実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第606回】まるでロミジュリの巻(泉里香『大貧乏』第7話)



 2月25日に開催されたお別れ会の遺影は、「夏だぜジョニー」のジャケット用写真で、本人のお気に入りの一枚だったそうです。なるほど。この曲のミュージックビデオの最後の方の彼女もペコちゃんみたいで可愛かった。




黙祷

1. 残念三題


 加藤実秋の小説『モップガール3』(小学館2017年1月)が出て、10年越しにシリーズが完結した。この小説はもともと、スターダスト・ピクチャーズからの依頼を受け、ドラマ化を前提として執筆された作品で、ドラマ版は深夜帯にもかかわらず高視聴率をマークし、すこぶる好評を得た。



 だから『2』『3』と続けて映像化されても良さそうなものだったが、諸の事情により続編制作どころかソフト化すら実現していない。とても残念な話である。



 こうの史代『この世界の片隅に』の劇場版アニメが2016年11月に全国公開された。この漫画はかつて、2011年8月に日本テレビの終戦記念番組としてドラマ化され、DVDも発売された。




 昨年末にアニメ版が公開されるまでの実写版DVDのアマゾンレビューは「まあ実写ドラマではこんなもので仕方ないか」的な内容であったが、怖れていたとおり、アニメ公開後以降に書かれたレビューはすべて☆ひとつである。




  中には「劇場アニメが好きだった方は観ない方が得策です」とハッキリ書いている人もいる。とても残念な話である。



 高田郁の『みをつくし料理帖』が2017年5月よりNHKで全8話の連続ドラマとして映像化される。この小説はかつて2012年と2014年にテレビ朝日でスペシャルドラマになっていて、非常に出来が良くて評価が高かったが、ただ主人公のビジュアルは原作とは大いにかけ離れていた。そのせいでもなかろうが、いまだに二作ともソフト化されていない。



 今度のNHK版の主演の黒木華は、まあ確かにこっちの方が原作のイメージにはより近いように思えるし、芝居も上手い女優さんだし、こっちができると前のドラマ版の評価が下がっちゃうかも知れない。そうだとすればこれもまた、とても残念な話である。

2. 「逆に燃えますけど」


 まだ泉里香は出ています。てか、これひょっとして最終話まで出していただけるのかな。『大貧乏』第7話「ドキドキ旅行 幸せなひと時襲う真実裏切り者は隣に」(2017年2月19日放送、フジテレビ・東映/脚本:安逹奈緒子/撮影:大石弘宜・篠田忠史/演出:小林義則)。物語の本筋に絡んでいないように見えて、その実、実は主人公の心境の変化を導いたりもしていて、なかなかあなどれない泉里香です。



 ゆず子(小雪)の勤めていた会社は、取引先の濱中電子から情報漏洩の過失を責められ、250億円もの損害賠償を求められて倒産した。でもそれは、濱中電子が自社のミスを隠蔽するために仕組んだ濡れ衣だった。真相をつかんだゆず子は、かつての同僚たちに呼びかけて「濱中電子被害者の会」を組織。最初は厳しい闘いだったけど、次第に世間の注目を集め、濱中電子に対するマスコミの批判的論調も高まってきた。



 でもそれでショックを受けたのは、濱中電子のOLのレイコ(泉里香)。信頼し、女性として尊敬もしていた同僚の契約社員、ゆず子が、実は濱中電子をスパイするために潜入した「被害者の会」代表で、しかも恋こがれていたレイコの同級生、柿原がその担当弁護士だっていうんだから、まあそれは嘆くだろう。しかし嘆き方もやや斜め上を行くのがレイコでもある。お店の注目を集めちゃうレベルの泣きっぷり。
 



レイコ「ひどいですよぉ。利用されてたんですね、私」



レイコ「いいんです。私って利用されがちなタイプなんで」



柿 原「あ、いや、そんな……」



ゆず子「ホント、ごめんなさい」



レイコ「好きな人が会社の敵とか、ロミジュリじゃないですかぁ……逆に燃えますけどぉ」



柿 原「燃え……ちゃうの?」



レイコ「すいません。泣いたりして」



レイコ「うちの会社、これからどうなるんですか?」



レイコ「潰れちゃったりするんですか?」



ゆず子「潰れる?」


╳    ╳    ╳



ゆず子「この訴訟で濱中電子工業が潰れるなんてこと、ある?」



柿 原「分からない。そこまでのダメージを与えるかどうかは、やってみないと」



ゆず子「もし潰れるようなことになったら、レイコちゃんたち、仕事なくなっちゃうんだよね。私たちみたいになるってことだよね」
 



柿 原「そうだね」



柿 原「七草さん、訴訟を起こすってそういうことだよ。相手のことなんか考えたら勝てない」



ゆず子「濱中の社員さんたちは、みんな普通に真面目に働いているだけなのに」



柿 原「うん」



ゆず子「わたし、みんなの前で『がんばりましょう』なんて言ったけど、闘うってそういうことなんだね」



柿 原「闘わないって言う手もなくはない」



柿 原「白黒つけずに、お互いが生きる方法を探るっていうのも法律の世界では正義だったりするし」



ゆず子「どういうこと?」



柿 原「和解交渉に切り替えよう」


 レイコが「うちの会社、これからどうなるんですか?」と途方に暮れるのを見て、ゆず子の心に「濱中の社員さんたちは、みんな普通に真面目に働いているだけなのに」という迷いが生じる。それを感じた柿原は「お互いが生きる方法」として、示談交渉という新手を提案する。
 ワンポイントだけ出演、本筋に関係ないただのボケ担当と見えて、実は今回のエピソードのメイン・テーマである「和解交渉」のほうに物語を引っ張っていったのは泉里香のレイコであった。意外と重要人物。しかも、あこがれの柿原弁護士が濱中電子のカタキ側であると知り、嘆きながらも「ロミジュリみたい」で「逆に燃えちゃう」というんだから、この先も最終回まで、ワンシーンずつくらいは出てきて伊藤淳史につきまとうのかも知れない。でもそう言った矢先に出なくなってしまうのかも知れない。
 それにしてもこのドラマ、小雪と伊藤淳史の不器用な恋愛の進み具合なんか楽しいのに、しつこいようだが伊藤淳史の設定が気になって物語に入りきれない。年商100億を越える凄腕弁護士が、どうして毎回、こうも簡単に敵側企業の奸計に陥るのだろうか。
 社会的地位のある金持ち男が、平凡で貧乏な女と恋に落ちるというパターンは韓国ドラマの王道で、そういうのにドはまりしている専業主婦もいる(うちの妻とか)。だから日本のドラマも真似るんだろう。大野智と波瑠の『世界一難しい恋』ってドラマもそんなのだった。そういえば、このあいだの名古屋ドームの嵐のライブに波瑠が来ていたって、名古屋の嵐ファンの主婦(うちの妻とか)の間では話題になっていた。関係ない話ですみません。

3. 次回予告


 さて今回はこれくらいで終了。自分でも短いような気がするけど、ウチはいつもが異常に長いので、このくらいでまとめることを心がけたい。



 とは言ったが、実は、前回予告したように、本当はこのあと、小松彩夏さんが出演された『科捜研の女』第16シーズン第7話「七枚の迷宮」をレビューするつもりだった(2017年2月23日放送、フジテレビ・東映)。ところが小松さんがことのほかご活躍で、キャプチャ画像とセリフの書き出しはおおむね終わったんだけど、どういうふうにレビューするかなという思案がまとまらないので、次週とさせていただきます。もちろんネタバレになります。



 少しだけ予告しておくね。前々回の『嫌われる勇気』では正直イマイチだった小松彩夏だが、今回はいかにも「らしい」こまっちゃんを堪能できる。ただ脚本が惜しい。



 どういう意味かというと、私はミステリとしての着想は面白いと思った。山小屋で男の死体が発見される。その恋人の小松彩夏が付近の山間で保護される。




 でもこまっちゃんは片腕を銃で撃ち抜かれているし、記憶が混乱していて、何が起こったのか正確に証言できない。



 そこで沢口靖子たち科捜研は、現場に残された七枚の写真を時系列に沿って並べ、事件の成り行きを推定する。でも途中から、この七枚の並び順を替えると、最初の推理とは正反対の事実が浮かび上がってくることに気づく。





 けっこう面白いと思うんだけど、ただデジカメやスマホの写真は撮影時間のデータも正確に残るから、写真の並べ替えというメインのアイデアが成り立たない。それで、あれこれ理屈をつけてインスタントカメラを使う。でもどうしてもこのへんに無理がある。小松彩夏とツーショットチェキを撮ってもらうならともかく、小松彩夏がデジカメでもスマホでもなくインスタントカメラにこだわるって、やっぱりおかしい。



 あとこれ、私はこれ倒叙形式のほうが、つまり犯人が計画を実行するところから描く『刑事コロンボ』や『古畑任三郎』みたいな形式にしたほうが面白かったんじゃないかな、とも思った。でもまあ『科捜研の女』だからそうもいかないよな。ま、ともかく、小松彩夏の出演シーンを中心に次回ダイジェスト版番組レビューをお届けしますので、よろしかったらどうぞ。今回はこれくらいで。