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  ::: BUT IT'S A TRICK, SEE? YOU ONLY THINK IT'S GOT YOU. LOOK, NOW I FIT HERE AND YOU AREN'T CARRYING THE LOOP.

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2016.09.19.Mon. 

[][] “Mona Hatoum”


“Mona Hatoum”
 2015/2016
 ISBN:1849763607


Mona Hatoum

Mona Hatoum


ポンピドー(パリ)・テート(ロンドン)・キアズマ(ヘルシンキ)という三つの現代美術館で2015年6月から2017年2月にかけて順に開催されるモナ・ハトゥム展のカタログ。彼女の個展としては過去最大で包括的。先頃テートでの展示が終わり、今はキアズマで開催中。見に行きたいけど気軽には行けないので、せめてカタログだけでも。来年広島で展覧会開催予定らしいのでそれには行けるだろうか。





略歴

1952年、中東戦争を避けレバノンのベイルートに移り住んでいたパレスチナ人家族のもとに生まれる。1975年、彼女がロンドンで短期滞在中に今度はレバノンで内戦が勃発。帰国することができなくなった彼女はそのままイギリスに居住するようになり*1、芸大で学んだのちにアーティストとなる。
現在の彼女はロンドンとベルリンを拠点としつつも、世界のさまざまな地に滞在しながら活動。



作品の変遷

80年代はパフォーマンス/ビデオ作品を制作、特に「身体」をテーマに据えた。パフォーマンスという形態を選択したのは、ギャラリーシステムやアートエスタブリッシュメントの影響を外れることが可能と考えたため。
90年代以降はインスタレーション作品。作風としてはミニマリズム。多用されるモチーフとしては、世俗的・家庭的オブジェクト、身体的オブジェクト、地図、など。特に執着が見られる対象は、「地図」「髪」「刺繍」。



特筆すべき作品

“Light Sentence”
 1992

メッシュ製のロッカーを6段重ねて配列したもの。中央部を裸電球が上下に移動し、壁面にメッシュの複雑な影を落とす。



“Impenetrable”
 2009

鉄条網を床から天井まで張ってグリッド上に何本も配置。



“Map”
 1999

透明のビーズを床面に無数に並べて世界地図を描いたもの。観客の来訪による振動でかたちが壊れていく様子も含めた作品。




批評

カタログにはイントロダクションと併せて9人のテキストを掲載。過去の展覧会での寄稿も含む。2000年のテートでの個展へ寄せたエドワード・サイードのテキストも。

複数の論考に見られ目立った単語:dislocation(転位・断層)、precarious(不安定な)

各論者のトーン
 ・魅力/嫌悪・慣れ親しみ/奇妙さの併存
 ・治癒・回復の不在、世界の損傷
 ・来歴から必然的に伴われる政治的テーマを直截に扱わず、より抽象的に対処



感想

  • 現代アートがそれ以前のアートと大きく異なる点は鑑賞者の思索・解釈を誘発する点にこそあると思うのだが、Mona Hatoum の作品はそうした性質を非常によく体現している。
  • 一目でコンセプトが把握できるほど単純ではないのだが、とはいえ何もかもが謎で理解不能なわけでもなく、思考に至らず素通りしてしまうようなものでもない。そこには何か意味があるはずだ、ということがまず伝わってくる。そしてそれを読み解こうと思わせる充分な引力がある。
  • 使用される素材や形象が日常的なものに連なっていることも貢献しているだろう。見慣れたものの一部が変容され別のものに置き換わっていたりする。持ち手を刃物状に変えられた車椅子、底板をワイヤーに変えられたベビーベッド、髪の毛で編まれた織物、など。
  • 構成要素は馴染みあるものなのに、それによってできあがったものは決定的に異質であり、理解するためには何らかの解釈が要求される。
  • それを言語と物語の関係と見てもいいと思う。日常言語で綴られる奇妙な物語。
    現代アートは、鑑賞者に読まれる物語、解読を待つテキストのようなもの。
  • Mona Hatoum の物語には何が描かれるのか。
    意識させられるのは、「境界」。地理・文化の。あるいは身体的な。日常とその向こう側。境界をまたいで往還すること。




*1:これには一家がベイルートに亡命した際にイギリス国籍を取得していたことも寄与しているはずだが、そもそもレバノン国籍ではなくイギリス国籍を得たということに第二次大戦後の中東における歴史的事情があらわれている。

2016.09.11.Sun. 

[][][] Steve Lehman & Sélébéyone “Sélébéyone” (2016)


Selebeyone




 ジャズ+ヒップホップ。

 アルト・サックス奏者でコンポーザー、音大で教鞭も執るジャズ・ミュージシャン Steve Lehman のプロジェクト。
 このアルバムは2人のMC、HPrizm(AKA High Priest)と Bamar Ndoye(AKA Gaston Bandi Mic)を加えラップを大きくフィーチャーしているのが特徴。
 HPrizm はニューヨークのユニット Antipop Consortium の創始者で、DJ Vadim とも協働したアブストラクト寄りアンダーグラウンド・ヒップホップのミュージシャン。一方、Bamar Ndoye が活動するセネガルはかなり前から現地のウォロフ語によるヒップホップが盛り上がっている地で、強権体制を批判する社会運動の基盤となって大統領退陣も果たしたほどだったりするらしい。
 この異質なMC2人による英語とウォロフ語のラップに Steve Lehman のアルトサックスが絡み合う構図なのだが、単にラップとバックトラックという関係にはなく、互いに激しく呼応する動的な曲となっているところが秀逸な点。進行が読めない縦横無尽のリズム展開も非常に刺激的。

 「ジャズ+ヒップホップ」と言ったときに思い起こされる事例、たとえば Guru の Jazzmatazz や Robert Glasper の Black Radio なんかだと、あくまでもトラックの上にラップが乗っているものとして聞こえるけれど、Sélébéyone の場合、サックスにしてもドラムにしてもそれぞれが強く自己主張し楽曲を主導しようとせめぎ合っていて、その抗争が楽曲の駆動力を生み出しているように思える。
 同じようにジャズとヒップホップの融合といっても、Robert Glasper がピアノであるのに対し Steve Lehman はアルト・サクソフォーンだといったあたりも音の違いにつながる理由かもしれない。呼吸に伴って音を生成する管楽器は、ラップの発声に近い面があるとも言えるからだ。
 レコード-サンプリング-ラップという一方向的な先後関係が本来のヒップホップのつくられ方であるとするなら、このアルバムはヒップホップの範疇からは外れてしまう。でも、英語ラップ/ウォロフ語ラップ/サックスの関係は、複数MCのフリースタイル的なダイナミズムそのものと言えないこともない。そして、ここにあるラップと楽器の拮抗をジャズのアンサンブル、インプロビゼーションと捉えることもできる。そのように両分野の方法を横断的に備えたこのプロジェクトは、ジャズ+ヒップホップの卓越した試行だと思う。アルバムタイトルおよびプロジェクト名として掲げられる “Sélébéyone” はウォロフ語で「交差点」を意味し、ジャンルや地域・文化を跨ぐこのアルバムのスタイルを体現している。





Steve Lehman

Information
Origin: New York City, US
Current Location  : Hoboken, New Jersey, US
Born: 1978

Links
Officialhttp://www.stevelehman.com
  Vimeo  https://vimeo.com/channels/582160
  YouTube  https://www.youtube.com/channel/UC_ti4-shPQkaqoJL96LPUpw
  Twitterhttps://twitter.com/thestevelehman
Label: Pi Recordings  https://pirecordings.com/album/pi66

Sélébéyone

Information
Years active  : 2015 -
Current members  
  Steve Lehman: Alto Sax, Composition
  HPrizm: Rap, Lyrics
  Maciek Lasserre  : Soprano Sax, Composition
  Bamar Ndoye  : Rap, Lyrics
featuring  
  Damion Reid: Drums
  Drew Gress: Bass
  Carlos Homs: Keyboards

ASIN:B01H42NW3I


2016.08.13.Sat. 

[] 得能正太郎NEW GAME!



NEW GAME! (1) (まんがタイムKRコミックス)

NEW GAME! (2) (まんがタイムKRコミックス)

NEW GAME!  (3) (まんがタイムKRコミックス)

NEW GAME!  (4) (まんがタイムKRコミックス)

NEW GAME!  (5) -THE SPINOFF! - (まんがタイムKRコミックス)




7月に始まったアニメの原作。現在5巻まで出てる。

巻末に組織表が記載されるようなタイプの漫画。
1巻の表と3巻の表とではキャラクターたちの位置も異なり、仕事における互いの関係や役割が少しずつ変化していく様子が見てとれる。

成長物語。
主人公である涼風青葉の。
そして他の登場人物たちの。滝本ひふみ、桜ねね。なかでも特に、八神コウの。

青葉と八神の間柄は非常に良く描けている。――いや、他のキャラクターたち、ひふみ と八神、ゆん と はじめ、りん と八神、うみこ と ねね ……などのそれぞれの間でもだんだん奥深さが現れてくるのだが、やはり青葉と八神という対照はこの漫画のひとつの軸を成している。


f:id:LJU:20160813190810j:image:h320:leftf:id:LJU:20160813190854j:image:h320:left
 NEW GAME! 1巻p119, 3巻p119
 (C) 2015, 2016 Shotaro Tokuno


4コマギャグ漫画という形式ではあるものの、大枠としては時系列に沿ってストーリーが進展。巻を重ねるにつれ次第にシリアス成分も増えていく面もある。
「シリアス」というのは、仕事あるいはクリエイティビティというものに対して真摯に接している、という意味で。
2巻における青葉と ねね のちょっとしたすれ違いはまだ片鱗。
3巻にはそれまでのほのぼのした雰囲気に陰りを落とす瞬間が訪れて、青葉を、そして読み手を少なからずうろたえさせてしまう。
4巻はさらに急変とも言えるほどの転換を遂げ、青葉の境遇とストーリーは一気に真剣なモードへ移行する。
それらは決して危機や破滅といった種類のものではなく、こういったキャリアで当然直面するような試練・克服されるべき壁といった事柄で、つまりは成長の過程に他ならない。



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2016.07.31.Sun. 

[] “シン・ゴジラ


f:id:LJU:20160731195925j:image:w360:right


“シン・ゴジラ GODZILLA Resurgence
 総監督・脚本:庵野秀明
 2016



 もうちょっと時間をおいて、いろいろレビューみたり自分の思考を固めてから書こうと思ったけど、やっぱり新鮮なうちに書いておくことにする。


 特撮怪獣映画として必見。
 わたしはパトレイバー2でもワイバーンのところだけ何度も見返して楽しんでるようなタイプなので、会議室とか司令所とかで緊急事態への対応してるシーンだけで大満足。この映画、ほぼ全編そうした要素だけでできてるぐらいなので、至福の極み。怪獣映画と言いつつ、ほとんどは人間側、それもドラマや心情変化ではなく単なる「対処」のみを追っていくような。いやほんとにそれだけで、実は他に何もない映画って気もするんだけど、それで充分成り立ってる。(制作開始から撮影完了までかなり短期間という気がするんだけど、こういうあまり内面に踏み込むタイプの映画でなければ庵野もすぐ完成させられるんだなぁ…と思わざるを得ない。)


 情報量が莫大で高密度。作中での状況、用語説明もそうだし、関連して必要となる現実の知識についても。
 間延びした台詞はなく誰もが早口に発話し、場面展開もきわめてスピーディ、邦画としては比類なく効率的なテンポで進行。
 邦画を洋画に比して卑下する必要はもうなくなったと言い切ってもよいかもしれない。これはハリウッドが自身の文法を維持するかぎり到達しないだろうタイプの映画だし、邦画のフォーマットでしか実現できなかった映画なのではないか。いや、誰でもつくれるわけではなくやはり庵野だから、ではあるかもしれないが……。
 自分がこのような映画を求めていた、ということははっきり言える。そして、たぶん幅広く受けるだろう映画。




[以下はネタバレ含む]

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“でも、これはごまかしよ、ね。つかまったと思ってるだけ。ほら。わたしがここに合わせると、あなたはもう環 (ループ) を背負ってない”
―Angela Mitchell