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2017.05.02.Tue. 

[] 北田暁大, 解体研 “社会にとって趣味とは何か 文化社会学の方法規準





概要

 90年代以降に進展したサブカルチャー論・オタク論のひとつの達成である『サブカルチャー神話解体』(宮台真司・大塚明子・石原英樹, 1993)を批判的に継承する試み。
 宮台の人格類型論は、「あえて」「アイロニー」の戦略に即し自らを超越的位置に据えて人々を類型に区分する特権的な観察。
 類型化は現在でもある程度有効だが、本書ではそのような分類自体の意義を疑い、類型が可能となる条件の模索へ観点を移行。計量的方法により宮台的類型論のオルタナティブとなる新しい文化社会学を打ち立てることが目的とされる。
 そのために大きく参照されるのが、「テイストの社会学」を展開したブルデュー
 ブルデューの持つ難点を確認しながら計量調査結果を分析し、趣味*1がどのように社会性を獲得するのかを考察する。


  • ブルデューの主張:
      • 趣味(テイスト)は単なる個人的なものにとどまるものではなく、テイストやセンスといったものの「良さ/悪さ」で自分や他人を優劣・序列で分類するというかたちで個人の好みを超えた社会性に関わる。→テイストの社会学
      • ブルデューのテイスト論には 1)階級の再生産・文化資本 2)文化実践・卓越化 というふたつの側面があるが、この書では後者に焦点を当てる。

  • ブルデューの難点:
      • テイストの良さを資源とした卓越性の競争というモデルは、どんな文化的活動にでも当てはまるわけではない。
        • テイストの差異が単なる好き嫌いではなく実際に人々の間で優劣を伴う序列を生み出すかどうかは、理論的に仮定されてよいものではなく、適用できる領域と適用できない領域については具体的な研究を通して経験的に扱われるべき問題である。(←2章(北田暁大)・6章(工藤雅人)の議論の要約)
      • 「卓越化ゲームに全員が参加しているが、上・中位層はルールに習熟し、下位層はそもそもルールを知らない」という主張の理論的問題。
        • 規則自体が認識されていないなら規則に従ったり違背することができず、ゲームに参加しているとは言えない(自分が意図的に参加していると言えないと、行為者にとって意味をなさない)。ハビトゥスはこの理論的問題を隠蔽するために持ち込まれた概念と考えられるが、規則に従う/従わない行為が意識的である/ない(解釈)のか意図的である/ない(行為)のかが混同されている。

  • 本書での課題
        • 「規則に拘泥しない上層/規則に自覚的な中間層/規則に無頓着な下層」という異なる三者を同一の界でテイストの卓越化ゲームをしていると言えるための条件は何か。
        • そうした条件は一般にホビーといわれるものすべてに見出しえるのか。
        • そうした条件を充足しないホビーには異なる論理で分析していく必要があるのではないか。
        • 上位層が中位・下位文化も広く享受し、下位層は上位・中位文化を享受しないという「文化的オムニボア化」が進む社会において「趣味」とはどのような社会的性格を持つのか、というのが根源的な論点



雑感

 ある趣味分野の対象数と趣味人口の推移、その趣味の歴史の長さ、そういったものの関係についての分析も見てみたいところ。
 たとえば第2章8節で示される「若者の趣味空間」の中から言うと、アニメ・音楽・漫画といった趣味分野は、クリエイターによって供給される作品を対象としている点で他の趣味と区別され得ると思う。こうした分野の場合、作品供給量と趣味人口にはどういった関係があるのか、またテイストの布置や推移にどのような影響を及ぼしているのか、というところも気になる。というのは、対象の絶対量が過剰に増加した状況化では卓越化ゲームがなおさら成立しづらくなってくるのではないかという感覚があるので。
 音楽の場合、既に膨大な作品が世に出ていることに加え、サブジャンルが林立し、新たなサブジャンルが生まれては消えるという状況となって久しい。アニメでも、作品数は増え続けている。各期に放送されるアニメがどれだけあることか。すべてに目を通すことは難しく、限られた範囲を視聴するしかない。全部をことごとく体験することは不可能で知識・情報も追いつかなくなる状況下、自分が知り体験し得るのは限られた狭い範囲のみ、そうしたなかでテイストをめぐる活動やコミュニケーションはどのようなあり方をしていくのか。
 自分の実感としては、何となく互いの無関心化が進んできてる気もするのだが、一方で「見るべきもの」「聴くべきもの」というランキングまとめ的なものの需要も増えていることも考えると、必ずしも単に細分化して孤絶しているわけではないのかもしれない。
 いずれにしても趣味をめぐる社会学的分析は、今後どれだけ多くの実践が示されるかにかかっているのだろう。




メモ

 第3章以降は「分析篇」。このうち特におもしろかったのは、第7章。どの章も計量的・統計的な調査に基づいて分析されているが、第7章だけは調査によらずカテゴリーの概念分析が展開される。
 以下、分析篇からいくつかメモ。


第5章 マンガ読書体験とジェンダー ──二つの調査の分析から (團康晃)

  • 男性/女性にとってのマンガ読書の意味づけの差
    • 女性にとってのマンガ読書は、有徴化しうる希少な文化実践であるからこそ、その相対的に希少なマンガ読書の量がマンガを介する活動の資源となりえている。

第6章 「差別化という悪夢」から目ざめることはできるか? (工藤雅人)

  • ファッションにおける他者との差異化という消費社会論的認識は現在でも有効か
    • 「ファッション」と「空間」の関係の変化
      • 集団による差異化から、個々人による差異化へ。特定の空間から、どこでも可能な行為へ。
      • 現在ではアイテムを買うことと特定の空間との結びつきさえも希薄化している:「郊外化」

第7章 「おたく」の概念分析 ──雑誌における「おたく」の使用の初期事例に着目して (團康晃)

  • 「おたく」カテゴリーの登場とその変化が人々のどのような活動を可能にしてきたか
    • あるカテゴリーが生じることで、誰かを分類したりされたりすることが可能となり、さらにそのカテゴリーのもとにあらたな活動が可能になっていく。
      • 人びとがいかなるカテゴリーの下に行為をおこなっているのか・おこなっていると理解するのかは、社会学者の問題だけでなく、何よりも当人たちにとっての問題でもある。
    • 本論では「おたく」というカテゴリーに注目し、「おたく」という集団ではなく、「おたく」カテゴリーとそのカテゴリーのものになされる人びとの活動のあり方を概念分析によって追う。
      • 「おたく」以前のカテゴリー事例としての「ロリコン」
        • ネガティブなカテゴリー:当人に適用されるものではなく他者を記述するためのカテゴリー
        • その後、「私・私たち」の好きなことを記述するためにファン自身が自らに適用するカテゴリーとして用いられるようになる。
           →カテゴリーの細分化、活動の拡張
      • 「おたく」カテゴリーの登場と変化
        • 「私たち」についての記述ではなく研究の枠組として他者を記述するカテゴリーとして登場。
          記述者は自分自身を明示されない「観察者」「傍観者」の位置に据える。
          特殊性・活動特性・異常性と彼らの「好きなこと」を結びつけて記述。ネガティブなカテゴリー。
        • M事件以降、事件報道のなかで「おたく」カテゴリーの使用法や意味が変化。
          「おたく」カテゴリーが特異な犯罪の特徴化に用いられ、犯罪概念と連関するものとして記述されるようになった。
        • 「おたく」カテゴリーを導入した中森明夫大塚英志は、以前は「他者」に対するカテゴリーとして記述していたが、M事件以後、自らを指すカテゴリーとして用いるようになる。
           →「おたく」批判への疑義。消費社会論へ。

第8章 動物たちの楽園と妄想の共同体 ──オタク文化受容様式とジェンダー (北田暁大)

  • 男性二次オタクと女性二次オタクの文化受容様式の差異
    • オタク的趣味の界は総体としては「データベース消費的」(東浩紀)・表層受容的な傾向があるが、女性二次オタクにはデータベース消費とは異なった「相関図消費的」(東園子)な読書傾向があり、物語志向・自己陶冶志向が確認できる。
    • 「腐女子」の物語志向は、暴力的欲望発露ではなく関係性の構築過程によって得られた結果として性愛関係を受容しようという傾向として説明可能で、「反マチズモ」的。






 

*1:日本語の「趣味」という言葉には「ホビー」「テイスト」という異なる意味があることに注意。

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―Angela Mitchell