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three million cheers.


  ::: BUT IT'S A TRICK, SEE? YOU ONLY THINK IT'S GOT YOU. LOOK, NOW I FIT HERE AND YOU AREN'T CARRYING THE LOOP.

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2016.12.04.Sun. 

[][] Oval “Popp” (2016)


popp




 Oval こと Markus Popp による6年振りのアルバム。タイトルは本人の名から取られているわけだけど、“Pop” という一般概念の方も意識されているはず。実際、音そのものがポップであることはまちがいない。解放感、軽快、きらめき。昼の自然光か夜の人工光かはともかく、明るいテイストに溢れている。用いられている要素としてまず目立つのは、強く補正されたヴォイス・サンプル。そして高音で連続するパルス、散りばめられたクリアなエレクトロニクス。絢爛にサウンドが響き合う濃密な空間。

 だけどこれらをあらためて単体の楽曲というレベルで捉えるとき、それをポップと呼ぶことには少しためらいが残る。耳触りはたしかにポップに聞こえるのに、総体としての曲は奇妙に分裂して奏でられているからだ。レイヤーの重なりと表現することもできるけど、どちらかといえば、独立した曲が違う部屋で複数流れていてそれがたまたまひとつの部屋で重ね合わさって聞こえた……という感覚に近い。
 最初聴いたときはわりと驚きがあった。一聴すると別々の曲を無造作に並走させただけでその統合を放棄しているようなものに聞こえるのに、聴き手のなかではひとつの音楽体験として処理される、というところに。けれどもこの特異な構造にはすぐ馴れて、分裂と並走は意識から外れていく。ポップなるものが乗算されてまったくあたらしい準位に到達している、と言うこともできる。





Oval / Markus Popp

Information
Origin: Darmstadt, Germany
Born: 1968
Years active  : 1991 -

Links
Officialhttp://www.markuspopp.me
  bandcamp   https://oval.bandcamp.com
  vimeo  https://vimeo.com/user7595968
  Twitterhttps://twitter.com/markuspopp_oval
Label: UOVOOO  http://www.uovooo.com

ASIN:B01LTHLPM4


2016.11.27.Sun. 

[][][][] Oren Ambarchi “Hubris” (2016)


Hubris




 ミニマル。Pt. 1からPt. 3まで全3曲のインストゥルメンタル。2分程度のPt. 2を間奏のように据え、約22分のPt. 1および16分強のPt. 3により構成。Jim O’RourkeRicardo VillalobosArto Lindsay など多数のミュージシャンとのコラボレーションで制作されている。
 微少に律動するギター・ミュートのさざ波がアルバムの基盤を成す。活力の解放をとどめているかのごとく抑制的に進行しつつ、次第にノイジーなギターやシンセ、パーカッションの奔放を許し、しかし全体はあくまでも静かな統合の内にある。“Hubris(驕慢)”と名付けられたアルバムではあるものの、全編での印象としてはどちらかというと「制御された驕慢」といった感じだ。

 殊更に反復を追求するミニマル・ミュージックであっても、曲の最初から最後までただひとつのループだけでつくられているわけではない。そこには何かしら変化する要素がある。というより、同一要素の執拗な繰り返しはむしろ変化に対する聴き手の感度を高める。ミニマル・ミュージックで賞味されているのは、実は反復そのものではなく変化の方なのだろう。たとえば The Field のミニマル・テクノでは、シンプルなループの果てに現れるわずかな揺らぎが聴き手に期待の充足と解放をもたらす。
 Oren Ambarchi のこのアルバムでも、反復は変化の素地となっている。ただしここでの反復は細かなミュート・カッティングによるもので、繰り返しというより定常的な持続としておこなわれる。Pt. 1ではそのように一定の運動を続けた末、鳴き声のように響き渡るギター・シンセのサウンドが断続して出現する。抑制のなかで待ち望まれた変化として。一方、Pt. 3では絶え間なく移り変わるノイズとドラムが伴い、反復と変動が表裏一体のものとして併走する。それはふたつの力の呼応でもあるし、あるいは衝突でもあり得る。
 2曲のアプローチは異なっているが、いずれにおいても、ループは変化を対比し際立たせる。抑制と解放は互いを必要とすると言ってもいいのかもしれない。




Oren Ambarchi

Information
Origin: Sydney, Australia

Born: 1969
Years active  : 1986 -

Links
Officialhttp://orenambarchi.com
  Twitter https://twitter.com/orenambarchi
Label: Editions Mego  http://editionsmego.com/release/EMEGO-227

ASIN:B01KV4GJJU


2016.11.13.Sun. 

[] つくみず “少女終末旅行 4巻”



少女終末旅行 4 (BUNCH COMICS)




 静的な終末を目指す物語。

 この巻では、世界の現況を説明するあらたな情報が出てくる。
 高エネルギー体を安定処理し、都市/地球を不活性状態へ向かわせる存在。
 人間もその他の生物もことごとく消え去り、すべてが眠りにつくという終末像が示される。
 このようなイメージには、作者自身の “静かな終わり” を志向する気質を強く感じずにいられない。





 絵柄や表現については1〜3巻の感想のときにひととおり書いた。(→ http://d.hatena.ne.jp/LJU/20160625/p1
 今回は、舞台となっている多層構造の都市についてメモしておく。

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2016.10.30.Sun. 

[][] Grischa Lichtenberger “spielraum / allgegenwart / strahlung” (2016)


Spielraum | Allgegenwart | Strahlung




 5枚の作品によって構想されているシリーズ。2015年にリリースしたアルバム “LA DEMEURE; il y a péril en la demeure” を起点とし、3枚のEPを経た後、アルバムもう1枚によって完結することが計画されている。
 今回、中間を成す3枚のEP “spielraum” “allgegenwart” “strahlung” をひとつに収めて発表されたのがこの音源。EP-1が6曲、EP-2が5曲、EP-3が8曲の全19曲という構成で、合計87分。

 繊細に構築されたエレクトロニカ。
 EP-1とEP-2はパルスやインダストリアルなサウンドで前進するビート主体の楽曲が多く、無機的かつ乾いたサウンド。EP-2のBサイド最後の曲ではヴォイス・サンプリングが伴われる。
 EP-3ではまた少し違った趣きとなり、グリッチ/ノイズを纏いながらも広大な情景を想起させる流麗なメロディの曲が現れる。
 数学的思考を司る脳機能部位へ作用するかのような音で、理知的愉楽とも言うべき効果をもたらす。
 かなり良い。




 作者によるノートで、各作品のコンセプトが示されている。
 http://www.grischa-lichtenberger.com/spielraum_allgegenwart_strahlung/

  EP-1 : spielraum - invisible freedom(遊戯空間 ― 見えない自由)
  EP-2 : allgegenwart - invisible presence(遍在性 ― 見えない存在)
  EP-3 : strahlung - invisible force(放射 ― 見えない力)

 ベンヤミン/エリアス・カネッティ/アポリネール/モーリス・ブランショなどを引用した長文のノート。
 もっとも文量が多いのは EP-1。前半は時間、後半は空間について。まず、腕時計の発明以降、永遠を線形に目指すような権威的時間像が失われて個人の自由への可能性につながったこと。後半では、近代における芸術の新たな機能としてベンヤミンが提示した「遊戯空間 spielraum」の概念を敷衍。消費社会の進展ではベンヤミン的な遊戯空間が減退するとしながらも、遊戯の概念をドイツ語でのspielの語源である「ダンス」に結び直し、現代における遊戯の復権と意義を捉えようとする。前半と後半に共通するタームは「反復」。ダンスが反復による運動であること、また、現代の時間概念は、携行される周期運動の反復で刻まれるものであること。このような反復への関心には、ミニマル・ミュージックの含意が見て取れる。
 EP-2では「声」というものに着目している。「スローガン」の語源は「亡霊たちの鬨」にあるというエリアス・カネッティの文章。つぶやき・ざわめきとしての現代のSNS。さらに「声」は距離を超えるというアポリネールの言葉から、物理的距離にとどまらず社会階層の距離をも超えて到達し得る「遍在性」への拡張。しかし現代においてはテクノロジーによる遍在性が過剰に希求されることで、断層を架橋するはずの遍在性は「スローガン」に屈するとされる。大衆的運動と死者の騒乱というふたつの意味で。
 EP-3も引き続き「見えないもの」へ思考が向けられ、初めは恩恵として見出された原子力技術が個人の身体を害する危険物へ、やがて世界を滅亡する可能性を持つ破局的脅威へ変貌し20世紀冷戦の恐怖を導いたことに触れられる。

 ……こうした記述からは、20世紀現代思想がさまざまな分野で衒学的に消費された時代が思い出され、若干の気恥ずかしさを禁じ得ないところもある。とはいえ作品を思想に結びつけて表現しようとするこの熱意は懐かしくも目映い。実際のところ、こうした振る舞いが音そのものとどれほど関係があるかは疑問だけれども、5作品によるシリーズというコンセプト志向な発表形態も含め、作品を必要以上に複雑に見せる眩惑的なパフォーマンスはもっと世の中に増えてもいいとは思っている。




Grischa Lichtenberger

Information
Origin: Bielefeld, Germany
Current Location  : Berlin, Germany
Born: 1983

Links
Official http://grischa-lichtenberger.com
Labelraster-noton  http://www.raster-noton.net/releases/spielraum-allgegenwart-strahlung?c=12

ASIN:B01LP2PD12, ASIN:B01LX4ZZQJ


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“でも、これはごまかしよ、ね。つかまったと思ってるだけ。ほら。わたしがここに合わせると、あなたはもう環 (ループ) を背負ってない”
―Angela Mitchell