実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第537回】おつかれさーとんの巻(ミュージカル2015)



 実写版セーラームーンは2003年10月4日から2004年9月25日まで放送された。最終回が終わった後、私はしばらく抜け殻のようになってしまった。ちょっと前に「あまロス」という言葉がはやったが、気持ちは分かる。



 それから10年も経って、そのぶん歳をとったわけだが、まさか、またまたセーラームーンのせいで同じような喪失感を味わうことになるとはね。



 2013年の『La Reconquista』で奇跡の復活、翌2014年の『Petite Étrangère』でさらに奇跡のシリーズ化を実現した新セーラームーンミュージカル(通称「ネルケ版」)でヒロイン月野うさぎを演じてきた大久保聡美が、今年2015年の『Un Nouveau Voyage』をもってセーラームーンを卒業するという。あわせて小山百代のマーキュリー、七木奏音のマーズ、高橋ユウのジュピター、坂田しおりのヴィーナスも、今回の公演が見納めとなる。



 その大阪公演の大千秋楽が、先日2015年10月4日(日)にあった。すでに9月19日(土)の東京公演をナマで観ていた私だが、やはりこれはせめてライブビューイングでも観ておかないと後で後悔すると思い、109シネマズ名古屋に駆けつけたのでありました。そしてあれから一週間たった今でも、なんだか虚ろな気持ちでボーっとしている。
 2013年6月2日、「ガセかと思ったら、マジです」とセラミュ復活のニュースをメールで知らせてくれたのは、ひろみんみんむしさんだった。間髪をいれずにブログの方にも百日紅さんのコメントがついて、とりあえず、6月1日の記事の冒頭に速報を追加した(これ)。あれから2年3ヶ月、いい夢を見させてもらいました。



 さて今回の物語は、要するにデス・バスターズ編というか、アニメの『セーラームーンS』というか、無限学園編です。
 無限学園というのは、優秀な人材を世に送るために、土萌創一教授という謎の科学者が創立した一種の超エリート私立学校である。校舎も設備も素晴らしく充実していて、生徒たちは幼稚園から大学院まで一貫した教育を受けることができる。
 中学3年になって受験の季節を迎えたうさぎたち五人は、その無限学園の高等部を見学に行く。でもここは、何か一芸に秀でていることを証明しなくては、見学さえ認められないのだ。



 天才少女の亜美、霊感少女のレイ、怪力少女のまことは、その特殊技能が認められて「科学」「哲学」「フィジカル」コースの体験入学を許される。アイドル女子力の高い美奈子も、なかば無理やり押しかけて、「芸能」コースを見学させてもらう。
 でもこれといって取り柄のないうさぎは相手にされず門前払い。そこでばったり出くわしたのが衛(大和悠河)とちびうさ(神田愛莉)。ちびうさは最近、この学園の土萌ほたるという子と親友になって、勧められて体験入学に来たのだという。ちびうさにさえ馬鹿にされるうさぎ。



ちびうさ「うさぎは家帰って勉強してなさい。このままじゃ高校どころか、中学も卒業できないわよ」



うさぎ「ふーんだ。卒業できなくてけっこうよ。卒業なんてしたくないもん。あ〜あ、5人とも卒業かぁ。やだなぁ。……5人とも留年しちゃえばいいんだ……な〜んちゃって」


 舞台の時もライブビューイングの時も、なんかこのあたりで私は早くもうるっと来た。卒業なんてしたくないもん。5人とも留年しちゃえばいいんだ。
 ……が、しかし、この無限学園にはいろいろな陰謀が渦巻いていて、それを操るのは、ほたるの父にして無限学園の創立者、マッド・サイエンティストの土萌創一教授。さらにその背景には、この地球を滅ぼして乗っ取ろうとする、タウ星系の生命体ファラオ90がいるのだった。
 ってあまりにも唐突なんだけとすまん、今週もそんなにゆっくりブログを書いている時間がない。だいたい、原作やアニメの『S』を観ていない人に、土萌ほたるとミストレス9とセーラーサターンの関係をきちんと説明する自信が私にはない。というわけで、あらすじはこの程度にして(おいおい)あとはおおざっぱな感想になってしまうけどお許しください。その感想も、実は【第535回】で言ったことの繰り替えしなんだけど。



 デス・バスターズ篇の華といえばウラヌスとネプチューン、そして復活プルートの外部三戦士そろい踏みである。
 プルートの石井美絵子は昨年に続く登場。登場シーンが華麗であった。



 演技以外の要素で評価してしまうのは反則だが、でもこの人、昨年の千秋楽の舞台挨拶で、どれだけセーラームーンが好きで、どれだけセーラープルートをやれたことが嬉しいかを、ぼろぼろ涙をこぼしながら語っていたのがあまりに印象的なのだ。だから今回も出てきただけで、ああ今年もセーラームーンに参加できて良かったね、と、こちらがホロリとしてしまった。



 ただ、前作でちびうさと客席の涙を誘いながら去って行ったのに、わりとあっさりよみがえってしまったのは興ざめで、もうちょっとプーとスモールレディの再開の感激をじっくり見たかったとは思う。もっともこれは、物語の構造上いたし方のないことではある。この時点で、もうクライマックスに向かってドラマにはけっこう加速度がかかっているし。



 ネプチューンは艶やかで可愛くておみごと。宝塚時代の芸名は月野姫花。現在は本名の藤岡沙也香で活躍中だそうだ。他方、ウラヌスを演じた汐月しゅうは舞台中、最初から最後まで、いつも表情に独特の緊張感が見て取れた。勝手な憶測だが、大和悠河のタキシード仮面を向こうに回していることに、内心ものすごい重圧を感じていたのではないだろうか。



 セーラーウラヌスというのは、本来ならセーラームーン世界において、宝塚でいう「男役トップ」のポジションである。ところがキャスト全員が女性というこのネルケ版ミュージカルでは、すでに大和悠河という、ルックス的には究極の男役トップが君臨しているのだ。そういう状況でどうすれば天王はるかという、うさぎさえ思わず目を奪われる魅惑的な男装の麗人を作り出せるのか。



 それでいて変身するとミニスカートって、考えると、けっこう難しいと思うんですよね。汐月しゅうはだいぶ悩んだのではなかろうか(推定)。結果的には、女性の男装というよりも、もっと性別不明のユニセックス的な方向にイメージを持っていって差別化をはかっていたように思う。



 そういう意味で、千秋楽の舞台挨拶の時の、大役をはたし終えたホッとした表情と、セーラームーンの人気キャラクターを演じることが「怖かった」という言葉が(ネプチューンがにこやかで落ち着いた雰囲気だっただけに、よけいに)印象的でした。



 そしてセーラーサターンを演じた高橋華鈴、2000年7月生まれの15歳。エイベックスのアイドルユニット「Prizmmy☆」のメンバー。って言っても私はよく知らないんだが、テレ東のアニメ『プリティーリズム・オーロラドリーム』の実写パートに出ていた子たちで結成されたユニットらしい。という情報はともかく、すごく良かった。ただ、この子の魅力は画像ではちょっと伝わらないかな。





 本格的な舞台はこれが初めてらしいが、土萌ほたるの時の、静かで間の多い芝居、ミストレス9の激情と高笑い、そしてミステリアスなセーラーサターンという三つのキャラクターをよくこなしていたと思うぞ。実に素晴らしかった。おじさん今までPrizmmy☆のことあまり知らなかったけど、これからは果鈴さんのために応援しちゃう。




 そのほたるのパパ土萌教授(香音有希)とか、ウィッチーズ5(知念紗那・井田彩花・長谷川唯・佐達ももこ・Maana)とか、細かいところまで話し出せばきりがないので、すまん、割愛する。ただカオリナイト(扇けい)の美声と艶やかさだけは特記しておきたい。 


 
 舞台ではその圧倒的な声量で劇場じゅうの空気をびんびん震わせているような気がした。ライブビューイングでは大画面でセクシーな胸の谷間も堪能させていただきました。ちなみに私、ライブビューイングの映画館で前から3列目というポジションだった。百日紅さんは5列目だったですね。



 それから内部の5戦士。このチームについては、もう何も言うことはない。しつこいようだが特にセーラームーンの大久保聡美。ありがとう。よかったです。
 たとえば(唐突に話題を変えてすみません)ネルケ版の1作目から使われて、もはやファンにはおなじみのナンバーで「揃い踏み!白月五人娘」という楽しい曲がある。



 セーラー戦士5人の曲、と見せかけて、実はヴィーナスの見せ場を盛り上げるために作られたような曲だ。第1作目では、ヴィーナス(坂田しおり)がぶりっ子アイドル風のフリフリの振り付けを披露して劇場を沸かせた。



 昨年の第2作目でも(マーズも面白かったけど)やはりこの曲のハイライトはヴィーナスで、なんと敵の仕掛けた偽ヴィーナスとデュエットで踊り、歌もハモるという趣向だった。
 で、今年はこの曲はワンコーラス、セーラームーンのパートしかやらなかったのだが、なんとこれを、ヴィーナスが歌った。やはり「白月五人娘」はヴィーナスの曲なのであった。



 セーラームーンの正体を見破ったウィッチーズ5は、うさぎがひとりでいるところを包囲し、結界を結んでセーラームーンに変身できなくしてしまう。



 しかしそこへ颯爽と登場するのがセーラー戦士の5人。でもよく見ると(よく見なくても)ヴィーナスがムーンのコスプレで、代わりにちびムーンがヴィーナス役という無茶振り。



 ヴィーナスのセーラームーンはウィッチーズ5に「本物はこの私。その子はただのドジなおダンゴ娘よ」と言い放ち、自分がセンターを張れた喜びに、ノリノリで「白月五人娘」のセーラームーンパートを歌うのである。




 なぜかジュピターも異様に楽しそう。
 で、アニメなんかだと、ここでうさぎが空気を読まずに美奈子に嫉妬して「違うわよ、私が本物のセーラームーンなんだから」とか言って、カミングアウトしてしまうのが定石のパターンだと思う。そういう展開なのかな、と思っていたら、うさぎは、ちゃんとヴィーナスたちに合わせるんだよ。「わぁセーラームーンだ!」とか言って、戦士たちの歌と踊りに合わせ、傘を振り回してオタ芸を披露する。




  それぞれアニメ版の変身バンクのポーズを忠実に再現しているとこがポイント高いですね。こういうディティールは他にもいろいろあったと思う。とにかくセーラームーンへのオマージュにあふれたセーラームーンなのだ。
でも戦闘態勢に入ったところでヴィーナスのお団子が落っこちて、敵に正体がバレちゃう、というオチがつくんだけど。



 もちろん今回のうさぎも、相変わらずドジだし、ちびうさともレベルの低い言い争いをしているんだけど、仲間に対する信頼はゆるぎない。だからこういう場面ではすぐに美奈子の意図を読んでしっかりチームプレイに徹する。そこに、うさぎの「信じる力」という今回の舞台のテーマが現れてくる。
 ウラヌス、ネプチューンそしてプルートの外部3戦士は、セーラーサターンが覚醒し、世界を破滅にもたらす前に、土萌ほたるを殺してしまおうと考える。そのためには、ほたるを守ろうとするうさぎたち内部戦士と潰し合いをすることすら辞さない構えだ。そして挑発に乗った内部戦士たちも、外部戦士への対立姿勢を隠そうともしない。



 そんななか、セーラームーンだけが、仲間の4戦士を信じ、外部の3戦士も信じ、そしてセーラーサターンも救えると信じている。なぜならみんなセーラー戦士だから。



 内部戦士と外部戦士が対立する状況になって、うさぎは悩み傷つく。でも全員を信じるまっすぐな気持ちにはブレがない。その強さが内部戦士と外部戦士を和解させ、ほたるを救済し、タウ星の支配者ファラオ90の計画を阻止する……というのが原作のデス・バスターズ篇、旧アニメの『セーラームーンS』、旧ミュージカル『無限学園』、そして今回のネルケ版ミュージカル『Un Nouveau Voyage』を一貫するテーマだ。





 セーラームーンを演じ続けてきた大久保聡美は3作目にして、すべてを救済する力を持った、強くて頼りになるヒロイン像を自分のものにしている。舞台後に行われた戦士たちの「大卒業式」で、平光琢也が、クライマックスの大久保聡美はまさしく正義そのものだった、とか言っていたけど、本当にそんな感じで、世界を救う正義のヒーローでした。だから今回の舞台は、外部3戦士やセーラーサターンの好演といった様々な見所があるにもかかわらず、やはり最も心に残ったのは、スーパーセーラームンだったなぁ。




 いやほんと、大久保聡美は良かった。このブログは一応、沢井美優原理主義なんだけど、でも16歳の沢井美優がそうだったように、17歳の大久保聡美も「選ばれた人」としてセーラームーンになり、今月末には20歳を迎えようという今、セーラームーンを卒業した。五人のセーラー戦士のみなさん、ありがとうございました。



 そういえば、ネルケ版初代マーキュリーの松浦雅が、今年の6月3日付のブログで、大久保聡美と七木奏音と3人でTDLに行った話を書いていた。それでシンデレラ城の前でセーラームーンとマーズとマーキュリーがポーズを取っているという、かなりレアな写真をあげてくれていて、たいへん嬉しかったです。




 それから、暗くなって月光を浴びる大久保聡美。



この写真に松浦雅は「うーん。やっぱり、聡美は月が似合う」とコメントしています。ほんとうにそのとおりですね。ついでに言うと、後任の小山百代は、オーディションで大久保聡美を見て感激して泣いてしまったらしい(笑)。気持ちはわかる。だってこの子はリアルセーラームーンだから。
では。



【おまけ】


大千秋楽のラストシーンで、演じながら思わず泣いちゃったヴィーナスの坂田しおり。