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2006-08-08(Tue)

[][]「女性上位で以下略」を再改変して投下 〜「あのアゴの何処がストロングスタイルだったのか未だにサッパリ分からない」編〜

21歳未満が読んだらファラオに呪い殺されるいつものエントリ。


 ぼうっとカウンターに座っていたら、全校のスピーカーから「蛍の光」が流れてきた。

 図書室の代理貸出委員である僕の業務は、これで終わったことになる。

「田上くんごめんね、こんな時間まで手伝わせちゃって」

 そう言って、申し訳なさそうに顔の前で手を合わせる、図書委員長。その仕草があまりに彼女に似合っていたので、僕は思わず笑ってしまった。

「何が面白いの?」

 ジト目で睨む委員長に気付いて、慌てて取り繕う。

「いえ、別にそんなこと構わないのに、って思って。ちょうど僕も、暇でしたから」

「ふうん? ……ま、いっか。そう言ってもらえると助かる。今年はインフルエンザも流行ってるみたいだから、田上くんも気を付けてね」

「はい」

 もっとも、そのインフルエンザで今日の貸出委員だった丸藤さんが休んでくれたおかげで、僕は委員長と一緒に放課後を過ごせたのだ。それを考えると、ウイルスの培養シャーレにキスしたってよかった。

「本当は私だけでもよかったんだけど、一人きりでカウンターに座ってるのって、暇なんだよね。この埋め合わせはきっとするから」

「気持ちだけ有り難く受け取っておきます」

 委員長と話せて嬉しかったから、という言葉は寸前で飲み込んだ。

 代わりに、時計を見て注意を促す。

「それより早く出ないと。正門閉められちゃいますよ」

「あ。じゃあ、図書室の鍵、職員室に返してくるから。玄関で待ってて。一緒に帰ろうよ」

 その提案に二つ返事で了承し、僕は駆け出しそうな足を抑えて昇降口に歩き出した。

 委員長には、一目惚れだった。

 じゃんけんに負けて図書委員になった四月、嫌々向かった図書委員会で、二つ年上の彼女に会った。

 よく笑い、よく怒る。ちょっと頼りないところもあるけど、それも含めて全部が彼女の魅力だと思う。

 何より僕は、サバンナもかくやという大平原の如き小さな胸に心奪われていたのだ。――大平原なのに小さいとはこれ如何に。

 回想終了。

 とにかく、委員長に恋い焦がれていた僕にとって、今日という日は、千載一遇の大チャンスだった。

 昨日までは、互いにファミリーネームしか知らなかった。今日一日で大分打ち解けたが、明日になったらまた元の事務的な関係に戻ってしまうかもしれない。

 なんとかこのチャンスを生かして二人の距離を縮めなければいけない。

 そしてあわよくばこのまま無理やりホテル街に連れ込んで「待った?」「うわぁ!」「きゃっ!?」

 都合のいい淫らな妄想への天罰であろうか、不覚にも、近付いて来る委員長に全く気付けなかった。

 可哀想に、僕の声に逆に驚いてしまった委員長は、ぺたんと尻餅をついてしまった。ピンクだ。

「大丈夫? 立てます?」

 言いながら手を貸す。腕を引っ張って持ち上げると、驚くほど軽い。

「驚かせちゃったみたいだね、ごめん」

「そんな、僕こそ格好悪いところを見せて……すいません」

「そ、そんなことない、田上くんは格好いいよ!」

 ドキリとする。

 不用心なのだ、委員長は。

 さっき打ち解けたばかりの僕にこんなことを言う。これではいつか悪い男に騙されてしまうだろう。

 委員長を守るためにも早く彼氏彼女の関係にならねば。

「そういえば、田上くんの家ってどっち?」

「有明です」

「えー、近いね。じゃあ野明中の出身?」

「はい。委員長は?」

「新日中。降りる駅、一緒だね」

 ――知ってます。だってときどき改札口で見掛けますから。

 なんてこと、やっぱり言えなくて。

「じゃあ、今日はずっとお喋りできるね」

 嬉しそうな委員長の笑顔に、少しだけ励まされた。

 頑張らなくっちゃ。まだ、今日は終わってないんだ。


「……うー。あんまりお喋りできる状況じゃないかもー」

 ぎゅうぎゅうの満員電車に押し潰されそうになりながら、委員長が呻いた。

 背の低い委員長は、頭を四方八方他人の背中で囲まれていて、息苦しそうだった。気を付けていないと、そのまま潰れてしまうかもしれない。

「いつも、こんな混んでましたっけ」

「この時間はね。仕事帰りのサラリーマンとかいるから。っていうかその台詞は、いつも貸出委員サボッてるね?」

「何のことだか拙者にはさっぱり」

「誤魔化されないんだから。反省しなさい」

「ごめんなさい、次からきっと真面目に働きます。な、田上? うん、俺、真面目にやるよ」

「なんか感情こもってなくない?」

「そんな、色々こめちゃってますよ。色々」

「い、言い方がいやらしいー」

 ひーんと泣き真似をする委員長。ごほんというわざとらしい咳払い。ごほん?

 ふと気付くと、周りがみんな僕らを見ていた。

 まずい。はしゃぎ過ぎた。すぐに委員長もその視線に気付いて、真っ赤になって俯いた。

 そのとき、電車が減速を始めた。停車するのだ。

 ターミナル駅なので、大量の人が乗降する。

 僕らの降りる駅はまだ先。人の流れに押されないよう、じっと足を踏ん張った。

 ぎゅっと腕を掴まれた。見ると、委員長が申し訳なさそうに僕の顔を見上げていた。

「ごめん、ちょっと」

「いえ、大丈夫です」

 それっきり、また会話は途切れた。

 乗降口が閉まる。同時に先輩の手も離れる。名残惜しい。

 と思ったら、その細い指が僕の指に絡められた。いわゆる恋人繋ぎだ。

「また、流されそうになったら嫌だから」

「全然大丈夫です!」

 顔が熱い。きっと真っ赤に染まっている自分の顔を隠そうと、意味もなく上を向いた。

 異変は、二駅過ぎた頃にやってきた。

 人いきれで頭がぼうっとしていた。これ以上ぎゅうぎゅう詰めの車内にいると、そのうち中身が出そうだった。

 というか本当に出そうだった、おしっこが。

 さっき学校でトイレ行っとけばよかったと思っていたら、急に委員長が、握っている手の力を強めた。

 息苦しいのかと思って委員長の方を見下ろしたが、俯いて何も言ってくれない。よく見ると、耳から首筋まで真っ赤に染まっている。

 たびたび震える肩を見て、突然、委員長が泣きそうなのだということに気が付いた。

 慌てて辺りを見回す。居た。サラリーマン風の禿げた親父が、委員長のお尻をまさぐっている。

「おい」

 親父は気付かない。頭に来て、大声で怒鳴ってやった。

「おい、おっさん、僕の彼女に何してんだよ!」

 慌てて親父がこっちを見た。びびってる。

 尿意を我慢してるために顔をしかめていることも、親父のビビリに一役買っているようだった。

「な、何が――」

「しらばっくれるんじゃない、見たんだからな」

 周りの視線が俺達に集まる。さっきと違って、今度はみんな俺達の味方だ。

「そっ、ただ私の手がたまたま当たっただけで」

「誰も痴漢したなんて言ってない」

 あ、と青くなる親父。

「たまたま手のひらが当たって、たまたま揉んだって? しかもたまたま鞄で隠して他人から見えないようにして? 馬鹿かアンタ」

「あ、いや……」

 尿意から来る焦りも手伝って、僕は執拗に親父を責めた。腹が立つ。僕だってまだ触ってないのに。

「そんな大きく指を広げて尻を揉みしだく偶然があるか。言い訳したって無駄だ。全部見てたからな。

 そのままその武骨な手を少しずつ前に這わせて未熟な花弁を弄ぼうとしたんだろう。知ってるぞ、だって見た気がするし。

 抵抗がないのをいいことに下着の中に醜く節くれ立った指を滑り込ませたんだなそうだろ見てなくても分かるぞシンパシー。

 そしてゆっくりと下着を下ろして暴かれた瑞々しい秘裂に己の粗末な赤黒い包茎チ○ポを」

 プシュー。

 扉が開いた。いつの間にか駅に着いたらしい。

「た、田上くん、降りるよ」

「え? でもまだ降りる駅は先ですしこいつも警察に――」

「いいから!」

 委員長が凄い剣幕で僕の腕を引っ張った。さっき以上に顔を赤くしている。

 ホームに降りても、委員長は一言も口を聞いてくれなかった。そのまま改札口に向かう。

「出るよ」

「え……え?」

 引かれるままに改札を抜ける。そのまま暫く歩いて、駅前の公園まで来たところで漸く委員長は手を放してくれた。

「まずは、一応、ありがとう」

「い、いえ」

 いかん。尿意がそろそろ限界だ。

「でも、あんな、生々しく説明しなくたって! 第一、私、前は触られてないし!」

 ああそれはよかった。……いやよくない僕のおおおおおちんちんが!

「どうすんのよ、もうあの電車使えないじゃないー!」

「……」

「黙ってたって何も……え、あ、怒って、いるの?」

「いえ」

 尿意に気を取られて、つい返事がおざなりになってしまう。

 ぶすっとした僕の返事に別の意味を読み取ったのか、急に委員長がしおらしくなった。

「ごめん。田上くん、私のために怒ってくれたのに……」

 委員長が何か言っていたけど、すべてが遠い世界のことに感じられる。頭の中で小便小僧が手招きしている。

「でもね、本当は、関係ないけど嬉しかったんだよ。さっき田上くんが私のことかの」

 もう駄目、決壊する!

「委員長トイレ行ってきます!」

「じょって言ってくれたとき……って、えー?!」

「すいませんすぐ帰って来ますから!」

「ちょっ、え、何よそれー!」

 走りながら、背中に委員長の罵声を受ける。ごめんなさい、あとでちゃんと聞きますから今だけ見逃してください。


 晴れやかな気分でトイレから帰ってきたら、委員長が俯いてベンチに座っていた。

 垂れた前髪が表情を隠し、委員長がどんな顔をしているのかは見えない。が、さっきは烈火の如く怒っていた気がする。

 正直怖い。

 先ほどまでの軽やかな足取りとは一変、僕は神妙に恐る恐るベンチに近付いた。

「あの――ただいま帰りました」

「おかえり」

 気温が二度は下がりそうなほど、不機嫌で無愛想な声。やっぱり怒ってる。

「座って」

「……はい」

 一人分の距離を空けて、隣りに座る。ちらりと横を見てみたが、やはり委員長の表情は読み取れなかった。

 辺りはすっかり暗くなっていた。

「早かったね」

「委員長が待ってると思って。すいません」

「謝らなくていいよ。私、怒ってないから」

 そんな声で「怒ってない」なんて言われても信じられません。

「さっきの私の話、ちゃんと聞いてた?」

 さっきの話。僕がトイレに走る直前に言ってた、あれだろうか。

「あー、えーと」

「聞いてなかったんだ」

「……ごめんなさい」

「謝らなくていいってば。別に責めてない」

 いらいらしたように委員長が呟いた。

「ただ、ちょっと、馬鹿みたいって思っただけ」

「すいませ――」

「違う、馬鹿なのは私」

 僕の台詞を途中で遮って、委員長は顔を上げた。予想に反して、それは全然怒っている顔じゃなかった。

 潤んだ瞳。上気した頬。

 思わずどきりとした。

「ねえ、私のこと、どう思ってる?」

「え……?」

「さっき、私のこと、彼女って言ってくれたよね。本当にそうしたいって、思ってくれてる?」

 真剣なまなざし。委員長は本気なんだ。

「ずっと好きだった。中学のとき、一目見てから」

「え、だって、僕たち、中学は別の」

「田上くん、やっぱり覚えてないんだね」

 寂しげな声で委員長が笑う。

「あのね。テニス部の練習試合で、私、一度だけ野明中に行ったことあるんだよ。補欠としてだけど。……田上くん、全く覚えてませんって顔してる」

「……はい」

「んーん、いいんだ、私の勝手な憧れだったから」

 テニスの練習試合……もしかして、いやしかし。

 僕は、一つの小さな賭けに出た。

「ひょっとして、学校の近くで道に迷って泣いてませんでした?」

「お、覚えてたの!?」

 パッと委員長の顔が輝く。

 確かに三年前、新日中のジャージを着た女の子を学校のテニスコートまで案内したことがあった。でもその子は今の委員長より更に小さかったし、てっきり同学年だと思っていた。

 まさか、中三にもなって、そんなことで泣いてしまう子がいるだなんて。

「私、嬉しかったよ。男の子にはずっと苛められていたし。すぐに野明中の子に田上くんのこと聞いたんだけど、振られるの怖くて会えなかった。

 高校入って三年になって、本当はもう諦めてた。でも偶然入った図書委員に田上くんが来て、凄い驚いた。一目で分かった、あの時の人だって。

 少しでも目立とうと思って委員長に立候補した。でも学年が違うし、貸出委員のペアにもなれなかったから、このまま終わっちゃうんじゃないかって、最近また諦めかけていた」

 委員長の声が震えてきた。泣きそうなのだ、きっと。

「今日、丸藤くんが休んだって聞いて、思い切って田上くんを誘ってみた。ドキドキした。OKもらえたときは、飛び上がりたいぐらいだった。

 でも、言おう言おうと思うほど、全然関係ない話しか出来なくてね。本当、私ってタイミング悪いよね」

 じっと僕を見つめる彼女の目が、ふっと不安げに揺れた。

「好きだよ、田上くん。でも、田上くんはどう思ってる? ……大丈夫、今ならまだ諦めがつくから」

 嘘だ。

 触れば砕けそうな細い肩。不安で震える蒼い唇。僕が拒絶したら、きっと一生、この人を傷つけてしまう。

「惚れっぽいんですね、一度会ったきりの男を未だに思っているなんて」

「……うん。やっぱり、ごめんなさ」

「でも!」

 びくりと、委員長の肩が震える。

「でも、そういう一途なところも含めて全部好きです!」

「……え」

「委員長には敵いませんけど、僕も四月の委員会で貴女を見たときからずっと好きでした……泣かないで下さい」

「馬鹿、自分が泣かせたくせに……こういうときは黙って抱き締めてよ、男の子」

 言われた通り、僕は泣き笑いのシンデレラをしっかりと抱き締めた。


「らぶほてる、入るの初めてー」

「最近は、ファッションホテルとかって言うらしいですよ」

 言いながら、ベッドに腰掛けてアメニティを確かめる。よし、ゴムもローションも十分用意されてる。……どれくらい使うものなのかなんて、知らないけれど。

 あれから僕らは、どちらからともなくホテル街に向かった。初めてが星の下というのは、ロマンチックではあったけど、流石に嫌だった。

 暫く歩いていると、僕らと同じ制服のカップルが一件のホテルから出てきた。僕たちもそのホテルに入ると、無人のカウンターに出迎えられた。

 マイクに向かってチェックインを済ませる。恐らくカメラで僕らの姿は見ていたのだろうけれど、何も言われなかった。結構、学生達に利用されてるホテルなのかもしれない。

「先、シャワー浴びてきていいですよ」

「……何か、慣れてない?」

「まさか。白状しますけど、正真正銘ホンモノの童貞ですよ」

「本当?」

 疑わしげに委員長が見つめてくる。心外な、この十五年間、彼女一人できたことがないのに。

「あんまり見ないで下さい。緊張で心臓が破れそうです」

「田上くん、モテてそうなのに」

「恋人相手に惚気ないで下さい。僕は平々凡々な男です」

「こ、恋人……そっか、恋人同士なんだ……恋人恋人……」

「繰り返し言わないで下さい。恥ずかしいですから」

「意外と、うぶなんだね」

「からかわないで下さい」

 もう限界だった。これ以上何か言われたら、このまま襲いかかってしまいたくなる。

「いいから、シャワー浴びてきて下さい」

「一緒に入ろっか?」

 ……セーフ。何とか堪えた。

「馬鹿言ってないで早く行って下さい! 部屋、二時間しか取ってないんですから」

「二時間もあるんじゃない」

 くすくすと笑いながら、漸く委員長はシャワールームに行ってくれた。

 脱衣所とはカーテンで区切られているだけなので、委員長が服を脱ぐ音まで全部聞こえる。早くも猛る息子を「鎮まれ鎮まれ」と宥めながら、少しでも気を逸らそうと再びアメニティのチェックを始める。当たり前だけれど、その数はさっきと全く変わらない。

 ザー、と水音が始まった。続いてジャバジャバと体を洗う音。鼻歌まで聞こえてきた。

 くそ、なんであの人はあんなに余裕なんだ。自分が情けない。

 ガラガラ。浴室から委員長が出てきたらしい。再び衣擦れの音。

「おまたせー」

「……なんで、また制服着てるんですか?」

 いつもの見慣れたセーラー服。しっかり靴下まで履いている。

 髪だけがやや湿っているのが、妙に艶めかしかった。

「田上くん、制服好きでしょ? いつも私の方を、飢えたハイエナみたいな目で見てたし」

「随分な言い種ですね、委員長」

 普通に傷ついた。っていうか、

「でも、気付いてたんですね」

「何を? いつも私の方を見てたこと? カマかけただけなんだけどね、やっぱり見てたんだ。えっち」

「はあ、すいません」

「いいよ、田上くんならいくら見ても」

 そう言ってベッドに歩み寄る。

「でも、あの目、結構怖くてさ。ずっと『嫌われてるのかも』って思ってたんだ。だから、今は、もっと優しく私を見て」

 委員長がベッドの隣りに立った。

「じゃあ、始めようか。さっき泣かされたお礼を、たっぷりしてあげるんだから」

「え、いや、ちょっと待って下さい。僕まだシャワー浴びてな」

「さっきシャワーはいいって言ったじゃない」

 嬉しげに笑う委員長。

「それは一緒には入らないって意味で!」

「問答無用!」

 びゅーんと空を飛ぶ委員長。当然のように押し倒される僕。

 早速カッターシャツに手を伸ばす大胆な委員長。肝心なところで体が動かない臆病な僕。

 委員長が体を揺らすたびに、その柔らかいお尻や腿が僕に押しつけられる。さっき鎮めたばかりの息子が、ぎんぎんに自己主張を始めた。

「ほら、ぬぎぬぎしましょうねー」

「ず、ずるい、委員長ばかりシャワー浴びて……臭うから、やめて下さい」

「好きだよ、田上くんの匂い」

 カッターをはだけさせ、下着代わりのプリントシャツも胸の上まで捲りあげられる。

「ごかーいちょーう」

「なんか、おっさんくさい、です」

「息も絶え絶えにそんなこと言われても迫力ないよーだ。……ふぅん、もう感じちゃってるんだ? お尻、おちんちん当たってる」

 委員長と僕の顔が少しずつ近付く。

「田上くん、こういう顔するんだね。かわいい」

「もう、やめ……」

「駄目。二時間しかないんでしょう? ……んっ、ちゅう……」

 ファーストキス。少なくとも、僕にとっては。

 委員長の舌が僕の歯茎を撫でる。僕のものでない唾液が僕の喉に注がれる。唇をぴったりと合わせて舌を絡め、強く吸われる。

 互いの鼻息が、顔にかかった。

 息苦しくて、涙が出た。それなのに、委員長の顔が離れていったときは、胸が切なくなった。

「……っふぁ、はあ、はあ……」

「キスも、童貞……?」

「……先輩こそ、慣れてるじゃないですか」

 質問には答えず、皮肉で返す。どうせさっきのキスで全部バレてる。

「ある意味、何万回とやってきたよ」

 唾液でてらてらと光る口許を歪めて、悪戯っぽく笑う委員長。そんな彼女から何故か目が離せない。

「毎晩、イメージトレーニングしてるからね」

「イメージ、トレーニング……?」

「田上くんの体、田上くんの声、田上くんの動き、田上くんの熱、田上くんの全部、それはどんなのだろうって、ベッドの中で考えるの」

 また委員長の顔が下りてくる。でも、今度は顔じゃなく、僕の胸に着地した。

「こう、舐めたらどんな反応するかとか……」

 ざらりと、舌が乳首を這う。

「委員長……」

「噛んだらどうなるかとか……」

「いっ!」

「あ、痛かった?」

「いえ、大丈夫です、多分」

「うー。やっぱり、想像とは違うね」

 ぺろぺろと、慰めるように僕の乳首を舐める。

「当たり前じゃないですか。そんな、中学生みたいなこと言って」

「でも田上くんも、私のこと想像して、一人でしたんでしょ?」

「……無邪気な顔して、恐ろしいことを。委員長、今、自分が何言ってるか分かってます?」

「うん。私はずっと田上くんのことを一人で愛してたけど、田上くんはどうだったかな、って聞いてる。乳首勃ってきたよ」

「もういいですよ、乳首は」

「いいじゃない、美味しいよ。で、どうだった?」

「出来るわけないじゃないですか。何かそれ、委員長を汚してるみたいで」

「……じゃあ、浮気してたんだ」

 委員長が、乳首から口を離して、ぬっと起き上がった。僕の目を正面から見つめる。

「浮気?」

「お、お、オナニーはしてたんでしょ!」

 顔を赤らめて淫語を口にする委員長。その行為の内容までも克明に語り明かしたばかりだと言うのに、直接口に出すのは憚られたらしい。

「まぁ、一応、嗜む程度には」

「私のことが好きだったのに、なんで私でオナニーしないのよ!」

「だからそれは」

「うるさい!」

 自分から聞いてきたのに。酷いよ。

「そんないけない乳首にはお仕置してやるんだから」

「え、ちょっとタンマ」

「嫌」

 凄い勢いで、委員長が再び僕の乳首を口に含む。そして、やはり凄い勢いで、吸い上げた。

「じゅう……ちゅる、ちゅう……」

「あ、やめっ」

「……ん、ちゅっ、じゅる」

 乳首が勃っていくのが、自分でも分かる。

「……ちゅる……反省、した?」

「っ、はい」

「もうしないって、誓えるよね」

「はいっ、はい! はい!」

 よく成年漫画なんかでは見るけど、本当に男も乳首で感じるんだ。呆とした頭で、そんなことを考える。

「じゃあ、これからは私以外で、お、オナニーしないって誓って?」

「っん、これからは、委員長以外の女の子をオカズにして、あ、オナニーはしません……」

「なんか、恥ずかしいね」

「……ははっ、自分がさせたんじゃないですか」

 顔を見合わせて吹き出す僕ら。

「ふふ、じゃあ、不束物ですが宜しくお願いします、田上くん」

「はい。こちらこそ、頼りないかもしれませんが宜しくお願いします、委員長」

 ゆっくりと口付けを交わす。

 今度は、委員長も焦ってはいない。焦る必要がない。何せ、三年も待ったのだ。

「ふぅん、ちゅ……あ……」

 キスしながら、セーラー服に手を伸ばす。脇のファスナーを開けて、ゆっくりたくしあげる。

「あ、駄目……胸、小さいから……」

「だからいいんじゃないですか」

「……変態」

 聞かない振りをして、委員長に万歳させる。セーラー服を脱がすと、下から小振りなピンクのブラが現れた。

「ホック、外せる?」

「いりません」

「え? ……っ!」

 そのままブラもたくしあげる。乳首が引っ掛かったが、気にせず引っ張った。

「痛い……」

「すいません。でも、さっきのお返しです。……吸っていいですか?」

「……さっきのお返しなんだったら、それも含めてワンセットでしょ」

 顔を背けてふて腐れたように答える。かわいい。

 乳首を弄りやすいよう、委員長は僕の腰に乗せていたお尻を、お腹に移動させてくれた。

「じゃあ、遠慮なく」

 舌先で、そっと撫でるように触れる。

「……っ」

 委員長の乳首は、もう堅くなりかけていた。

 そのなだらかな胸の乳首が堅く尖っていく様は、アンバランスがゆえに淫猥だった。

 十分に乳首が勃起したのを確認して、今度はちゅぱちゅぱと音を立てて舐める。

「……ん」

「すげええっちくさい胸です」

「田上くんの扱い方が、えっちなんだよ」

「委員長の胸が僕をスケベにさせるんです」

「……いいよ。もっと私でスケベになって」

「言われなくても」

 委員長の脇に手のひらを当て、ゆっくりと乳房を寄せる。先端が尖った、綺麗な円錐形。

 その頂に、再び舌を寄せた。ただしょっぱいだけだったけど、ひたすらに舐めた。

 不意打ち気味に、乳首を口に含む。委員長は短く息を飲み込んだけれど、黙って僕の好きにさせてくれた。

「下も、いいですか?」

 問い掛ける僕に、そっぽを向いて唇を尖らす。

「いちいち、そんなこと聞かないで」

「様式美ですから」

「意味分かんない」

「分からなくていいですよ。……いきます」

 恐る恐る、下着に手を伸ばす。触れた瞬間、委員長の体がびくりと震えた。

「委員長、濡れてます」

「そんなこと、いちいち言わないでってば……もう、すごい恥ずかしい」

 両手で自分の顔を覆う委員長。

「だってほら、様式美ですし」

「変態」

「委員長の体が僕を変態にするんです」

「……田上くんも脱いでよ」


(字数制限やばいので中略)


 気怠い達成感。隣りには、愛しい人。

「……ねえ、田上くん」

「はい」

「さっきも言ったけど、私たち、恋人同士になったんだよね」

「はい」

 恋人同士、という言葉を、深く噛み締める。これ以上の幸せは、きっと他にはない。

「じゃあ、あのね、名前、呼んでほしい」

「……はい?」

「『委員長』じゃなくて、名前で呼んでほしいの。最初は、名字でもいいから」

 委員長の名前。設定されてないか、てっきり「委員長」って名前だと思ってた。いや、自分でも変だとは思ったんだよ、委員長氏は。

 しかも今はお互い素っ裸で、名札は付けていない。絶体絶命の大ピンチだった。

「照れなくていいよ、ほら」

 照れてるわけじゃない。今、僕の脳は、委員長の名前を思い出そうと、必死にフル回転を続けている。

 そんな僕の様子を、だんだん委員長がいぶかしんできた。

「……ひょっとして、私の名前知らない、なんてこと」

 駄目だ、こうなったら覚悟を決めるしかない!

「あ、愛してますよ……猪木さん?」

 委員長の目が細くなる。あ、やばい、選択肢間違った。

「へぇ、アントニオ。で、一応、聞いておこうか。その心は?」

「凹凸なしのストレートスタイルボディでございます」

「オチが分かりにくい!」

 哀れ。僕は委員長の延髄斬りで白いシーツに沈んだのだった。


俺は死ねばいい。

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