本当の親子じゃないからこその関係が良いです - うさぎドロップ(3)



うさぎドロップ(3)/宇仁田ゆみ(Amazon)


うさぎドロップ」は面白いな。
というか、宇仁田ゆみ先生の作品は面白いです。



この「うさぎドロップ」は家族モノの漫画なのですが、変化球な家族モノです。


逝去した祖父の隠し子・りん(6歳)を親戚連中が厄介者扱いする中、引き取り育てることにした30男・大吉(独身)の二人の家族のお話。
親子でなければ、大吉が叔父でもなく、りんが叔母。
関係はそんなでも二人は確かに家族で、初めてだらけの生活を手探りながら二人とも成長していく漫画なのです。



まだまだ初めてのことが多いけれど、前に比べて自然な家族になってきているのが良いですね。
墓参りの時に描写されていた”距離感”は、血縁だから大吉がじいさんに似ているというだけではなくて”本当の家族”に二人がなっているからだと感じます。
小学校にりんを送り出す時の大吉の感情なんか、モロに男親の感情なんじゃないかな。


血縁と言えば、3巻はじいさんが子供が産まれた時に記念樹を植えていた話から始まって、じいさんの家だった庭の木を見に行く話が3巻の最後に収録というのが何かいいなぁ。
「同じような流れの中にいたんだな」のセリフも併せて、親子じゃないけれど、確かに繋がっている感じがして。


親子でなくとも


さてさてこの漫画は、家族漫画なので当然と言えば当然ですが、”大人-子供”、”大人-大人”、”子供-子供”の3パターンの描写があります。



”大人-子供”は、大吉とりんの生活や絆を深める話が主。これがこの漫画のメイン。
突然、保護者になったからこその戸惑いがあったりしますが、本当の親子じゃないからお互いを尊重して知っていくような距離感が感じられて良いです。


シッカリしているけどりんはやっぱりまだ子供で、保護者になったこととりんの色々な部分を見て思考を巡らせている大吉は、ふとした瞬間に成長を自覚するくらい成長しています。
りんもまた然りで、大吉との生活で成長していきます。子供だから当然なんですが、良い方向へすくすくと。
親子の理屈じゃない繋がりがない分だけ、手探りで奮闘する大吉の姿が子供の目に”いい大人”に見えるんだろうなぁ。


父親でない保護者と、親との関係


で、本当の父親でないどころか結婚もしたことがない、子育てを始めて日も浅い大吉と他の親の会話なんかもキモですね。
そんな状況の大吉に、結婚もしていなければ子供もいない私のような読者も強く引き込まれていく要因になっています。
子育てと仕事の両立とか、養育費の話とかは自分の身になって想像するとリアルにヘコめるですよ。


大人で大吉に大きく関わる女性が二人いますが、キャラの描写がされればされるほど対極的だなぁ。


りんの本当の母親の正子は精神的に子供っぽい感じだけど、じいさんを忘れようとしているからの行動なんでしょうね。
相当な年上専門みたいだけど、アシスタントの男との関係が気になるところ。
それにしても、大吉が正子が男と二人で歩いているのを見た時の「世の中のひとは…案外すぐに恋人ができるなァ。なんでかなァ…」のモノローグに共感してヘコむ。


もう一人メインの大人の女性はコウキの母親の二谷さん。
母子家庭の美人さんで、コウキの行動に慌てふためいて赤面しているのが非常によろしいかと。
大吉とくっ付かないかな!とか思って読んでいるのは、割と横道にそれている読み方な気がしますが、くっ付いて欲しいと思うのはごく自然な感想ですよね。
りんよりも相当に子供らしい(これくらい男子はこんなもんですが)コウキと二谷さんに、他の職場の親に見られる”理屈じゃない安心感”が見て取れて、大吉とりんがそれをどうやって育んでいくかが楽しみです。




とにもかくにも「りんのような娘が欲しいな」と思わされる漫画ですよ。
大吉とりんの刺激しあって成長していっている二人が、コウキや二谷さん、正子、りんの同級生なんかに影響も与えているのが見て取れて、人は人と関係してこそだと思います。


関連

「うさぎドロップ」と「おたくの娘さん」から見る、ある日突然娘が出来た時の対処法マンガがあればいーのだ。
新婚のたかすぃさんには温かい家庭を築いて欲しいと思うのですよ。


ウニタコウボウ
宇仁田ゆみ先生の公式サイト


うさぎドロップ (3) (Feelコミックス)

うさぎドロップ (3) (Feelコミックス)


うさぎドロップ  (2) (Feelコミックス)

うさぎドロップ (2) (Feelコミックス)


うさぎドロップ (1) (FC (380))

うさぎドロップ (1) (FC (380))