宗田好史氏セミナー『イタリア世界遺産物語』


 今度、宗田好史さんに『イタリア世界遺産物語』という演題でセミナーを引き受けていただいた。
 なぜ、いまさらイタリア世界遺産なのか?

イタリアで学んだ知恵を京都で生かす

 先日、宗田さんに書いていただいた四冊の本のPRビデオを撮りに伺った。


   『町家再生の論地〜創造的まちづくりへの方途』
   『中心市街地の創造力〜暮らしの変化をとらえた再生への道』
   『創造都市のための観光振興〜小さなビジネスを育てるまちづくり』
   『賑わいを呼ぶイタリアのまちづくり』


 この4冊のお話を聞いていくなかで、もっとも印象的だったのは、10年前、『賑わいを呼ぶイタリアのまちづくり』を書いていた時、そのさらに7年前から関わっていた京都のことを常に念頭において書かれたという点だった。「京都の町家はこうすべきだ、京都の老舗はこうすべきだ、新しい観光政策はこうあるべきだ、文化はこう捉えるべきだということを意識して」書かれたという。


 それから10年、京都の町は大きく変わり、この本に書いた一つ一つが実現できていると宗田さんは思っているという。「まさにもう一息というところです」とのことだ。

京都の経験は特殊か

 それがどうして可能になったのか。それをもっとも端的に書かれたのが『町家再生の論理』だ。


 町家にお住いの方はもちろん、お商売をしている人、観光客を含むいろんな方たちが、「21世紀の日本の暮らしはこうだ、それが歴史のある我が町にふさわしい未来だということを」発見しておられた。その1人1人の声を大切にしながら、町家保存の仕組みを組み上げていったのが、この10年の京都の取り組みだったという。


 そこにあるのは、難しい学問的な話でも、お金が儲かる、損するでもなく、生活のなかで歴史と素直に向き合っていた人々の重さであり深さだ。
 それは、1970年代以降にイタリアの人々が辿った道と重なるところがあるのではないか、と僕は思う。


 別にイタリアの真似をしたわけではないだろうが、宗田さんに言われるまでもなく、人々は文化を生き始めていたのではないか。


 中心市街地や観光についても、10年前に考えられていた多くのことが、京都や長浜、彦根などで動き出しているという。
 それを「京都だから、あるいは観光地だから僕の街には関係がない」と見ようとしない方もいるが、そうではない。もちろん起こっている事象、抱えている問題は街ごとに違い、また歩むべき道もそれぞれだが、そこで起こっている事の本質、たとえば、街の女性化やサービス化、そして人々の暮らし方の変化という点を、しっかり掴まえることが必要なのことは共通している。
 そのことを、この3冊を通して訴えたかったという。

次の課題は?

 たとえば京都市の基本計画にかかわっているが、若者グループからワーク・ライフ・バランスが提起されている。基本計画の議論で出てきたことに驚いたが、このようにこれから人々の価値観の変化が本格化するのではないか。


 そして、大きな問題を抱えている小さな街や膨大な田舎も、そういう大きな価値観の変化のなかで考えれば、新しい方向が見えてくるのではないか。


 スローフード、スローシティに象徴されるような、ゆったりとした本当の人生の豊かさという点では、イタリアは日本人の憧れの的だ。イタリア人が恋と歌と食事に生きているといったことは日本人がつくりあげた幻影だが、確かに生活の質という点でうらやましことが多い。
 まして、イタリアの小さな町や田舎の魅力には、多くの日本人が感動している。
 実際、自分で歩いてみると、ほんとにイタリアの小さな町は元気で、ワクワクするような楽しい町並みが広がっていて、お店やレストランで過ごしてもローマやフィレンツェのお店で過ごすのとは違った、質の高いサービスが提供されている。
 またイタリアの田舎、たとえばオルチャ渓谷で過ごす休日の、なんと幸せな事か。旅行者の笑顔にゆったりした体内時間が現れている。
 この秘密はもう一度丁寧に解き明かしていく必要がある。そして田舎再生の論理とでもいうものを語ってみたい、と言われた。


 ということで、今回、イタリアの小さな街、田舎の魅力を語ってもらうことになった。
 なにも世界遺産でなくても良いのだが、宗田先生の恩師である陣内先生が「イタリア 小さなまち」は使っておられるし、少し入口は広くしてみたい。
 日本では知られていなかったり、ある側面しか見られていない世界遺産がイタリアには一杯ある。世界遺産といってもイタリアでは世間遺産みたいなところだってあるんだ、そのぐらい遺産との長いお付き合いのなかで、生活文化として保存が生きていることを話してみようということになった。


 副題はなんと「人々が愛したスローなまちづくり」。もちろん基調は真面目、味わい深い。
 是非、ご参加ください。


○講演会の詳細ページ(2010.08.05/6時半より/京都)
http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1008mune/index.htm

○本へのリンク

中心市街地の創造力〜暮らしの変化をとらえた再生への道

町家再生の論地〜創造的まちづくりへの方途

創造都市のための観光振興〜小さなビジネスを育てるまちづくり

賑わいを呼ぶイタリアのまちづくり』(品切れ)