脳髄にアイスピック このページをアンテナに追加 RSSフィード

2015-12-19

[]『フォースの覚醒』と一時期流行った二世もの漫画について。

 『スター・ウォーズ』の新作が十年ぶりに登場で巷で話題っつーわけで観に行きました。別に僕は旧三部作からの大ファンとかいうわけではなく、というか旧3部作はテレビ放送でしか見た事がない。けれど新三部作は劇場で見たし、旧作ファンがとことんダメだししているエピソード1だってそんなにひどいと思わない。むしろ「ポッドレース結構面白くなかった?」「ダース・モールのデザインは今でも出色の出来だと思うよ」「なんでみんなジャージャーそんなに嫌いなの?」という気持ちがあるし、つまり、あまり一般的なスター・ウォーズファンの感想じゃないんですよ、これは。というエクスキューズを配置し終えたのというわけで、以下ネタバレ



 率直な感想を書くと、つまらなくはない、決してつまらなくはないが、じゃあ凄く面白いか? と問われればノーと答えざるを得ない。

「10年待って出てきたのがこれかよ」と考えるとむしろ残念なレベルに思えるのだが、それはこっちの考え方が間違っているので、「全9部作と銘打ってはいるものの絶対に出るはずがないだろう。出たとしても今のルーカスじゃ……」という立ち位置にあったエピソード789という正当な続編が映像化されて、そこに旧3部作のオマージュもたっぷり盛り込まれて、そこそこ面白いのだからファンとしては小躍りして喜ぶ内容なのだろう。

 2年前『ドラゴンボールZ 神と神』を見て、映画の内容自体は凄く面白かったわけではないものの、久々にZ戦士の雄姿を見ることができて心地よい満足感に浸ることができた……という記憶があるのだが、スター・ウォーズファンからすれば、今回の映画はその時の俺の満足感を何倍にも増幅したものなのだろうと考えれば、やはり良い続編だったのだろう。あれだけハン・ソロの活躍が見れたなら旧作からのファンは大満足だろう。

 しかし、まあ、しかし、個人的な感想としてはイマイチどうも乗り切れず、何が問題なのかと言えば、やはり新たなる主人公3人組、すなわち、レイとフィンとカイロ・レン。

 現時点で色々と謎が多いレイのキャラが弱くなってしまうのはしょうがないとしても、フィンに関しては面白黒人バディという役割を超えられず、イマイチ掘り下げが上手くいってなかったように思える(序盤で人を殺さないみたいなこと言ってた割にストームトルーパーはガンガン撃ち殺していたなこいつ)。そして何より一番の問題がカイロ・レンである。

 ハン・ソロレイア姫の息子でさらにルークの弟子でもあるという、本来なら主人公を張っていてもおかしくない経歴の持ち主ながら、ダークサイドに落ちて敵に回ってしまうという、ものすごくドラマティックな背景を持つ男だ。もしwikipediaで設定だけ見たら凄くかっこいいキャラを想像するに違いない。映画冒頭でブラスターをフォースで静止するシーンも凄くかっこよかった。それが何だろう、こいつの物語が進むにつれて残念になっていく感じは。

 作戦が失敗するとライトセーバー振り回して物にあたるし、「衛兵!」と熱いコールを飛ばすも思いっきり避けられるし、フォース歴1日の女にフォースで押し負けるし、ライトセーバー歴2日ぐらいの元ストームトルーパー相手に苦戦するし、ライトセーバー歴1日の女に負けるしさあ。いや、銃で脇腹撃たれて痛いのはわかるよ。だからそんな胸叩いて俺我慢してますアピールしなくていいよ……。最近姿を見かけないパッション屋良のこと思い出したよ……。

 そして一番致命的な問題は仮面を外した時のパッとしなさである。ハリーポッター顔と呼ばれたり、他にもアメリカの学校で銃乱射してそうとか、イギリスパブの汚ねえ便所で薬キメてそうな感じとか散々な言われようである。

 だが、そういういろんな点で未熟なところがカイロ・レンの魅力なのかもしれない。今後シリーズが進むにつれて、彼も成長し魅力的な悪役になっていくのかもしれない。皆エピソード8に期待してくれよな! けど、待てよ、こいつエピソード4でいうところのダースベイダーの立ち位置だよ。敵役としてショボすぎない。最初ホログラムだとわからなくて、凄く大きい宇宙人に見える人だけじゃなくて、後見人的ポジションのキャラも近くに置こうよ。こいつ敵にしても盛り上がらないよ、絶対。メモリアル・パンフレットの表紙になって存在感を示していたキャプテン・ファズマもあっさりゴミ捨て場に流されちゃったしさ……。

 そんなイマイチパッとしない新キャラの分まで大いに活躍したのがハン・ソロである。物語もミレニアム・ファルコンにハン・ソロチューバッカが帰ってくるあたりで一気に面白くなっていく気がするのだけど、そもそもこいつが活躍しすぎたせいで新キャラ3人の影が薄くなったのでは、という気がしないでもない。

 ここで僕が思い出したのが一時期大量に生産された、大ヒットした少年漫画の人気キャラの息子を主人公に据えた「二世もの漫画」である。最近でも『魔法先生ネギま!』や『MAJOR』の続きが始まっているし、やっぱ安定してゼロから新作をやるよりは安定するんでしょうな。

 作者としては前作主人公の血筋を引く新キャラを主人公を新たな出発点にして、新しい物語を編み出していきたいのだろう。しかしいつだって、この手の漫画で盛り上がるのは前作の人気キャラやその関係者が登場したときだ。今ゴラクでやってる『極!! 男塾』だって、これまでの男塾シリーズキャラが総出演だっていうのに、男爵ディーノが裏切る裏切らないをやっている今この瞬間が一番盛り上がっている。『キン肉マン』に至っては2世の連載がストップして、現在では普通に初代キン肉マンの続きを連載しているし、結局それが最高に盛り上がってしまっている。だってこのタイミングで、シルバーマンが降臨するんだぜ。大興奮に決まってるっしょ、そんなの……。

 つまり、この手の続編で新キャラと旧キャラの両方を並び立たせるというのは大変難しいという話で、まして人気シリーズの続編となると、それまでのファンからの注目も大きいだろうし、そうなるとハン・ソロハン・ソロ、姫将軍レイア、ハン・ソロみたいな感じでスポット当てて、最後にちょっとだけルークの顔見せて次回に続くで締めたのは悪くない判断だったのかもしれない。続きは凄く気になるし、旧作からのファンも大満足だ。

 けど、やっぱ新世代のキャラがぱっとしないと、これからのシリーズが上手くいかないし、新規のファンも誕生しないんじゃないのかなあとも思う。特にフィンに関しては実はメイス・ウィンドゥの子孫だったとかいう設定がつけられて、紫色のライトセーバーをブンブン振り回すぐらいの活躍を見せないと、人気キャラになれる気がしないんだよなあ……今作で世代交代に成功した感じがするのマスコット枠のBB-8ぐらいだけっぽいし……。

 あと、先日スター・ウォーズで最強のパイロットは誰かって記事ですごい地味な人が話題になっていたけど、飛行機の外でも出番の多かったポー・ダメロンさんは今後スター・ウォーズ界のパイロット枠の期待の星として頑張ってもらいたい。メイビーフォースウィジュユー。

2015-03-02

[]アメリカン・スナイパーこち亀、あるいは秋本治イーストウッドを超えたという話。

 そんなわけで今話題の映画、『アメリカン・スナイパー』通称アメスパを見てきたわけですよ。マーヴルアベンジャーズ戦略によって2で打ち切られちゃったけど、戦闘中のスパイディのへらず口っぷりや軽薄さは原作っぽくて良かったと思うんですよ。ただ、蜘蛛に噛まれて能力ゲットした直後にスケボーで延々と遊んでいるシーン見て、「コーラのCMっぽいな……」って思ったのも事実ですが。とりあえず新しいシリーズが作られる場合は、また蜘蛛に噛まれてスーパーパワーを手に入れてベンおじさんが強盗に殺されて、大いなる力には〜という教訓を得る一連の流れをもっかい見せられるんだろうかと考えると今の時点でかったるさを感じずにいられませんが、それでも他のヒーローとの共演が見られると思うとやっぱり嬉しいですね。

 話を元に戻して『アメリカン・スナイパー』の話をするんですけど、当然ネタバレがあるので、見てない人は回れ右した方が良いんじゃないかな。

 で、僕は映画や小説を見たり読んだりする場合は、なるべく前知識を入れずノー偏見で見た方が楽しめると思うタイプなんですが、最近は話の筋が複雑になると、脳内のメモリが人間関係の整理でいっぱいいっぱいになってしまうし、特に洋画だと誰が誰だかわからなくなったりすることも多いので、ある程度は事前情報を仕入れた方が素直に楽しめるんじゃないかなって思い始めてるんですけど、どうなんですかね。いやそんな話はどうでもよくて、まあ、とりあえず監督がイーストウッドで、前評判が結構良い感じで、タイトルから察するにアメリカ人のスナイパーの話だろうって程度の情報を仕入れて観に行ったら、ラストでびっくりして、それから葬儀の様子を随分丁寧に撮るなあ。と思ったら、エンドクレジットの最後の方に「クリス・カイル・ファウンデーション」みたいなマークが流れて、「えっ、もしかして、これ実話!?」って驚いたわけですよ。

 この件でふと思ったのが、歴史ドラマを見てる人たちが「坂本竜馬って中岡慎太郎寺田屋で暗殺されちゃうんだよね」「ひどいネタバレされたー」みたいな会話をするっていう笑い話をネットでたまに見かけるのですが、やっぱ僕がこの映画見る前に「主人公死んじゃうよ」って言われたら「ネタバレするんじゃねえよ!」って憤った可能性が高かったと思うし、しかし、その手の話題に関心のある人は知っていて当然だろうし、ましてやアメリカ人ではもっと常識になっていると思われるので、ネタバレの扱いって本当に難しいですよね。

 本作はアメリカ国内で「戦争賛美」と言われたり「反米映画」と言われたりと評価が真っ二つに割れているというのを、たまむすび町山智浩が言っているというのを、ここの書き起こしで見たんですが、個人的に気になったところとして、

町山智浩イラクアメリカ軍が入って、侵攻しましたけども、その時に自爆テロをしようとして、爆弾を持った女の人が出てきたんですけど、その人を射殺してるんですよ。

赤江珠緒)うーん・・・

町山智浩)最初に殺したのが女の人なんで、もう、これ英雄って言えるの?って問題になってくるんですね。

赤江珠緒)たしかにね。

って会話があって、いや、そこで女を殺したから英雄じゃないっていうのはなかなかキテやがるなって思ったんですけど、どうなんですかね?

 いや、そりゃ無抵抗の女性を一方的に射殺したならそりゃどうよって話ですけど、これ射殺された女性、爆弾持ってるわけじゃないですか。それをほっといたら味方が大量に死ぬわけで。それでも女性を射つのはよろしくないって言うのかもしれないですけど、だって仮に射殺したのが男性だったら、「ブラボー!」とか「彼こそがこの国のヒーローだ!」って見かたになってしまうんでしょ。それはそれで気色悪いなと思うんですが、どうなんですかね。

 ほら、だって、昔の偉い人もこんなことを言ってましたし↓

f:id:Lobotomy:20150302201617j:image

 で、アメリカ国内で評価が真っ二つって話で、これが純然たるフィクションだとすると評価が割れるのもわからない気もしないんですけど、これ実話で実際にモデルがいる話じゃないですか。愛国心に燃えイラクで百人以上殺した伝説的スナイパーは、実際は度重なる派兵でどんどん精神の平衡を失って私生活もボロボロだったっていう、既に存在する英雄像に冷や水ぶっかけるように内容なんだからこれを戦争賛美って受け取るあたり、やっぱアメリカ人キテるなあと思ったりしたわけです。

 で、本作で一番の見どころともいえる、髭の生え方と太り方がスタパ齋藤に似ているクリス・カイルさんの壊れっぷりですが、戦地から帰ってくるたびにどんどんひどくなって、物音に過敏になったり、運転中バックミラーに写る車を無性に気にしてたり、バーベキューやってる最中じゃれついた犬が子供を押し倒したのを見て、慌てて犬を殺そうとしたりとかなりキテるわけで、「戦争は人間の心を荒ませるね。やっぱり平和が一番だね」っていう小学生並みの感想を抱いたわけですが、無音のエンドクレジットを眺めている時にふと気づいたんですよ。

「これってこち亀ボルボ西郷じゃん……!」

 そう、強面な外見に元軍人という経歴でありながらも、物音に過剰に反応して、背中に立たれただけで発砲し、常に銃が手元にないと不安で仕方がない危険な男、ボルボ西郷。クリス・カイルはまさしく彼なんですよ。

 クリント・イーストウッド2014年に深刻な社会問題として描いた兵士の姿を、秋本治1987年の時点で描いていたわけです。それも痛烈なギャグとして!

 秋本治先生と言えば、エアガンモデルガンのコレクションを持つガンマニアとしても知られていますが、この時期の秋本先生はサバイバルゲームにはまっており、おそらくゲーム内での経験がボルボのようなキャラを生み出したのでしょう。ベトナム帰還兵の資料を読み込んでPTSDの情報を調べた上でボルボというキャラに昇華した可能性もありますが、深刻な社会問題をギャグとして処理したというならそれはそれで凄いでしょう。いや、元々はゴルゴ13パロディじゃんとかそういう話はいったん置いとこう、な。

 ともあれ、このボルボ西郷というキャラクターは現実のクリス・カイルを遥かに先取りしており、秋本治はわずかなサバイバルゲームの経験だけで、イラク戦争がもたらす悲劇を予見していたと言っても過言ではないのです!

 こち亀イーストウッドと言えば、第一巻の第一話でダーティハリーに影響された中川がS&W M29でライトバンを吹っ飛ばしていますが、そのシーンから約30年。イーストウッドが『アメリカン・スナイパー』を撮ったことによって、こち亀クリント・イーストウッドを超えていたことが証明されたわけです。

 だからみんなも海外の話題作ばっかりみないで、日本の伝統であるこち亀も読もうな!…………って感じで〆てその後アフィリエイトリンクを1巻から最新刊の194巻までズラッと並べたら面白いかなあって思ったんですけど、途中でめんどくさくなってやめました。

 けど、こち亀は面白いから皆読もうな。ジャンプで読んでるけど、あんま面白くないって思っている人はちゃんと最初の方から読もう! 絵柄が古くてちょっとって人は50巻あたりから読もう! 少なくとも寿司屋が前面に押し出されるまでは文句なしにオススメだよ、うん。

2012-11-17

[]ヱヴァQの話をしよう

 ネタバレ怖いネタバレ怖い。だったらネタバレされるよりも先に見て俺がネタバレしちゃえばいいじゃないというわけで、ヱヴァQを見てきました。

 以下ネタバレ

 前回のラストで、凄いこれはもうシンジ君じゃなくてシンジさんや!ってなった。シンジさん! マジ男前や! 今回もいきなり冒頭から大ピンチのアスカを助けてマジイケメンや! しかも目が覚めるや否や「自分ヱヴァに乗るッス。ガンガン攻めるッス!」とかぬかして、シンジさんマジハンサム!…………と思ったら、ミサトさんがろくに説明もしないまま「あんたヱバー乗らなくていいわ」とか言い出すし、いきなり14年経ってるし、無駄に存在感のあるハゲでヒゲがクルーにいるしで、もう最悪ですよ。いったい何がどうなってるんだよ、おい。と思ったら、シンジさんが「何が起こってるんですか」みたいなこと言ったので、流石シンジさんだ! 観客の気持ちがわかってる。と思ったけどミサトさんは何も言わない。

 お前らさあ、もっと気を使えよ。シンジくんだって、「あれ、あのベリーショートの人ってほくろの位置から察するに多分リツコさんだよな、あの髪型どうしたんだろう、イメチェンかな? それにしてはザックリいきすぎだよな、きっと深い事情があるのかもしれないし今は黙っておこう」ぐらいの気は使ってたよ。14歳の少年が14年間浦島太郎状態なんだから、もうちょっと色々説明してやろうよ。それなのに、「あんたエバー乗らなくていいわー」のあとほぼノー説明ですよ。式波さん(眼帯)も28歳なんだから、ガキシンジとか見下してないで何かこう大人の余裕とかそういう感じのあれをですね。誰一人人間的成長してないよ! 14年間何やってたの、この人達!

 あと、船がかっこよかったですね。あのまま月に行ってアークエヴァンゲリオンになるんじゃないかとワクワクしてました。クルーの人もグレンラガンっぽかったですよね。 

 で、そんなディスコミュニケーションの末、案の定ネルフ側にさらわれていくシンジ。そりゃ、目の前に綾波が来たら、そっちについて行くよ。けどこれって

「綾波はサルベージできなかったけど、ネルフは綾波のクローン作ったよ。だから、綾波がやってきてもシンジくんの知ってるレイとは別人だからついていったらダメだよ」

 の一言で解決できた問題じゃないですか。お前ら本当にさー、説明とかさー、いい加減なー。

 で、ネルフ戻ったけど、綾波はモグ波並に無感情だし、14年振りに会った親父はオプティックブラスト発射しそうな変なバイザーつけてるわで、酷く居心地が悪い。

 綾波さんはもうちょっとムチムチして、あの小屋の前で男子高校生が列を作っていたりすると、よりモグ波っぽさが増して良いと思います。

 そんなところで出会ったのがホモ。一緒にピアノを弾きたがるホモ。一言一句が全て性的な意味を含んでるようにしか見えないホモ。甘い言葉で弱ってる男の子のハートキャッチするホモ。けど他に会話が出来る人がいそうにない。

 しょうがないんで、ホモと一緒にピアノを弾いたり、ホモと一緒に星を見たり、ホモにウォークマンを直してもらったりと二人の絆が深まっていき、それによってシンジさんに貞操の危機が迫る! シンジさん大ピンチ! と思ったら、ここでこの14年間で何があったの? と真相に切り込むシンジさん。

 そうだよ、よく訊いてくれたシンジさん! 観客もそれが知りたかったんだよ! 流石シンジさんだ!

 で、カヲルくん曰く、「14年前のあれでサードインパクト起こって人類ほとんど死んじゃった」とかとんでもないこと言い出しやがってさぁ。えー、何かお前前回のラストでメルトダウン起こしそうになった初号機に冷却棒突っ込んでたじゃん、「今度こそ君を幸せにする」とか意味ありげなこと言ってたじゃん。それが何よー、結局サードインパクトかよー。と思ったら、それを聞いて「いや、そんなの僕の責任じゃないし」と急に現実逃避するシンジさん。

 戻ったああああああ、もうこいつはシンジさんじゃねえ、シンジくんだっ! あのふてくされ中学生のシンジくんが帰ってきたあああああああ!

 もう嫌な予感しかしない! この映画から嫌な予感しかしない! この映画は既に俺が期待していた破の続編という形式から大きく足を踏み外そうとしている!

 みたいなこと思ってたら将棋に誘ってきた冬月のお爺ちゃん。

 駒落ちのハンデをくれたり、それでも勝負が成立しないと見るや崩し将棋に路線変更しつつ、「お前の親父はろくなことしてないけど、お前のお母さんのために一生懸命なんだよ。あいつなりに色々思うところがあるんだよ」と凄くまともなアドバイス。

 これだよ! こういうのがエヴァに一番必要だったんだよ! こういうちゃんとした大人がいればシンジくんだって、ちゃんとやっていけたはずだったんだよ。

 ミサトさんたちもシンジくんを無視して戦闘準備しないで、ゲームでもやりながら「ほらシンジくん。14年前と違って今のマリカーにはキラーっていう凄い一発逆転のアイテムがあるのよ。あと話は変わるけど、お前のせいでサードインパクト起こって人類壊滅したよ」とか言えば、シンジくんだって小ゲロ吐いて半年間鬱で寝込むぐらいで済んだし、ヱヴァには乗ろうとは思わなかったはずだよ。艦長呼ばわりされて調子乗ってる場合じゃないよまったく! やっぱこのアニメまともな大人が少なすぎるよ!

 で、まともな大人がいないので、ホモの言うがままに地下深くまで槍を取りに行くシンジくんとホモ。

 そんで、槍を見たら、あれ、これ何か違うとか言って黙りこくるホモ。

 だからさー、お前がここで「あの槍は僕が聞いていた話とは別物のようだ。何かの罠かもしれない。ここは一端引き返そう」って言えば済んだじゃんよー、何で口に手を当てて黙ってんだよ! もっと積極的に止めろよ! 結局お前らがもっとコミュニケーション取らないのが全て悪いんじゃんよー。お前らのコミュニケーション不全で全てがブレイクダウンしてるよ。その後もホモがろくに行動をせず、わけのわからないことばかり呟いていたら、シンジくんが「何言ってるかわからないよ!」とか叫んだので、今回のシンジくんマジ観客の代弁者。

 その後色々ファンネル飛ばしたりの小競り合いがあって、腕が増えて槍引っこ抜いて、ホモの首が吹っ飛んで、式波(28)がトリプルセブンとかパチンコの確変っぽいことを言って、最後は、シンジ、式波(28)、レイの三人で「俺たちの戦いはこれからだ!」でつづく。そして次回予告であしゅら男爵と化したエヴァ二号機を見せられた後の観客席全体に漂う「何だったんだこれは……?」という雰囲気。

 破の時はなー、次回予告で観客どよめいて、自然と拍手が沸き起こったし、何か複数で来ていた人達が皆興奮しながら語り合っていたのに、今回はキツネにつままれた感じですよ。おかげで判断力を失ったまま店員の言われるがままに1500円の方のパンフレット買っちゃったけど、まだ開けてもいないよ!

 なんだろうね、まあ式波(28)とコネメガネさんはあしゅら男爵になったので、首が吹き飛んだホモの人はブロッケン伯爵ポジションとして、頭を抱えて再登場すればいいし、今回出番のなかった加持さんはゴーゴン大公ポジションとして、上半身を虎に移植すればいいんじゃないでしょうか……ってかさー、俺の見たかったやつじゃなかったのー、これー。

 前回の予告で

レイとシンジを取り込んだまま凍結されるエヴァ初号機。 廃棄される要塞都市。幽閉されるネルフ関係者。ドグマへと投下されるエヴァ6号機。胎動するエヴァ8号機とそのパイロット。ついに集う、運命を仕組まれた子供達。果たして、生きることを望む人々の物語は、どこへ続くのか。

 みたいなこと言ってたのに、全然違う話だったじゃんよー。ホモとピアノ弾いてただけじゃんかよー。

 予告で山に登ったり、マリが意味ありげにメガネ外してたり、綾波の後ろに小さい綾波がいたり、加持さんが銃を構えていたりしたのはどうしたんだよ!

 山は出ないわ、マリは後ろでヒメヒメ言いながら、ペダルをこいだり援護射撃したりするだけだし、綾波は六割モグ波だし、加持さん出てこないじゃん! 返せよ、俺が破を見て感じたワクワクを返せよー!

 とか叫んでいたら突然現れたおっさんが「若いの、お前さんは知らないかもしれないがな…………これこそが『エヴァ』ってやつなんだよ」とか訳知り顔で言ってきたので、殴りました。灰皿で。

 そんなわけで、明日の文学フリマにて、オ−41の消費社ってところで本を頒布してるはずなので皆さんよろしくお願いします。

 ヱヴァQ? 知らんよ、そんなものは。

2012-08-07

[]『ダークナイト ライジング』、あるいはテロルとヒーローの話

 『ダークナイト ライジング』を観て、色々何だかなあと思ったので、何か書こうと思った。当然ネタバレはある。


・うろ覚えなあらすじ

 正義の弁護士、ハーヴェイ・デントがバットマンにぶっ殺されたという既成事実が作られてから、早八年。ゴッサムシティはデントの名前を冠したデント法により、秩序が保たれていた。デント法がなんなのかはよくわからない。一方バットマンことブルース・ウェインは、デント殺害犯扱いされるわ、惚れてた女が殺されるわ、長年の戦いによるムーンサルトプレスの多用で膝がボロボロになるわと散々だったので隠居していた。金持ちのみに許されるアーリーリタイアだ。

 そんな平和なゴッサムに現れた今週の新悪人がベイン。ラーズ・アル・グールに関係しているらしいのだが、俺が『バットマン・ビギンズ』を見ていないので、わりとどうでもいい。

 で、そのベインがゴードン刑事を病院送りにするし、ブルースはブルースで、こそ泥女の猫娘、セリーナ・カイルに指紋つきのネックレスを奪われるわで、ゴッサムに危険が迫る。

「やばいわー、これは俺が何とかしないといけないわー」と奮起したブルースはバットマンとして、活動を再開。それを観た執事のアルフレッド、旦那様が無茶をしてはいけないと「普通に女捕まえて、ヨーロッパとかでまったり過ごしましょうよ」と説得するも、正義感に燃えるブルースはまったく聞き耳持たず。しょうがないので、アルフレッド「お前が八年前に惚れてた女いたじゃん、あいつ実はお前のこと大して好きじゃなかったらしいぞ」と衝撃のカミングアウト。「だから、あの女のことは忘れて、新しい女捕まえて大人しく暮らしなさいよ」と説得が続くのだが、どう考えてもそいつぁ逆効果だ。かくして、バットマンはすっごいつよくてかっこいいバイクや新型オスプレイに乗って、証券取引所を襲撃したベインを追いかけるも、逃げられてしまう。

 悪人にも逃げられ、しかも会社の業績は傾き気味。ブルースは憂さ晴らしに勝間和代に良く似た女を連れて、ゴッサムの地下で密かに建設していた核融合炉を自慢する。

「HAHAHA! どうだいこのクリーンエネルギーがあれば、大都市のエネルギー問題なんて二秒で解決だぜ!」

 個人で勝手に大都市の地下に核融合炉とか、『東京に原発を!』と言った広瀬隆でもドン引きなキチガイ沙汰だが、ガツンと言われた勝間はあっさりメロメロ。そのまま二人はベッドイン。久しぶりに女を抱いてご満悦のブルース。

 しかし、好事魔多し。ベインの証券取引所襲撃の真の目的は、セリーナに盗ませたブルースの指紋を利用することで、ブルースを破産させるというものだった。

 ベインの目論見通り、破産するわ、社内でリコールを突きつけられるわ、こんな時に一番頼りになるアルフレッドは不在だわともうボロボロ。

 しょうがないんで、バットマンとしてベインを捕まえるわーと敵のアジトに乗り込むも、相手はジョーカーと違ってガチムチ体系のベイン、殴り合いの末、バックブリーカーでフィニッシュされるという原作再現……八年間のブランクは大きかった。

 バットマンを倒したベインは、バットマンをインドのどこかにあるという刑務所っぽい穴倉に放置して、再びゴッサムへ。

 バットマン無き後のゴッサムで、ベインはもうやりたい放題。ゴッサムの全警官を下水道に閉じ込める、ブルースの会社が作ってた武器を奪う。さらにブルースの馬鹿が作った核融合炉を中性子爆弾に改造して、この街から誰か一人でも逃げる奴がいたら即爆破宣言。核を持ってる相手では国も軍隊を動かすわけにいかない。ゴッサムオワタ\(^o^)/

 そんな状況下、ブルースは背骨を折られた痛みに苦しんでいた。いくらバットマンがヒーローとはいえその正体は普通の人間だ。背骨を折られていたらどうしようもない、どうするブルース。外骨格か? やはり強化外骨格でリベンジか!? とワクワクしていたら、同房のおっさんがこれ背骨ずれてるだけだから治せるよ、とあっさり。背骨折らないなら、思わせぶりにバックブリーカーとかすんじゃねえよ! そんな俺の怒りとは無関係に、おっさんがブルースを縄で吊るして秘孔を突くという怪しげなカイロプラティックで三ヶ月経過。

 おっさんの甲斐甲斐しい介護によって背骨は完全に回復し、何故かボロボロの膝まで曲がるようになったブルース。あとは脱出するだけだ! だが、洞窟の出口は井戸の如く天井にぽっかり空いた巨大な穴のみ。いったいここの連中は食料や電気の供給どうしてるのだろう? そんな疑問が湧かないこともないが、それはともかく、ここから脱出するためには壁をよじ登らなければいけない。

 かくして命綱を装備して壁を登るブルース。それを観てよっぽど娯楽に飢えているのか「デシデシ! バサラバサラ!」と謎のコールを投げかける洞窟の住人。最後の大ジャンプに失敗し落ちるブルース。命綱に助けられるブルース。壁にリベンジを誓うため腕立て伏せをするブルース。それを観て「かつてあの壁を登った奴が一人だけいる。そいつはまだガキでなあ……」と重大な伏線っぽいことを語るおっさん。再び壁にチャレンジするブルース。「デシデシ! バサラバサラ!」と盛り上がる住人。やっぱり落ちるブルース。何がダメなんだと嘆くブルース。お前の心の問題だよと精神論を説くおっさん。さらに「命綱外してチャレンジしろ」ととんでもないアドバイスをするおっさん。それを真に受けて、ブルース命綱を外してのサードトライ。「デシデシ! バサラバサラ!」と盛り上がる住人。命綱を外して頂上付近の崖で、これまで二度失敗した大ジャンプに再度チャレンジするブルース! 見事成功! ブルースの脱出に住人も大喝采。観客も思わず「デシデシ! バサラバサラ!」

 やった! ブルース! これこそダークナイトライジングだ! こんなんでここまで盛り上がるんだから、海外版『SASUKE』の成功も間違い無しだ! だが、問題はこれからだ。果たしてビザもパスポートも所持金もカードも無い状態で、どうやってインドから完全に封鎖されたゴッサムへ帰還するのか。とりあえずインド大使館に行って事情を説明するのだろうか……と思ったらここらへん完全カットで、あっさりバカンス帰りみたいな面してゴッサムに戻ってくるブルース。適当だ! 流石朝から肉食ってる奴らの発想は違うな! 何はともあれ、洞窟の人達には散々世話になったのだから、当局に通報して助けてやってほしい。

 で、ゴッサムに舞い戻ったバットマン。帰ってきた仲間と再会し、どうにか核爆弾を取り戻さなきゃなあ、作戦練らなきゃなあと思っていたら、あれ元々爆弾用に作ってないから、もうしばらくすると容器が破損して、起爆スイッチ押さなくても自然に爆発するというとんでもない情報が。

 というわけでバットマンは大急ぎで、地下に閉じ込められた警官隊を解放し、三ヶ月監禁されていたはずなのに何故か大変元気な警官隊を引き連れ、ベインともっかい殴り合ってKOするも、実は勝間和代が黒幕ということが判明し、その後、ゴードンが大活躍したり、核爆弾搭載のトラクターにガンガンミサイルをぶち込むというアメリカ人らしい雑な戦法で、見事核爆弾を奪還。しかしタイマーを観たら残り時間はあと五分。容器がそろそろ持たないのでは? という話だったはずなのに、何でご丁寧にタイマーついてて、分刻みで起爆までの時間が把握できるんだよと思わないことも無いが、タイマーがついていたほうが盛り上がるのだから仕方あるまい。

 このままではゴッサムが消滅してしまうと、仲間達が絶望に沈む中、バットマンが新型オスプレイで核爆弾を湾岸まで運ぶという自己犠牲宣言。一見尊い発言にも思えるが、そもそも、核融合炉なんて造ったこいつが全ての元凶だしな! 単なるマッチポンプだ! 核爆弾さえ無ければベインなんて軍隊出して二秒で倒せたし!

 しかし、そんなバットマンの発言にほだされたのか、ゴードン刑事は「君こそヒーローだ。君のような偉大な男の正体をみんな知りたがるだろう」とのたまうと、バットマン、それを受けて「ヒーローはどこにでもいる。目の前の子どもの肩に上着をかけてやり、『世界は終わらないよ』と優しく励ましてあげる。そういう男こそが、ヒーローなんだ」という名台詞を炸裂。上映時間が162分もあって、途中どんなにグダグダになっても、最後にそれらしい名台詞をつけたせば、名作になるんだ!

 そして、ゴードンはそれを聞いて、遥か昔のことを思い出す。そう、バットマンが残した言葉は、かつて自分が強盗に両親を殺されたウェイン少年に投げかけた台詞。まさかバットマンの正体は…………。

 公開直後の感想で、本作はラスト付近に大きなサプライズがあると聞いていたが、これだったのか!

 まさかゴードンがバットマンの正体に気づいてなかったとは思いもしなかった! さすがノーラン、とんでもないサプライズだ!

 そして、バットマンが時間が無いってのに、お約束だからとキャットウーマンとキスを交わした後に、オスプレイで沖の安全っぽいところまで爆弾を運んだところで、爆弾がどっかーん。ラーイーヤーラライヨラ 空に見事なキノコの雲。

 で、それから、ある登場人物の本名がロビンだと明かされたり、死んだと思ったバットマンは実は脱出して生きていたんだよ、とちょっとしたエピローグをつけくわえて、ノーラン版バットマン三部作、これにて完結であります。

 ありがとうブルース・ウェイン! ありがとうダークナイト! 次回はJLAで会えたらいいね!


 

・感想

 色々思うところはある。特に脚本のツッコミどころは数多く、具体的にはこのエントリー参照

 とは言えど、細かい脚本の矛盾点を映像や音楽の力で塗りつぶせるのが優れた映画である。設定や展開に瑕疵があるサマーウォーズや本作が持ち上げられる一方、アマルフィがネタ映画扱いされてしまったのは、やはり映像の力の差なのかもしれない。

 『時をかける少女』だって、「あれ? その理論だったら無限にタイムリープできんじゃね?」と疑問に思っても、真琴が「行っけえええええ!」と叫んでジャンプした瞬間、奥華子の歌が流れて、あの映像を観せられたらもう名作と呼ぶしかないじゃない。そういうものだ。

 だから同じ理由で『ダークナイト ライジング』もそれなりに楽しく観られたし、名作と呼ぶ人が多いのも納得がいく。

 だが、俺がどうしても気に入らないのは『ダークナイト』の続編である本作が、テロの解決手段を単純なヒーローの活躍で片付けてしまったという点である。

 アメリカンコミックスで、9.11のテロ事件を扱ったものに"the Amazing Spider-Man #36"というものがある。

 本作で、グラウンドゼロの現場を訪れたスパイダーマンは次のような嘆きを見せる。

 僕は…何と言えばいい? 知る由もない。想像すらできない。

 それは狂人だけが思いつき…実行できること。旅客機を利用するなんて…。

 正常な世界は、狂人の前ではもろくも崩れ去る。

 僕たちは決して彼らの世界を理解することができない。

 

 このエピソードでは、こうした事態にも挫けることなく、不屈の意志と共により良い世界を目指す我々みんながヒーローなんだと言って締めた。

 ちなみにこのエピソードは邦訳もされて、新潮から出たムックに掲載されていたが、そのムックが今ではプレミア価格がついて約7000円。これだからアメコミは嫌なんだよ! 買うと高いし、買わないともっと高くなる!

アメコミ&ムービー・スーパーガイド (新潮ムック)

アメコミ&ムービー・スーパーガイド (新潮ムック)

 それはそれとして、スパイディのいうとおり、手段を選ばない突発的な暴力に対してはヒーローと言えど立ち向かうのは難しい。

 だからといって、ヒーローがテロには勝てない無力な存在であるということはない。

 全身タイツのスーパーヒーローたちはそれに見合った相応しい相手がいる。同じく全身タイツで身を包んだの超人や邪悪な科学者、地球を侵略にやってきた宇宙人その他色々。戦うべき相手には事欠かない。わざわざテロとの戦いを描く必要なんてないじゃないか。

 にもかかわらず、テロとの戦いにヒーローを持ち出そうとするならば、それ相応の覚悟が求められる。

 そして、その覚悟を見せた映画が『ダークナイト』であった。

 正常な世界を崩そうとする狂人に対して、バットマンは終始翻弄され続ける。

 それでも、バットマンはジョーカーを捕らえるため、最後にはゴッサム中の通信機器を盗聴するCIA的な手段を敢行する。それはヒーローとしての一線を越える行為であり、信頼する仲間のフォックスからも、「そのようなことをするなら私は会社から出て行きます」とまで言われるほどだ。そこにはテロリズムと戦うことの困難さが明確に描かれている。また、ただヒーローに焦点を当てるばかりでなく、船に爆弾が積まれたと知らされた乗客の姿を描く事で、テロと向かいあう市民の勇敢な姿までもを描いて見せた。

 今の時代にテロとの戦いを描くというのは、ここまでしなければならないのだ。

 余談ではあるが、『キングダム・カム』というDCユニバースのヒーロー総出演の番外編において、バットマンは街中に監視カメラを仕掛け、犯罪が発生するや否や警備ロボットが出動して犯罪者をとっ捕まえる超監視警察社会をゴッサム内に作り上げた! これでテロへの備えも万全だ! 凄いぞバットマン! 糞野郎だなバットマン!

 他にも『キングダム・カム』では、スーパーマンの恋人、ロイス・レーンが、ジョーカーに殺されるという事件が発生。そのジョーカーを若きヒーロー、マゴッグが殺害。「お前ヒーローが何やってんだよ!」と憤慨するスーパーマンだが、社会はマゴッグの判断を断然支持。世論に絶望したスーパーマンは、北極にある孤独の要塞に引き篭もるというエピソードが描かれている。「ヒーローが悪人をぶっ殺さないってのはどうなのよ?」という問題提起はコミックの中では結構前からそれなりにあったのよ。

 閑話休題。

 とにかく9.11の後の世界でテロリズムを扱う以上、悪いヴィランをヒーローがかっこよく倒しておしまいでは許されないのだ。『ダークナイト』はそのような事実を観客に伝えることに成功した作品だった…………と思ったら続編がこれだよ!

 『ダークナイト ライジング』の中盤で、ベインが講じた計画は完璧であった。

 バットマンは退場、警官隊は監禁、核爆弾を詰んだトラクターは街を走り続ける。

 ゴッサムは完全にベインの手によって支配された。

 にもかかわらず、レインボーマンばりに修行を積んだインド帰りのスーパーヒーロー・バットマンが帰ってくるや否や、彼らの計画は即座に崩壊する。

 面白メカに乗ったバットマンとキャットウーマン、生身の身体で大ハッスルのゴードン刑事によって、核爆弾はあっさり取り返される。

 起爆スイッチに、理不尽な時限装置と、わざわざ二重の爆破態勢を整えるのだから、衝撃を与えると爆発する程度のシステムだって準備できるだろ。街中で爆発させるのが目的ならあんなミサイルガンガンぶちこまれても頑丈な爆弾作ってんじゃねえよ。と思うのだが、それを言っても仕方あるまい。

 とにかく、核爆弾を持ったテロリストによる都市の支配という前作以上にスケールの大きな物語を書きながらも、核の恐怖に支配されたゴッサムの人々の姿や、絶望的な状況下でも諦めない市民の克己心みたいな部分には特に焦点が当てられず、スーパーヒーローたちによるハリウッド的大活躍であっさり事件は解決してしまう。それじゃ、がっかりしちゃうという話ではある。

 正義の味方VS悪者という単純な構図がダメなわけじゃない。

 相手が宇宙人や天才マッドサイエンティストならば、悪い敵をかっこいいヒーローが倒しました。めでたし、めでたし。で済ませても全然かまわない。むしろ望むところである。

 だが、そこでテロリズムという実在の題材を扱うならば話は別だ。

 コミックやスクリーンの中だけではなく、現実にも存在する脅威を相手に選んでしまった以上、そこで映し出される内容には現実社会においても通用する強度が求められるという話である。

 そして、それを実行してみせた『ダークナイト』の続編が、これじゃあ物足りないじゃないか。


 ・結論

 とまあ、ダラダラと書いてしまったが、映画の中でテロをどう描くべきかなんて問いに正解があるはずもなく、結局は好みの問題でしかない。

 エロゲーをやって、「なんで結婚式のシーンがあるのに、ウェディングドレス姿でヤってるシーンが無いんだよ! 式の直前での花嫁とのファックはお約束だろ馬鹿!」と高々と主張するようなもんであり、それに対する的確なアンサーは「貴様の性的嗜好など知るか」だろう。あるいは「文句があるならお前が作れ」

 お前がいま感じている感情は精神的疾患の一種であり、お前が持ってる問題意識はお前だけのものだから、解決したかったら自分の手でどうにかしろ。まったくだ。

 だからこそ、いい加減blogで管を巻いてばかりじゃいられないとも思うのだが、その一方で世界中に向けて野放図に好き勝手言えるのがblogという分野の素晴らしさなので、個人的な不満をぶちまけてみた。

 何はともあれ、もうすぐ公開される『アベンジャーズ』はこういう面倒くさいことを考えずに素直に楽しめそうなので、今から待ち遠しいです、まる。

2011-01-01

[]『キック・アス』、あるいはbloggerの話

 お正月はやっぱりヒーロー映画だよねっ。というわけで、仮面ライダーを観るか、ウルトラマンを観るか数分迷った末に『キック・アス』を観てきました。

 女にもモテず、友達は冴えない奴らばかりで、唯一の癒しはコミックカフェとマス掻きというどこにでもいる冴えない少年、デイブ。

 そんな彼はある日友人達にこう問いかける。

「みんなヒーローが好きなのに、なぜ人はヒーローにならないのか」

 彼の問いは友人達からは一笑に付されてしまうが、デイブを馬鹿にしちゃいけない。そう、幼き頃の僕らだってキカイダーやコンボイやタートルズといったスーパーヒーローに憧れたはずである。誰もが本当はヒーローになりたいんだ!

そして、不良からカツあげにあったときに周囲の人間から見て見ぬ振りをされたデイブはとうとう自分がヒーローになってやろうと決意する。

 そういうわけで、通販でだっさいウェットスーツとマスクを購入し、鏡の前でポーズを決めるなどして一通り満足した後、意気揚々と正義を実行しに街に出るデイブ。そこで車両荒らしをしようとしていたチンピラ二人を発見したデイブは、彼が考えたヒーロー「キック・アス」に変身し、警棒で立ち向かう。

 が、直後ナイフで腹を刺される。

 チンピラ相手にナイフでこんなにぐっさり腹を刺されたヒーローを見るのは、鳥人戦隊ジェットマンの最終回以来だよ、俺!!

 しかし、そのような困難にあいながらもデイブはヒーローであることを諦めなかった。スーパーパワーも持っていなければ、特別なトレーニングも積んでいないデイブは、体の神経がちょっと鈍いし、全身に金属が埋め込まれているので痛みに強いという、たけし軍団向きの体質だけを武器に自警活動に励むこととなる。

 その結果として、たびたび暴力に見舞われることとなるし、時には命も脅かされそうになるのだが、それでも彼はヒーローで居続けようとした。

 キック・アスは正義のヒーローなんだ!

 ところが、そんな不屈の精神を持つ彼もある日、ヒーロー活動をやめようと決意する。

彼女ができたのである。

 デイブはヒーローをやめようと決意したことに関してこのように語る(うろ覚え)。

「なぜみんなヒーローにならないのかわかった。人は愛する人ができた時に大切なものを守っていかなくてはならないんだ」

 なかなかいい感じの台詞じゃないか。こうしたモノローグが、デイブがガールフレンドと街で青姦を一発キメてる時に流れるのである。

 ファック・アス!! ふざけんなてめえ! コスプレして街をさまよってるより、女とオマンコしてる方が楽しくなっただけだろ! 死ね! 死んでしまえ!! そんなことを思ってたらデイブがその後、かなり酷い目にあってしまうので「あうあう、さっきのはジョークだよ、デイブ。死なないでおくれよ。けど、君が死んだら俺の隣に座ってるカップルが嫌な気分になってしまう劇場を去ることになるのでそれはそれで……」とか思った。

 さて、話は変わるが我々ブロガーも、ヒーローに似ているのではないだろうか。

 ヒーローとブロガー? 何を言ってるんだ? 正月だからっておとそとヘロインをキメすぎちまったのか?  HAHAHAHAHA!

などという声も聞こえてきそうだが、以下、共通点をあげていく。

その1 正体を秘密にしている。


貴方は職場や学校の友人知人、あるいは親兄弟のblogをどれほど知っているだろうか? これほど世間にはblogが溢れているのに、書いている人達の素性がほぼわからないのはどうして? オフでリアルにあって電話番号まで交換してるのに、本名を教えあわないのはなんでなの?

 このようにbloggerの正体は闇から闇である。

 もしかすると貴方に「ホットチョコレートとか冬にピッタリだよね(≧▽≦)ウマソウ」*1みたいなメールを送ってパンピーを装っている相手がキ印みたいなblogを年イチで更新しているかもしれないのだ。ピーター・パーカーことスパイダーマンが「貴方の親愛なる隣人」であったように、bloggerも貴方の隣にいるかもしれないのだ。

 もちろん、世の中には人に見せて恥ずかしくないblogを書いている人もいるけど、それは違うよね。それはblogを書いている一般の人であってbloggerではないよね。僕は認めないよ。


その2 何一つ実益を伴わない。

書いていて百害あって一利なしとは言わないまでも、blogをやっていて得るものは非常に少ない。そりゃアフィリエイトでウハウハだったり、面白い文章で人気者にでも慣れれば話は別ってものでしょうが、基本的に得るものはほぼ皆無と考えてよいだろう。おそらく自己満足の域を出ない*2。就職や仕事に利用することも出来なけりゃ、それを使って女にモテることもないし、糞の役にも立ちやしねえ。運が良ければ承認欲求がわずかに満たされるぐらいか。

 bloggerが書いた文章が、誰かを楽しませたり救ったりしている可能性は無きにしも無いが、基本書いている当人にとっては徒労であり、無駄である。緩い連帯が欲しけりゃ、mixiやtwitterでskypeで事足りる世の中。

 blogを書いてる時間を一生懸命TOEICの勉強に当ててりゃ、今頃700点ぐらいは取れていたはずである。数字が生々しくて憂鬱だな、おい。

 古今東西のヒーロー物には、主人公達がヒーローなんて辞めて一般人として生きようとするエピソードがたいてい挟まれている(たいてい思い直してヒーローを続けることになる)。

 こうして時に己の行いが空しくなるという点にて、ヒーローとbloggerは似通っているのだ。

その3 みんなの憧れである!

「bloggerに憧れ? ところでbloggerとカメムシの違いって何だっけ?」などと言わないで欲しい。あくまでも一握りの存在だが憧れとなるようなblogは存在する。

 正直に言えよ、お前らだって、自分の書いてるblogがたくさんブクマされて、ベストセラー作家になって、紅白に出場したり、AKB関連に関してドヤ顔でコメントしたいとか思ってるんだろ?

 「あんな糞みたいなblogがチヤホヤされて、俺のblogが全くブクマされないなんて、ブックマーカーは目と脳が腐ってる!」などと叫びつつも、本当は奥歯が砕けるぐらいに嫉妬してしまい、自分の記事に一つブクマがつくと、小躍りしたりするのがbloggerの悲しきSAGAであり、業である。

 それにブックマークを気にしないという人だって、アルファブロガーとなって業界人と懇意になったり、アフィリエイトで甘い蜜をすすったり、コミケのサークル入場券を融通してもらいたいとは一度ぐらい思ったりもしたはずだ。

 このようにbloggerとヒーローはみんなの憧れなんだ!

 上に挙げた以外にも、「人知れず悪と闘っている」、「子供たちの味方」などヒーローとブロガーの共通点は多数存在するが、それはともかくヒーローとブロガーがクリソツだということは私の意見には同意をいただけたことであろう。

 そういったわけで、『キック・アス』でデイブ少年がヒーローを辞めようとする姿が、怒りに打ち震える私の目には、私が好きだったブロガー達が辞めていく姿とダブっていったのだ。

 別にブロガーの人々が辞めたのは彼女が出来たという理由に限らない。だが仕事や学業、育児、あるいは日々の雑事といったブログよりも優先するべきことを見つけた結果、彼らは去っていく。基本的には暇を持て余した大学生がスタートさせ、就職して忙しくなった結果、フェイドアウトしていくというパターンが多かった気がする。

 去っていった彼らのブログは、はてなアンテナの下へ下へと海底のサンゴの欠片のように降り積もっていく。

 『キック・アス』で描かれるヒーローは、暇を持て余しているロクデナシか、小学生の娘に銃弾を打ち込むサイコパスか、あるいはその両方だ。

 bloggerもそうした連中と大差あるまい。

 誰もが不毛な更新を続け、そして、まともになった奴、あるいは野垂れ死んだ奴から順番に更新を止めていく。そういうものだ。

 ブログを書くのは、徒労で、無益で、不毛だ。

 しかし、だからこそ僕はあえて『キック・アス』のデイブの台詞を使ってこう言いたい。

「みんなブログが好きなはずなのに、なぜ人はブロガーにならないのか」

 そう、俺はブログが好きだし、多くのブロガーに敬意を抱いている。それは彼らがブクマを集めているとか、アフィリエイトで銭を稼いでいるとかそういった理由ではなく、彼らの書く文章が純粋に優れており、俺を惹きつけたからこそだ。

 そして、俺も彼らのような文章を書きたいと思っていたはずなのだ。時事ネタを拾って、小細工を散りばめてブクマを稼ぐようなブログをやりたかったはずではないのだ。

 『キック・アス』はそうした思いを俺に甦らせてくれた良い映画でした。暴力描写が多少キツい面はありますが、そうしたものに抵抗が無ければ是非お勧めです。

 そんなわけで、今年もよろしくどうぞ。


 あと今年の抱負は、さっさと彼女作ってこんな糞みたいなブログを二度と更新しないで、畳んぢまうことです。

*1:(C)死体性病

*2:人生における自己満足の重要性というものはとりあえず置いておく