超常現象 第1集 さまよえる魂の行方 〜心霊現象〜

2014/1/11 夜9時からNHKBSプレミアムで放送した番組。超常現象系の番組は思わず見てしまう。ナビゲーターは阿部寛。不気味な洋館で顔の見えない科学者と対談する形で物語は進んでいく。


昔日食は超常現象とされていた。今の人たちは日食を誰も不思議とは思わない。それは日食の起こるメカニズムが分かっているからだ。このように今の人には不思議なことでも、未来の人にとっては当然になるような事柄はたくさんある。いろんな物事がそうなるように科学者は日々研究を続けている。


幽霊現象の起こる場所。ドイツ、エーベルスブルクの森。子供を連れた母親がひき逃げにあった事件があったという森。無人の礼拝所から白い女の幽霊がでてくるといわれている。スピードをだした車が通ると、自分をひき殺した犯人を探すためにフロントガラスに白い女が現れるという。イギリス王妃の住まいだったクイーンズハウスでは、不思議な写真が撮られた。階段の手すりにすがりつく女の姿が見える。教会のベンチに現れた透き通った男性。女の人の腕をとり引きずり込むかのような影。
これらの超常現象を解き明かそうとする、心霊研究教会、通称SPRというものが存在する。設立は130年ほど前でイギリス首相やノーベル賞物理学者が11人も在籍していた。ユングフロイトキュリー夫人も在籍していた。SPRの主要な目的は多くのデータを集めることだった。これらのデータは未来の科学を形作ることに役立つと信じられている。
SPRのメンバーが今注目しているのは、世界で最も幽霊に憑りつかれた場所といわれるマーガム城だった。元々修道所があった場所に城は作られ、今は人が住んでいない。120年前にマーガム殺人事件があり、城の侵入した男により何人も射殺された。それ以来不思議な現象が起こり、それは特に大階段周りで起こっている。帽子をかぶっていた少年がいて、目を離した隙にその少年はいなくなった。そこにいくととてつもない冷気を感じた。首周りに息を吹きかけられたが周りには誰もいなかったなどがある。とても静かなのに奇妙な音が聞こえるというものもある。金属質な音が地面からではなく空気中を漂っている感じだという。確認するためにカメラを設置してみると、空中を漂う金属質な音が聞こえた。第2次世界大戦の最中にも現象が報告されている。マーガム城はアイゼンハワーも使った宿泊所だった。1943年の兵士の手記によると、寝る準備をしているとろうそくの明かりが突然消え、誰かが叫んだ。叫んだ方向を見ると不気味なオレンジの光が現れ、部屋を横断し消えていった。幽霊と思い、兵士たちは荷物をまとめて逃げ出した。
去年7月、それを解明する科学調査が行われた。SPRの科学者6名が集まった。最新鋭の測定機器が運び込まれた。風の動きによる温度変化も見逃さない高性能温度計、電磁波測定器、どんな小さな音も逃さない録音機。夜11時、調査が始まった。調査の基本は張り込みで、闇の中で変化が起こるのを待ち、少しでも変化が起こると記録する。すぐに変化は現れた。階段の下の方から笛の音が聞こえた。3人のメンバーが首から背筋にかけて冷気を感じたという。男の霊の報告のある大階段を登り切った場所からだった。冷気を感じたはずであったが室内温度を示す測定機に変化は見られず、風さえもなかったという。第2次世界大戦中に不気味な光を目撃したという部屋でも変化があった。その部屋で電磁波測定器が異常な数値を示していた。レーザー光線なみで8.3Vもある電磁波が観測された。周りの部屋も計測したが、他の部屋に異常はなかった。2日間の調査が行われ、たくさんのデータが得られた。
マーガム城のデータは世界中の研究所に送られた。大阪バイオ研究所では、謎の冷気を探る実験が行われた。手がかりはネズミを使った最新の実験だった。ネズミの体温をサーモグラフィーで測定する。通常は37.4度。そこにある薬品を染み込ませたシートを入れると、ネズミは突然動かなくなった。この時体温にも変化があり、体温は34度までさがった。より詳細に温度変化を見ると、背中部分が特にかわり、まさに背筋が凍るというものを表していた。シートに染み込ませた薬品にはヘビの臭いが染み込ませてあり、恐怖を感じて体温変化が起こってるようだった。体温を下げることでヘビから見つからないようにするというネズミの生存本能だった。マーガム城での体温変化もこれと同じではないかという。張り込みを続けた場所は幽霊が出ると言う場所で、少しの変化にも敏感になっていて、幽霊がでるという話で知らず知らずのうちに恐怖を感じて体温をさげていたのではないかと考えられていた。
これが別の心霊現象、男の幽霊も引き起こしていたのではないかという。人間にはなんでもない模様でも人の顔を見つけてしまう、パレイドリア効果というものがある。意味のないランダムの模様にも顔などの形があると思ってしまう脳の一種の錯覚だった。人間は顔の情報は重要で、人間の顔をいち早くとらえて敵か味方か判別し危機を回避する必要があった。これが幽霊の正体ではないかという。マーガム城の壁の染みにも人の横顔に見えるものがあった。階段の近くにはいたる場所に染みやレンガの凹凸があり幽霊と見誤った可能性がある。目撃証言の位置もそれらの場所に一致していて、壁に消えていったなどの証言も関連を感じさせた。マーガム城の不気味な雰囲気がパレイドリア効果を生み出していた可能性がある。
マーガム城の不気味なオレンジ色の光の正体は何か、部屋で計測された電磁波と関係があるのか。これまでにも有力な仮説があった。ドイツのある研究所では、光の球を人工で作る実験をしていた。部屋に電磁波を流すとプラズマが現れた。オレンジの光はプラズマと思われた。強い電磁波を発生させられるこの実験室でもプラズマは0.5秒しか保たなかった。人前を横断するような時間は存在できなかった。インドの他の研究所では、電磁波の数値に注目していた。電磁波と脳の関係に注目していた。うつ病の治療に使われるTMSでは電磁波は使われている。これを使用した患者はあるものが見えると言った。絵に描いてもらうとカラフルな光の球のようだった。電磁波により脳の視覚葉が刺激されると、光の幻覚を見ることがあり、電磁波が続く限り幻覚は続くようだった。マーガム城では同じ部屋にいてみんなが電磁波の影響を受けたので、みんなが同じような幻覚を見た可能性があった。
しかし、電気の通じていない部屋で電磁波が起こった原因や、空気中を漂う金属音の正体は分からないままだった。


死んだら肉体は滅びて、すべては存在しなかったように無に帰ると阿部寛は考えていたが、そうともいえないことがあった。その現象の1つに臨死体験があった。
去年3月、国際臨死学会が行われた。アメリカ国民の5%が臨死体験を経験しているらしい。3000以上の記録から医学では説明できないことがあるとわかった。研究結果では、宗教や年齢に関係なく、目の見えない人にも臨死体験は起こると分かった。
オランダのある女性は、出産時の大量出血で命で落としかけたが目を覚ますとトンネルにいた。あたたかくて幻想的でトンネルを抜けると、緑の草原に花が一面に咲いていた。そこでは12歳の時に亡くした父親が待っていて手を握ってくれた。別の人はある美しい別の世界、深い海の底のような感じだった。美しいその場所には兄がいて、水の中から引き揚げてくれて意識が戻った。別の人では15歳の夏に交通事故にあい膵臓を損傷し、死にかけた時に、真っ暗なトンネルの向こうに小さな光が見え、その光は小さな粒になり、世界は粒でできていると分かったらしい。共通するのは、暗いトンネルがありその先に明るい光があり、その先に見たこともない美しい景色、あたたかい、綺麗な音楽、もう会えない大切な人がいて、まるで天国のようだということだった。
アメリミシガン州の研究所では、臨死体験を科学で証明しようとしていた。死に瀕したネズミの脳の実験であることがわかった。心臓の停止したネズミで6カ所の脳の部分を計測していた。これまでは心臓が停止すると脳はすぐに止まるとされていた。しかし、心臓が停止し脳への酸素供給が失われたが、脳は活動を停止したわけではなく、逆に活発に動いている状況が30秒間の間続いた。脳の波長は酸素が止まったあとの方がより活発に動いていた。脳は生き残りをかけて必死に働いているようだった。
それを解くヒントはアメリカ軍のパイロットが受ける訓練にあった。パイロットには高速で飛ぶ飛行機の重力に耐える特別な訓練がある。高速で回転するゴンドラに乗せられたパイロット。時には地上の10倍前後の重力負荷がかかることもある。この時、酸素は下半身に集まり脳は酸素が足りないことになる。これはネズミの実験の状態に近い。この時パイロットはGロックという意識のない状態になる。このGロックの時の様子をパイロットから聞き取りが行われていた。まずは視覚がブラックアウトし、トンネルの中を歩き光の世界で安らかさを感じると言う。これは臨死体験と似ている。
臨死体験は視覚でみるものではなく、脳がみるものである。だから記憶などから大切な人がでてくることも説明できる。死後の世界はないと科学者は考えていた。しかし、これだけでは説明できない現象もある。
事故にあって泡を吹いている自分自身を上から見ているという現象。体脱体験という。臨死体験者の半数近くが体験するともいわれている。
ある男性は20年前に親族で集まるパーティで外に出たところ雷にうたれてしまった。体から抜け出たような意識があり、階段を登り部屋に戻り妻を見たと言う。妻は前かがみにあり子供に何かしていたという。妻もその時間には子供の顔にペイントしていたという。臨死体験をして以来頭の中に鳴り響いている音楽があり、それを再現するために今はピアノを買い作曲を勉強している。
スイスの研究所では、体脱体験を科学で説明しようとしていた。被験者はロボットアームが動く台の上に固定される。2メートル先に自分の背中の映像が見えるようにし、背中のロボットアームを操作すると、見ている背中が自分のものであると認識し自分が浮いているように感じるようになるという。体脱体験は脳の錯覚であり、通常は四肢がどこにあるかなどは脳がちゃんと認識しているが、脳でエラーが起こるとそれができなくなる。ただこの錯覚がなぜ臨死体験の時に起こるのかなどの謎も残っていた。


脳の研究がすすめばもっと多くのことを分かるようになるかもしれなかった。死という逃れられない恐怖から逃げる仕組みを脳が持っているかもしれない。脳科学だけでは解明できない不可思議な現象もある。幼い子供が前世の記憶を話す生まれ変わり現象だった。
生まれ変わりを話したという少女はお気に入りの木に登っていた。ピアノが得意でおしゃべり上手、小学校の成績も良かった。一家で出かけたパーティの帰りで、夜には彼女は眠そうだった。突然サマンサが「パパが死んだ」と叫びだした。3歳半の頃で本人は覚えていなかった。私が死んだとき大きな光に包まれたと自分の死んだときのことを話し始めた。
生まれ変わりとして2500件以上の事例が研究されていた。共通項は、生後2〜3歳で話し始め、6,7歳で話すことはなくなり、あとは普通に暮らすようになる。生まれ変わりを語る大体の子供は知能テストの結果が良いという共通点もあった。日本の少年の事例は地球儀を指差し、前世ではイギリスのエジンバラに住んでいたと言った。その少年は今は前世のことを話していた記憶は全くないらしい。少年が寝かしつけようとしたときにニンニクを剥きたいと言い出した。前世は料理屋の子供でやっていたのでやりたいと言ったらしい。イギリスの話をよくする理由を聞くと、お母さんに会いたいと泣き出した。その後、前世をさぐる旅としてエジンバラに4日間行ったが情報は何も得られなかった。しかし、子供は晴れ晴れした顔で帰ってきてそれ以来前世のことはあまり話さなくなったという。
この現象の説明として、子どもならではある記憶のメカニズムが関係あるという。100人の子供に対する実験が行われたことがあった。絶対にありえない嘘のことを話しかけると、最初は否定しているが、繰り返す何度も話しかけると、子供は徐々に認めるようになるという。そして、嘘の記憶を話すようになる。子供は2年間くらいは幼児期健忘というもので記憶をもてない。何度も同じ話を聞くとそれを経験したと思い込むようになる。親が子供にどんな話を読み聞かせたか、どんなテレビ番組を見せたのか覚えていない、しかし子供はそれらの記憶をつなぎ合わせて嘘の記憶をつくりだす。
しかし、それだけでは説明できない現象もある。前世の自分の写真と名前を特定したという少年もいた。ある夜、少年を寝かしつけていると、昔僕は別の人物だったと話し始めた。ハリウッドでダンサーをしていたと話した。家の住所や家の特徴など細かく話していて、母親が記録していた。本当に実在していた人物なのか、ハリウッドの写真を見せて母親は特定しようとした。白黒映画のエキストラのある人物を母親が指さすと、子供はやっと僕を見つけたねと喜んだと言う。その人物の調査をすると、1964年に死んだマーティ・マーティンという人物だった。ニューヨークで踊っていた、ハリウッドでタレント事務所を経営していたことも少年の話したことと一致していた。遺族に会い話を聞くと、家族しか知らないような情報も一致した。知り合いにファイブ上院議員がいたというもの、名前の似ているアイブス上院議員と知り合いだったことがわかった。これらの54もの項目が一致した。他にもこのような子供たちのいう前世が特定できたケースも35か国で報告されていた。


不可思議現象はたくさんあるが、今も科学者たちは必死に研究を続けている。
意識の科学と言う研究がつづけられている。ロジャー・ペンローズ博士、スチュアートハメロフ博士の研究。生まれ変わりや臨死体験として、意識は今発見されている物質よりも小さいものであるという説だった。心臓がとまると意識は体から拡散され、臨死体験のように体に生命が戻れば意識は帰ってくる。そのまま生命がとまれば意識は宇宙に散らばって、別の肉体に入ることもある。人間は宇宙を通して全てつながっている。


僕個人としては超常現象は怪しいと思っている。絶対にありえないというほどでもないが、やっぱり勘違いや錯覚が多いのだと思う。それこそこの番組で解明してくれたような科学的な説明がつくものの方が多いと思う。ただそれだけでは解明できないこともあるのだろうなとは思っている。科学的理由があるはずだと思っていたが、その理由が分からないことが多くて、この番組でそういう説明ができるのかと納得できる部分があり勉強になった。幽霊と体脱体験ではけっこう違う心霊現象と思ったのだけど、脳の錯覚や本能という人間の機能としてみると共通する部分もあるのだと分かった。ただ幽霊はいるいないの他に、本当に人の死んだものなのかなどいろいろ含めていて研究が大変だと思う。