黄色いくちばし

「特定の土地に縛られているようでは、まだ巣立ちのできない、黄色いくちばしの雛鳥のようなものだ。あなたはいつまで雛鳥でいるつもりなのか?」
東京で穀潰し生活をしていた頃、ある人に言われた。なんとかという文化人類学者の言葉らしい。
自己の生まれ持ったアイデンティティでしか物事を捉えられない人は未熟者だというのが本来の意味。ただ「ある人」が私に言ったのは、「故郷に帰りたいとかグズグズ言ってないで、状況に応じてどこででも生きていく覚悟を持ちなよ、じゃなきゃ未熟者だ」という意味だった。
あれから5年以上経つ。今だったらその人に言うだろう「一つの場所で生きていくことは、状況に応じて生きていく場所を選ぶのと同じくらい覚悟の要る事だ」と。

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