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2017.02.12.Sun. 

[] 松本和也 (編) “テクスト分析入門 小説を分析的に読むための実践ガイド





 ナラトロジーを単に用語体系の解説にとどまらず具体的な小説読解への適用で実践してみせるところがこの本の最大の特徴。
 概念を説明する過程で小説の一部を引用する程度ではなく、短編小説をまるごと読み解いてくれる。しかも各小説が巻末に全文掲載されているところも親切。
 ……こういう本を待ってたところがある。

 ナラトロジーとは何か。
 第1章で概括されている通り、小説を【何が書かれているか […内容・主題] 】ではなく、【いかに書かれているか […形式・方法] 】という視点で捉えようとするアプローチ。客観的な指標によってテクストを分析し論理的な読み取りをおこなうことでテクストの特徴を記述する。

 それぞれのパートでは、まず各課題作品の批評史が記され、従来どのような読みが為されてきたのかを紹介。その上で、ナラトロジーの諸概念を用いて分析した場合にどのような読みが可能となるのかを提示する、という構成。
 ただしここでおこなわれている読みが各作品に対する唯一の正しい解だと言われているわけではない。あくまでも実践の一例として示されている。
 冒頭で書かれているように、本書は「理論書」「実例集」「小説表現史」「近代文学史」が合わさったようなものとなっている。




  • 重要なのは、【ストーリー(物語内容)】/【プロット(物語言説)】という区別。
    • 前者は語られる出来事の単なる時系列、後者はテクストとしての叙述・提示のされ方。この区別を意識して読むことがまず大切。
      テクストは情報を制御して読者に提示している。物語は、内容自体よりもむしろその提示のされ方に大きく左右される。
        • ストーリーはプロットから先立って自明に存在しているわけではなく、プロットから読者が取り出さなければならないものでもある。
        • 「語りは常に騙りである」

  • 個別の分析実例で特に啓発的だったのは、夏目漱石『夢十夜』(第2章) 森鴎外高瀬舟(第4章・第5章)
    • 第2章の分析では、語られる出来事の時間と語る時間のずれがトピック。
        • 「約束」と「死」の時点はテクスト全体の半分以上を占め、その後の百年を描くテクストと同量
        • 直接話法と間接話法の差異
        • 行動を規定する予言のような言葉
    • 第4章・第5章では、登場人物に関する情報提示の違いによってテーマ上の構図がどのようにつくられているのかが示される。
        • ふたりの登場人物が叙述形式によって語り分けられることで、片方がテクストの空所となり、物語内の解けない謎として位置付けられる。
          登場人物の語られ方の違いは、語り手の介入度(“距離”)と視点(“焦点化”)において生み出されている。これらはいずれも、物語世界の情報をどの程度どのように提示するかという選別と制御に関わっている。こうした叙法の使い分けを読み解くことによって、謎を解こうと試みる片方と、最後まで謎として留まる他方という対比がいかに記述されているかがわかる。

  • 作品というものを作者がすべて意図通りにコントロールした結果と捉えて読むのではなく、読者から見たテクストのあり方を優先して読むことへのシフト。
    これはいわゆる「作者の死」に対応しているが、本書では、だからといってテクストを好き勝手に読んでいいのだとは推奨されていない。90年代のナラトロジー援用はそのような読みを志向して退潮した、という記述がある。ナラトロジーの有用性は読者に自由気ままな読みをさせることにはなく、客観的に使えて共有できる指標を整理した点こそにある、と強調されている。
    ──ジュネットによって確立されたナラトロジー概念体系も、それだけ見ると区分がどのように有意義なのかわからず散漫に思えてしまうところもあったのだが、実際に具体的な適用でどういった読解が得られるのかを見せられると、非常に説得力がある。





2017.02.11.Sat. 

[][][][] Jay Daniel “Broken Knowz” (2016)


Broken Knowz [帯解説 / 国内仕様輸入盤CD] (BRTCLR18)




 デトロイトのプロデューサーによる1stフルアルバム。
 簡素なサウンド構成でビート志向。
 Anthoney Hart の Basic Rhythm に通じるものもあるけれど、Jay Daniel のこのアルバムでは全般的に生ドラムが用いられているところが大きな特徴。背景でかすかに響くシンセ・サウンドと共にマルチトラック・ミキサーで重ね合わされ、荒い感触と細かく揺らぐ空気が表現されている。各要素の空間的な定位とバランスが絶妙。無人の小空間で鳴らされているような近接的親密感がある。

 本人によるドラムはブレイクビーツとして再構築されており、アナログな質を備えたまま淡泊な機械的反復として刻まれている。また、スネアやハイハットなど構成単位ごとに一旦分割されたトラックはひとりの奏者がリアルタイムに実現できるか頓着せずに組み直され、身体所作から独立した音の重なりをつくり上げている。結果として、アルバム全体には身体性と機械性の両義的な様相が漂うこととなっている。
 ただし根底として同じ手による演奏が原初の部品となっているため、手業の痕跡として微妙に把握できる同一性があって、それが特に全体の統合に寄与している感じがある。
 制作過程および音のテクスチャーという両面で、とてもパーソナルなアルバムと言える。




Jay Daniel

Information
OriginDetroit, US
Years active   2013 -

Links
Officialhttps://www.jaydanielwatusi.com
  SoundCloud  http://soundcloud.com/jaydaniel
  Twitterhttps://twitter.com/jaydanielwatusi
LabelNinja Tune - Technicolour  https://ninjatune.net/release/jay-daniel/broken-knowz

ASIN:B01M8MQP5J


2017.02.05.Sun. 

[][] “虐殺器官



“虐殺器官 Genocidal Organ
 監督 : 村瀬修功
 原作 : 伊藤計劃
 2017


  • 映像良かったと思う。キャラデも作画もわりと気に入っている。演出でのディテールが豊潤。
    展開としては途中に冗長なところもけっこうあったものの(「月光」とか観戦シーンとか)、軍事作戦描写はなかなか良かった。
  • 「死後の世界」とか家族関連の部分が削除されてた点には反発も多そう。原作でもたるいと思える個所ではあるのだが、あれが物語の意味合いを決定的に左右する重要なものであったのは事実。
  • 思想披露や感情提示みたいなところはもうどうでもいいやって感じで脳を通り過ぎていった。原作通りだから仕方ないとしても、こういった思想自体へ興味なくなってることに加えて、現実の世の中の方がはるかに滑稽に進んでるからな…っていうのが否めず。(後述)
    内容はともかく、映像作品で思弁性をどう語るかっていうのは一般的に難しいことではある。この映画のように、どうしても登場人物の静的対峙みたいになりがち。並行して何らかの緊迫した動的な軸を展開するというのがよくある手法だったりするけれど、そういう工夫は少なかったかも。
  • 最後のところは、原作読んでないとちょっとわかりづらそう。「文法」を追った形跡も描かれてるので原作と同じ顛末が控えていることはわかるのだが……。
    まああの台詞で終わるのはひとつのやり方だと思う。一応あれで映画全体が視聴者に「文法」を仕掛けてるという構図も果たせているので。
  • 作品外状況の話で言うと、当初の制作会社が倒産してそれを新会社が引き継いで完成させたという経緯自体もおもしろいところ。
    紆余曲折のわりには充分なクオリティで仕上がっている。さまざまなガジェット、兵器。あるいはプラハの街並みだとかが映像として示されるのは視覚的愉楽があった。
    (ただ、「優先割込み」は priority interruption じゃなく原作の元ネタ通りの表現 override にしてほしかったところ)





  • 以下は時評的な話。

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2017.01.28.Sat. 

[][] Throwing Snow “Embers” (2017)


EMBERS




 ブリストルを拠点に活動する Ross Tones によるプロジェクトで、2年半振りとなる 2nd アルバム。
 異なるフォームを切り替えながら同じトーンの世界を描いていくようなスタイルは 1st と同様だけど、前作で大きくフィーチャーされていたヴォーカルはなくなっている。
 このアルバムでの新たな特徴は、各曲がシームレスにつながって全体を構成していること。曲はどれも静かに開始し、半分ぐらいが過ぎたあたりで主旋律が確立してくるように展開。そしてまた静謐へ戻ると次の曲が緩やかに立ち上がり、その繰り返しで全体が連ねられていく。
 曲間に明確な区切りがないことに加えて、前の曲を微妙に参照して呼応する曲もあったりするので、互いに滲透し合っている感じを強く受ける。トラックの移行に気付かず、ひとつの曲がずっと続いているかに思える。それでも、60分14曲を振り返ってみればやはりそこには確かに変化があって、それぞれの局面での異なる体験が記憶に残される。
 タイトルやオフィシャルノートでは自然科学からの触発が示されていて、反復/循環/自己相似といったタームが強調されている。そうしたところからも、はっきりしたコンセプチュアルな意図が見て取れる。全体を通して聴くことを前提としてつくられたアルバム。





Throwing Snow

Information
Birth name  Ross Tones
OriginBristol, UK
Current Location  Bristol, UK

Links
Officialhttp://www.throwingsnow.co.uk/
  SoundCloud  https://soundcloud.com/throwingsnow
  Twitterhttp://twitter.com/ThrowingSnow
LabelHoundstooth  https://store.houndstoothlabel.com/embers.html

ASIN:B01N9A220Q


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“でも、これはごまかしよ、ね。つかまったと思ってるだけ。ほら。わたしがここに合わせると、あなたはもう環 (ループ) を背負ってない”
―Angela Mitchell