Marriage Theorem 新居 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016年03月06日(Sun)

日常と三角関数

先日、某所で「みんなに高等教育を受けさせるのなんて不毛だよね。例えば数学三角関数なんて学校出たら使う機会ないじゃん」(←大意)みたいな主張を目にしたので、最近日常生活で出会った三角関数三角比)が役立つ場面を書きます*1


色々あって、妻が妻の友人のためにお皿とコップを入れて使う巾着袋を手作りすることになりました。お皿は立てた状態で袋に入れ、コップは左右真ん中ぐらいの位置に置くと据わりが良いと考えると、上から見た両者の位置関係は下の図のようになると考えられます*2

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お皿の幅を 2a、コップの直径を 2b とおいて(2倍で表記しているのは後で長さの半分を考える都合上)、寸法を書き入れた図はこちら。

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さて、この袋を作るには布の幅をどのくらい取ればよいか?と妻から尋ねられました。仮にギリギリの大きさにすると布は下図の青線のような具合*3になると考えられるので、この青線の長さを計算して、念のため少し余裕を持たせた幅にすればよいでしょう。

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左右対称なのでひとまず左半分だけに着目して、下図のように補助線を引きます。

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詳細は読者の演習問題とする割愛しますが、∠AOB(=∠AOD)=α とすると∠COD = π - 2αとなるので弧CDの長さは (π - 2α)b、また線分 AB と AD の長さは AB = AD = a なので、左半分の青線の長さは 2a + (π - 2α)b 、よって全体では 4a + (2π - 4α)b となります。

あとはαを計算すればよいわけですが、ABO が直角三角形なので三角比を用いて、はい皆さんご一緒に、三角比を用いてtan α = AB/OB = a/b という関係式が得られます。これより α = arctan(a/b) となり、件の青線の長さ L は全部で L = 4a + (2π - 4 arctan(a/b)) × b となります。

実際の例ではお皿が20cm幅、コップが直径5cmという想定でしたので、a = 10、b = 2.5となり、L = 40 + ( 2π - 4 arctan(4) ) × 2.5 (cm) となります。電卓によると2π - 4 arctan(4) はおよそ 0.98 とのことですので、この場合 L はおよそ 40 + 0.98 × 2.5 = 42.45 (cm) 、と計算できます*4


めでたしめでたし。

*1:元の発言主は高等教育批判したいだけで三角関数が本当に役に立つか立たないかなど興味がないであろうことは容易に想像できるけれども知ったことではない

*2:お皿の厚みは無視して直線と考え、コップの断面は円形と考えて

*3/(^o^)\ナンテコッタイ顔文字に似ている(似ていない)

*4:どうせ概算値なので有効数字は気にしない方針

2015年11月16日(Mon)

数学博物館 in ギーセン(ドイツ)に行ってきた

しばらく前の話ですが、出張でドイツのギーセン(Gießen)市を訪れた際、現地にある数学博物館(名称:mathematikum)に行ってきました。面白かったので少々感想などを書きます。


mathematikumはギーセンの中心駅から歩いてすぐの所にありまして、わりと探しやすい立地だったと思います。ギーセン市自体は、フランクフルト中央駅から電車で1時間前後で到着できました(記憶がやや曖昧なのでご注意ください)。建物の外観は下の写真2枚のような感じです。

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この博物館は、数学のトピックを中心に、数学と関連の深い他の科学分野からのトピックも交えた展示物からなり、それらは全部で150件ほどに上るようです。題材は、比較的簡単な原理に基づくものから高度な背景を持つものまで様々です。

展示物の多くが模型や装置などを実際に触ったり動かしたりできる体験型であり、中には数字や図形をネタに使ったユーモラスなコーナーもあったりするなど、展示物の基になる理論や数学的事実を知らなくても充分に楽しめる構成になっています。そのこともあってか、私が見学している最中にも、近所から遊びに来たっぽい子供たちや、どこかの学校の生徒っぽい団体客がやってきたりと、想像よりも子供客が多い印象を受けました。


建物に辿り着くと、玄関前の歩道に設置されている下の写真のような装置に出迎えられます。これは、2個重ねられたゴム製の球に縦にワイヤーが通されていて、球を持ち上げて放すと落下した球が地面で跳ね返るというものです。球の大きさは、上の球よりも下の球の方が大きくなっています。さて、これらの球2個を重ねた状態のまま持ち上げて手を放すと、一体どのような弾み方をするでしょうか?

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玄関を入ってすぐの所には、下の写真のような縦に連なった歯車が飾ってありました。この歯車は、下側の歯車が10回転するとすぐ上の歯車が1回転するように設計されているとのことで、一番下の歯車は頑張って回っていましたが、下から2番目の歯車はそれと比べてかなりゆっくりな回り方でした。

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この歯車の全体図は下の写真の通りです。指数関数の威力に思いを馳せてしまう壮観な眺めですね。この装置、一番上の歯車の動きが目視で確認される日ははたして来るでしょうか?

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(ちなみに、多くの展示物にはドイツ語だけでなく英語でも説明文が添えられていまして、ドイツ語を読めない私は大いに助かりました。)


個人的に特に興味深かった展示物の一つが、下の写真にある、放物線を使った掛け算計算器です。使い方は、右側(プラス方向)の位置aにある放物線上の点と、左側(マイナス方向)の位置bにある放物線上の点を結ぶと、中心軸上にa×bの計算結果が現れる、という具合です。原理自体は言われてみればなるほどというものでそこまで高度というわけではないのですが、こんな風に掛け算の計算ができるというのは知らなかったので勉強になりました。

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もう一つは下の写真にある展示物で、これはある有名な数学的予想(未解決問題)を「体感」できる装置です。さて、その数学的予想とは一体何でしょうか?(写真が見辛いかもしれませんが、各々のピースに数字が書かれていて、それらが「ある性質」に応じて色分けしてあり、レバーを回すとレールに沿ってピースが動く、という具合です。)

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他の展示物の例として、下の写真にあるのは最近話題の錯視に関するオブジェです。これは正しい位置に立ってオブジェを眺めると有名な不可能図形に見えるというものですが、正解の位置を見つけるのが意外と難しくてかなり熱中できました。私は一人で来ていたのですが、もし複数人で来ていたとしても、各自の背丈によって正解の位置が変わるので、全員がそれぞれに楽しめただろうと思います。

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また、下の写真はタイル張りの理論に関する展示物…ではなく、単に窓から見えた民家の屋根です(笑)。

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変わり種の展示物としては、下の2枚の写真にある"the ultimate machine"と題された電動装置が挙げられます。その筋の人なら「ああ、アレね」と感付かれるかもしれません。私もネタを知ってはいたのですが、実際に動くところを見るとインパクトというかシュールさがまた一段と際立っていました。(ネタバレは野暮なので解説はしません。)

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ちなみに、職場の関係で気になる暗号関連の展示物としては、この手の展示でよく使われる視覚的秘密分散法の他、いわゆる誕生日のパラドックスを体感できるルーレット(下の写真2枚)が設置してありました。ある横一列に同じマークが二つ以上現われるのを「当たり」とすると、およそ半々の確率で当たりが出る計算とのことです。

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最後に、全館回り終えて玄関に戻ってくると、下の写真のようなものが置いてあるのを見つけました。これは、両脇の箇所からコインを投入すると綺麗な軌道を描きながら転がっていき、最後には中心の穴に落ちていくという仕組みです。で、穴に落ちたコインはこの博物館への寄付金になるという、物理法則の美しさを活かした華麗な寄付の募り方です(笑)。私も何枚か試しましたが、確かに転がり方が綺麗なので何度も試したくなるのですよね。本当によくできているなぁと感心しきりでした。

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というわけで、3階建ての博物館全体を回りきるのにおよそ2時間ほどかかりました。ここで紹介したものは展示物全体のほんの一部で、他にも面白いものが色々と置いてありましたし、展示物以外に建物の内装なども凝っていて、本当に楽しい施設でした。もし近くに行かれる用事がありましたら、こちらの博物館へも少し足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

2015年11月06日(Fri)

メモ:選択公理抜きで線型写像をどれだけ自在に選べるか

以下の会話(抜粋)に関連してメモ。

(注:$x = 0$かつ$y ¥neq 0$だと成立しないため、そうでないという仮定を各自で幻視してください。)

冒頭に挙げられた命題(これを(*)で表す)から、最後に挙げられた命題、より正確には

線型空間$V$の一次独立な元$v_1$,$v_2$、同じ体上の線型空間$W$の元$w_1$,$w_2$について、$f(v_1) = w_1$,$f(v_2) = w_2$を満たす線型写像$f : V ¥to W$が存在する

(これを(**)で表す)

選択公理抜き(ZF公理系)で導けることを示す。このことと上で引用した内容から、冒頭の命題(*)はZF公理系では証明できないことがわかる(選択公理を使える場合には、$v$を含む$V$の基底が取れることから件の性質が証明できる)。


まず、命題(*)を

線型空間$V$の元$v ¥neq 0$、同じ体上の線型空間$W$の元$w$について、$f(v) = w$を満たす線型写像$f : V ¥to W$が存在する

(これを(***)で表す)

という形に拡張できることを確かめておく。

実際、(*)を用いて直和$V ¥oplus W$上で$v$$w$に写す線型写像が得られるので、あとはその定義域を$V$に制限した上で、行き先側で射影$V ¥oplus W ¥to W$と合成すればよい。


さて本題に戻ると、まず、(***)を用いて$g(v_1) = w_1$を満たす線型写像$g : V ¥to W$が得られる。

次に、$v_1$で生成される部分空間で$V$を割った商空間を$V’$と書き、射影$V ¥to V’$$¥pi$と書くと、再び(***)を用いて、$¥pi(v_2)$$w_2 - g(v_2)$へ写す線型写像$V’ ¥to W$が得られる($v_1$$v_2$が一次独立であることから$¥pi(v_2) ¥neq 0$であることに注意)。これと$¥pi$を合成したものを$h : V ¥to W$と書くと、$h(v_2) = w_2 - g(v_2)$であり、一方$¥pi(v_1) = 0$なので$h(v_1) = 0$である。

これらから、$f = g + h$$f(v_1) = g(v_1) + h(v_1) = w_1 + 0 = w_1$および$f(v_2) = g(v_2) + h(v_2) = g(v_2) + (w_2 - g(v_2)) = w_2$を満たす。これが(**)で求められている線型写像である。(証明終)

2015年07月16日(Thu)

科研費が校費(運営費交付金)の代わりにはならないと思う理由二つ

今更、ではありますが、考えの整理も兼ねて。


第一に、学生用の研究室運営(パソコン・書籍含む備品類、学会旅費、などなど)に使うことが難しいということです。

科研費は研究のための資金であって教育のための資金ではありませんし、そもそも申請した研究計画以外の用途に使用すること(目的外使用)は禁止されています。学生皆が皆、科研費の研究課題に合致した研究を志向するでしょうか?科研費を学生の教育指導に活用できる機会が皆無とは言わないまでも、そのような機会が制限されるのは明白でありましょう。


第二に、学問分野や社会情勢の変化に即応し辛いということです。

科研費の応募の機会は基本的に年1回ですし、上述の目的外使用の禁止という規則もあります。応募締切の直後に、その分野や社会である出来事(大災害かもしれないし、新理論の提唱かもしれない)が起こり、その中から新たな重要研究課題を見出した人がいたとしましょう。その人は、手持ちの研究を中断して新しい研究を優先させるわけにもいきませんし(目的外使用の禁止)、次回の応募まで1年(応募から採択・予算配分までの期間を考えるとそれ以上)待たなければならないでしょう。世界中の競争相手に先を越されないことを祈りながら。


昨今の(ここでは、日本の大学の)研究者に対する社会の期待は、優秀な学生の育成と、産業に役立つ研究とに大きな力点が置かれています。であれば、投入される予算も、学生のために使用でき、また、産業界の速度に対応して研究課題の優先順位を柔軟に切り換えられる、校費(運営費交付金)のような制約の少ない形式に重点を置く方が、上述した社会からの期待により応えやすくなるのではないでしょうか。

予算の厳しい社会情勢だからこそ、効果的な予算活用を支える制度が望まれます。

2015年07月14日(Tue)

分数の割り算とお釣りの計算

「分数の割り算は、分子分母をひっくり返して掛け算する」というアレの話ですが、例えば$¥frac{923}{1000}$(1000分の923)で割るときに分子分母をひっくり返す、というのは($¥frac{a}{b}$は「a割るb」のこと、を踏まえて)

÷ ( 923 ÷ 1000 ) と 1000 ÷ 923 が同じ (*)

ということです。


ところで、出前に来た店員さんなどが電卓でお釣りの計算をする際によく使われるテクニック(先日も目にしました)に、例えば923円の商品の代金を1000円で支払われた際(1000 - 923 = 77円のお釣り)に

  1. 予め923を入力しておく
  2. 支払いのお金1000円を渡された際に「引く1000」を入力して計算する(この時点で-77が表示される)
  3. 頭の「-」を無視する

として計算する、というものがあります。最後の「頭の「-」を無視する」というのは-1倍するのと同じなので、この計算テクニックはつまり

- ( 923 - 1000 ) と 1000 - 923 が同じ  (**)

ということです。


(**)の「-」を「÷」に置き換えると(*)が得られます。これは単なる偶然ではなく、実は両者は同じ仕組みに基づいています。