Marriage Theorem 新居 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010年03月24日(Wed)

1998年東大入試後期日程、数学問3(2)の件

1998年の東大入試後期日程の数学で出題された問題(問3の小問(2))がとんでもない難度だと某所で話題になっていたので、ちょっと眺めてみました。


件の問題に関するまとめサイトhttp://2r.ldblog.jp/archives/2927641.html

問題はこちら(河合塾のサイト):

で、某氏に名指しでこの問題を解くように言われたので解いてみました。

今回は50分弱で以下の答えに辿り着いた(ただし解答を書く時間は含めず)のですが、実を言うと数ヶ月前にもこの問題を40分ぐらい考えて音を上げていたので、合計すると1時間半くらい時間がかかったことになります。確か当時の東大後期数学は全3問で試験時間が2時間半だったと思うので、1問にこんなに時間を掛けていてはいけません。

それはさておき、以下が私の解答です。どうも論文風の書き方が染み付いてしまっていて、大学入試の答案としてはややくどい書き方かもしれませんがご容赦下さい。

問3(2)の解答

 求める必要充分条件は、「nを3で割った余りが0か1」・・・(*)である。以下このことを証明する。

 まず、棒状のグラフを作る過程で両端以外の頂点を選んで操作1を行ってしまうと、グラフに枝分かれ(3本以上の辺が出る頂点)ができてしまい、以降の操作でその枝分かれがなくなることはないので棒状のグラフにならなくなる。従って、操作1は常に両端のいずれかの頂点を選んで行うものと仮定しても一般性を失わないことを注意しておく。また、以下では「可能グラフ」は全て棒状の可能グラフを指すものとする。

 さて、元々の問題を考えるために、以下のような「拡張された問題設定」を考える。そこでは二つの頂点(色は好きに選んでよい)を1本の辺で結んだグラフG1'を出発点のグラフとして、操作2のみを繰り返して新たなグラフを作っていく。このとき、以下の性質が成り立つ:

  • 性質1:ある棒状グラフが元々の問題設定における可能グラフであるための必要充分条件は、その棒状グラフが、拡張された問題設定におけるある可能グラフの両端点を削除して得られることである。

実際、元々の問題設定で端点Pを選んで操作1を行う際に、もしPのさらに外側に別の頂点P'があったとすると、この操作はP'の存在を除けば操作2と同じ操作になる。従って元々の問題設定の下である可能グラフを得る一連の操作は、拡張された問題設定の下で対応する一連の操作を行い、最後に余分な両端点を削除することと同値である。(拡張された問題設定で最初の操作を行った後のグラフは、3頂点の棒状グラフで中央の頂点が白であり、それが元々の問題設定での出発点のグラフG1に対応する。)

 この拡張された問題設定について、以下の性質を証明する:

  • 性質2:拡張された問題設定における可能グラフで、両端点以外の頂点が全て白であるグラフは以下の2種類であり、またそれらに限られる。
    • 両端点以外の頂点が全て白であり、頂点数が3の倍数で、両端点の色がそれぞれ出発点のグラフG1'におけるその頂点の色と異なっている。
    • 両端点以外の頂点が全て白であり、頂点数を3で割ると2余り、両端点の色がそれぞれ出発点のグラフG1'におけるその頂点の色と同じである。

性質1と性質2を合わせると求める条件(*)が示されるので、性質2を証明すれば充分である。

その2種類のグラフが実際に可能グラフであること

頂点数に関する数学的帰納法証明する。頂点数が6以下の場合は下の図より可能グラフである。(両端点の色について特定の組み合わせしか図示していないが、他の色の組み合わせでも同じ理由で成り立つ。また各操作で追加した頂点に印を付けた。以下も同様。)

f:id:MarriageTheorem:20100323235245j:image

頂点数が7以上のとき、両端点の色を変えずに真ん中の頂点を3個減らしたグラフは帰納法の仮定より可能グラフであり、そこから下図の操作で所望のグラフが作れるのでやはりそれも可能グラフである。

f:id:MarriageTheorem:20100323235803j:image

よってこの性質は確かに成り立つ。

可能グラフがその2種類に限られること

頂点数に関する数学的帰納法証明する。頂点数が5以下の場合は、可能グラフは対称性を除いて下図のものに限られるので確かにこの性質が成り立つ。

f:id:MarriageTheorem:20100324000846j:image

次に、頂点数が6以上で、両端点以外の頂点が全て白である可能グラフGを考える。便宜的に、Gの頂点を端から順にP1、P2、・・・、Pnと名付ける。このときP1とPn以外の頂点は全て途中で操作2によって追加されたものである。P2が追加されたときに選ばれた辺の2頂点のうち、P1以外のものはPkであったと仮定する(kは3からnのいずれか)。

f:id:MarriageTheorem:20100324003716j:image

その後P3からPk-1までがある順序で追加されることになるが、その際P2とPkに挟まれた部分は、それ自体が「拡張された問題設定」の状況である。(P2とPk、およびそれらを結ぶ辺だけからなる部分的なグラフを出発点のグラフとみなす。)ただしPkの色の推移はPk+1からPn-1までの箇所の操作に影響されるので、Pkの色の推移だけは無視して考えることにする。

さて、P2が追加された直後のP2は白であり、最終的なグラフGにおけるP3からPk-1とP2はまた全て白である。帰納法の仮定より、この部分的な可能グラフは上に挙げた2種類の場合のいずれかにあてはまることになるが、この部分的なグラフの端点P2の色が変化していないことから、2種類のうち前者の種類ではあり得ず、後者の種類に確定する。つまり、この部分的なグラフの頂点数k-1は3で割ると2余り、またP3からPk-1までの頂点を追加した操作によるPkの色への影響は(全て互いに打ち消されて)無いことになる。従って、kは3の倍数であり、最終的なグラフGから頂点P3、・・・、Pk-1を削除してP2とPkを直結させたグラフG'もまた、拡張された問題設定の下での可能グラフとなる。実際、グラフGを作る一連の操作から、P3、・・・、Pk-1を追加する操作のみ省くことで、グラフG'を作る一連の操作が得られる。(P3からPk-1までを追加した操作による、P1およびPk+1、・・・、Pnの色への影響は無いことに注意。)

帰納法の仮定より、G'は上に挙げた2種類の場合のいずれかにあてはまることになる。従って、G'に両端点以外の3の倍数個の白頂点を付け加えたグラフGも、また上に挙げた2種類の場合のいずれかにあてはまる。よって確かに、可能グラフは上に挙げた2種類に限られる。


以上により性質2が示され、従って上に述べた注意より、所望の性質(*)も証明された。

証明終わり)

感想

確かに、知識レベルだけ見ると決して高校数学の範囲を逸脱してはいないと思います。分野としては「グラフ理論」という(下手すると大学理系でも習わないかもしれない)進んだ分野の問題ですが、問題の理解に必要な予備知識は全て出題中で与えられていますし、グラフ理論に関する予備知識が必要なわけでもありません。

ただし、要求される数学的能力や数学センスは、客観的に見て通常の高校生のレベルを大きく超越していると思います。一例として、(少なくとも私の解答の方針では)性質1と性質2を統一的に扱うために補助的な両端点を追加するとか、またより強力な「数学的帰納法の仮定」に基づいて証明を進めるために所望の性質(*)より強い性質(性質2)を証明のターゲットとする、といったテクニックは、私が大学受験生だった頃に発想して使いこなすことができたとは思えません。(一応私もその前年、1997年の後期日程試験を数学受験で突破した人間なので、普通の高校生よりはかなり高い数学力を当時備えていたはずです。)

個人的にはこの問題は数学大学院修士課程の入試で出題されていても違和感の無い(むしろ難しい?)レベルの問題だと思いますが、冒頭に紹介したまとめサイトによると2名も完答者がいたとのことです。それらの方々に、数学のプロの一人として、またかつての受験生として心から敬意を表します。

おまけ:河合塾の解答速報における同問題の解答について

上述のまとめサイトコメント欄URLが紹介されていましたが、河合塾が当時発表した解答速報における同問題の解答例は http://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/98/answer/t2/math/6.gif のようです。

こんな鬼問題にいち早く解答を出さなければならなかった当時の速報の中の人には心底同情しますが、それはそれとして私の見解としてはこの解答は不十分だと思います。

具体的には、「白色の頂点から作られる棒状グラフの集合と黒色の頂点から作られる棒状グラフの集合には共通部分が無い」という性質を自明なものとして扱っています(証明アウトラインすら記載されていない)が、これは決して自明な性質ではないと思います。(そもそも本当に正しいのでしょうか?)

この発想自体は、見たときに面白い発想だなぁと感心しましたし、速報なので紙面の制限があったのかもしれませんが、せめて正しい証明を再構築できる程度のアウトラインは載せておいていただきたかったと思います。

(もし簡単な証明があるようでしたら、ご教示下さいますととても嬉しいです。)

jun0jun0 2010/08/08 06:02 はじめまして。ちょっと古い記事に失礼します。白の頂点から作れる事と黒の頂点から作れる事が排反であるというのは一応成り立ちます。私がやった限りでは死ぬほど長い、とても「簡単」とは言えない証明になってしまいましたが、興味がおありでしたら私のブログに書きましたのでどうぞ。

楓流楓流 2011/03/23 20:00 はじめまして。かなり古い記事ですが失礼します。
興味深い内容でしたので、自分なりに別回答を考えてみました。お手すきの際、楽しんでいただけると幸いです。

nは1以上の整数とする。
この棒状グラフに限り、当該操作を下記のように簡略化することができる。
f(n-1):(n-1)個目の右に白点を追加し、隣接点の色を反転させる操作。
    f(0)は、左端に白点を追加し、隣接点の色を反転させる操作。
この操作の逆関数として、下記も成立する。
F(n-1):(n-1)個目の右の白点を削除し、隣接点の色を反転させる操作。
    F(0)は、左端の白点を削除し、隣接点の色を反転させる操作。
f(n-1)とF(n-1)が逆関数であることは、2個の点の色パターン(○○、○●、●○、●●)に対

して、[左端に白点追加の場合]f(0)⇔F(0)、[中間に白点を追加した場合]f(1)⇔F(1)、[右端

に白点を追加した場合]f(2)⇔F(2)の操作パターンで確認できる(総計12パターン)。

n個の白点のグラフをG(n)とする。
グラフG(n)に操作f(n)→f(n)→f(n+2)を順に実施すると、G(n+3)になる。
これを下記のように示す。
 f(n+2)f(n)f(n)[G(n)]=G(n+3)
一方、逆関数により下記も成立する。
 F(n)F(n)F(n+2)[G(n+3)]=G(n)

これにより、G(n)は下記3グループに分類される。
そして、同じグループに所属するグラフは、操作f(n)とF(n)によって全て変換可能である。
iは0以上の整数とする。
 グループ1.n=1+3i  : G(1)、G(4)、G(7)等
 グループ2.n=2+3i  : G(2)、G(5)、G(8)等
 グループ3.n=3+3i  : G(3)、G(6)、G(9)等
また、グループ3について、
 F(1)F(0)[G(3)] または F(0)F(2)[G(3)] により、G(1)に帰着させることができる。
グループ2については、
 F(0)[G(2)]、F(1)[G(2)]の双方を実施してもG(1)にならない。

以上のことにより、G(n)が可能グラフとなるためには、
 n=1+3i、3+3i (iは0以上の整数)
が条件である。

laika00laika00 2011/04/17 11:07 古い記事ですが、自分なりの解答を書かせていただきます
文字数の関係上、いくつかの証明については明らかとします

操作1と2を組み合わせれば白玉を3つ増やせるので、「3で割って0か1」が可能であることの証明は省略します
ある操作パターンがあったとき、操作の順番を入れ替えても、各操作が可能であれば最終形は同じになる
最終形が直線なので、線分を消すことは出来ない つまり、各状態において線分はダブらない
よって、はじめに操作1を全て行った後、操作2のみを行っても、最終形は変わらない
操作1が終わったとき、真ん中が黒で、両端のいずれか、もしくは両端+1コが白
白地に黒の状態において操作2は、黒2つを消すか作る、あるいは黒を移動させる
つまり、ある閉じた系の黒集団を白集団に変えるためには、黒は偶数個でなくてはならない
偶数個の黒集団を白集団に変えるとき、黒集団を2つづつで分けたときの、それぞれの2つ玉の間には必ず操作2が来る
黒奇数の場合条件を満たさないので、黒集団の2つ玉づつに操作を加えると、白が3の倍数+0か1になる
白黒の状態のとき、黒の行き来をすると、増える玉数は3の倍数
また、白地から黒2個をつくったとき、その間に1コ玉が入ることから、白地において、黒を作って消す操作を行っても、3の倍数分しか玉数は増えない

以上より証明された

M.TM.T 2011/04/22 21:27 以下の方法であれば受験生でも比較的楽に解くことが出来るのではないでしょうか。

〜〜〜〜〜〜〜
点から出ている辺の数が減らないことから「直線グラフだけ考えれば良いことは明らか。

直線のグラフGに対して、次の整数の非順序対を考え、特性数と呼ぶ。

A(G) = 端から黒丸を二つずつ組にしていき、組の中の距離の和
・1.G の黒丸の数が偶数の場合
{A(G), A(G の両端に黒丸を付け加えたもの)}
・2.G の黒丸の数が奇数の場合
{A(G の右端に黒丸を付け加えたもの), A(G の左端に黒丸を付け加えたもの)}

たとえば、
白丸が n 個つづいている場合、
{0, n+1} が特性数である。

特に白丸が 1つならば、{0,2}

ところで、与えられた操作は、すべて特性数の差を3で割った余りを保存する。
よって、特性数が{0,3n}とあらわされる白丸が3n-1つながっているグラフは
白丸が1つのグラフから上述の操作では生成できない。


〜〜〜〜〜〜〜

保存する部分の補足


〜〜〜〜〜〜〜

白丸をA、黒丸をBとして、端を意味する[ ]もつける。また、丸同士の連結を−と〜で表す。ここで丸と端も連結すると考えて、連結は一番左が−で、以後はBが出るごとに交互に変わるとする。例えば[−A−],[−B〜],[−A−B〜A〜B−A−]など

変換ルールは(連結を無視して) A]→BA], B]→AA], [A→[AB, [B→[AA, AA→BAB, AB→BAA, BA→AAB, BB→AAA となる。このとき、−の数と〜の数との差を3で割った余りは一定。例えば−A−]→−B〜A〜]では−が1減、〜が2増。

−と〜は補数の関係にある。枠もつけて、さらに点ではなくその連結を考える。

もっと素直にもっと素直に 2011/04/28 18:38 G(n) → 操作1,1,2 → G(n+3)
ができるんですから
G(n)が可能グラフ ⇒ G(n+3)が可能グラフ … (1)
ですよね。操作を逆に追うと
G(n+3)が可能グラフ ⇒ G(n)が可能グラフ
もすぐ気づきます。さらに対偶をとって
G(n)が可能グラフでない ⇒ G(n+3)が可能グラフでない … (2)
ことも分かります。
G(1)とG(3)が可能でG(2)は不可能。
あとは(1)と(2)より答えが出ます。

momordicamomordica 2012/03/03 01:45 某Q&Aコミュニティから流れてきました。
相当古い記事のようですが、興味があったので自分なりに考えてみました。
私はグラフ理論などというものは名前しか知らないので、こんなのでいいのかさっぱり
なのですが…

とりあえず、「操作1」を行うのは両端にある頂点のみとして、その結果できる
枝別れのない棒状グラフだけ考えることにします。
また、少々ルールを変えます。

・頂点だけに色をつけるのはつまらないので、辺も白か黒で塗ることにします。
・問題では最初は白頂点1つだけからですが、それでは寂しいので、頂点の両側に
 白辺を1つずつつけた状態から始めることにします [−○−]
・その後、以下のような操作を繰り返します。

 *任意の辺を1つ外して、その部分を、間に一つの頂点を挟んだ2つの辺に付け替える。
   ただし、2つの新しい辺の色は付け替える前の辺と逆(白→黒、黒→白)にする。
    [ …−… ] → [ …=○=… ]  (−は白辺、=は黒辺)

 *その操作の結果、頂点の両側の辺が同じ色になった頂点は白に、両側が違う色に
   なった頂点は黒に塗り直す
    [ …−○−… ]  [ …−●=… ]

以上のようにすると、各頂点の変化は、一番端の辺を入れ替える操作では問題中の
「操作1」に、中間の辺を入れ替える操作では「操作2」と全く同じになります。
これにより、2種類の操作が「任意の辺1本を反対の色の辺2本と入れ替える」という
1種類の操作として扱えることになります。
 <例>
  [−○−]
   →(操作1:右側の辺を入れ替え)→ [−●=○=]
   →(操作2:真ん中の辺を入れ替え)→ [−○−○−●=]
   →(操作1:左端の辺を入れ替え)→ [=○=●−○−●=]

ここで、最初の状態から
 「白辺を黒辺2本に入れ替える」という操作をs回、
 「黒辺を白辺2本に入れ替える」という操作をt回繰り返したとすると、
白辺、黒辺の数はそれぞれ (2-s+2t)個、(2s-t)個 となります。
また頂点の数nは操作1回ごとに1つずつ増えるので、(s+t+1)個になっています。

その時、もしすべての頂点が白になったとすると、すべての頂点についてその両側の
辺が同じ色である、すなわち、すべての辺が同じ色ということになります。

もしすべての辺が白ならば、黒の辺は一つもないということなので、
 2s-t=0
 ∴ s=2t
 ∴ n=s+t+1
     =s+2s+1
     =3s+1
したがって、頂点の数nは、3で割ると1余る数になります。

同様に、すべての辺が黒ならば、白の辺は一つもないということなので、
 2-s+2t=0
 ∴ s=2t+2
 ∴ n=s+t+1
     =(2t+2)+t+1
     =3(t+1)
したがって、頂点の数nは、3で割り切れる数になります。

以上より、棒状グラフで頂点がすべて白になるための必要条件は、頂点の数nを
3で割った余りが1または0であることだということが分かります。
また、それらが十分条件であることは容易に示されるので、これらが必要十分条件
であることが分かります。

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