「法律の穴」に対する誤解

法律には穴がある。
こんな言葉をたまに聞きます。
結論から言えば、穴はあります。
でもそれは法律を勉強していない人にはとてもわかりにくい穴ですので、安易に抜けようとしない方が良いです。
どういうことかと言うと・・・
つまり、「法律に書いてない」=「法律の穴」ではないということです。


法解釈には「縮小解釈」「拡大解釈」「類推解釈」というものがあります。
これらが曲者で、一見法律に書いていないように見えてもこれらの解釈を使うことで補ってしまいます。
考えてみれば当たり前、だって社会を文章で規定しきれるはずないんですから。


法律を勉強するときに、最初に習うのは条文ではありません。
法律の趣旨、つまり「この法律はなんのために作ったの?」の理解です。
大雑把に言ってしまうと、民法の趣旨は「当事者の公平」、刑法の趣旨は「社会秩序の維持」、憲法の趣旨は「基本的人権の保護、調整」、商法の趣旨は「経済活動の活性化」という風に。
だから、一見法律に規定されてなくても「民法の趣旨から〜」「刑法の趣旨から〜」などというように修正をかけていきます。
極端な話、「これでは不公平だから」や「これでは社会秩序が維持できないから」や「これでは経済活動がストップしてしまう恐れがあるから」という理由で判断するということです。


なんでもありじゃないか、と感じるかもしれませんが、80%正解です。
間違っている20%の部分は「解釈の限界」という問題です。
一応「法律」解釈ですからいくらなんでも、あまりに条文からかけ離れている解釈は許されないのです。


では限界ってどうやって決まるのか。
それは事例の中身によって変わります。
「明らかにおかしい(つまり、不公平すぎるとか、人権が全く保障されないとか)」場合には解釈の幅が限りなく広がります。
「微妙・・・(不公平とまではいえないとか、相手の権利も保護しないといけない)」という場合の解釈にはかなりの制約がかかります。
(そのほかに政治的な理由など、本音の部分での解釈の限界もありますが・・・今回は触れません)


お分かりの通り法律の穴は後者の場合に発生します。
明らかに法に触れそうなことは、わりと法に触れてしまうのでむやみに「法律の穴」をかいくぐろうとしない方が良いです。