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2007-05-26

SED発売延期再び

キヤノンは2007年第4四半期に予定していたSEDテレビの発売を当面の間見送ることを発表した。当初2002年の発売を目指していたSEDは、予定を5年超過しても発売の目処さえ立たない状況に追い込まれた。

  1. 1999年06月:「2002年に月産5万台を目指す」
  2. 2002年06月:「2003年春に実用化し、2003年内に商品化する」
  3. 2003年12月:「2004年中にも製品化する」
  4. 2004年12月:「販売開始は2005年後半を予定」
  5. 2005年05月:「2005年度中、2006年春に最終製品の市場投入を目標」
  6. 2005年09月:発売時期は「2006年前半」
  7. 2006年01月:キヤノンの次世代テレビ、発売初夏にずれ込み
  8. 2006年02月:東芝、SEDの今春発売を来年に延期か
  9. 2006年03月:「2006年中のSEDテレビの発売には反対」,東芝の藤井常務
  10. 2006年03月:<キヤノン社長>SED使用のテレビ事業「やめない」
  11. 2006年05月:「SEDテレビの販売開始は2007年度第4四半期(=2008年1〜3月)」
  12. 2006年09月:2007年後半は55型のみ、本格量産は2008年から
  13. 2006年12月:製品化しても一般への販売は厳しい
  14. 2006年12月:キヤノン、SED新工場白紙へ 米社との特許訴訟もつれ
  15. 2007年01月:キヤノン、SED株式会社を100%完全子会社化 −東芝保有全株を買い取り。米国特許訴訟へ対応
  16. 2007年05月:キヤノンとNano-ProprietaryのSED訴訟に裁定 −キヤノンは控訴。年内のSED製造開始を目指す
  17. 2007年05月:キヤノン、SED関連訴訟で控訴 −「ライセンス違反判決には承服できない」
  18. 2007年05月:SEDテレビの発売は「当面見送り」に −訴訟が原因。さらなる低コスト化目指す

キヤノンにとって誤算だったのは基本特許を有するNano-Proprietary社との特許ライセンス問題の泥沼化にある。これだけ打つ手が裏目に出ることも珍しい。

最初にNano-Proprietary社との特許ライセンス問題が提起された際に、キヤノン首脳部は理は当方にあると判断して、早期の問題収拾の道を放棄した。結果として、Nano-Proprietary社はキヤノンに対する訴訟に踏み切ることになる。

問題は東芝との合弁子会社であるSED社に、キヤノンがNano-Proprietary社と結んでいた特許ライセンス契約が適用されるかという点にあった。キヤノンは最終的にSED社を完全子会社化する荒技に出て、ライセンス問題の解消を図った。かなり思い切った手であり、キヤノン首脳部はこれで問題が解決できると踏んだに違いない。

ところが、連邦地方裁判所は、特許使用料として550万ドルの支払いと、当初キヤノンと結んでいたライセンス契約の破棄を認める評決を下した。キヤノンのライセンス違反とそれに基づく契約の破棄が認められたのである。SED社の子会社化は奏功せず、キヤノンの敗訴となった。

今回の評決の結果、キヤノンはSED生産のためにNano-Proprietary社と改めてライセンス契約を結ばざるを得なくなったが、そのライセンス料は以前よりも、そして早期にNano-Proprietary社の言い分を認めていた場合よりも、はるかに高額になるのは間違いない。

キヤノンは特許料収入で毎年何百億円もの利益を得ている日本でも有数の特許会社である。社内に多くの弁理士を抱え、徹底的な調査と請求項の補正、分割などを駆使して、戦略的に知財開発を行っていることで有名だ。そのキヤノンが特許訴訟で負けるというのは、痛快でさえあった。

キヤノンは判決を不服として控訴に踏み切ったが、訴訟の長期化に伴い、商品化のスケジュールが遅れることは避けられず、今回の延期発表につながったようだ。今までは1年単位で延期を繰り返してきたが、今回は次のスケジュールは未定。いよいよ先の見えない状況となってきた。

延期の理由として、訴訟の長期化の他にさらなるコストダウンを実現する量産の技術の確立を行なうためと説明されているが、液晶、プラズマの高品質化と低価格化がここまで進むと、いくらマニア向けの高付加価値商品として訴求すると言ってもかなり厳しい。SEDは世に出るのか?でまとめたように、SEDの優位性は日ごとに薄れていく現状だ。もたもたしているとあっと言う間に解像度は4K2Kにシフトする(放送の対応を待つ理由はない)。SEDは4K2Kに早期に対応できるのだろうか。

「出る出る詐欺」との陰口も聞かれるSEDだが、このままだと本当に企画倒れになってしまう可能性が出てきた。すでに多額の投資をしていることから、簡単にはあきらめることは無いと思うが、出したところで(投資を回収できるほど)売れるのか?と言う疑問はつきまとう。

少なくとも今回の延期が、液晶・プラズマテレビにSEDが付けいるチャンスを減らしたことは間違いない。あとチャンスはどれぐらい残っているのだろうか。

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