレントとかがいるけどそれと同じ類いの人間なわけで、途中から「自分だったらこんなやつらが前にいたら二度と関わり合いになりたくないし、これ以上の関わり合いを持たないようにするためにズバっと完全に切り離し一切の付き合いを断ってしまう」と思うようになった。こんなのが近くにいたらもう歯ぎしりするくらい苛々して頭に来て爆発しそうになるだろう。

・もう少しクスっと笑える面白さがあれば楽しめたんだろうけど、余りに我の強い、身勝手なことばかり言ってる登場人物を見ていると、もいいい加減にしろよって気持ちで、楽しいっていう笑いは湧いてこなかったな。はあぁと溜め息がでてよくやるよなぁという呆れた笑いはちょっとはあったけれど。

・この二人のあまりのダメダメさに呆れながら観る映画となったが、吉高の視線の強さに引きずられる部分がかなりあったかもしれない。『ロボジー」であまりのやりすぎ演技に監督から「もう異常、変態ですねあの娘は」と言わしめた吉高だが、まさにそのへんてこさ、異常さが表にビンビンと出てきている。

・吉高は美人というよりも宇宙人的変人。このなんともわけのわからぬ異常さ、変人的雰囲気、言動が他にはない人を惹き付ける部分なのだろう。ちょっと恐いけどこういう女性と知り合いになってみたい、深い付き合いはしたくないけど、一緒にいると知らない世界のはじっこに触れるみたいでどきどきする。わくわくする。日常性の外にある何かだから幽霊とか怪物みたいな恐さと好奇心が湧く。そういう女性なんじゃないかな。

・ラストはもう予想通りの終わり方だが、話のほとんどはほぼまったく共感も同感もできず「ちょっとこれは、ここまではないだろう」というものばかり。こんなとんでもない異常な男女の話がなんとかうまく落ちがついてはいるが、本筋にあるのは異常な人間、人格、性格破綻した男女の話であり、これじゃ恋愛ものというよりホラーコメディーに近い。

・男女の性格描写と話の作りに懲り過ぎて、やりすぎて恋愛ものとは違った方向に作品がいってしまった変な作品。

・この男女の人間性ってどこかの何かに似てないか?と思ってしばらく考えていたがスティーヴン・キングの『ミザリー』の主人公アニーだな。・・・・やっぱりそうするとこの映画、あと一歩横に歩をずらせば確実にホラーになってたんじゃないだろうか?

・奇妙で不気味でへんてこな映画である。本来の話の方向からはずれてべつなところにいっちゃってると思う。失敗作かな?