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2010年9月12日付でライブドアブログに引っ越しました。
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2007-03-17

LM-72007-03-17

火星を水の惑星AQUAに変える方法

ESAプレスリリースによれば、火星探査機Mars Express搭載のMARSIS(Mars Advanced Radar for Subsurface and Ionospheric Sounding)による観測結果から、火星の南極地下に、火星の地表全体を水深36フィート(約11m)で覆うほどの大量の氷がトラップされていることが明らかになった。氷はほぼ純水と見られており、過去の火星環境における生命誕生の可能性や、将来のテラフォーミング(terraforming)における活用が期待できる。下図はESAプレスリリースからの引用である。

火星の南極地下に大量の氷を発見

1970年代前半には火星の北極と南極に氷とダストからなる埋蔵物があることが発見されていたが、既存の望遠鏡や衛星では詳細に調査することは困難だった。1976年のヴァイキングにより北極の極冠の成分が主に氷からなることが判明していたが、その正確な成分や量を知るすべがなかったのだ。Mars Expressに搭載されたMARSISによる調査から新事実が明らかになった。MARSISは惑星表面を通り抜け、異なった電気特性界面で反射する電磁波を放射する。電磁波の反射特性を調べることで、地下に何が埋まっているのか正確に見積もることが出来るのだ。

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反射波による解析により、凍結した極物質の90%以上が塵粒が混じった純水の氷であることが判明した。右図はその解析マップだが、赤が最も厚く紫が最も薄い氷の層を示しており、ヨーロッパ大陸より大きく厚いところで3.7kmを超える。温度が非常に低いため、液体では存在できずすべてが氷の状態にあると考えられている。仮にその氷をすべて溶かしたとすれば、火星の全表面を覆う36フィートの深さの海を形成できる。

ただ、火星地平面に多く残っている洪水の跡を考えると、今回見つかった氷では全然足りず、10倍から100倍の水がかつて火星上にあったと考えられている。それらの水は一体どこに行ったのか? 一つの可能性は地下水脈を通って別の場所に運ばれたということだが、今後他の貯水池を求めて調査が継続されるだろう。

火星における生命誕生の可能性

火星においてどの期間どれだけの量の水がどんな形で存在していたかを知ることは、火星上で生命が誕生し、進化したかどうかを見積もる上で非常に大きな意味を持つ。現在知られているすべての生命は液体の水を必要とするからだ。もし地熱を十分に蓄えた原始火星において、水が生命の誕生に必要な時間存在していたら、火星に何らかの生命が生まれていたとしても不思議ではない。もし火星上に生命の痕跡が見つかれば、宇宙において我々人類が孤独ではない可能性が大きく広がる。

火星のテラフォーミング

また、火星に大量の水があることは、将来の火星のテラフォーミング(terraforming)の大いなる助けとなるだろう。火星のテラフォーミングにおいて、まず考えねばならないことは、火星の気温を人間が住める程度まで引き上げる手段だ。故カール・セーガン(Carl Edward Sagan)のランナウェイ・サマー仮説に始まり、テラフォーミング手法については多くが検討されているが、なんとかして火星の地殻にトラップされているであろう二酸化炭素を大気中に放出し、温室効果によって火星を暖めねばならない。

英国科学者のポール・バーチ(Paul Birch)が考案したテラフォーミング手法では、巨大な集光ソレッタと大気圏レンズを組み合わせ、火星の地殻をあぶりレゴリスを融解させることで、大気中に大量の二酸化炭素を放出させる。これにより火星の平均気温を290Kまで上昇させ、呼吸可能な大気(240hPa)を作り出すことが出来る(Paul Birch, ”Terraforming Mars Quickly”, J. Brit. interplan. Soc., 45, 331 (1992) 、下図は本論文より引用)。火星より10万キロの地点に配置される集光ソレッタ、それを支える光圧支持ミラー、火星上で光を集約する大気圏レンズのサイズは超巨大となり、たとえば集光ソレッタの直径は10,600km、直径25,000kmの支持ミラーとあわせた総重量は5,000万トンとなる。下図を見てもらえば、その天文学的スケールが実感できるだろう。

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火星のテラフォーミングには莫大な資金(当時の試算で直接経費が9兆円)と長い年月(理想的に進んで50年で生存可能レベルに到達。その後植生を進めるなどして何百年)が必要になるが、人類が住める惑星がまるまる一個手にはいると考えれば安いものだ。近年では、火星全体をテラフォーミングするのはあまりに大変なので、一部のエリアのみを対象とするパラ・テラフォーミングが費用対効果の面から有効だと考えられている。また、自己増殖を行うナノマシンによって勝手にテラフォーミングされるのを待つといった夢物語も実現するかもしれない。

いずれの手法を使うにせよ、テラフォーミングにおいて水の存在は欠かせない。今回十分な量の水の存在が明らかになったことで、将来人間が火星に移住する際の障害が一つ減ったことになる。西暦2300年に火星に水の都ネオ・ヴェネツィアが出来ているかどうかは、これからの宇宙開発の進展にかかっている。人類が地球を出て宇宙に広がっていく事を期待したい。

The Earth is the cradle of the mind, but we cannot live forever in a cradle.

地球は人類のゆりかごだが、我々が永遠にゆりかごに留まることはできない。

Konstantin Eduradovich Tsiolkovskiy