鞭打苦行のThrasher

翻訳者/ライター/最底辺労働者、待兼音二郎のブログであります

縦スクロール型Webマンガ「comico」の紹介記事がダイヤモンド・オンラインに掲載されました

 紙の漫画の醍醐味は見開きのレイアウトです。ページをめくった先にまるまる1ページから2ページまでを使ったコマをバーンと差しはさむことで読者の視線を誘引できました。
 松本零士の戦場マンガシリーズ作品「音速雷撃隊」に出てくる桜花による米空母撃沈のシーン(非史実)がそのよい例です。ちなみにまったく余談ですが、艦長のセリフ「おれたちもきちがいか……敵も味方も、みんちきちがいだ……」というセリフは、差別用語恐怖症の現代のメディアでは不可能な表現でしょうね。

 スマホでマンガを読む場合、そのダイナミックさが大いに損なわれてしまいます。iPadくらいの画面サイズがあれば見開きでも読めますが、たかだか5〜6インチのスマホでは見開き表示は可能でも、文字が細かくなりすぎて読めないので、実質的には1ページずつの表示で読み進むしかありません。

 それが読書体験を貧弱なものにし、結果として電子コミックの普及を阻害していた可能性もあります。そんなところにこの夏、「スマホでマンガは読みにくい! だから(中略)タテ読み、タダ読み」という号令一下、ももいろクローバーZの5人がマンガのページを一刀両断、スマホの画面にはめ込んで白黒からカラーに彩色するというCMがテレビでしきりに流れました。

 見開きレイアウトは、冊子本という媒体向けに最適化された表現手法です。しかし時代を遠くさかのぼれば巻物が主流だった時代があり、そして今、スマホの画面がメディア閲覧の窓口になっています。
 スマホという媒体にマンガの表現を最適化する。その発想に興味を抱いてNHN Playart社に取材し、記事化しました。

 縦スクロール型というマンガ手法の源流は、韓国のWetoonにあると言われています。90年代末、通貨危機とインターネットの急速な普及によって韓国漫画界は壊滅的打撃を受けました。漫画誌が次々に廃刊になり、プロ作家が発表の場を失ったのです。
 そこに現れたのが、Webサイトに自作漫画を発表する人々でした。Webで読むのだから、ページをめくるという横方向の動きよりも、縦方向のスクロールで展開する。紙の常識に縛られた頭からは出てこない新発想が大いに受け、2003年頃からWebtoonはポータルサイトの看板メニューになり、その人気はやがてアメリカにも波及しました。
 その優れた発想に学び、スマホ向けに最適化したのがcomicoです。
 壊滅的打撃にさらされたことでゼロから再出発できた韓国と、過去の成功体験に引きずられて変わることのできない日本。そんなことを強く感じさせられました。

 ところで原稿では画像五点を使っていたのですが、掲載スペースの制約などがあり、記事に載ったのは二点のみです。取材先のNHN Playartさんにはわざわざご提供いただきながら、日の目を見ない画像が多くなってしまい、申し訳のない気持ちで一杯です。また、文章も収めきれなかったものが多く、ライターとしての未熟さを痛感しております。

 しかし、comicoの実際の画面を記事に載せられたのはよかったです。縦スクロール型マンガがどういうものなのか、ぜひその画像をご覧いただきたく思います。スクリーンショット画像をここに載せますので、よろしくお願いいたします。

”タテ読み”で500万DLを達成! 固定概念を捨ててヒットしたスマホマンガ「comico」