実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第951回】復活!乃木坂セラミュを楽しむために:30周年記念クロニクルの巻


 ちょっと前に『M14の追憶』でも取り上げられていた『シルバー假面』(2006年)撮影中のオフショット。寺田農が実相寺昭雄の手をしっかり握っている。現場の実相寺監督は、すでにかなり体調が悪かったというから、寺田農も励ましているのだろう。実相寺は作品公開直前に亡くなり『シルバー假面』は遺作となった。盟友、寺田農は活動写真の弁士役で、全編の語りも担当している。



 寺田農は、実相寺監督のウルトラシリーズでの最後の作品となった『ウルトラマンマックス』第24話「狙われない街」(2005年)にも出演、メトロン星人を演じている。



 その寺田農の、おそらく生前最後のテレビドラマ出演となったのが、昨年放送された『ウルトラマンブレーザー』である。



 第14話「月下の記憶」(2023年10月14日/テレビ東京/脚本:小柳啓伍/監督:田口清隆)。SKaRD(Special Kaiju Reaction Detachment:特殊怪獣対応分遣隊)隊員のアオベ・エミ(搗宮姫奈)は、宇宙怪獣に関する情報を収集するため、防衛軍のサーバー室に忍び込み、機密情報にひそかにアクセスした。すると「V99」という意味不明のキーワードにたどり着く。秘密の鍵をにぎる人物は、元地球防衛隊日本支部長官で現在は「第66研究施設」責任者、ドバシ・ユウ。ところが、そこまでたどり着いたところで、エミは参謀長のハルノ・レツ(加藤雅也)に、それ以上の深入りを禁じられてしまう。



レ ツ「ドバシ・ユウにだけは近づくな」
エ ミ「徹底的に調べますので」


 エミもそう簡単には引き下がらない。調査を続けようとすると、なんとドバシ・ユウ(寺田農)本人に呼び出される。真実を知るため、エミはドバシに当時の研究について尋ねるが……。



 という、シリーズ通しての謎が提示されるエピソードだった。この後、シリーズ後半に寺田農は数回出演することになる。
 ところで、ここに紹介した第14話の翌週、『ウルトラマンブレーザー』第15話「朝と夜の間に」(2023年10月21日/テレビ東京/脚本:中野貴雄/監督:田口清隆)には、なんと実相寺昭雄が自分の監督作の中でも大のお気に入りだったという怪獣ガヴァドンが、初代『ウルトラマン』第15話「恐怖の宇宙線」(1966年10月23日/TBS/脚本:佐々木守/監督:実相寺昭雄)以来、57年ぶりに登場している。同じ第15話で、放送日もかなり近い。これは偶然ではない。



 内容は現代的アレンジを施した旧作のリメイクで、しかもガヴァドンAだけでBは出てこない。実相寺昭雄が、いかにも怪獣らしいガヴァドンBより、のっぺりしているぶん意味不明なAのほうに愛着を懐いていた話もこれまた有名だ。



 そしてオリジナルの「恐怖の宇宙線」は、脚本段階では「朝と夜の間に」という題名で、実相寺昭雄が、本当はこの最初の題名を気に入っていたという逸話も、これまたウルトラマンのオタクであれば知っているだろう。オリジナルのタイトルがピーターと関係あるかどうかは知らない。



 さらに、57年前の「恐怖の宇宙線」に出ていた子役の一人、タカシくんを演じていた内野惣次郎が、今回はガヴァドンの第一発見者の役で出演、しかも役名が「内野タカシ」である。当時と同じようにバットとグローブを持っているという、なんなんだこのマニアックな趣向は。


 
 そんな実相寺監督リスペクトもあったりして、近年のウルトラマンのなかでも異色作であった『ウルトラマンブレーザー』。本作が寺田農の生前最後の出演作品となった。
 寺田さんはセーラームーンとはまったく関係ないんだが、Yahoo!ニュースとかの訃報を見ると『天空の城ラピュタ』のムスカ役で有名、と書かれていて、いくらなんでもそれはひどすぎるので、ここでも追悼することにした。合掌。



 さて、いよいよ大詰めをむかえたセーラームーンミュージカル総括。2013年公演の「-La Reconquista-」、2014年公演の「-Petite Étrangère-」、2015年公演の「-Un Nouveau Voyage-」、2016年公演の「-Amour Eternal-」、2017年公演の「-Le Mouvement Final-」とキャストを入れ換えながら続いた5部作をネルケ版1期とすると、それ以降の展開がコロナも絡んでよく分からなくなってしまっている。これを整理しておこうという個人的な動機で始めた企画が長引いてしまったが、いよいよ大詰めである。

6. 30周年記念 Musical Festival -Chronicle-



 当初は2019年に上演予定であった『かぐや姫の恋人』が2020年に延期になり、代わりに2018年の乃木坂46版が(キャストは乃木坂内で入れ換えをしたうえで)2019年に再演されて、2020年に上演される予定だった『かぐや姫の恋人』が、さらに2021年に延期になって、9月に上演されたところまで話しましたね。みなさん頭のなかの整理はできていますか?
 30周年記念ミュージカルの制作が発表されたのは『かぐや姫の恋人』の翌年2022年6月で、7月にはメインキャストが決定した。内部戦士、外部三戦士、サターンといった主要キャストは『かぐや姫の恋人』からの続投、地場衛/タキシード仮面は2018年のThe Super Liveで同役を演じた立道梨緒奈であった。


セーラームーン/月野うさぎ: 田中梨瑚


セーラーマーキュリー/水野亜美: 前川歌音


セーラーマーズ/火野レイ: 小林れい


セーラージュピター/木野まこと: 松村キサラ


セーラーヴィーナス/愛野美奈子: 牧野真鈴


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セーラーウラヌス/天王はるか: 寺田真珠


セーラーネプチューン/海王みちる: 木下綾菜


セーラープルート/冥王せつな: 南 千紗登


セーラーサターン/土萠ほたる: 井手柚花


 そしてちびうさは、あの新津ちせが演じることがきまった。「あの」というニュアンスが分からない人のために解説すると、2014年に4歳にして『ミス・サイゴン』でミュージカル・デビュー、2017年のネルケ版1期最終作「-Le Mouvement Final-」でちびちびを演じ、2020年にはFoorinのメンバーとして「パプリカ」を歌い史上最年少で日本レコード大賞を受賞、2021年には『高嶺のハナさん』でドラマのナレーターもこなした末恐ろしい少女です。ついでにいえば、250億円の超絶大ヒット作を生み出した某有名アニメ作家のお嬢さんでもある。


セーラーちびムーン/ちびうさ: 新津ちせ


ルナ(人間の姿): MARISA


ルナ: 櫻井佑音


 加えて、ルナ役として2021年に引き続き櫻井佑音とMARISA(安川摩吏紗)がキャスティングされていることから、内容は『かぐや姫の恋人』の改訂版に30周年記念ショーを加えたようなステージとなるのではないか、と予想された。



 オープニングは、最初は銀河系が映し出されていたリボン状のステージ大型スクリーンに、武内直子の原作画から始まり、1993年のアンザムーン以下、歴代セラミュのキャストが年代順に次々映し出されるという演出で、ここでもう、悶絶した人も多かったのではないかと思う。
 続いて、戦士たちが愉しく歌い踊っていると、そこへ、敏腕プロデューサーのミス・フローズンなる人物が乱入。



 戦士の歌を誉めそやし、アイドルデビューオーディションを受けないかと誘うんだが、実はこのミス・フローズンの正体は、浄化したはずのスノーカグヤ(岡村さやか)が復活した姿だった。ということでこの舞台は、 『かぐや姫の恋人』の続編というか後日譚みたいな内容の話になっている。ネルケ版のミュージカルでオリジナルストーリーって、初めてではないだろうか。


小山百代と大久保聡美


 で、そのセーラー戦士たちも参加するアイドルオーディションの場に、伝説のアイドルが特別審査員として登場し、ミス・フローズンのインタビューを受けて余興を披露する、という趣向で、過去のセラミュのキャストが日替わり出てくるのが今回の目玉である。登場したゲスト一覧は以下の通り。


2022年11月17日 昼の部 小坂明子 ANZA
2022年11月17日 夜の部 小坂明子 ANZA 赤嶺寿乃 岩名美紗子(小谷みさ子) 栗山絵美 宮澤明子
2022年11月18日 昼の部 河西智美 ココナ 長谷川唯 尾花貴絵 星波
2022年11月18日 夜の部 汐月しゅう 藤岡沙也香
2022年11月19日 昼の部 鮫島れおな 林祐衣 二宮響子 伊田麻友香 中西裕胡
2022年11月19日 夜の部 竹内夢 小林かれん 楓 長谷川里桃
2022年11月20日 昼の部 大久保聡美 小山百代
2022年11月20日 夜の部 大久保聡美 春川芽生 松田彩希


 バンダイ版のほうのゲストが初日限りで、ちょっと寂しい気もした。だって河辺千恵子さんがいない。高木ナオさんと朝見優香さんもいない、保坂優子さんも、垣内彩未さんも、そして小野妃香里さんも……いやキリがないですね。ただ、初日は午前、午後の部ともに小坂明子の電子ピアノの伴奏で歌のコーナーがたっぷりあった。



 11月17日昼の部はANZAで「ラ・ソウルジャー」「ラ・ムールダ・ムールムーンライト」「ダブルムーンライトロマンス」「SeeMe,ぼく達の時代」「思い出してあなたを」「Lonly Distance」と、なかなか渋い選曲というか、私も忘れていた曲も多い。



 11月17日夜の部はアンザ時代のセーラームーンとマーズとヴィーナス、原史奈時代のマーキュリーとジュピターという混成チームで、やはり小坂明子の電子ピアノの伴奏で「ラ・ソウルジャー」「La Fatalite星戦士」「伝説生誕」「みんなだれかに愛されて」を歌いあげ、最後はナマ演奏ではなく、かつてのステージと同じカラオケバージョンで「ラ・ソウルジャー」を歌ってくれた。ちょっと感動した。30周年にふさわしいステージだったと思う。



 お話のほうも、ルナ(櫻井佑音)がダークサイドに堕ちてスノールナ(MARISA)になってしまう、という、いかにもセーラームーンらしい展開で、『かぐや姫の恋人』よりも戦士たちのパフォーマンスも進化していたし、ルナの出番も多くて良かったです。



 まあ語りたいことはまだまだあるけど、そろそろ締めよう。ミュージカル本編は90分程度で大団円となり、そのあと「ラ・ソウルジャー」に始まり「ムーンライト伝説」に終わる15分ほどのスペシャルライブがある。『かぐや姫の恋人』と同じく、三浦香の脚本・演出、坂部剛の音楽、當間里美の振り付けで、2022年11月17日から20日まで品川プリンスホテル内にあるステラボールで上演された。この会場は初めてですね。

7. 乃木坂46 “5期生”版 2024


 というわけで、ようやくゴールまで来たよ。乃木坂46の5期生によるミュージカル『美少女戦士セーラームーン』は、2024年4月12日(金)から4月29日(月)までIMM THEATER(東京ドームシティ内に新設された吉本興業の劇場、700席)で上演される。チケットは全席指定で一律12,300円と強気の設定。『かぐや姫の恋人』でSS席12,500円っていうのが出たが、あれは非売品オリジナルグッズ付きで、S席9,500円、A席8,000円と選択肢があった。考えてみれば、乃木坂46なんて普通にドームとかアリーナでライブをやっているわけだから、1000人も入らない小屋で推しを間近に見ることができて12,300円なんて、乃木坂ヲタの方々にとっては「買い」なのかもしれない。ちょっと悪いけど私にはナマ観賞の予定はない。


2024年版 Team MOON


セーラームーン/月野うさぎ: 井上 和


セーラーマーキュリー/水野亜美: 小川 彩


セーラーマーズ/火野レイ: 岡本姫奈


セーラージュピター/木野まこと: 五百城茉央


セーラーヴィーナス/愛野美奈子: 池田瑛紗


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2024年版 Team STAR


セーラームーン/月野うさぎ: 菅原咲月


セーラーマーキュリー/水野亜美: 中西アルノ


セーラーマーズ/火野レイ: 一ノ瀬美空


セーラージュピター/木野まこと: 冨里奈央


セーラーヴィーナス/愛野美奈子: 川﨑 桜


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クイーン・セレニティ/奧田いろは


 見事に全員知らんなあ。2018年と2019年に白石麻衣が映像出演したセレニティをやっている奧田いろはさんて、やっぱり白石麻衣クラスの方なんだろうか。石井美絵子さんがやっていたタキシード仮面を、今回は宝塚星組を辞めてまだそんなに経っていない天寿光希がやるそうだが、そんな方をお相手に、お稽古の期間も対してなさそうで大丈夫か乃木坂? など、いろいろ思うところもあるが、まあ感想は配信なり映像作品を観てからにしたい(当たり前だ)。内容は基本的に過去の乃木坂セーラームーンの再演と考えて良いだろう。
 というわけで、なんと四週にわたる紹介となってしまったが、ちょいちょいビデオをチェックしながら、やっぱりセラミュって楽しいよね、って思った。月並みな感想だ。最近はネットで視聴する方法も多様化して、わざわざDVDを取り寄せていた時代に較べると観賞が容易になった。みなさんも機会があったらぜひご覧いただきたい。それにしても、ラスト・ドラクル三部作を配信してくれるサイトはないものか。



おまけ)しばらく前にオークションにかけられていた「ラスト・ドラクル最終章 超惑星デス・バルカンの封印」(2001年春公演)の台本。なんと神戸みゆきさん自身が使用したものだそうで、彼女の特徴ある字で演技プランが書き込まれている。こんなのまともにオークションに出てくるわけないので、いけないことだと思いつつ、つい見入ってしまった。乃木坂のみなさんも、短いお稽古期間ですが、台本にいっぱい書き込んで、より良い舞台作りに取り組んでください。