鞭打苦行のThrasher

翻訳者/ライター/最底辺労働者、待兼音二郎のブログであります

戦鎚傭兵団の中世“非”幻想事典 第五十回「魔法の巻物と呪文書の原型──中世の写本」が、Role&Roll Vol.175に掲載されました

 西洋中世の社会史を紹介する連載の最新回が、岡和田晃さんの筆でR&R最新号に掲載されました。

 今回のテーマは羊皮紙を用いた中世の写本です。写本がいかに大変な作業でありその成果物の価値がどれほど高かったかや、羊皮紙の長期保存性、今なお保たれているきれいな発色などについての記述が、岡和田さんらしくリーダブルな流れのなかに驚くような情報がぎゅっと詰め込まれた筆致で綴られています。

 そして今回、とりわけ特筆に値するのは見田航介さんのイラストのすばらしさです。一般的な挿絵に期待されるのは、読者の目を引くのとともに固い記述の息抜きになる箸休めのような効果なのだと思いますが、この連載の場合はイラストコーナーの面積も大きく、本文で語りきれなかった情報を補足するという役割も担うことになっています。文字情報が多くなればごちゃごちゃして絵としてのインパクトが減少してしまうのは当然のことなのですが、そこを見田さんは毎回うまく処理してインパクトを保ってくださっています。とくに今回の彩色写本の絵の部分は本当にすばらしく、ぜひ本誌でご覧いただきたいものであります。

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Role&Roll Vol.175

Role&Roll Vol.175

 

 

エクリプス・フェイズ入門シナリオ「七惑星」の聖書が、Role&Roll Vol.175に掲載されました

 R&R最新号のエクリプス・フェイズ記事は朱鷺田祐介さんに筆による表題のシナリオです。

 岡和田晃さんによる前号のシナリオ「クローズド・ハビタットの囚人」は1967年のSFテレビシリーズ『プリズナーNo.6』をイメージ・ソースにした脱出ものの大傑作でしたが、今号のシナリオもいかにも朱鷺田さんらしくスケールの大きい設定がコンパクトな展開にうまく織り込まれていて、非常に小気味よい作品です。

 最後の審判の時が間もなくやってくるという終末論カルト「輝く聖者の教会」。Role&Roll Vol.144の「スカイアーク・クライシス」にも登場した組織がまた大暴れします。

 七つの聖書が一箇所に揃うときに最後の審判が行われるというわかりやすさとゲーム性。また、教団向けの独自Rep(評判)値の設定というあたりにも面白さのあるシナリオです。

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Role&Roll Vol.175

Role&Roll Vol.175

 

 

『マンハッタンは「極細」高層ビル時代へ』ほか翻訳記事一本が、GQ Japan 2019年5月号に掲載されました

 GQ Japan最新号の特集は『僕らは「デニム探偵団」』で、表紙は草彅剛さん。草薙さんとヴィンテージジーンズにまつわるカバーストーリーもあります。

 その一方で沖縄県知事選から辺野古県民投票までを追ったジャーナリストによる硬派な記事もあり、硬軟の幅の広さがこの雑誌の魅力です。

 

 自分はニューヨークに次々に建てられている超スレンダー高層ビルについての翻訳記事を担当しました「スレンダー度」というのはれっきとした建設用語で、建物の幅と高さの比率を意味します。9-11テロで倒壊したワールドトレードセンターのスレンダー度は1:7でしたが、1:24という驚きの細さの超高層ビルが建設されているところです。電信柱が1:30くらいといいますから、極限に近い細さと言えそうですね。

 この記事の見開き写真を添付します。見開きフルカラーの“画面”の大きさと、パラパラめくりで意外な記事に目が留まるという偶然の出会いは紙メディアの雑誌が今なお保持するデジタル媒体に対する強みであり、こういった記事こそが雑誌の顔たりうると考えています。

 

 もう一本、フィリップ・コルバートというポップアーティスト紹介記事の翻訳も担当しました。

 

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GQ JAPAN (ジーキュージャパン) 2019年05月号

GQ JAPAN (ジーキュージャパン) 2019年05月号

 

 

エクリプス・フェイズ入門シナリオ「クローズド・ハビタットの囚人」が、Role&Roll Vol.174に掲載されました

 R&R最新号のエクリプス・フェイズ記事は岡和田晃さんの筆による表題のシナリオです。

 今回は、不可解な「街」からの脱出もの。コンパクトにまとまった中に緊迫感が充満しており、最近のシナリオの中でもピカイチの傑作ではないかと思っております。

 イメージ・ソースは、イギリスで制作された1967~68年のテレビシリーズ『プリズナーNo.6』。元ネタのテイストが巧みに落とし込まれたシナリオの好例で、岡和田さん作品では以前にも、チェス・ボクシングという競技を扱った「タイタンのゲーム・プレイヤーたち」(Role&Roll Vol.151掲載。元ネタはイアン・M・バンクスの『ゲーム・プレイヤー』)という傑作がありましたが、本作はそれを双璧をなす作品になるのではないかと思います。

 シナリオ作成に挑もうとする方々にはぜひ参考にしていただきたい一作です。

youtu.be

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Role&Roll Vol.174

Role&Roll Vol.174

 

 

"Eat to Live" by Brian M. Sammons および "Prix Fixe" by Andrew Penn Romineの翻訳が、「ナイトランド・クォータリー vol.16」に掲載されました

 季刊のホラー小説専門誌〈Nightland Quarterly〉、その最新号の特集は「化外の科学、悪魔の発明」です。

 わかりやすく言えば、マッドサイエンティストものの特集。自分は短篇小説2本の翻訳を担当しました。

 まず片方は、「ダイエットやめますか? それとも人間やめますか?」という現代ゾンビもの。ダイエット用ナノマシンの暴走がゾンビの蔓延を招いたという設定が非常に卓抜で、文明批評がにじむあたりも実に見事です。作者のブライアン・M・サモンズ氏は『クトゥルフ神話TRPG』のシナリオライターのひとりで、ゲームシナリオを破綻なくエキサイティングにこぢんまりとまとめるという訓練の繰り返しが小説創作にうまく生かされているのを感じます。

 ちなみに原題のEat to Liveというのは「食べるために生きるのではなく、生きるために食べなければならない」というソクラテスの発言とされる言葉を元にしたもので、なかなか意味深ではあるのですが、映画のB級ゾンビもの的な小説のテイストをうかがわせるタイトルのほうがよいと考え、「覚せい剤やめますか? それとも人間やめますか?」という1980年代の啓発CMのもじりにさせていただきました。

 

 もう一篇の「宇宙の片隅、天才シェフのフルコース」は、SF-TRPG『エクリプス・フェイズ』の小説アンソロジー『After the Fall』(2016年)に収録されている一篇です。

 23世紀とも言われるトランスヒューマン時代における禁断の美食は……という設定が魅力的です。細かな部分には世界設定との矛盾や粗も目につくのですが、それを補って余りある面白さがあります。

 他の皆さんの翻訳や評論もこれから読み込んで糧にさせていただきます。楽しみです!

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ナイトランド・クォータリーvol.16 化外の科学、悪魔の発明

ナイトランド・クォータリーvol.16 化外の科学、悪魔の発明

 

 

サウジアラビアの若き皇太子ムハンマド・ビン・サルマンについての翻訳記事、ほか一件がGQ Japan 2019年4月号に掲載されています

 サウジアラビアムハンマド皇太子はその若さとイケメンぶり、女性の運転免許取得を解禁するなどの改革手腕で注目され、期待されていました。

 しかしそこに起きたのが、2018年10月のジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏殺害事件です。殺害を命じた黒幕はムハンマド皇太子であると米CIAは結論づけ、その評判は地に墜ちました。

 もしや改革はうわべの顔だけで、ムハンマドは暴君として牙を剥く機会をうかがう怪物なのか?といったあたりの翻訳記事がGQ Japan最新号に掲載されています。

 

 もう一本、グッチを低迷から救い、劇的なV字回復を遂げさせたCEOマルコ・ビッザーリ氏インタビューの翻訳も掲載されています。

 彼の何よりの英断はそれまでほとんど無名だったアレッサンドロ・ミケーレをクリエイティブディレクターに起用したことですが、Geek Chic(ギーク可愛い)というまったくもって常識破りでオリジナリティに溢れるミケーレの世界観の表現にも意を尽くしました。

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GQ JAPAN (ジーキュージャパン) 2019年04月号

GQ JAPAN (ジーキュージャパン) 2019年04月号

 

 

戦鎚傭兵団の中世“非”幻想事典 第四十九回「燭台の灯のごとくに俗世を照らせ──東方の柱頭行者たち」が、Role&Roll Vol.173に掲載されています

西洋中世の社会史を紹介する連載の最新回が、自分の筆でR&R最新号に掲載されています。

 

今回のテーマは「柱頭行者」というマイナーなものですが、創作やTRPGのシナリオで一風変わった隠者を登場させたい場合の参考になるかと思います。ガンダルフ風ばかりでもアレですので。

 

イコンに描かれる柱頭行者がなんだかPezディスペンサーっぽくて可愛くて、そんな民芸品を登場させたくもなります。見田航介さんがイラストで的確に表現してくださいました。

 

また、エジプトやシリアなどのオリエントは初期キリスト教史においても重要な土地でして、修道院制度の創始にからんだ部分について、本文で書ききれなかったところを見田さんがイラストですばらしく補足してくださいました。

 

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Role&Roll Vol.173

Role&Roll Vol.173