『村上春樹と小説の現在』  (日本近代文学会関西支部編、和泉書院)

村上春樹と小説の現在

村上春樹と小説の現在

 

掲載論文:「「羊男」の描写と「歴史」の現前について」(128-139p)
 
村上春樹羊をめぐる冒険』(1982)に登場する「羊男」を考察した。「羊男」の造型には複数の海外映画・小説等からの影響が見られ、また「戦争」の影が見え隠れするキャラクターでもある。村上春樹は「戦争・暴力」を描く際、海外サブカルチャーの素材や造型を多用する傾向にあるが、その一端を「羊男」を中心に考察した。
 
下記は和泉書院の紹介ページ(http://bit.ly/iiHtCf)からの引用です。

 
村上春樹から〈小説の現在〉の在処を探る。―いま、村上春樹ほど「小説」を書くことに意識的な作家はいない。
 『1Q84』ブームに見られるような、社会現象化した春樹の仕事を、「記憶」「拠点」「レスポンシビリティ」の観点から顕わにする。デタッチメントからコミットメントへ、「記憶」と「歴史」が接合されるとき、春樹テクストはそこにどう向き合うのか? 境界を超えて活躍する春樹は、グローバリズムに対してどのようなポジションを取り、どこを「拠点」とするのか? 応答責任を負うべき春樹の読者とは、「誰」なのか? 「大きな物語」が衰退し「小さな物語」の乱立する現在、〈小説〉の可能性はあるのか?
 シンポジウムでは読者の欲望と村上春樹の「正しさ」について、4人のパネリストが縦横に語る。13人の論考がそれらの議論に応答する。現在における村上春樹の位置と政治性を問い、「文学」の果たすべき役割を明らかにする。巻末に村上春樹出版年譜を付載。
 
第I部 シンポジウム「村上春樹と小説の現在―記憶・拠点・レスポンシビリティ」
・報告(1) ポストモダン・ローカリティ―村上春樹の「開かれた焦点」とその主題化
      高木彬
・報告(2) 村上春樹は世界文学か日本文学か―近代化過程と文学の表現をめぐって
      中川成美
・報告(3) 「正しさ」の村上春樹論的転回  石原千秋
・報告(4) ピンポンと弑逆。小説について考えるときに読者が考えること  千野帽子
・全体討議 (パネリスト)高木彬・中川成美石原千秋千野帽子 
       (司会)飯田祐子黒田大河
  
第II部 村上春樹から〈小説の現在〉を考える
村上春樹ポピュリズム、その不確かな壁  清水良典
村上春樹と〈小説の現在〉―やがて〈過去〉に繰り込まれる〈現在〉を悼んで―  金子明雄
村上春樹の「王殺し」  佐藤秀明
・記憶の物語/時間のレトリック―村上春樹の1Q80年代―  日高佳紀
・「羊男」の描写と「歴史」の現前について
  ―『羊をめぐる冒険』と海外小説・映画の関係から―  青木亮人
・変容するテクスト/変容する書き手―『回転木馬のデッド・ヒート』をめぐって―  安田孝
村上春樹「沈黙」論―学校(システム)と個人をめぐる「小説の現在」―  木村功
・告白する彼女たち―『ノルウェイの森』の中で―  趙柱喜
・エロティックな通俗小説から格調の高いベストセラーへ
  ―中国大陸における「村上春樹」というブランドの生成過程―  孫軍悦
・『海辺のカフカ』と九・一一以後の想像力  深津謙一郎
メタフィクションとしての『1Q84』―ねじれた「記憶」と「物語」―  黒田大河
・牛河という「子供」―『1Q84』のもう一つの物語―  飯田祐子
・『1Q84』論―村上春樹のゆくえ―  平野芳信
 
村上春樹現象とは―読者は何を求めて読むのか(あとがきにかえて)
  日本近代文学会関西支部長 明里千章
村上春樹出版年譜 作成 明里千章