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2018-09-29 『外国人をつくりだす』

『外国人をつくりだす――戦後日本におけるおける「密航」と入国管理制度の運用』(朴沙羅 ナカニシヤ出版 2017)

【目次】
目次 [i-v]

序章 在日朝鮮人と「密航」 003
一 先行研究 005
  占領期日本における移動と移住
  「入国管理法」成立史
  在日コリアンと占領期
二 本書の視点 012
  移動する人々の識別
  非正規/非登録移民の発見と登録
  「朝鮮人」を形成するもの
三 調査方法 019
四 本書の構成 022

第一章 過去の社会を記述する――オーラル・ヒストリーと社会学 025
一 オーラルヒストリー研究と考証 026
  文献か、口述か
  主観か、客観か
  「間違い」がわかるとき
二 オーラルヒストリー再考 040
  文献史学の議論
  独自性を求めて
  過去の社会を記述する
三 読む・聞く・書く 049
  誰の何を読むのか
  誰から何を聞くのか
四 経験の条件 055

第二章 日本占領管理体制 059
一 戦後体制のなかの日本占領 060
  「二頭立て」体制の成立
  連合国の占領/アメリカの占領
二 占領軍とその実働 065
  占領軍の進駐
  中央占領機構
  占領指令と国内指令
  〈占領指令の形式と経路〉  〈「間接統治」の意味〉
三 地方における占領 071
  進駐軍の到来
  地方軍政部の構成と活動
  自治体と軍政部

第三章 帰還と送還――「密航」とその関連法令 081
一 禁じられた移動 082
  規模・経路
  手段
  人数と内訳
  原因
二 二つの人口移動 094
  帰還する人々の登録
  「不法入国者」の送還
  「第三国人」
三 移動への対策 101
  最後の勅令
  すでにいる人々の登録
四 想像上の国籍 105
  「送還可能なカテゴリー(deportable category)」
  非日本人から外国人へ

第四章 「朝鮮人」を見分ける――「密航」における状況とカテゴリー 111
一 「不法入国」の禁止 112
  占領軍の活動
  警察・地域住民の活動
二 「朝鮮不法入国者」の振る舞い 123
  「日本人のふり」
  渡航から上陸まで
  上陸から内地移動まで
三 状況・振る舞い・カテゴリー 144
  四つの基準
  法令との対応
  「不審者」と「非日本人」
  「非日本人」と「不法入国者」

第五章 「外国人」の登録――外国人登録証の交付と入手 155
一 外国人登録証の交付と入手 156
  交付
  入手
二 「具体的の問題」 165
  無籍者
  一括登録
  「幽霊人口」
  食料配給と外国人登録証
  「密航」が発覚するとき
三 身元 identity の証明 190
  登録の困難さ
  利害の一致
  識別の円環

終章 「表見的一致」の裏に 201
一 やってくる人々とすでにいた人々 202
二 「朝鮮人」の発見 205
三 「外国人」の登録 207
四 杜撰さの論理 211
五 外国人としての朝鮮人 214

註 [219-239]
参考文献 [241-254]
資料 [255-276]
 1.外国人登録令に関する占領指令本文 255
  1-1 日本における非日本人の入国及び登録に関する総司令部覚書(SCAPIN852)
  1-2 引揚に関する総司令部覚(SCAPIN927) 
  1-3 日本への不法入国の抑制に関する総司令部覚書(SCAPIN1015)
  1-4 日本への不法入国の抑制に関する総司令部覚書(SCAPIN1391)
 2.外国人登録令に関する日本側通達・閣議決定 264
  2-1 勅令第311号 
  2-2 不法入国者の取締に関する件
  2-3 大阪府朝鮮人登録条例 
 3.外国人登録令 271

謝辞(本書を祖母・金永弘と祖父・朴熙方の霊前に捧げる。 二〇一七年四月 朴 沙羅) [277-281]
事項索引 [282-287]
人名索引 [288]

2018-04-09 『〈おんな〉の思想』

『〈おんな〉の思想――私たちは、あなたを忘れない』(上野千鶴子 集英社文庫 2016//2013)

【目次】
序文(上野千鶴子) [003]
目次 [005-007]
凡例 [008]

第一部 “おんなの本”を読みなおす 011
産の思想と男の一代主義――森崎和江『第三の性――はるかなるエロス』 015
生まれながらの故郷喪失者
ことばの旅へ
響き合うエロスの声
「対幻想」を求めて
「わたし」という自我
未来へ紡がれることば
注 037
参考文献 039

共振する魂の文学へ――石牟礼道子『苦海浄土――わが水俣病』 041
これはノンフィクションではない
「道子弁」の発明
憑依する文体
喪われた世界
男の思想との訣別
〈おんな〉の思想
注 067
参考文献 068

リブの産声が聴こえる――田中美津『いのちの女たちへ――とり乱しウーマン・リブ論』 071
一枚のちらし「便所からの解放」
学園闘争からリブ運動へ
「中絶の自由」をめぐって
「産める社会を、産みたい社会を」
「女はすべて永田洋子なのだ」
記憶と忘却の歴史
注 094
参考文献 095

単独者のニヒリズム――富岡多惠子『藤の衣に麻の衾』 097
「リブの伴走者」
単独者のニヒリズム
女は平和主義者か?
「不自然」な性
ラディカルな批評
ヒマつぶしとしての人生
注 120
参考文献 121

近代日本男性文学をフェミニズム批評する――水田宗子『物語と反物語の風景――文学と女性の想像力』 123
アメリカ文学からの出発
「ヒロイン」から「ヒーロー」へ
強靭な知性に支えられて
近代日本文学の男性像
『男流文学論』批判
フェミニズム文学批評の行方
注 147
参考文献 149

第二部 ジェンダーで世界を読み換える 151
セックスは自然でも本能でもない――ミシェル・フーコー『性の歴史I 知への意志』 155
性のパラダイム転換
「知への意志」
性を特権化する秘匿性
「セクシュアリティの近代」の装置
告白の制度
告解と日本人
注 174
参考文献 175

オリエントとは西洋人の妄想である――エドワード・W・サイード『オリエンタリズム』 179
パラダイムの転換
東洋人の歴史的役割
ジェンダー化されるオリエンタリズム
東洋と西洋の勢力均衡
ジェンダーと「逆オリエンタリズム」
家父長制下の抵抗様式
注 200
参考文献 201

同性愛恐怖と女性嫌悪――イヴ・K・セジウィック『男同士の絆――イギリス文学とホモソーシャルな欲望』 203
クィア批評の登場
異性愛秩序とは何か?
ホモソーシャルとホモセクシュアル
カミング・アウトとプライバシー
同性愛者の誕生
ニッポンのミソジニー
注 224
参考文献 225

世界を読み換えたジェンダー ――ジョーン・W・スコット『ジェンダーと歴史学』 227
ジェンダーの定義
女性史からジェンダー史へ
「女にルネッサンスはあったか?」
日本近代文学「語りの系譜」
「男性にして市民である者」
注 248
参考文献 248

服従が抵抗に、抵抗が服従に――ガヤトリ・C・スピヴァク『サバルタンは語ることができるか』 249
植民地出身の英文学教授
敵の武器をとって闘う
「認可された自殺」サティー
スカーフ着用問題
日本の「服従」と「抵抗」
「言語」と「行為」
注 270
参考文献 271

境界を撹乱する――ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル――フェミニズムとアイデンティティの撹乱』 273
バトラーの登場
セックス/ジェンダー二元論の解体
「おんな」という主体はどこにあるのか?
変革は可能か?
バトラーと竹村和子
注 290
参考文献 291

あとがき(二〇一三年 紫陽花の季節に 上野千鶴子) [292-297]
文庫版への追記(二〇一六三年 新緑の季節に 上野千鶴子) [298-300]
解説(チョウ・スンミ) [301-317]
初出 [318]


【抜き書き】
 フーコーの章から二つ。

  性のパラダイム転換
 一九七六年に性の見方が根本的に変わる出来事が起きた。ミシェル・フーコーの『性の歴史』第一巻「知への意志」が刊行されたのである。
 このとき以来、性を語るにあたって、「自然」と「本能」ということばは禁句となった。性は、自然科学から人文社会科学の対象領域に入った。それまで、性についての科学はセクソロジー sexology と呼ばれ、医学、動物学、解剖学、内分泌学、あとはわずかに心理学などの分野の研究者が参入するものであった。事実、世界で最初の科学的な性行動調査を実施したアルフレッド・キンゼイ(1894-1956)は、もともと蜂の研究から出発した動物学者だった。彼は人間の性は動物と同じく「自然」に属すると考え、あたかも動物を観察するように人間男性の性行動調査を行い、一九四八年に「キンゼイ・レポート」(『人間に於ける性の性行為』)を発表した(女性についての報告は一九五一年)。キンゼイが考えたように、性が「自然」に属し本能的な動物行動であるとすれば、そこには歴史は存在しないはずだった。それに対してフーコーは、性は社会や文化の影響を受けて変化し、わたしたちが思っている以上にその変化のスピードが速いことを論じた。
 正確にいえば、フーコーが論じたのは「性の歴史」ではなく、「セクシュアリティの歴史」である。全米性情報教育協会 SIECUS (Sexuality Information and Education Council of the United States) のメアリー・S・カルデローンレスター・A・カーケンダールの定義によれば、性(セックス)とは「両脚のあいだ」にあるもの、すなわち性器であり、セクシュアリティとは「両耳のあいだ」にあるもの、すなわち大脳である。フーコーの訳者、渡辺守章は、「セクシュアリティ」を「性的欲望」と訳した。「性的欲望」は「性現象」とも、「性に関わる欲望と慣習の総体」とも解することができる。むらむらするのは大脳であって、性器ではない。セクシュアリティの研究とは、下半身の研究ではなく、その実、上半身の研究なのだ。
 古代ギリシャ人は、近代人が性と呼ぶものを「アフロディジア」(アフロディテの業)と呼んだ。古代ギリシャ以来、性愛(エロス)の技術 ars erotica は存在してきたが、性についての科学的な知 scientia sexualis はなかった、とフーコーは指摘した。その性愛(エロス)の技術が、やがて科学的な知のことばで語られるようになり、セクシュアリティへと変化したことが「近代」を徴づけるものだと主張する。つまりキンゼイが実施した性行動調査に見られるように、性を自然科学の対象としてアプローチする態度こそが「近代」の産物なのだと。




  性を特権化する秘匿性
 『性の歴史』全三巻が出版されると、各国で性の歴史を研究する動きが進み、セクシュアリティ研究はひとつの学術分野として確立していった。アメリカでは、一九九○年に国際学術誌『ジャーナル・オブ・ザ・ヒストリー・オブ・セクシュアリティ』が刊行され、現在に至っている。『性の歴史』の出版によって、性が世界で学術研究の主題となったことには、隔世の感がある。
 それまで、セクシュアリティ研究は一部の好事家のものと思われてきた。性そのものが「いかがわしい」ものとされ、したがって性の研究もいかがわしいものと見なされてきたのである。性は公的な場から、タブーとして排除されてきた。
 社会学者・永田えり子(1958-)は、性には公的な場から排除され、プライバシー(私秘性)の領域に封じ込められる「非公然性の原則」があると『道徳派フェミニスト宣言』(1997)のなかで述べる。だが、フーコーは性が私領域に封じ込められていった歴史の過程を明らかにする。
 性はいつでも私的なことがらだったわけではない。権力者の間では誰が誰と媾[まぐわ]い、どんな子をなすかをめぐる性事は政治だったし、民衆の間でも、プライバシーなど無いも同然だった。性を公領域から排除することで、私秘性の領域は事後的に構築されていったものだ。
 社会学者・内田隆三(1949-)は『消費社会と権力』(1987)のなかで、「わいせつ性」とも訳される「いかがわしさ=オブシーン obscene」は、場面から退ける「オフ・シーン性 off scene」とつながっていると指摘した。だからこそ、「場違い out of place」な場面で性を持ち出すのは、それ自体タブーを侵犯する不作法なふるまいとなる。そのような性の配置こそが、秘匿によって逆説的に性を特権化するようになったのである。

2017-12-21 『「元号」と戦後日本』

『「元号」と戦後日本』(鈴木洋仁 青土社 2017)

「元号」と戦後日本

「元号」と戦後日本

【目次】
目次 [001-003]

第一章 「元号」とは何か――問いと対象 007
1、問いと射程 009
  「元号」による時代区分への問い
  「元号」とは何か――その歴史
  本書の問題意識――「元号」と歴史の非対称性
2、対象選択と認識利得 028
  対象選択の原理について
  「元号」というカッコつきの表記について
  問いと認識利得――「元号」の三類型
3、構成と目的 039
  構成
  現代の歴史意識のために
  『「平成」論』で積み残した課題の解明にむけて

第二章 「元号」と歴史意識――先行研究と方法 049
1、「戦後」と「元号」 051
  「戦後」
  戦後社会論として「元号」を論じる
  「元号」と歴史意識をめぐる典型的な二項対立
2、先行研究の整理 063
  時代区分論とは何か
  時代区分論の相対化にむけて
3、「方法」について 071
  佐藤健二による〈歴史社会学〉の基準
  クロノロジーを選択しない理由、そして、方法の再定位

第三章 「昭和」――「昭和史論争」と「もはや「戦後」ではない」の同時代性 079
0、一九五六年の「戦後」 083
1、「昭和史論争」再考 088
  「昭和」における「昭和」という再帰性
  ベストセラーとしての『昭和史』
  『昭和史』における「国民」
2、文学論争としての「昭和史論争」 103
  文芸評論家と歴史学者の論争
  一九五六年の文学論争
  「昭和」=「戦前」
  「科学」を担保する存在としての国民
3、「昭和」と「戦後」の対比性 117
  『昭和史』における「昭和」
  「昭和」という「元号」
  「もはや「戦後」ではない」一九五六年における「昭和史論争」

第四章 「大正」――「大正デモクラシー」と「戦後民主主義」の相似性 135
1、「大正デモクラシー」とは何か 140
  「大正デモクラシー」の意味
  「大正デモクラシー」の現在
2、提唱者・信夫清三郎(一九〇九―一九九二) 150
  信夫清三郎による「大正デモクラシー」の定義
  「大正のブルジョワジー」と「大正デモクラシー」
  「民本主義」と「民政主義」
  ネガティブな用語としての「大正デモクラシー」
3、「大正デモクラシー」と「戦後民主主義」の相似性 172
  「戦後民主主義」
  時代区分としての「大正デモクラシー」
  「戦後」の相似形としての「大正」

第五章 「明治」――「明治百年」と「戦後二〇年」の対称性 187
0、なぜ「明治百年」なのか 191
1、「明治百年」の知識社会学 195
  「明治百年」への懸念
  国家的行事としての「明治百年」
  「一九六八年」と「明治百年」
2、桑原武夫における「元号」  208
  同時代における評価
  「昭和史論争」と「明治の再評価」の同時代性
  「大正五十年」
3、竹内好と「明治百年祭」  217
  「明治百年祭」提唱
  「維新百年が勝つか、戦後二十年が勝つか」
  竹内好の「明治」
4、「戦後」の原型としての「明治」 230

第六章 近代日本の歴史意識の解明に向けて――「戦後」という時代の区切りかた 237
1、「近代」  244
  「近代」/「脱近代」
  「近代」としての「戦後」
  post-modern / post-war/そして/あるいは、一八六八年/一九四五年
  近代社会の自己観察としての社会学
2、「日本」 255
  「創られた伝統」としての「近代日本」の「元号」
  「近代」的思考法から見た「元号」
3、「歴史意識」――「戦後」という時代の括りかたの有効性 260

注・参考文献 267
 注 [269-286]
 参考文献 [287-292]
あとがき(平成二九年七月の終わりに 著者 識) [293-298]
人名索引 [i-iv]

2017-10-13 『社会的な身体』

『社会的な身体――振る舞い・運動・お笑い・ゲーム』(荻上チキ 講談社現代新書 2009)

社会的な身体~振る舞い・運動・お笑い・ゲーム (講談社現代新書)

社会的な身体~振る舞い・運動・お笑い・ゲーム (講談社現代新書)

【目次】
はじめに [003-006]
目次 [007-010]

第1章 有害メディア論の歴史と社会的身体の構築 011
有害メディア論の構造/ソクラテスの文字批判/小説がバッシングされた時代/紙芝居批判と「教育紙芝居」の登場/テレビ批判に見る批判の二パターン/「自転車に乗る女子」批判と「野球害毒説」の共通性/「教育談義」に招き入れられるメディア/メディア浸透の四段階仮説/たまごっちとポケベルをめぐる議論はなんだったのか/ニューメディアの登場と社会的身体の組み替え/作り出された社会的身体をめぐる係争/メディアによる身体への要求

有害メディア論十則 053

第2章 社会的身体の現在──大きなメディアと小さなメディア 055
環境と身体/「身体拡張キット」としてのケータイとパソコン/使い分けられる身体/ケータイを身体化する子どもたちをめぐる二重の不安/「小さなメディア」時代の過剰なリテラシー要求/マスコミを「強化」するマスコミ批判/「メディアに騙されない」ことをめぐる闘争/表徴からコピーへ/私たちはテレビを求め、加えてウェブを求めた

ノート 「情報思想」の更新のために 094
「形式/内容」の議論が見落としているもの/「社会的身体」の概念を導入して見えてくるもの/単純化された社会モデルの落とし穴/メディアは思想を作り出す

第3章 お笑い文化と「振る舞い」 113
「役割モデル」と「振る舞いモデル」/「キャラみせ」が主流になった〇〇年代の「お笑い」/「キャラ要素」と「バトル要素」の先鋭化/「お笑い」芸人の世代区分/視聴者と芸人の関係の時代変化/「どっきりのどっきり」に見るテレビ空間の成熟度/振る舞いモデルとしての「一発屋」/ワイプ画面で試みる「お約束の共有」/ニコニコ動画と振る舞いの連鎖

第4章 ゲーム性と身体化の快楽 161
メディアズ・ハイ/「ゲーム性」と快楽/身体化の快楽/「毎日WaiWai騒動」に見るカスケード現象/「祭り」に参加する三種類のプレイヤー/「国籍法騒動」とカスケードの政治力/グーグルSVと「操作性の快楽」の二面性/ポスト社会運動を担う「行為体」/ポスト社会運動と身体のゆくえ

主要参考文献 [205-206]
謝辞(二〇〇九年五月 荻上チキ) [207-209]

2017-10-09 『現場から創る社会学理論』

『現場から創る社会学理論――思考と方法』(鳥越皓之,金子勇[編] ミネルヴァ書房 2017)

編者:鳥越皓之,金子勇
著者:武田尚子、石川良子、奥村隆、阿部真大、鳥越皓之、櫻井義秀、杉浦郁子、荻野昌弘、福永真弓、土井隆義、谷富夫、足立重和、宮本みち子、関礼子、金菱清、川端浩平、金子勇、牧野厚史

【目次】
はしがき――フィールドからどんな理論が生まれるのか(二〇一七年一〇月一日 鳥越皓之) [i-ii]
目次 [iii-xi]

第I部 時代・社会を読み解く理論 001
第1章 どんな魅力ある理論を形成できるか(鳥越皓之) 003
   日本で発達したモノグラフ手法
   自然と人間との関係
   川内村での原発対応
   自分たちは土地をまかされている
   自分たちにとっての自然とは
   最も影響を受けた研究者 有賀喜左衛門 

第2章 高齢社会の健康長寿研究(金子 勇) 013
   沖縄県の健康文化の個性
   長野県の健康文化の普遍性
   「ぴんぴんころり」(PPK)運動
   「保健補導員」制度
   社会調査の力
   家族が健在
   観察された事実から
   最も影響を受けた研究者 高田保馬
コラム1 音楽社会学が生涯学習のテーマ(金子 勇) 023

第3章 民族関係のリアリティを求めて(谷 富夫) 025
   リアルな社会関係
   道徳社会学としての民族関係論
   中範囲の理論化
   民族関係の「剥奪仮説」
   世代間生活史調査と「バイパス仮説」
   最も影響を受けた研究者 鈴木広 

第4章 カルト問題と宗教社会学(櫻井義秀) 035
   カルト問題とは何か
   カルト問題研究事始め
   統一教会の調査
   トライアンギュレーションによる調査法の革新
   統一教会からのリアクション
   カルト問題と公共性
   最も影響を受けた研究者 ロバート・N・ベラー 038
コラム2 フィールド調査の力――炭都夕張から高齢過疎地夕張へ(笹谷春美) 046

第5章 被害の社会的認知論――自然の共同性と公害被害の全体性(関 礼子) 049
   被害の社会的認知論
   個から出発する被害構造論
   未認定患者と差別・偏見
   誰が差別するのか
   地域を母数として被害をみる
   半強制的な自然との「分断」から始まる地域の被害構造
   最も影響を受けた研究者 G・H・ミード 052

第6章 若者研究の展開――家族・仕事・社会的包摂への統合的アプローチへ(宮本みち子) 059
   〈長期化する親への依存〉への着目
   就労困難な若者への支援開始と研究の展開
   貧困・社会的排除の若者を把握する方法論
   若者移行政策を構想する
   諸問題への挑戦に終わりはない
   最も影響を受けた研究者 ステファニー・クーンツ 062

第7章 鳥獣害の社会学(牧野厚史) 071
   鳥獣害と社会学
   山野の鳥獣による「害」とは
   「害」への対策と農山村の人々
   「害鳥」と共存する村
   最も影響を受けた研究者 鳥越皓之 
コラム3 次現場からの社会学――TPPと「小農学会」(徳野貞雄) 084

第II部 社会理論の方法 087
第8章 身近な世界のエスノグラフィ― ――「ありのまま」の日常を描く技芸と倫理(川端浩平) 089
   身近な世界を記述する
   「知ってるつもり」を学び直す技芸
   「ありのまま」を描き出すこと
   現場における感受性の交換
   エスノグラフィの記述における技芸と倫理
   最も影響を受けた研究者 保苅 実 092

第9章 記録筆記法による「痛み温存」論と震災メメントモリ―—東日本大震災の被災者はなぜカウンセリングに行かないのか(金菱 清) 101
   痛みの温存
   負けから始める災害調査
   調査者と被調査者の捉え方のズレから見えてきたもの
   記録筆記法によるヒーリング効果――あえて被災経験を書き記す意味
   「痛み温存」論――カウンセリングと記録筆記法の違い
   震災メメントモリ——死者との回路をつなぐ
   最も影響を受けた研究者 鳥越皓之 105

第10章 「アマの領域」のモノグラフ的探究(武田尚子) 113
   山あいの集落にて――ムラ・ノラ・ヤマ  風と神と雨飾山
   ムラ・ノラ・ハラのコミュニケーション
   第四の領域――「アマ」
   「アマ」と「ムラ・ノラ・ヤマ」のコミュニケーション
   最も影響を受けた研究者 中野 卓 116
コラム4 「眼」の形成のフィールドワーク(石岡丈昇) 124

第11章 生きざまの社会理論――ある地域の頼母子講の事例から(足立重和) 127
   フィールドワーカーにとって理論とは何だろうか
   頼母子講とは
   実際のX町での頼母子講
   真偽を宙吊りにするセリの遊び
   偽装としての遊び
   生きざまの社会理論へ
   最も影響を受けた研究者 メルヴィン・ポルナー 131

第12章 想像力と社会学理論――マンガメディアから出発して(荻野昌弘) 138
   漫画家の「フィールドワーク」
   マンガからテレビ映像へ
   根拠がない世界
   虚実皮膜
   私の赤羽フィールドワーク
   戦後の都市空間の生産
   零度のメニュー 現場の想像力
   最も影響を受けた研究者 ジャン・ボードリヤール 141

第13章 比較から生まれる新たな知見(土井隆義) 150
   南条あやのウェブ日記
   高野悦子の『二十歳の原点』
   人間関係に対する満足感
   人間関係に対する不安感
   最も影響を受けた研究者 H・S・ベッカー 153
コラム5 ロマンティック社会学批判を超えて(山北輝裕) 161

第III部 個人・身体をめぐる理論 165
第14章 「私」というフィールド(奥村 隆) 167
   私はフィールドを持たない
   「私」というフィールド
   思いやりとかげぐちの体系としての「私」
   もう一つの「フィールド」
   吉田文五郎のコミュニケーション
   社会学者たちの「私」と読み手の「私」をつなぐ
   最も影響を受けた研究者 千葉大学の社会学者たち 170

第15章 「分からない」と「分かった」を往復する――「ひきこもり」の調査研究から見えたこと(石川良子) 180
   「ひきこもり」をどう捉えるか
   「ひきこもり」の当事者とは誰か
   分からないことが分かる
   後期近代における存在論的不安と「ひきこもり」
   「ひきこもり」を理解するための視点の生成――ふたたび“分からない”へ
   最も影響を受けた研究者 江原由美子 183

第16章 同性愛者のライフヒストリーとともに分析方法を探す――人々の経験をかたちづくるものの解明に向けて(杉浦郁子) 191
   同性愛者のライフヒストリー
   データがあっても分析ができない
   データを事実として扱えない
   きっかけとなったケース
   ある人物を「理解」する方法への着目
   常識や規範を扱う手つき
   「社会学的な分析とは」への一つの回答
   最も影響を受けた研究者 掛札悠子
コラム6 ライフストーリー(桜井 厚) 204

第17章 「言葉」はあてにならない――映像、自分語り、統計と「身体」の問題(阿部真大) 206
   雄弁な言葉と壊れる身体
   「自己実現系ワーカホリック」を伝えることの困難
   「居酒屋甲子園」の見せ方
   『搾取される若者たち』と『煙か土か食い物』
   「痛み」にフォーカスする
   統計と「身体」
   繰り返し伝えること
   最も影響を受けた研究者 佐藤良明柴田元幸 209

第18章 想起の調査から想起の社会理論へ――記憶のフィールドワークから得たもの(福永真弓) 217
   場所を取り戻すために
   「スカ」という記憶の空間
   場所に宿る記憶、贈与としての記憶
   記憶の贈与と場所 記憶のフィールドワークへ
   最も影響を受けた研究者 嘉田由紀子 
コラム7 都市的生活様式と生活構造(森岡清志) 229

あとがき(二〇一七年六月二六日 金子勇) [231-232]
事項索引 [3-6]
人名索引 [1-2]

2017-09-25 『排除と差別の社会学 新版』

『排除と差別の社会学 新版』(好井裕明[編] 有斐閣選書 2016//2009)

編者:好井裕明 日本大学教授
執筆者:
  三浦耕吉郎 関西学院大学教授
  川端浩平 福島大学准教授
  杉浦浩美 埼玉学園大学専任講師
  石川良子 松山大学准教授
  古賀正義 中央大学教授
  小倉康嗣 立教大学准教授
  杉浦郁子 和光大学准教授
  土浦 葉 愛知大学准教授
  矢吹康夫 立教大学助教
  佐々木てる 青森公立大学准教授
  稲津秀樹 日本学術振興会
  八木良広 愛媛大学
  坂田勝彦 東日本国際大学准教授

排除と差別の社会学 新版 (有斐閣選書)

排除と差別の社会学 新版 (有斐閣選書)

【目次】
はしがき(2016年8月 好井裕明) [i-iii]
執筆者紹介 [iv-vi]
目次 [vii-xiv]

第I部 排除や差別という現象から世の中を考える
第1章 排除と差別の社会学を考える2つの基本〔好井裕明〕 003
1 差別をめぐる常識的な見方 004
  差別とは何だろうか?
  「対岸の火事」としての差別
2 差別のない社会という理想(幻想?) 008
3 差別や排除を見抜こうとする社会学的まなざし 011
  他者とつながる〈わたし〉
  〈あなた〉に向かおうする〈わたし〉の意志
4 差別的日常というテーマ──“普通であること”を見直す 014
  差別する可能性に気づく
  差別的な日常へ──“普通であること”を見直す
5 “生きる手がかり”として差別や排除を活用すること 017
6 差別を考え,差別に“耐性”をもつ文化を創造する 019
参考文献/ブックガイド 021

第2章 部落差別の今は……?──「部落」・「部落民」の表象のゆくえ〔三浦耕吉郎〕 025
1 A地区のフィールドワークから 026
2 結婚差別の体験を聞く 030
3 「部落差別」とは何か? 034
4 〈ポスト同対法体制〉の隘路 037
参考文献/ブックガイド 041

第3章 「当事者」は差別や排除を語るのか?──〈ジモト〉の在日コリアンとともに感じたこと〔川端浩平〕 045
1 誰が差別を語るのか 046
  「差別されたことはない」
  在日コリアンたちはどこへ行ったのか
2 「当事者」と差別・排除をめぐるリアリティの変化 049
  差別へ対抗する日常的実践
  差別から排除へ
3 語られないことを感受する 053
  センスを磨く
  対象者が引き出す調査者の感覚
4 身近な世界との再会 057
  ジモトという視座から見えてくる交錯するルーツ
  「他者」との出会いから自分に出会う
5 「当事者」は差別や排除を語るのか 060
  互酬性と倫理
  差別・排除から見えてくる私たちが生きる時代
参考文献/ブックガイド 063

第II部 個別の問題を手がかりとして
第4章 「身体」をあたりまえに生きるために──「マタニティ・ハラスメント」という問題〔杉浦浩美〕 071
1 「マタニティ・ハラスメント」の社会問題化 072
2 何が「問題」とされているのか? 074
  「社会問題化」へのプロセス
  メディア報道の限定性を超えて
3 「一人前に働けない」という批判をめぐって 079
  「家族の事情」を抱えながら働く権利
  「身体の事情」を抱えながら働く権利
4 「身体」をあたりまえに生きる 086
参考文献/ブックガイド 088

第5章 「ひきこもり」からの問題提起〔石川良子〕 093
1 はじめに 094
2 社会問題としての「ひきこもり」 095
  1990年代
  2000年代
  2010年代
3 「ひきこもり」は何から排除されているのか 099
  “ひきこもらされている”という視点
  自分自身からの排除/セーフティネットからの排除
4 当事者たちからの発信 102
  ひきこもった経験の価値転換
  誰も排除しない社会をめざして
5 「ひきこもり」からの問題提起 108
注 110
参考文献/ブックガイド 111

第6章 学校空間における排除と差別〔古賀正義〕 117
1 学校空間から排除される中退者の事例 118
  液状化するライフコース
  環境管理型権力による「排除」
2 学校空間の内包と排除 122
  学校化した日常生活世界
  コンサマトリー化する学校空間
3 分断化する小グループとその力学 126
  島宇宙化と共振的コミュニケーション
  教室でのキャラ化の広がり
  スクールカーストと政治空間化
4 抵抗の文化の喪失と「生きづらさ」 131
  反学校文化と学校・社会への抵抗
  社会的排除と「生きづらさ」
参考文献/ブックガイド 135

第7章 解放の政治から生成の政治へ──「ゲイ」というカテゴリーの意味転回〔小倉康嗣〕 141
1 あるカミングアウトから 142
2 ゲイシーンにおけるエイジングの発見 147
3 「ゲイ」というカテゴリーの意味転回 153
4 解放の政治から生成の政治へ 157
注 161
参考文献/ブックガイド 163

第8章 女性カップルの子育て願望への反発に見る排除のかたち──「子どもがかわいそう」をめぐるポリティクス〔杉浦郁子〕 167
1 同性カップルの承認と子育て願望への戸惑い 168
  同性婚をめぐる各国の動き
  国内の動き──2015年
  同性婚に対する世間の反応
  子づくり・子育て願望への戸惑い
2 レズビアンが手にした新たな選択 171
  レズビアンマザーの同性婚ニーズ
  レズビアンのドナー授精
  子育て願望の喚起
3 戸惑いや反発への応答を読む 175
  欲望問題という視点
  「子ども」と「親」の欲望の調整
  「マイノリティの親」への想像力
4 寛容のなかの不寛容 180
  セクシュアル・マイノリティに対する排除のかたち
  「人権」言説に埋め込まれる排除
  分断を生まないために
注 184
参考文献/ブックガイド 186

第9章 モザイクとしての「障害者問題」〔土浦 葉〕 191
1 障害者差別解消法をめぐって 192
  「『障がい』という言葉を使ったほうがよいのではないでしょうか」
  「障害者の権利に関する条約」の採択から差別解消法の制定まで
  「禁止」ではなく「解消」の背景にあるもの
  社会モデルとは
2 モザイク状の「障害者問題」 197
  差別「する」ことへの非難と恐れ
  固定的な見方
  「分けること」の肯定
  「いじめられるから分けたほうがいい」
  カミングアウト
3 簡単に解決されない問いとして向き合うこと 204
  「社会は障害者に対して,そんなにひどいことはしていない」
  「障害者も同じ人間」?
  「壁」を超えて
参考文献/ブックガイド 208

第10章 「ユニークフェイス」から「見た目問題」へ〔矢吹康夫〕 213
1 はじめに──「戦い」は終焉を迎えたのか? 214
2 ユニークフェイス問題/見た目問題とは 215
  当事者の多様性
  具体的な問題経験
3 ユニークフェイスの戦い 219
  「比較の文脈」への警戒
  社会の加害性の告発
  「強い」当事者の落とし穴
4 マイフェイス・マイスタイルは戦わない 224
  見た目問題ネットワークの構築
  非当事者の反応への理解
  「ふつうの」当事者が語る
5 おわりに──マイノリティから「ふつう」へ 228
参考文献/ブックガイド 230

第11章 「民族」との向きあい方──在日コリアンの歴史と日本社会の対応〔佐々木てる〕 235
1 はじめに 236
2 民族と差別の始まり──なぜ民族差別はあったのか? 237
  植民地主義のスタートと日本への移動
  日本での生活
  関東大震災で明らかになる民族差別の本質
3 創られた外国人としての在日コリアン──社会的・制度的差別との闘い 242
  帝国臣民から「外国人」へ
  「外国人」としての在日コリアン
  社会的差別
4 差別から共生へ 247
  残された権利としての政治的権利
  日本国籍取得と共生社会
  新人種主義の台頭とヘイトスピーチ
5 まとめ──マルチ・エスニック社会に向けて 250
参考文献/ブックガイド 252

第12章 「復興災害」の空間と多文化的現実──21年目の被災地を歩きなおす/見つめなおす〔稲津秀樹〕 257
1 忘却され/否定される多文化的現実 258
2 「復興災害」論が隠すもの──「震度7」をめぐる偶然と必然 260
3 多文化的現実を構成する死者──あの日の空と,写真家のレンズ 264
4 まとめにかえて 268
  「復興災害」の空間を歩きなおす――鉄人28号像の両義性
  多文化的現実から見つめなおす──「多文化」論と死者
参考文献/ブックガイド 272

第13章 原爆問題について自由に思考を巡らすことの困難〔八木良広〕 279
1 はじめに 280
2 被爆者たちにとっての核兵器廃絶 283
  「原爆被害者の基本要求」作成の歴史的過程
  被爆者と私たちの「基本要求」の含意
3 一人の被爆者にとっての核兵器廃絶 288
  証言活動のきっかけ
  ざんげとしての証言活動
  ざんげと核廃絶のつながり
4 おわりに 298
参考文献/ブックガイド 299

第14章 原発事故による避難について考えるために──生活の再建をめぐるジレンマ〔坂田勝彦〕 303
1 はじめに──原発事故と避難者の現在 304
  原発事故とはいかなる出来事だったのか?
  原発事故による避難の入り組んだ状況について
2 避難という経験をめぐって──生活を再建していくための試行錯誤から 307
3 働く場所として,居場所として──日常をつくりあげていこうとする営み 309
  「何もない」ところからの出発
  「やること」をつくりだす
4 交錯する日常と非日常──吐露される生きづらさ 313
  「一体感」という言葉が示唆する不安感
  「宙ぶらりん」の現在と未来
5 おわりに──「帰還」か「定住」かという選択肢の落とし穴 318
参考文献/ブックガイド 319

事項索引 [325-329]
人名索引 [330]

くまさんの映画コラム
(1) 亀井文夫が描きとろうとした現実 023
(2) 今一度『橋のない川』をじっくりとみてみよう 043
(3) 在日コリアンへの差別と在日の〈いま〉を考える 066
(4) 『ハッシュ!』で家族を考える 090
(5) 『まひるのほし』がみえますか 114
(6) スクールカースト,いじめ,自殺を考える 138
(7) ゲイ・ムーヴメントの“熱”を感じよう 165
(8) 自分の生に誠実に,そして軽やかに生きることとは 189
(9) もう一人の「他者」として障害あるひとを考える 210
(10) ピカッときたら! さっと隠れろ! 233
(11) 『月はどっちに出ている』をみよう 255
(12) 私たちはどう老いていけばいいのだろうか 276
(13) 『ひろしま』が描こうとするヒロシマ 301
(14) 原発の問題性を考えよう 322