実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第685回】岬マリは何を賭けたか?<その9>(北川景子『探偵はBARにいる3』最終回)



 2018年秋の乃木坂46版セーラームーンミュージカルも大詰め、ダブルキャストそれぞれの千秋楽公演ライブビューイングが全国の映画館で行なわれるわけだが、チケットは一般予約の発売日、当日のうちに売り切れた。ふつうセラミュはそんなに即完売ということもない。のん気に構えていた私が、仕事が終わって帰宅して、風呂に入っているうちに、もう土曜日のぶんは売り切れだった。なんとか日曜日のTEAM MOONだけ滑り込みセーフ。トップアイドルなのだ。乃木坂を舐めていた私が悪かった。



 乃木坂っていうと、以前にこのブログで秋元真夏・生田絵梨花・橋本奈々未主演の『超能力研究部の3人』(2014年、TBS、山下敦弘)という映画を取り上げたことがある。これは『ピンク・レディーの活動大写真』(1978年、東宝、小谷承靖)と同じくらい楽しい、アイドル映画の秀作だと思うんだけど(このたとえ、みなさん分かりませんよね。すみません)劇場はガラガラだった。



 『薔薇色のブー子』(2014年、テレビ朝日/東宝、福田雄一)も、主演の指原莉乃が自ら「大爆死」というくらい惨憺たる興行成績だった。だから、AKBや乃木坂のファンっていうのは、ライブとか握手会とか、ナマで会うことを重視して、スクリーンに詰めかけたりしない、と勝手に思い込んでいた。でもこの様子だとそういう方々もいっぱい来て、いつもとはだいぶ雰囲気の違うライブビューイングになりそうである。私のようなおじさんは乃木坂オタクに分類されるだろうな。少し緊張しますね。



 そういえば『響 -HIBIKI-』も、週末興行ランキングで初登場6位である。これも私なんか、実は10位以下もありうると思っていただけに、十分「好発進」といえる成績だ。やっぱり私の認識が間違っていましたね。実際にベストテン圏外だったのは中条あやみの『3D彼女 リアルガール』の方でした。
 『響 -HIBIKI-』については、主演の平手友梨奈に関してYahoo!ニュースにこんな記事も出た。



 初めてのリハーサルの時、平手は映画初出演ということで緊張をほぐそうと「まずは台本を見ながらでいいから…」と監督が声をかけると、突然「リハをやる前に監督と2人でお話させていただけませんか?」と願う平手。
監督は快諾し、別室に行ったものの、平手はなかなか口を開かない。
 どうしようもなく「脚本どうだった?」と質問すると、「つまらなかった」と衝撃の一言。
 監督は、あまりの出来事に驚きを隠せなかったが、17歳のまっすぐな意見に理由を聞き出し、平手の意見を脚本家に説明。すると脚本家も納得して修正されたという。
普通はキレてもおかしくないが「スゴい的確なことを言っていた」と理解し監督・脚本家ともに納得したのだとか。
 (『Yahoo! Japan ニュース』2018年9月16日配信)


 なんとなく既視感を憶える記事である。たしか北川景子が、本格的なメジャー主演第1作『Dear Friends』(本当はその前にアップリンクの『チェリーパイ』があるけど)の時、両沢監督がインタビューで同じようなことを語っていたと思う。最初のオーディションの時、すごくやる気がなさそうで、脚本に文句をつけていた、とか。
 そういう監督インタビュー記事がどこかに残ってないかとネットを探したが、さすがに10年前のことなので見つからなかった。でも似たようなところでこんな記事を見つけた。



 8歳のとき阪神淡路大震災で被災した女優北川景子(20)が、亡き友たちへ映画「Dear Friends」(2月3日公開)をささげる。
 北川が死や病、自殺問題に直面する17歳を演じた同映画が16日、完成披露試写会を迎えた。ダブル主演の本仮屋ユイカ(19)とともに都内で会見し「小2のときに震災で半分の同級生を亡くした。あのときから、私は生きているということが幸せなんです」と、過去を明かした。
 北川が演じた主役リナは、突然のがんに苦しみ2度も自殺を考える。世間でも若者が自ら命を絶つニュースが相次ぐが、「でも、私は命ってもっと違うでしょ? って思う」と力を込めた。当初はリナの精神的な弱さなどに共感できずオーディション段階から「演じるのが嫌だった」。しかし、両沢和幸監督(46)からは「オーディションでそんな本音を言う子はいない」と、逆に興味を引かれ起用された。悩み抜いた末「120%の力で演じました」。
 (『日刊スポーツ』2007年01月17日)


 というわけで、北川景子は平手友梨奈に若いころの自分の姿を映し見たのかもしれない。
 なんて、ネットから拾った情報を継ぎはぎした、どこぞのお手軽なニュース記事みたいな話はこのくらいにして、ずっと続けて来た『探偵はBARにいる3』のレビューである。物語はいよいよ大詰め、マリ(北川景子)は北城(リリー・フランキー)から奪った末端価格4億円相当の覚醒剤を、北城自身に1億円で買い戻させる、という大胆な計画を実行する。




 隠していたコインロッカーから覚醒剤の入ったバッグを出したマリをサポートする探偵(大泉洋)は高田にクビを言い渡す。これは生きて帰れる保証のない危険な仕事なのだ。



 といってあっさり引き下がる高田でもないんだけどね。
 マリが取引場所として北城に指定したのは「サッポロファクトリー」。大ショッピングモールとか映画館とかホテルとかいろいろ揃った複合施設だ。折りしもイベントスペースでは「スポーツが創る未来の街」と題して、札幌市長の秋元克広氏(本人)と前年2016年に日本ハムファイターズをリーグ優勝、日本一に導いた栗山監督(本人)によるトークショーが行われるというので、沢山の人々がやって来ている。その大賑わいの人ごみの一隅で、一億円と大量の覚醒剤の、一か八かの取引が密かに行なわれようとしていた。



 と、ここで唐突だが、本ブログのレビューはこのへんで終了としたい。ここまで相当ネタバレ的なことも書いてはしまったが、本当のクライマックスはこれからである。しかしこの『探偵はBARにいる3』という作品は、劇場公開が昨年末で(2017年12月)、ビデオソフトリリースが今年の6月13日、つまり今はまだ発売3ヵ月で、東映チャンネルでの放送が10月10日、その後WOWOWとかAmazonプライムとかHuluを経てたぶん年末くらいに地上派初放送となる。それまでは、さすがにこれ以上内容を詳しくバラすわけにはいけない。まだ鑑賞していない方はぜひこの機会にビデオソフトを購入なりレンタルなりしてください。
 というわけで、あとは特典映像だ。まずさっき書いたサッポロ・ファクトリーでのクライマックス撮影後に、て協力してくれたエキストラの皆さんに向かっての北川さんごあいさつ。大泉洋に導かれて北川さんが登場すると、あたりはやんやの喝采。



大 泉「ありがとうございます。ありがとうございます。北川景子、北川景子でございます」



北 川「みなさんお疲れ様でした」
観 客「カワイー」



北 川「いやいやいやいや、ありがとうございます。なんかね、心なしか声がすごいハスキー(笑)。なんでだろう(笑)。……けっこう本当に今日はパンチのあるセリフをたくさん言わせていただいて、みんなが本当に、本気で怖がってくださったので、救われました。これで私も本当に怖そうにスクリーンに映ることができるなあって思います。……ホントにハスキー。でももうちょっと普段は、良い声(笑)なんですけど」



大 泉「ぶっ殺すぞって言い過ぎましたね」
北 川「うんそうですね」



大 泉「何回、みなさん北川さんの『ぶっ殺すぞ!』聞けたか」
北 川「20回くらい言ったと思います。はい、もう普段ぜんぜん言い慣れてないから、うまく言えるか心配で一睡もできなかったんですけど……」



大 泉「早く寝たって言ってましたよね(笑)昨日早く寝ましたって。なんで嘘つくんですか?10時に寝たって(笑)」



北 川「良い声が出ました。はい。みなさん本当に何度も何度もご協力ありがとうございました。お疲れ様でした」



大 泉「ありがとうございました。北川景子さんでございました」


 続きまして本編撮影終了後の挨拶。どうも、前々回のブログで紹介したバーでのシーンが、撮影順では最後のカットとなったようである。



マ リ「助けて……助けてください」


 オールアップ。北川景子、松田龍平そして大泉洋のメインキャスト三人に花束が贈呈される。



 そして3人からお礼とご挨拶。ここでは北川さんの分だけお送りします。



北 川「私は『3』からの参加だったので、本当に不安もあったんですけど、大泉さん初め松田さん、ほんとに組のみなさんに、温かく迎えていただいて、みなさんと札幌に約一ヶ月間居られたことも楽しい想い出になりました。映画の完成をとっても楽しみにしています。みなさん本当にお疲れ様でした」


 そして完成試写後のメインキャスト三人へのインタビュー集から、ここでは北川景子編を文字に起こしておく。まあ、何か特筆すべき新情報が語られているということもないので、読み流していただきたい。ただ以前にも触れた「かっこいい」についてちょっとだけ注意してみてください。北川景子がある人を「かっこいい」という場合、それはルックスやファッションやスタイル(だけ)ではなく、もっと深く、その人の生き方や人間性そのものを指している。要するに北川景子は、相手を人として最も高く評価するとき「かっこいい」と表現するのである。けっこう昔からの北川さん独特の言葉づかいだ。



(完成した映画を観て)「台本で読んだよりもより感動して、泣きましたね。自分のシーンで泣きました。自分のシーンでこう、一観客として観られるっていうのは、むずかしいことだと思うんですけど、今回はすごく、『探偵はBARにいる』のファンだったということもあり、普通にお客さんとして拝見して、自分が泣くシーンがあるんですけど、そのあたりから泣いてましたね」



(マリについて)「自分がこの人のことは守りたいとか、助けたいって思った人に対して命がけで突き進んで行くって部分はすごく共感しましたし、なんかこう、100%憎みきれないっていうか、この人にしか分からない孤独とか苦しみがあったんだろうな、っていうのが、最後まで悪女と言い切れないところがあって、まあでも悪そうに見せる部分は思いきってやってはみたんですけれども、もう演じながらは、あんまりマリのことを、この人悪いなあ、とかは不思議と思わなかったですね」



(大泉洋について)「今回初めてご一緒したので、探偵役の大泉さんしか、きちんと生でみるっていうことはしていないんですけど、メチャクチャかっこいい方で、もちろんコメディのシーンもあるので、ひょうきんな、コミカルなお芝居もされるんですけれども、なんか『3』は、探偵がずっとマリに寄り添って動いていっている気がして、そういうのも相俟って、すごく探偵がメチャクチャかっこいい」



「そして探偵を演じていらっしゃる大泉さんも、やっぱりメチャクチャかっこいい、っていう。なんか途中から探偵なのか大泉さんなのか分かんなくなっちゃうぐらい……。このシリーズを成功させるぞ、っていう大泉さんの気持ちだったり、マリを守るぞっていう探偵の気持ちだったり、いろんなものがすごくリンクしていて、役者さんとしても男性としてもメチャクチャかっこいいと思いました」



(探偵シリーズに体を張る大泉洋)「本当にパンツ一丁でね、北海道の海の上で船に乗るっていうのは、やっぱりなかなかできないですからね、若いですよ。元気だなと思いました(笑)」



「初めまだパンツじゃなかった。なんかガウンを着ているような台本だったと思うんですけれど、あそこもやっぱプロ意識ですよね。ガウン着てるより、パンツと靴下の方が見た目でも面白いじゃんっていう。『脱いだのはいいけどすごく寒かったよ』っておっしゃって、なんかさすがだなあって。私も何枚も着込んでたので、考えられないな、と思って……。でもその大泉さんの頑張りあっての……、ホントにつかみの良いシーンになったと思います」



(松田龍平について)「ポロッと掛けてくださる一言が『あっそっかそれでいいんだ』って思えるような。すごく安心させてくれたりとか、納得させてくれることを言ってくれるから、すごい良く見てくださってたんだろうなって思いました。話しかけてくださるときの言葉にぜんぶ意味があって、でもそれをなんか、大げさなことをしているっていうふうに感じさせないって言うか、すごく自然体なんですけど、とても周りが見えていて、一歩引いたところでお芝居をされている姿が、すごい上品な方だなと思いました」



(クライマックスシーンについて)「うーん、あのシーンのことばかり、やはり台本をいただいたときから考えてて。どういうふうにやろうかなっていうか……。でも頭で考えてこうこうこういうふうにしようって思ってやるシーンでもないっていうか……」




「出たところ勝負で、そこで感じた通りにやらなくてはいけないシーンだとも思いましたし、けっこうエキストラの方も何千人とお呼びしていたし、場所も本当に実際動いている場所をお借りしているから、時間の制約もありますし、出し切れるのかなぁっていうのがすごい心配だったんですけど、自分のなかでは悔いがない撮影になって、自分が思っていたよりもやれたっていう気がして、後悔のないシーンになりました」



(撮影で大変だったシーン)「北海道のロケの部分の走りが一番大変でした。ヒールだし、なんて言うのか、雪がちょっと氷っぽくなって、スケートのリンクみたいな感じに道路がなっていたので、転ばないようにするのが怖かったんですけど、あとはけっこう楽しんで……あ、でも楽しくないのが、あの、飛び降りるのがあって、それはけっこう怖かったです」



「高いだけならまだいいんですけど、落ちるんですよね。飛び降りるシーンがすごく怖くて、もう松田くんにも『飛ばないと終わんないんだよね』って言われて、それはもうじゅうじゅう承知で、3、2、1で有無を言わさず飛ぼうって……で自分でカウントできないで、大泉さんにカウントしてもらって、押してもらって飛びました」



(探偵シリーズの魅力)「私は大泉さんと松田さんだと思うんです。あの二人が、あの関係性ってやっぱりなかなか出せないし、今回『3』の台本もいただいて思いましたけど、文字で書いてあるよりも何百倍、面白いですからね、あの御二人がやると、あ、このシーンこうなるんだ、って」




「やっぱりあの御二人のお力だと思うし、大泉さんに、人としてのかっこよさとか、男性としてのかっこよさとか、何かこう、ハードボイルドで熱い生きざまっていうのがすごい詰まってて、あんなに熱く真っすぐに生きたいと思ってもなかなかみんな出来ないし、なんかそれをやっている探偵が、最初はなんかちょっとコメディなシーンがあって、面白い映画なのかなと思って観るんですけれども、途中からもうどんどん探偵の魅力に、魅了されて、最後にはもう作品自体のファンになっているっていうか。女性が今回ね、こういう人が恋人だったら、夫だったらって思う、こういう人に守られたい、『3』は特に思うんじゃないかな。なんかそういう、いろんな探偵の良さがこのシリーズの人気の理由なんじゃないかなと思います」


 ということで、まだご覧になっていない方は、ぜひブルーレイなりDVDなりアマゾンビデオなりiTunesなりでどうぞ。



 最後に本編に戻ってラストシーン。エンディングに流れる主題歌「大寒町」の話。
 前作『探偵はBARにいる2』のエンディング曲はムーンライダーズの「すかんぴん」(1977)だった。映画の終わりだけでなく、冒頭でも大泉洋がこの歌を口ずさんでいる。本編の映画全体が、この曲のミュージック・ビデオじゃないかと錯覚するほどだ。もちろんそれは偶然ではなくて、プロデューサーの須藤泰司は、最初からこの曲をテーマソングに使うつもりでこの映画を企画したという。前にも書いたけど、そのへんの事情は『大人のMusic Calender』の市川清師さんの記事に詳しい(ここ)。で、ムーンライダーズは1970年代、あがた森魚のバックバンド「はちみつぱい」が母胎となって結成されたわけだが、今回の『3』はそのはちみつぱいの歌が冒頭とエンディングに使われている。



 オープニング曲が「大道芸人」で、もとはあがた森魚のアルバム『乙女の儚夢(ロマン)』(1972年)に入っていた曲だ。さっき書いたように、はちみつぱいは、あがた森魚のバックバンドだったから、半ばセルフカバーのようなものである。そしてエンディング曲の「大寒町」も、やはりあがた森魚『噫無情(レ・ミゼラブル)』(1974年)収録曲のカバー。アルバムも傑作だがこの曲がまた素晴らしい。作詞作曲はムーンライダーズの鈴木博文。
 私はあがた森魚が好きで、最近ちょっと遠のいてるけど、昔はよくライブに足を運んだ。あの「赤色エレジー」を滅多に披露しないひねくれ者だが(私はライブで一度しか聴いたことがない)、この「大寒町」は、同じくらい古い曲だけど、今でもよく歌われている。自身にとってもお気に入りの曲なのだろう。そのつどアレンジを替えていて、Youtubeでいろんなバージョンが聴ける。矢野顕子のカバーもある。どうアレンジしても、誰が歌っても沁みる名曲で、これがエンディングに流れたせいで、私の『探偵はBARにいる3』に対する印象は3割増しになってしまった。



マ リ「出あったんだ!」


 以上。岬マリが何を賭けたのか。それは各自でご確認ください。探偵は岬マリを救えたのか。これも各自で考えてください。



 ただひとつ確かなことは、探偵が麗子(前田敦子)を救ったという事実だ。そういえばこの三ヵ月『探偵はBARにいる3』を10回は観たと思うが、その間に前田敦子さんがご成婚されました。おめでとうございます。ではまた。