ほそ日記

2011-10-06

ノーベル賞騒ぎに思うこと

今年もノーベル賞の受賞発表シーズンです。ネットニュースには、日本人が受賞しそうだの逃しただの、そんな報道ばかり。

ノーベル賞の受賞タイミングは、賞の対象になった仕事がおこなわれた時期から大きくかけ離れています。だから受賞は、現在の日本の科学力を評価するものでも、その今後を明るく照らすものでもありません。ノーベル賞騒ぎにいつも違和感を覚えるので、ひとこと水を差しておきたいと思います。

日本人にノーベル賞受賞者が出ると必ず「日本の若手研究者の励みになる」云々のコメントを聞きます。しかしこのロジックが僕には全然わからない。だってがんばれば報われるというメッセージを受け取ることが重要なら、受賞者が日本人である必要はまったくない。ノーベル賞の受賞者は必ず毎年出るのだから。だからここでは「日本人が」というのが大切なのだろうと推測します。

その上で、まず、受賞者らがこういう栄誉を手にできたのは、本人の実力、環境、運の3要素が適合した結果だと、とりあえず考えていいでしょう。で、受賞者の過ごした研究環境は現在の日本の研究環境とは比べるべくもなく、幸運が同等であるはずもない。

つまり「励み説」にある暗黙の根拠は、同じ日本人であることによって、他国の人以上に受賞者と近しい実力があるという、あほみたいな遺伝的因果関係です。またもうひとつあるとしたら、日本人だからといって不当に低い評価を受けるとは限らないという慰めでしょうか。

だから本来問題にするべきなのは、当時の研究環境の何が功を奏したのか、その点現在はどうなのか、という検討だろうと思います。でもそんな考察は、これまでほとんど前面に出てきたことがありません。GFPの発見で2008年にノーベル化学賞を受賞された下村脩さんによる「役に立つと考えて研究していたわけではない」という旨のコメントが僕の記憶には新しいのですが、こうした無志向性の研究が許される環境が大切だという意見などがもっと強調されるべきだと思います。

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去年、しばらくウェブサイトに載せていた文章ですが、残しておく価値があるように思うので再掲しました。

2011-04-11

予想外なPC環境も、ポータブルソフトとDropboxがあれば怖くない

東日本大震災がありました。そのとき私は仙台を離れていたので無事でしたが、4月からの海外渡航を控えながらも仙台に戻ることすらできず、かなり慌ただしい中での出発を余儀なくされました。引越し業者があまり機能していなかったので、海外への引っ越しはすべて小包の郵送で済ませました。名づけてマネーパワー作戦です。それでもちょっとは節約して、デスクトップパソコンなどの研究必需品はEMS(国際スピード郵便)、書籍類は船便としました。多少の不備は覚悟の上でしたが・・・。

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本日、出国前にEMSで送っておいた27インチの液晶モニターを受け取りました。地震直後には逝ってしまったに違いないと思っていたのですが、わずかな傷で生き残った縁起物です。

が、税関に引っかかって到着が遅れ、せっかくEMSにした意味がなくなってしまいました。そればかりか、受け取りの際に130ユーロの関税を受とられてしまう有様。手続きを踏めば全額返ってくるらしいのですが、本当でしょうか。。現時点ではPC本体もモニター同様に税関で止まっているのですが、こっともタダでは済みそうにありません。

しかも、来るまで知らなかったのですが、今度の研究室には各机にデスクトップPCが据え付けられていて、それ以外のPCはネットワークにつなげないとのこと。震災による混乱のさなか、大枚はたいて郵送した私の苦労はなんだったのだろう。

据付PCには、ソフトも自由にインストールすることはできません。よく使うソフトの多くはデフォルトで入っているのでいいのですが、ブラウザIEメーラーアウトルックとは・・・。それになにより、OSオランダ語版のXPってどういうことなの。

というわけなので、今日はスタッフに来てもらって英語版OSに入れ替え・・・かと思ったらHDを換装されました。箱を開ければほとんどワンタッチで換装できるようです。でも、そこにさらに日本語を入れるためにはXPインストールDVDが必要とのことで、作業は水曜に持ち越しと相成りました。

そんな感じで、渡航して早二週間弱。研究環境の正常化は遅々として進みません。。

とはいえ必要は発明(というか知識発掘)の母と言います。マシンにインストールせずに使えるソフトってないのかなと思って調べてみたところ、いろいろ見つかりました。ポータブルソフトっていうのでしょうか。USB等に展開して、マシンに差し込むだけで使えるソフトが、たくさん開発されています。

例えば Firefox Portable 同じアカウントで同期してやれば、ログインIDやパスワードRSSがそのまま再現されます。今日、こっちのオランダ語OSのPCでも日本語で表示されたのを見て、かなり感動しました。

オンラインストレージサービスの Dropbox にもポータブルソフトがあります。Dropbox Portable AHK。これを使ってUSB等にDropboxのフォルダを作ると、Dropboxに入れておいたポータブルソフトがどのマシンでも使え、しかも同期されることになります。これは便利!

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ポータブルソフト・自動同期・Dropbox Portable AHK、これ最強。どこに行っても、同じパソコン環境を再現できます。この感動をお伝えしたかったがためのエントリーでした。

2011-03-02

上関原発

2月21日以降、山口県上関町の田ノ浦海岸で、原発建設のための埋立工事が強行されています。建設予定地である祝島の住民ほか原発建設に反対する方達が、現場で体を張って工事の進行を阻止しているのが現状です。

USTREAM: 満月tv では、現場のライブ映像がご覧になれます。工事を進めたい中国電力の社員は現場の前線にはおらず、地元住民らの悲痛な声に晒されているのは雇われの作業者たちばかり。彼らも胸を痛めているのではないでしょうか。このように動画からは、メディアを介した従来の報道にはなかったリアリティが伝わってきます。

上関原発の建設について、日本生態学会等の専門家集団は再三にわたって環境アセスメントの不備(特に埋立と排水について)を指摘し、関係自治体・省庁に要望書を提出してきました。しかし、それらはまともに検討されることなく、今日に至っています。今回の強引な着工に対して、日本生態学会および日本自然保護協会はそれぞれ緊急要請緊急声明を出しました。これは異例の事態です。

Twitter では、ハッシュダグ #kaminoseki で現在進行形の議論をご覧になれます。一部に「2ちゃんねる」のような気持ち悪い投稿もありますが、上関原発問題を論ずるための基礎資料がいかに不足しているかを痛感することができます。

上関原発の問題には、原子力発電の安全性に関する問題、エネルギー問題、過疎の問題、利権の問題、人権の問題など、多くの問題が関連しています。これらを同時に考えて議論することは不可能です。しかし、個々の問題については、判断の材料となる正しい情報(事実)さえ提供されれば、生産的に議論することができます。そして生物多様性の損失という問題に関しては、事実を示す義務が生態学者にあると思います。

私の知り得る事実は以下のとおりです。

  • 田ノ浦が、瀬戸内海本来の生物多様性を残す最後の海域にあること。
  • ここが壊されると、いつの日か瀬戸内海の生態系を再生できる日が来るかもしれないという可能性が、永遠に消えてしまうこと。
  • この最悪の事態が起きないと断言できるほどに精度の高い環境アセスメントが、行なわれていないこと。

これらのあきらかな事実のもとでは、瀬戸内海本来の生物多様性よりも高い価値が性急な原発建設によって得られるのではない限り、埋立の中止は論理的に正しいと結論できます。

(追記)上記で指摘した問題は、原発建設の是非以前のものです。適切な環境アセスメントを実施し、その結果として生物多様性の損失はほとんど起きないと予測された場合には、原発は建設されるべきかもしれません。しかし、その可能性は極めて低いでしょう。

2011-02-04

昨日

ちょっと入籍してみました。

だからどうした、と言われると困りますが…今後もよろしくお願い致します。

2011-02-01

中教審答申2

“徒弟制度”や修士論文の廃止求める 大学院博士課程で中教審答申 - MSN産経ニュース http://bit.ly/gGh2ad

こちらのソースになった答申は、「今後の学校におけるキャリア教育職業教育の在り方について」ではなく、「大学院教育の実質化の検証を踏まえた更なる改善について」の答申でした。答申(案)はこちら: [PDF]。精読していませんが、とても真っ当な話だと思います。

中教審答申1

「今後の学校におけるキャリア教育職業教育の在り方について」(答申):文部科学省 http://p.tl/LhPs

職業と専門性に関する幅広い理解と職能を高めるための実践的教育を志向しているようです。