ギリシャ人の物語Ⅱ 民主制の成熟と崩壊

ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊

ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊

今我々の政治は民主主義と呼ばれていますが、その元はこのギリシャ時代にあるわけです。それを踏まえた上で、本書を読むと民主主義の良いことも悪いことも、やはり全てこのギリシャ時代に顕れていることに改めて気付かされるわけです。もうこれは人間の性であり、何千年経ていようが変わらない、はっきり言えば人間の愚かさというものがここにあるのです。アテネの繁栄とはどこにあるか、そしてなぜ崩壊へ至ったのか、賢者は歴史に学ぶとありますが、まさに我々は正しい教科書をこの時代に求めることが出来るのです。

特に民主主義が衆愚政治に陥る後半部分が特に刺さります。大国として確立させたペリクレス亡き以降、転がるように転落していった顛末はこれほどまでにも愚かな策を続けられるのかという典型です。そこに出てくるのが扇動家です。民衆の不安を煽り、支持を集める。好戦的で常に批判ばかりしている。そう、正にこのタイミングでかの国の大統領を彷彿とさせるのです。先祖代々の貴族ではなく、ビジネスで財を成したというのも通じるものがあります。

古代の英知が生み出された時代として、今でも崇められているギリシャアテネは実質50年しかその繁栄時代を過ごすことは出来なかったというのは驚きでした。そして、その半分の期間で転がるように失政を繰り返していくのです。選ばれたリーダーのせいなのか、選んだ民衆のせいなのか、民主主義の元祖はここに大きな課題を提起しながら消え去っていくのです。