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都市計画・まちづくり・地域再生編集日誌 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2010-07-13

大西隆編著『広域計画と地域の持続可能性』〜その2〜

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 一昨日に続き、『広域計画と地域の持続可能性』から印象に残った話題を紹介したい。


活性化の前提が変わってきている

 3章「地域活性化と広域政策」で、瀬田さんは活性化が目ざすところが、「人口増加、発展、浮揚」から、「維持、持続可能」へ変わってきていると指摘している。

 その一例が改正まちづくり三法で、精緻な基本計画を義務づけることにより現実を見つめさせ、華々しくはないけれども、それなりの生活が営める将来の都市構造を見いださせようとしているものだという。

 そうか、活性化三法という言葉に惑わされていたのだと改めて気がづいた。

 瀬田さんによると、中活の基本計画の認定が2009年末で92計画に止まっているのは、計画策定上の種々の困難を乗り越えたとしても、現実を見れば見るほど活性化に値する目標を設定できなかったからではないか、という。

 そして優等生とされる富山の計画も、計画通り実現されても、十数年前の賑わいにも満たない歩行者数や乗降客数しか達成できない。むしろ「静かな活性化」と捉えるべきと主張している。


最適都市規模

 市町村合併定住自立圏をとりあげた5-2節で、大西さんは財政効率からみた最適都市規模を論じている。

 その結論は、「2万人以下程度の小規模自治体では効率が悪いということ程度」なのだそうだ。


ケーススタディ、日本と世界

 日本の事例としては「大都市圏の計画と課題」として三大都市圏の計画が紹介され、「市町村合併と定住自立圏」、三遠南信地域を例とした「県境を越えた地域の結びつき」「広域計画と地域ツーリズムの振興」が取り上げられている。

 たとえば2009年に決定された近畿圏広域地方計画では、「知と文化を誇り躍動する関西」を目ざし、「歴史・文化に誇りをもって本物を生み育む県域」といった七つの将来像が提示され、それを実現する戦略と、11の主要プロジェクトが書かれているという(p103)。

 紙幅が限られ十分な説明はないが、結局、主要プロジェクトを意義づけるための計画なのではないかという印象を受けた。

 それにたいして、三遠南信地域では、人の繋がりをつくるということに注力されているようであり、観光の話でも、すでにあるものをどう繋いでいくかというソフトの仕組みに焦点が当たっている。


 一方、海外の事例としてはイギリスフランスドイツカナダアメリカ韓国中国の例が取り上げられている。

 欧米の計画は、どれもきっちりしていて、包括的だ。また空間計画が、相当大きな位置を占めている。

 単純な話、本書の日本の事例には計画を説明する図面が一枚も出てこないのに、欧米の事例には、1枚以上の図面が必ず載せられていることからも、力点の違いは明らかだろう。


 このあたりは日本ではどうなっているのだろう?

 都道府県都市計画マスタープランが、欧米の広域計画のような役割を果たしているのだろうか?。それらの空間計画と人の繋がりを大切にする産業おこしのような話は、巧く繋がっているのだろうか。

 このあたりは専門家や現場の人には自明なことなのかもしれないが、今思えば、蛇足になっても付け加えていただいたほうが良かったかもしれない。


広域計画の立案手法

 第III部では、広域計画の立案手法が書かれている。

 わずか30ページほどなので、ほんとうに骨太なところが書かれているだけだが、それでも、人口減少といった現状を正確に把握したうえで、望ましい将来像への到達手段を描き出すことの困難さが想像できる。


 それゆえか「選択可能な政策手段を組み合わせて得られるアウトカムを予測し、到達しうる最善の将来像を探る」という通常のフォアキャスティングという方法だけではなく、「望ましい将来像から目標到達点を定め、それを実現する手段を柔軟に探る」バックキャスティングという方法も紹介されている。

 後者が行き過ぎると絵に描いた餅に終わる。


 この方法は『低炭素都市』でも紹介されていた。2050年に80%削減といった目標は、現状からの類推ではとても達成できない。だから目標をたてて、そこから必要な手段を割り出すという考え方が重要だと書かれていた。

 なるほどCO2削減のように「なせばなる」と頑張らなければならない目標もあるだろうが、地域の将来像のように人口に大きく依存する事柄で無理を言っても仕方がないと思う。

 やはり瀬田さんが言うように、よく言えば価値の転換、悪くいえば諦めが必要なのではないか。


 広域計画は、どうも日本は弱いという印象だが、仮にそうであっても今から欧米をなぞるようにキャッチアップすべきなのかどうかは別問題だ。

 三遠南信地域や広域観光で示されたような方向性に、むしろ日本オリジナルな可能性があるのかもしれない。

 とはいえ土地利用や空間計画をもう少ししっかりすることは必要だろう。

 そして、ようやく起こりつつある各地の地域おこしへの自律的な動きと空間計画を繋げていくような広域計画を一歩一歩実現して欲しい。

 そのためにの端緒に本書がなることを望む。


京都セミナー(2010.8.27)

広域計画と地域の持続可能性〜地域活性化の視点から〜

瀬田史彦・戸田敏行・福島茂 氏

http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1008koui/index.htm


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・大西隆編著『広域計画と地域の持続可能性 (東大まちづくり大学院シリーズ)


・大西隆、小林光編著『低炭素都市―これからのまちづくり (東大まちづくり大学院シリーズ)