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2010年9月12日付でライブドアブログに引っ越しました。
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これからもどうぞよろしくお願い致します。



2009-09-19

英語話者に対する言語習得難易度表:日本語は最高難度

少なからぬ日本人が日本語は難しい言語だと信じているようだ(日刊スレッドガイド : 日本人はなぜ日本語は世界一難しい言語と信じているのか?)。

言語の習得難易度は学ぶ対象とする言語と母語(第一言語)と間のあらゆる言語学的関係、および個々人の資質や学習環境に大きく作用されるため、一概に議論することはできない。学習者の生活する文化的背景、接触してきた言語(第二言語、etc.)によっても習得難易度は変わるため、世界中の人々に普遍的な世界一難しい言語というものは存在しない。ただ、英語を母語とする者にとっては、日本語は最も習得が難しい言語のひとつであることは確かなようだ。

外交官などの専門職を養成する米国務省機関である外務職員局(FSI: Foreign Service Institute)が英語を母語とする者が習得するのにかかる期間を元に各言語の習得難易度をまとめている(Language Learning Difficulty for English Speakers)。

FSIの生徒は平均年齢40歳程度の英語のネイティブスピーカーであり、正規の言語教育を受ける優れた適性があり、さらに他のいくつかの外国語に関する知識を有しているかなり優秀な人々である事に留意する必要がある。彼らは1週間に25時間のペースで、6人以下の少人数クラスで勉強し、さらに毎日3-4時間個人的な勉強を続けた。

彼らが、ILR scaleSpeaking 3 (General Professional Proficiency)Reading 3 (General Professional Proficiency)を達成するのに要した学習期間をまとめたのが次の表だ。達成レベルの詳細は各リンク先を参照して欲しいが、日常的・専門的コミュニケーションにほとんど不自由がない程度まて習得したレベルに相当する*1。TOEICにすれば950点程度、英検1級レベルだと思われる(TOEICスコアレベル表参照)。

カテゴリーⅠ: 英語と密接に関連する言語
23-24週(575-600時間の授業)
アフリカーンス語
デンマーク語
オランダ語
フランス語
イタリア語
ノルウェー語
ポルトガル語
ルーマニア語
スペイン語
スウェーデン語
カテゴリーⅡ: 英語と大きな言語的ないし文化的違いを有する言語
44週(1100時間の授業)
アルバニア語
アムハラ語
アルメニア語
アゼルバイジャン
ベンガル語
ボスニア語
ブルガリア語
ビルマ語
クロアチア語
チェコ語
エストニア語
フィンランド語
グルジア語
ギリシャ語
ヘブライ語
ヒンディー語
ハンガリー語
アイスランド語
クメール語
ラオス語
ラトビア語
リトアニア語
マケドニア語
モンゴル語
ネパール語
パシュトウ語
ペルシャ語
ポーランド語
ロシア語
セルビア語
シンハラ語
スロバキア語
スロベニア語
タガログ語
タイ語
トルコ語
ウクライナ語
ウルドゥー語
ウズベク
ベトナム語
コサ語
ズールー語
カテゴリーⅢ: 英語のネイティブスピーカーにとって極めて困難な言語
88週(2200時間の授業)
アラビア語
広東語
北京語
日本語
韓国語
その他の言語
ドイツ語30週(750時間の授業)
インドネシア語
マレー語
スワヒリ語
36週(900時間の授業)

太字で示した言語は同一カテゴリの中でも他の言語に比べて英語のネイティブスピーカーにとって習得が特に難しい言語である*2。FSIのまとめによれば、最も難度の高いカテゴリーⅢにカテゴライズされたのは、アラビア語、中国語(広東語、北京語)、韓国語、そして日本語である。中でも日本語が最難とされているのは、日本語が最も英語と文字体系や文法体系が異なるということかもしれない。

さて、英語を母語にする者にとって日本語が最も難しいのであれば、日本語を母語とする者にとって英語は最も難しい言語のひとつとなるはずだ*3。とすれば、中・高・大と10年以上も英語を勉強しても全然英語がしゃべれるようにならないのも仕方ないことだと自分を納得させる人もいるかもしれない。

しかし、FSIの調査は同時に、最難度の言語でも真剣に88週、2年間も勉強すれば不自由しないレベルまで習得することが可能であることを示している*4。思考形態が根本から異なる宇宙人が操る言語ではないのだ。所詮は同じ人類の言語、10年もやっていて満足に使えないのはやはり努力不足ということだろう。もっと頑張らないとね。

参考文献

日本語の値段 (ドルフィン・ブックス)

日本語の値段 (ドルフィン・ブックス)

参考エントリ

*1:ILR scaleは米国連邦政府で言語能力を記述する基準として使われているもので、次のレベルから構成される。レベル1(Elementary proficiency: 初歩レベル)、レベル2(Limited working proficiency: 制限付実務レベル)、レベル3(General professional proficiency: 一般実務レベル)、レベル4(Advanced professional proficiency: 高度実務レベル)、レベル5(Functionally Native proficiency: ネイティブレベル)。レベル3に求められる要件はかなり高く次の通りだ。

  • 充分に正しい文章構造と語彙に基づいた発話能力を有し、大抵の実務的、社会的、専門的なトピックスに関わる会話に参加することができる。
  • 特定の関心事や専門分野に関して特段の苦労なく議論することができる。
  • 通常の速度のスピーチを完璧に理解することができる。
  • ほとんど単語を探索する必要がないほど充分な数の一般的語彙を有している。
  • 明らかに外国人だと分かるアクセントかもしれないが、文法は良くコントロールされ、誤りがあったとしても決して理解を妨げることがなく、ネイティブスピーカーを混乱させることはほとんど無い。

*2:繰り返しになるが、この表はあくまで英語話者が各言語を習得する際の難易度を示したものであることに注意。日本語話者にとってはこの表はもちろん当てはまらない。また、その言語自体の困難性を示したものではない。文法は複雑だが例外が少ない言語と、文法は単純だが例外が多い言語とどちらが習得が容易かは一概には言えない。習得難易度には母語との共通点の量が大きく影響するため、英語との類似度表を作るとよく似た感じになるだろう。

*3:井上史雄著:『日本語の値段』では、日本人の言語習得難易度を同様に4グループに分類している。それによれば最も日本人にとって習得が易しいグループ1がスワヒリ語、インドネシア語、マレー語、トルコ語、朝鮮語、グループ2がイタリア語、ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語、中国語、グループ3がフランス語、ドイツ語、ギリシャ語、チェコ語、タイ語、ハンガリー語、そして最も難しいグループ4がヒンディー語、ウルドゥー語、ロシア語、アラビア語、英語となっている。ただしここで英語が最難度にカテゴライズされたのは、長年英語を勉強しているのに多くの人が満足なレベルに達しないという事実から来ている可能性があるとの注釈付だ。

*4:初出では2200時間と記載していたが、あくまで授業時間が2200時間であって、それに加えて1日3-4時間の自習を継続的に行った結果である。総計で3800時間程度となるはずだ。2200時間という数字が一人歩きするとまずいので訂正。

とおりすがりとおりすがり 2009/09/20 15:12 こんにちは。面白い記事ありがとうございます。

ただ、細かい話ですが、エントリで「英語圏の人」や「母国語」という表現を使っていらっしゃるのが、正確さの点で少々気になります。「英語圏」の中にはインドやインドネシアも十分入りますし、公用語が英語であるフィリピン人の「母国語」は英語かフィリピン語でしょうが、幼い頃から親しんできた言語(第一言語、母語)が英語であるとは限りません。

今回のFSIのILR Scaleでは英語との親近性で難易度が分類されていますので、せめて「英語話者」とか「英語を母語(第一言語)とする人々」とするのが無難なところだろうと思います。

なお、このあたりの用語の差異についてはWikipediaの英語記事などが詳しいので、興味がありましたらご覧ください。

LM-7LM-7 2009/09/20 15:36 とおりすがり様

不正確な記載へのご指摘ありがとうございます。
確認して修正させていただきます。
# ブックマークされたタイトルは直らないかもしれません。

LM-7LM-7 2009/09/20 15:53 修正しました。
日本国内だと母語と母国語がほぼ等しいのでつい曖昧になってしまいました。
まだまだどうしようもなく日本国内の常識に囚われているということですね。

くろねこくろねこ 2009/09/20 16:33 >とおりすがりさま
インドネシアは「英語圏」ではありません。多言語国家ですが共通語(公用語)はインドネシア語です(話者数が最大なのはジャワ語)。英語は観光地以外では全く通じません。

真実真実 2009/09/20 22:08 あえて英語が話せないような環境にしている、教育システムを含めて。100人中50人が話せるようになっては価値がなくなり困る人がでるから

言語屋言語屋 2009/09/20 23:40 LM-7様、興味深い記事をありがとうございます。
何を基準とした難易度なのかということを明示するため、General Professional Proficiencyについて、一言でよいので注があると、ブックマークしている人たちにもたいへんに役立つのではないかと思います。(リンクはあまりクリックされませんし、クリックしてみても英語では、読もうという人はあまり多くはありません。)

「くろねこ」様ご指摘の件、「とおりすがり」様はマレーシアとインドネシアを勘違いなさったのではないでしょうか。今日の昼間にNHKでマレーシアの演劇のドキュメンタリーをやっていたので見ていたのですが、マレーシアでは演劇の公演は英語で、俳優(マレー系)のプライベートでは英語以外の言語もつ買う、という状況でした。おもしろかったです。

言語屋言語屋 2009/09/20 23:42 失礼、誤変換の修正をさせてください。
×「言語もつ買う」
○「言語も使う」

LM-7LM-7 2009/09/21 11:10 言語屋様
ILR scaleについて脚注を追加してみました。

しゅんしゅん 2009/09/21 11:34 わたしは上海人で、上海語って日本語に似てる発音がいっぱいあるんですよ。
英語も簡単みたい。

LM-7LM-7 2009/09/23 06:58 しゅん様
上海語は日本人にとっては発音が難しいみたいですね。
第一言語が日本語って言うのは結構なハンデな気がします。

名無し名無し 2010/06/07 10:01 俺が知り合った日本語で会話が出来る欧米ネイティブ達は日本語は簡単って言ってたな。日本語は文法が理路整然、発音も簡単なので楽に取得できるらしい。
ただ敬語までいくと難しいらしい。
どこの国の人も自国の言語は難しいと思うらしいね。

いずみいずみ 2010/07/19 01:09 通りすがりですみません。名無しさんがいう欧米ネイティブたち(多分英米人?)は日本語が簡単というのは、会話においてだけだと思います。言語の習得には「読み・書き・話す・聞く」のすべての習得が不可欠です。ローマ字で日本語を書かれても意味ない…。漢字仮名混じり文字を書いて、初めて習得といえるでしょう。英語母語の人たちは基本的に完璧な発音で外国語を話しているのをほとんど聞いたことがないです。彼らのできるというレベルと日本人のできるというレベルには相当の差があると思います。ここの表はある程度どこまでのレベルをできるというかが決まっているので信頼性があるように思えます。英語母語者にはカテゴリー?の三つ四つは習得してほしいものです。彼らは五つくらいの言語を喋れて普通だと思っています。

きゃんきゃん 2010/12/24 23:58 興味深く、記事を読みました。
自分自身、ポリグリット(多言語話者)です。
日本人が英語を中学、高校で英語を学んでも話せないというのは、結局が生きた英語では無く、試験のためのロボット会話、、、というか、穴埋め作業と難しい単語の数々をただ暗記する、、、というやり方の為にせっかくの学習が無駄になっているのでは?と思うのです。私は英語、韓国語、ドイツ語を話しますが、中でも韓国語が一番得意です。広東語は10代の頃、半年間学びましたが使う機会が無く大分忘れてしまいました。このグラフ内の英語のネイティブスピーカーにとって難しい言語は、逆に日本人にとっては学びやすいのだと思います。
韓国語は、言語学者の中には否定されてる方もいますが、実際学んでみると、怖くなるくらい類似している言語といえます。それは一度韓国語を学んだ方なら誰しもが思うことかと。ドイツ語は類似点が少ないのですが、逆説だと遠い言語の為にきちんと学ぶと癖の無い綺麗な発音が出来るようになり、決して難しいと言う事は無いようです。
この記事にもあったように、同じ血の通った人間の言語、好きで学べばどれも上手になるというのが私の意見です。

ピカチュウピカチュウ 2011/12/27 22:46 多言語話者です。
面白い記事ですね。

小生はドイツ語、オランダ語、英語、ノルウェー語、デンマーク語、スウェーデン語、アフリカーンス語、日本語を話すことが出来ます。

到達レベルとしては、ドイツ語、オランダ語、英語はネイティブレベル。ノルウェー語、デンマーク語、スウェーデン語はビジネスまではこなせるが、古い文書などが読みこなせないレベル。アフリカーンス語は日本語と同程度で、今綴っている文章からお察し頂けると幸いです。

小生にとっては、日本語は然程難しいほのではありません。小生はスラブ系の言語(ウクライナ語)が母語ですが、日本語は全てが母音で終わるため、独特の習得のしやすさがありますね。

上の方で、話せる言語を8つ書きましたが、同じスラブ系言語を加えて良いなら更に増えますね。ちょっと反則に近いので書きませんでしたが、ロシア語、ポーランド語、チェコ語、ベラルーシ語、ブルガリア語も話せます。例えるなら関西弁の人が標準語を習得するのどの手間で、非常に習得が容易です。

p.w.ep.w.e 2012/02/14 01:29 わたしは、アメリカ生まれで、英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、中国語(北京)、日本語を使えます男者でございます。確かに、ヨーロッパの言語は比較的には習得しやすいでしょうですし、中国語と日本語は書くも読むも話すも難しいと感じるんです。でも、英語と全然違うために逆に、むしろよりもっと面白いねと思います。今はこの程度の日本語ですけれでも、ゆくゆくは日本語の漫画をスラスラと読めれば最高と思います。
まだまだだよねけれど・・・

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