2012.01.22.Sun.
■[映画] “ヒミズ”
“ヒミズ” Himizu
監督:園子温, 2011
賛否あるだろうな、という映画。
ひとつには311震災の扱われ方について。もうひとつは、原作との相違点について。
原作との比較についてはともかく、311の扱われ方については――
古谷実世界の「日常に襲いかかるどうしようもなく理不尽な悪」というものが果たして311の理不尽さと並べて描かれてよいのだろうか、ということは、自分としても悩ましく思いめぐらせた。倫理的な是非という意味ではなく、作品の強度という意味で。
しかしそもそも、フィクションで登場する311の意味はどのようなものなのか。たとえば「311以降、世の中は完全に変わってしまった」という言い方が昨年来、いろいろなところで口にされてきたように思うけれども、天災、戦争、虐殺、疫病、テロ……人類が過去に経験してきたさまざまな災いと比べて311がどうなのか、あるいはそのような比較をすること自体、無意味なことなのか。とはいっても、古谷的な理不尽さというものが、311の圧倒的な理不尽さと比べると霞んでしまうのも確かではあって。しかしそれもまた、殊更同列に比較するようなことではないのかもしれないとも思うし……。
ただ、監督が「311を経た以上、それに触れずに“ヒミズ”をつくるわけにはいかない」……というような思いを持ったことはわからなくもない。*1
というより、そうした逡巡に率直に向き合った末にあのような映像・設定になったということには、つくり手としての誠実さを感じた。
うん……いろいろ考えても、作品のテーマを描く上でその選択が最良だったとはやっぱり思えないな。けれども結果として、そうした諸々のもやもやしたものをひっくるめてひとつの作品に仕上がっていると言えるような気はする。
テーマそのものは非常に重く、映像としての息苦しさも半端ない。息の詰まるような感情の転落、その再現度については疑い得ない。
銘記しておきたいレビュー
Soul for Sale(鈴木謙介) ― 立派な大人になる――劇場版『ヒミズ』に加えられたいくつかの変更(ネタバレ含む)
http://blog.szk.cc/2012/01/20/himizu-the-movie/
みせもんぞめき!「ヒミズ」
http://d.hatena.ne.jp/dark_side_01/20120114/1326556761
■[映画] “松ヶ根乱射事件”
“松ヶ根乱射事件” The Matsugane Potshot Affair
監督:山下敦弘, 2007
“天然コケッコー” を表とするなら、これは裏。たぶんこのふたつの作品は、どちらか片方だけ見るのでは不完全かもしれない。対極的で、でも、描いている舞台は根本的に同じ。乱暴な括り方ではあるのだろうけど、どちらも「田舎」を描いている。まったく異なる角度から。そしてそれは確実に、同じものの異なる姿。
冒頭から始まり全体を通して予想を裏切る展開が続く。「予想を裏切る」というのは、ふつうの物語だったら作中の問題に対して何かしらの解決が為されてしかるべきところを、この作品の場合はそういうものがまったくないから。いかにも解決が必要と思われる問題が次々と示され、それらがきれいな方向で/じゃなければ反倫理的な方向で決着されそう――と思ったらそうならずきわどく回避されてしまい、グダグダなまま残される。そしてそのまま、希望が提示されることはなかったりする。かといって絶望だけが残されるというのでもないのだけれども……。
結局のところ、「コメディ」として捉えるべきなのだろう。ただそう言うならば、現実の世界自体が既にして喜劇なのだと思う。実際世の中ってこのぐらいグダグダで、それって端的に笑うしかないものかも、などと思ったりした。
三浦友和が演じる鈴木豊道というキャラがおもしろかった。いい加減な人物に見えるけど、実は誰よりもまともかもなー、と。「まとも」って何、ってのはあるけど、あのなかでもっとも「自覚的」な人物という意味で。
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*1:
cinemacafe.net ― 園子温監督、震災後に『ヒミズ』シナリオ変更し被災地で撮影していたことを明かす
http://www.cinemacafe.net/news/cgi/report/2011/09/11256/
シネマトゥデイ ― 園子温、被災地での撮影への葛藤語り、海外メディアから質問集中!『ヒミズ』公式上映【第68回ベネチア国際映画祭】
http://www.cinematoday.jp/page/N0035147
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