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2010年9月12日付でライブドアブログに引っ越しました。
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これからもどうぞよろしくお願い致します。



2007-03-18

LM-72007-03-18

産業スパイが跳梁跋扈する現代日本

朝日新聞が伝えたところによれば、デンソーの中国籍の技術者が約13万件にのぼる機密データを無断で持ち出したとして、愛知県警は、同社社員、楊魯川容疑者を横領容疑で逮捕した。楊容疑者は、中国国営の軍事関連企業で勤務した経験があるとされるほか、在日中国人の自動車技術者団体の幹部を務めているという。そんな真っ黒な人間を機密情報へのアクセスが可能な職種に就けていたとは、デンソーのセキュリティ意識の低さには呆れるばかりだ。

彼が持ち出したデータは、産業用ロボットや各種のセンサー、ディーゼル燃料の噴射装置など1,668種類の製品のもので、このうち約280種類は同社の最高機密にあたるらしい。彼の不正が発覚してからも、デンソーの対応は後手に回っている。

同社が2月中旬にシステムの点検をした際、データの大量取得が判明した。楊容疑者は社内調査に、データの持ち出しを否定したうえ、急きょ中国に帰国し、3月4日に再入国したという。

しかも、社内調査で不正アクセスが発覚した後、中国への帰国を認めるという悠長さだ。この緊急帰国で一体どれだけの機密情報が中国に渡ったのか。警察による身柄拘束がもう少し早ければと悔やまれるところだ。

朝日新聞の続報によれば、楊容疑者の不正アクセスが発覚した翌日、楊容疑者から事情聴取を行い、調査員が同日楊容疑者を連れ、刈谷市内の楊容疑者のマンションに行き、社有パソコンの返却と私有パソコンの提出を求めた際に、社員を部屋の外で40〜50分間待たせ、その間にパソコンのHDDを千枚通しのようなもので切り刻み証拠の隠滅を図ったらしい。HDDのデータを磁気的に消去しただけならばデータ復元の手段はあるが、物理的に破壊されるとデータ復元は飛躍的に困難になる。一体、部屋の外で気長に待っていた社員は何のためにそこにいたのだろうか。

社内のサーバのアクセスログは残っているので、どのような情報が持ち出されていたかは確認できる。彼の自宅のPCのアクセスログは、インターネットサービスプロバイダの提出を受ければある程度調べることが出来るだろう。電子メールの送受信記録、データ転送サービス、オンラインストレージへのアクセス履歴などから、ある程度データの流れは追うことは出来るだろうが、流出したデータをなかったことには出来ない。デンソーの機密情報は中国企業に知られるところになったと考えるのが妥当である。

さらなる続報によれば、県警による楊容疑者の自宅の家宅捜索で大量の記録媒体が押収されたという。楊容疑者は今月17日に中国へ帰国予定で、押収された旅行バックには複数の記録媒体が入れられていたそうだ。明らかに中国への機密情報の持ち出しを意図した行動である。一回目の捜索にはなかった記憶媒体が多数押収されたことから、楊容疑者が自宅以外の場所に保管しておいた記録媒体を回収し、それらを持って出国しようとしていたと考えられる。もう少しでさらに多くの機密情報が流出する寸前だったわけだ。

現在の中国・台湾・韓国企業の隆盛の一因は、日本企業の機密情報保護の対するわきの甘さにある。日本メーカーの技術者が週末に韓国などに旅行してアルバイトで現地企業を技術指導したり*1外国のライバル企業に引き抜かれた技術者が、以前に勤めていた会社の機密情報を使って活動するなどの安易な技術流出のおかげで、これらの新興企業が急速に力をつけることができたのは間違いない(不正競争防止法等の改正について)。特に半導体や液晶分野における技術流出は目を覆わんばかりだ。最近ではシャープの亀山工場のブラックボックス化に代表されるように、機密情報漏洩防止に対する企業のセキュリティ意識も改善されてきているようだが、今回の事件を見るにまだ必要最低限のレベルにも達していないようだ。

法整備は遅ればせながら進められており、平成17年度の改訂で一応技術流出への歯止めがかけられた。不正競争防止法の改正で、退職者による情報漏洩も処罰の対象に! 「営業秘密」の管理のために、企業はどのように対応すべきかによれば、平成17年度の改正の骨子は次のようになる。

このため平成17年改正法は,刑事罰をさらに強化し,(1)退職者による営業秘密の漏洩を新たに処罰の対象に加えるとともに,(2)当該退職者を受け入れた法人をも処罰の対象とした両罰規定を採用し,更に,(3)日本国内で管理されていた営業秘密を日本国外で不正に使用・開示する一定の侵害行為を処罰することとしました。

今回の犯罪はまさにこの不正競争防止法に抵触するものであり、5年以下の懲役または500万円以下の罰金の罰則が規定されている。企業の立脚点である技術力による差別化を危うくするような極秘資料の社外開示は、企業にとって致命的になりかねず、より慎重に対応すべきである。今回のデンソーの事件を教訓として、技術流出を起こさない体制作りが日本企業には求められる。

*1:企業によっては、そのようなアルバイトを防止するために社員にパスポートを会社に預けさせるところもあるようだ