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都市計画・まちづくり・地域再生編集日誌 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2010-07-20

久繁哲之介『地域再生の罠』に反論する(1)土建工学者って誰?


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 ツイッターでyami_kenさんに薦められて『地域再生の罠』を読んだ。

 主張には共感できるところもある本なのだが、まず敵をつくって一方的に叩くという姿勢には辟易する。


 その敵だが嘘っぱちの成功事例を喧伝し、無意味な箱物を乱造する土建工学者である。

 これは、一体誰のことなのだろうか。

 ひょっとして僕が出している本の著者こと? 当たらずとも遠からず?

 う〜ん。・・・・売られたケンカは買わなければ。


久繁さんの敵「土建工学者」は誰か?

 まず、人ごとのように書いているから、久繁さんが所属する民間都市開発推進機構都市研究センターは入っていないらしい。

 ここの所長は伊藤滋さんである。都市計画を代表する人の一人だが、入らないようだ。


 また民都機構のホームページを開けると、宮崎駅西口拠点施設整備事業などが紹介されている。しかし、確かに民都機構は学者じゃない。


 173ページから他分野の有識者が土建工学者をどう見ているかという紹介がある。

 ここで紹介されたいるのは建設・住宅・不動産業界担当だった証券アナリストである増田悦佐さん、『コミュニティを問い直す』等の著書がある広井良典さん。そして、竹井隆人さんや磯崎新さんである。


 竹井さんは、金融公庫で住宅再開発などのまちづくりを担当していた人で、また個人的にもスケルトン・インフィル型のマンション推進の旗を振っていた人だ。工学者ではないかもしれないが、お仲間である。


 磯崎さんは、学者ではないかもしれないが、発言力のある建築家で、京都にも、音が響かないと評判のコンサートホールをつくっている。


 こういう人が入らないと、残るのは誰なのだろうか?


仮想敵をつくって叩いても何も生まれない

 なお、竹井さんの京町家調査時の話で、専門家が「居住者には不便きわまりない生活をを強制」しているという批判は、事実無根だ。そういう言い方をする人が仮にいても、強制する力はない。


 だが、増田、広井、磯崎さんの言には正鵠を得ている点がある。やはり近代精神のもと、都市を機械のように計画し、設計し、制御できるという考えから出発した都市計画の悩みは深い。

 計画はしっかりしていても「街が味気ない物になっている」「不毛な手段しか持ち合わせていない」という批判を甘受せざるを得ないところがある。


 しかし広井さんをのぞき、立場に多少の違いはあれど、おなじ業界だ。

 都市計画や建築が抱える病は、こいつらはダメ、悪の権化、この人たちはエライ、文化が分かる、なんて単純な思考で解決できるほど甘くはない、と思う。


 今日は入り口でおわってしまった。

 明日からは、内容について議論してゆきたい。

(続く)

 

注:

 久繁さんが名指ししている本は少ない。


 松江については、鶴野礼子さんの『繁昌商店街の仕掛け人』(ダイヤモンド社)。だが鶴野さんはジャーナリストで、経済系の人だ。土建工学者とは言い難い。


 また中小企業庁の「がんばる商店街77選」は、基本的には中小企業庁の立場を表明したものだ。


 ただし事例検討小委員会の名簿には石原武政、大西隆、横森豊雄、藻谷浩介、森田博行(中小企業基盤整備機構)さんが載っている。

 このうち土建工学者と言えるのは大西さん。

 他は経済系の方々だ。


 岐阜を誉めたと叩きまくられている『住みよい街ベスト50』(心交社)は監修が広瀬盛行明星大学名誉教授。都市交通が専門の方のようだ。


 編著は高多清在元名桜大学、川村学園女子大学教授。『みそ汁にハンバーガー』などを書いたジャーナリスト出身の方。もう1人は単行本、社史、学校史を得意とするフリーライターの中村炳哲さん。


 買う気はしないが、これが久繁さんがいう「複数の土建工学者が著した」(p144)と言うほど、土建工学者を代表する本なのだろうか。

続く

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久繁哲之介『地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか? (ちくま新書)