季刊まちづくり27号

 季刊まちづくり27号(6月1日発売号)の校正を見た。
 今回は前号に引き続き都市計画改革の特集と、昨年末に亡くなられた北沢猛先生の追悼特集だ。
 巻頭は北川フラム・西村幸夫氏の対談。2人が最後に「これからは「食」と「農」」だと口を揃えて言うのには驚いた。
 実は僕たちもこれから立て続けに「食」と「農」の本を出していこうとしているところ。不安が少し減った感じ。乞うご期待。


 25号で紹介した国交省主導の都市計画法の改正作業は、政権交代で止まっている。建築基本法の議論が進んでいるらしいが、民主党の政策INDEXにあった都市計画法の抜本改正は姿・形が見えないと言う。
 もちろん、開発・成長を促進しようという現在の都市計画法が時代錯誤になっていて、まちづくりを阻害することも少なくないことは周知のことだ。地域主権だとか、コンクリートから人へというなら、都市計画法を含む土地利用関連法の抜本改正をさっさとやれ!と言いたい。
 特集には寄せられた論文のなかで、難解で読みにくいとはいえ興味深いのは浅見泰司先生の「動機適合的な計画システム」だった。
 これを私流に解釈すれば、計画者が理想を描いても市民の好みに反していれば実現しないし、現在の市民の評価が最大になるように計画しても、最適になるとは限らない。大事なのは、いかに市民が自ら欲する行動をすることが、理想の計画の実現につながるように仕組むか、ということだ。
 現在の計画は、市民の気持ち(動機)を顧みないことも多いし、そうでなければ市民の動機、たとえばゼニカネに任せっきり。仮にCO2は減らさなければいけないとか、町家はなるべく残したいという合意ができても、個々の場面では車を乗り回したいとか、でっかいビルを建てたいという気持ちが先行してしまう。これをどうするか?。
 浅見先生の主張は、1人1人の外部不経済を内部化しようというもの。たとえば敷地分割が所有者の利益になるとしても、その回りの地価を下げるのであれば、その分を負担してもらうようにする。敷地分割で1000万円儲けても、負担金が2000万だったら、それでも敷地分割をしたいという人は少なくなるだろうという論理だ。
 ただ、炭素税のように、ガソリンにどんと課税すればCO2は減るというような明確な関係が、敷地分割や敷地統合と周辺の環境の向上・劣化について言えるかどうかが問題。敷地分割がダメという人もいれば、統合がダメという人もいるし、そういう場所もある。
 浅見先生は地価のヘドニック分析を使っているが、地価自体が今の制度、たとえば敷地は大きい方が有利、あるいはその逆といった制度の影響下にあるので、制度がゆがんでいれば結果もゆがんでしまのではないだろうか。
 一方、いくら地価が上がっても、売る気がない人には税金が上がるだけでメリットはないので、「地価が上がるから良いでしょう」といった話は通じる場面が少ないという問題もある。
 都市計画がまちづくりに役立つようになるには課題が多そうだ。 

・続報
(椎原晶子さんインタビュー)http://d.hatena.ne.jp/MaedaYu/20100501