地面の下

   LaurelinのWikipedia地球科学ノート 〆(。。 )

   メモ以上本文未満。日付はたぶん、その項目を書き始めた日です。



2006 | 06 |
2009 | 06 |

2009-06-13

内容的にwikiのほうが適しているので移行します。

移行中は一時的に消滅しております。ご了承ください。

但し下の1記事のみはWikipediaから参照しているため残しておきます。

コメント・トラバは荒らしが出たため無効にしてあります。

ご用のある方は現行ダイアリーにコメントください。

2006-06-12 カルデラの分類

アーサー・ホームズ「一般地質学」p.225-226の記述について

いま手元にあるのが上田ほか訳の日本語初版(1983)なのですが、原書はもっと古いですから、要するに書いてある内容が古いんです(加えて訳があまり上手くないと思われます)。カルデラの内部構造や形成過程がほとんどわかっていなかった時代の記載と言えるもので、要点は、

  • カルデラができる前には巨大な成層火山があったことが前提となっている。
  • カルデラの形成機構として、陥没ではなく「大爆発で吹き飛んで穴があいた」という古い説を引きずっている。両ページにまたがっている文はそれを否定しようとして、元の成層火山から容積がどれだけ減ったかを計算し、その減った原因を考察している。
  • 「コードロン」は「コールドロン」の誤植。

この当時(ドリス・レイノルズによる改訂当時、かもしれない)としては、カルデラの成因が環状割目からの噴火とその内側の陥没、という考え方は最新のものであったと思われます。カルデラの内部構造が明らかになったのは比較的最近のことで、地熱開発などのためのボーリング調査が多数行われた結果です。それは「一般地質学」出版より後のことでしょう。

「じょうご型」について

実は「じょうご型」が本当にじょうご型かどうかは確認されていないと言っていいでしょう。こうした分類の基礎となっているのが月刊地球・通巻44号「カルデラ」(1983)、特にその冒頭の荒牧重雄「概説:カルデラ」です。カルデラの構造を云々する時は必ず引用されます。ここになかなか良い文章があるので引用します。

 火山学の教科書には、これまでさまざまなカルデラの分類法が示されてきた。特にWilliamsの1941年の論文が有名であり、古典的に重要である。しかしその後Williams自身がその分類法を2度ほど改変したが、残念ながら改変するたびに分類示法が不明瞭となり難解になり複雑化し、列挙的になっている。しかし今のところ、もっと良い分類法が他の研究者によって発表されているようにもみえない。細かい解説はすでに印刷された論文にゆずるが、とりもなおさず、カルデラの成因や地下構造に関する認識の混乱状態を反映しているものと考えられる。

カルデラの分類が混乱しつづけているということがよくわかりますね。現在も荒牧先生がこの文章を書かれた時からそれほど劇的な進展があったわけではなく、カルデラの分類がすっきりしたとは言えません。「バイアス型」「キラウエア型」「濁川型」についてはほぼ異論が無いのですが、「じょうご型とは何ぞや?」という疑問に明確な根拠をもって答えられる人はいません。

さて、この「概説:カルデラ」において既に「日本のじょうご型カルデラはクレーターレーク型カルデラか?」と1章を割いて問題提起されています。ここではクレーターレーク・カルデラ(「クレーターレーク型」ではない)とバイアス型カルデラの違いについて、

  • クレーターレーク>陥没した部分が多数の比較的小さなブロックに分かれている
  • バイアス型>大きな塊として陥没している

と分析しています。しかしその後の調査結果により、バイアス型でも必ずしも大きな塊として文字通りピストンシリンダー状に陥没したわけではないことがわかってきており、クレーターレーク・カルデラそのものも「バイアス型」に分類してしまってよいのではなかろうかと思います。よって「クレーターレーク型」および「クラカタウ(クラカトア)型」の名称は今後は使用すべきではありません。なお、「バイアス型」の定義に「カルデラ形成後にカルデラ中央部がマグマ貫入によって隆起する」(リサージェント)を必須条件とし、リサージェントの無いものはバイアス型としない人もいますが、私はそこまで細かく分類する必要はないと思います。

それでは日本において「じょうご型」が提唱された根拠は何かというと、

  • 重力異常が、ほぼ等間隔の同心円を描いて中心部で低い(断面で見るとじょうご型)。
  • カルデラ中央部でのボーリングは、基盤岩の塊ではなく破砕された岩片を捕えている。

これを説明できるモデルが、「環状割目ではなく中心火道からの噴火によりじょうご型の穴が形成され、その中に破砕された岩石が詰まっている」であったわけです。ただ問題は、重力異常が測定されたカルデラもボーリングが掘られたカルデラも非常に少なく、それを一般化していいのか、という点です。また「じょうご型カルデラ」については濁川カルデラほど多数のボーリングによって内部構造を確認した例はまだ無く、私個人は常々「本当にじょうご型なのか?」という疑問を持っていたところです。カルデラに関わっている研究者なら誰でも、予算さえあるなら掘りまくって確認したいと思っているはずです。

これまで「じょうご型」とされてきたカルデラについて、最近出された調査結果や仮説を、断片的ではありますが列挙します。

  • 阿蘇では大規模な火砕流噴火が4回あったのだから、4個の(比較的小さい)カルデラの寄せ集めなのではないか。
  • 阿蘇の重力異常を精密に測定すると、むしろピストンシリンダー型ではないか。
  • じょうご型の重力異常が測定されたのはカルデラ湖の湖面であるが、湖水の密度補正を厳密に行うとそれだけで重力異常が説明できてしまう可能性がある。
  • 箱根は外輪山も複数の小規模な成層火山(参考:火山学会)、カルデラも複数の濁川型からなるらしいことがわかってきて、むしろ単成火山群的なものか?

現状はこのようなもので、「じょうご型」の正体についてはいまだ確定していません。