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MaShの日記

2017-11-19

金融に未来はあるか

| 17:08

最近金融業界、特に職業としての金融が終わりに近いような論調の本が多いですが、本書もその一つです。しかし、本書が伝えたいのは、業種として間違った方向に進んできてしまったいる現状に対して、本筋の金融業として進むべきという点を論点としているところです。

本書の前半では現在の金融業界のデタラメぶりをこれでもかという程挙げ連ねて来ます。ちょっとウンザリもするのですが、正直その通りだとも思います。学生の頃、先進的で高度な金融に魅せられてこの業界に入ったのですが、実際はそんなものはなかったことに漸く気が付いた自分がいます。今だに日本は欧米の後追いばかりなのですが、そんな先進性のまやかしは2008年の金融危機で終わりと告げたのですよ。そして、その後構築された数々の規制は、まやかしを更に誤魔化すためのハリボテでしかありません。

本書では、その後進むべき道としてスチュアードシップなるものを挙げていますが、金融庁が積極的に進めているフィデューシャルデューティーに影響を与えているものです。私が所属する金融機関でもその耳慣れない条文が出来て、それが経営上最重要みたいになってきてますが、なんというか本書を読んでみると、ちょっと違うのではないかという気がします。

それは単に”顧客重視”的な単純な話ではないのです。顧客満足とも違うのです。もっと単純なのですが、そもそも目指している方向が違うのではない気がします。既存の組織、業務の上に継木して済むものではなく、根本的に改める必要があるのです。例えば、トレーディング業務などはなくして、資産運用会社ぐらいシンプルにその業務を専念する。運用だって、国債住宅ローンぐらいに絞ってしまえと。それだとこの低金利下、とてもやっていけないのは、地銀の苦境を見れば明らかなのですが。

そしてまぁ経営コンサル的な視点が追加されたのでしょうが、それでもメガなどはお題目唱えるだけで終わってしまいそうだと思うのは私だけでしょうか。

2017-11-18

逆襲される文明

| 17:12

文藝春秋の連載の書籍化です。今まで連載されてたことはなんとなく知っていましたが、読んだのは初めてでした。2013年頃からの話題が載ってますが、遠い昔のことのように思い出しながら読んでいました。ヨーロッパではギリシャ問題や移民問題、最近では英国のイグジットなどがありますが、本質的に何も解決しないまま過ぎているのではないかという気がしました。結果何かが変わったわけではないように思えるのです。

それにしても塩野先生はずっとイタリアに住まわれる訳ですが、全く日本人として芯が通って、それが抜けることがなく生きてこられたのですね。本書の写真を拝見しても凛として矍鑠としたお姿ですし、文章を読んでいても、古き良き文壇香りというか、とても上品で洒脱が効いていて、知性というものはこうやって形作られるのだと感じるのです。私なんぞはいくら本を読もうと、この域に達する気がしないです。

先生ももはや御年80歳になられて、今年年末に出るギリシャ人の物語で歴史物は最後にするとのこと。残念ではあるが、いい節目ですね。あともう少し、楽しみに待っています。

2017-11-05

江戸→TOYKO なりたちの教科書

| 06:43

学生の頃、よく読んだ都市計画の本では東京計画性のなさを嘆くものばかりでした。大体が欧米の計画性を賞賛していたものでしたが、本書を読めばそれが半ば、間違っていたということに気付くはずです。少なくても戦前、ちゃんと言えば江戸時代などはそれなりにきちんとした街並み計画に基づいて形作られてきていたのです。江戸の花は火事とけんかと言われたぐらい火事が多かったので、防火用の空地帯の設置など、権力がある幕府だけに強制力を持って実施されてますね。

なので現在の計画性の感じない雑然とした街並みを見れば憤慨もするのですが、それは特に戦後、私有地の概念が蔓延りだしてから土地が投機の手段となってから発生したものだと思われるのです。江戸時代は外れだった東京の西側エリアなどは基本的に戦後開発されているので、計画もなしに発展してしまったため、ごちゃごちゃしたエリアばかり残ってしまったのだと考えられます。

本書では地図が多用されていて、時代の移り変わりでどのように変化があったのかもわかりやすく示されていて、とても興味深いです。この地図だけ見てても飽きないです。読んでいるとわかりますが、東京で大規模開発が行われている土地は基本的に大名屋敷に発するところが多いです。そんな江戸時代からの文脈として、街の歴史がわかると、その雰囲気がどこから醸し出されてきているのかまで想像が及んで楽しいですね。

2017-11-04

水を石油に変える人

| 19:10

戦前、戦時中と水を油に変えるとネタにした詐欺師の話です。副題を見ると、山本五十六がなんかやらかしたようにも思えますが実際そういうことではなくて、単に本書の興味を引くための副題ですね。本書を読んでみると懐が広いというか、なんでもやらしてみようというところだったのでしょう。

それにしても、本書を読むまでこんな詐欺師紛いのことが大手を振って闊歩していたというのが、興味深いところです。人造石油はまだしも科学品を味付け程度に水に加えただけで石油になるなど、化学を少しでも齧ったことがある現代の人間であればあり得ないと考えるでしょう。それが許容されるところが、なんとも時代性というのか、大らかな感じさえ致します。

筆者はこの一事件を元に広範囲な資料収集をして本書を記しているというのが、とてもよくわかりますね。特に光が当たることもないのかもしれませんが、こんな形で本を一冊著すことが出来るというのも素敵なことだなと思えました。

2017-10-14

かくて行動経済学は生まれり

| 09:17

書名よりも筆者の名前が大きく表示されている本は初めてかもしれません。初めは何の本かと思いましたが、やはりマイケル ルイスの新作だと思って手に取ってしまいました。中身はタイトルの通り、行動経済学がどのように生まれたかです。ちょうど今年のノーベル経済学賞も本書にも登場するリチャード セイラーが受賞しましたが、行動経済学も今後更なる盛り上がりが予想されるところです。

本書は行動経済学がどのように生まれたかという話なのですが、本書を読み進めていけば、それはダニエル カーネマンとエイモス トヴェルスキーという二人のイスラエル人の物語であることに気付くのです。ホロコーストや数回の中東戦争に揉まれて生き抜いてきた二人がなぜ、どのように行動経済学に着想したのか。それはもともと経済学にフォーカスした話ではなく、心理学の応用範囲の中の一つとしての経済学でしたが、それが見事に花開いたということなんですね。

読んでいると、マイケルルイスの著作にしては珍しく中だるみした時もありましたが、後半の追い込みは素晴らしく、最後はあっという間に読み終えてしまいました。この二人がどのような関係を築きながら、研究を進め、終えていくのか、最後のノーベル賞のくだりは、さすが読ませるなぁと思わざるを得ません。