10月に読んだ本

10月はフィクションとノンフィクションの分厚い本を読んで、あとはたまっている短編集をやっつけた。

無限のビィ (文芸書)

無限のビィ (文芸書)

新宿のBOOKOFFで見つけた4cmくらいある本。「教団X」より紙が薄くて字も小さい。まさに大長編。この作者は私が好きな人なんだよね。でもこの本は厚すぎるのが災いしてか書店でも見かけなかったし本の雑誌にも紹介されてなかったと思う。買うのをビビったが朱川湊人なら外れはないだろう読み始めたら大当たり。主人公は小学生。知恵遅れの弟がいる。そしてこの町には人間に憑依する異星人がいる。いったん憑依されると、異星人が抜けたあとも外界にいっさい反応しない植物状態になってしまう。異星人が取り憑いた新任の先生が少年のクラスの担任になった...厚い本なのだがサクサク読める。町を徐々に侵略する異星人が背景にあって、前景の物語は少年の弟への兄弟愛、クラスの友だちとの友情。ラストで知恵遅れの弟がマスターピースだったことがわかった後が泣ける展開。


これも厚かったがサクサク読めた。戦後の「ゴジラ」から始まって「進撃の巨人」までの日本サブカル史。だが、紙面の半分以上を平成の今の時点で振り返るからこそわかる、その時代その時代の政治と世相の解説に費やされていて、そこ部分も面白い。中学や高校では意図的に省かれる戦後史を興味深く読める本。サブカルに興味がない人にもお勧めできる。


誰かの家 (講談社ノベルス)

誰かの家 (講談社ノベルス)

ショートショートの実話怪談は数多くあるが、もう少しページ数がある、短編として一般的な長さになるとこの作者のように構成力と筆力がないと読者の興味を最後まで引きつけられないというお手本のような短編集。


暗黒女子

暗黒女子

良家の娘が通う女子校。文芸サークルの部長で誰もが憧れている少女が屋上から転落死した。数ヶ月後、文芸サークルの5人の少女が創作した作品の朗読会が開かれる。その作品では自分と自殺した少女の関係、そしてあれは自殺でなく殺人であったと犯人を告発する。告発する相手は5人がそれぞれ別の人、つまり全員が告発し、告発されている。恩田陸湊かなえの昔の作品によくあった、関係者の証言から物語の全貌がだんだん明らかになるパターンの小説。だが、ラストがいけない。内容はいいのだが、見せ方が良くない。こういう作品は上手に脚本を作ってドラマや映画にすると原作を超えるタイプ。


記事にしたので省略。ミステリーのアンソロジーやホラーのアンソロジーでは目立たないが、こういった文芸作品のアンソロジーだと作者の力量の違いが如実にわかってしまう、ある意味では残酷な企画だ。


しにんあそび (光文社文庫)

しにんあそび (光文社文庫)

怪談実話 FKB饗宴5 (竹書房ホラー文庫)

怪談実話 FKB饗宴5 (竹書房ホラー文庫)

内容は省略。寝る前に読んでいたホラー短編集。