2006-01-22
■ *
生命科学の研究者と一般市民とを結ぶ科学コミュニケーション活動は、研究機関のプレスリリースや民間のコミュニケーションサイト、科学実験教室、ゲノムひろば、サイエンスカフェと広がりをみせている。
独立行政法人 理化学研究所
http://www.riken.jp/index_j.html
http://www.jst.go.jp/press.html
次世代バイオポータル試行版 Jabion
理研、JST、Nature、Scienceのプレスリリースは特に優れており、現在新聞が掲載する最新の科学ニュースのほとんどを占めている。Jabionは主にJST関連の最新の成果を分かりやすい日本語で解説している。
http://www.brh.co.jp/s_library/j_site/index.html
言わずとしれたJT生命誌研究館による研究紹介サイト。
くらしとバイオプラザ21
BioTechnology Japan
http://biotech.nikkeibp.co.jp/BIO.jsp
日経BP社のバイオ関連ニュースサイト。ここのメールマガジンであるBTJ/HEADLINE/NEWSは生命科学関係者に購読者が多い。
FOOD SCIENCE - BioTechonology Japan
http://biotech.nikkeibp.co.jp/fsn/index.jsp
食に関わる問題を冷静な視点で取り上げている。
http://biowonderland.com/BioWorld/MioSen/
東京農大在学中のタレント・加藤未央によるバイオの解説をふくむ日記。協和発酵のBioWorld内。
実験教室・バイオ教育のリバネス
ゲノムひろば
http://www2.convention.co.jp/hirobag/index.html
サイエンスカフェ・ポータル
http://cafesci-portal.seesaa.net/
科学コミュニケーション・リンク集
http://scicom.jp/science-communication/index.html
関連エントリ
描いて造って、魅せる分かる - [ok]どう分けると良いか?
http://d.hatena.ne.jp/Membrane/20050218/p1
以前、インターネットにおけるアウトリーチ活動では「まずブログを書け」と言われた時期があった。
http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/ARG/041.html#RR
Wing (Writing Investigators Network Group)
が、ブログを書く研究者(やその卵)が増えてきた昨今では、「研究者の日記は読み物としてつまらない」という声が聞かれる。
ネットを通じて研究室のアウトリーチ活動をするならばホームページでしょうし、研究室を巡る日々の活動ならば研究者(ボス、院生、学生)のブログですでにいくらでも公開されているということです。蛇足を申し上げると、森山さんや代表理事さんのおっしゃっているような「楽しい研究生活」そのものが今やあちこちで破綻しているという事実もありますので、それを公開することが本当に良い「アウトリーチ活動」になるのかどうかについても常に点検する必要があると思います。
ブログは研究活動のアウトリーチには向いていない
”研究する喜び、悲しみ、その他研究者として生きる姿”を見たり、”知的興奮(している人の様子)をもっとブログで読みたいな”と思って見ることはできても、分野外の人が「なるほど」と思うようなことは、なかなか見つからない。アウトリーチ活動を意識するなら、読む人のことをよく考えて書かなくてはならない。頻繁にアップすることも必要である。毎日の生活の中で、そこまで時間をもつことは不可能なこともある。
ブログによる発信とは - cony diary
最終的に、理系の研究者(志望者含む)がブログに何を書くかというと、ただの日記に成らざるを得ない訳です。ネタを仕入れる時間がないし、なおかつ1日の大半を使って自分で仕入れたネタは全て公に出せないし出しても理解されないのです。必死に訳した論文をブログで発表しても、反応は薄いし同業者は無言でかっぱらって自分の論文にコピペするしで、ろくなことはありません。結果、知り合いや友人との交流のためだけにブログを利用することになるわけです。そこにあるのは楽屋オチのみ。mixiに研究者が多い理由もこのあたりにあるんじゃないでしょーか。
理系の研究者および研究者予備軍のブログは日記にならざるを得ない - ラブラブドキュンパックリコ
しかしながら、現状ではネットにおいて旬の情報を発信するにはブログが一番流通しており、生命科学においてもいくつかの有力なブログが生命科学的な独自の見解を発信しつつある。
Orbium -そらのたま-
新聞が扱うような面白い話題をクリップし、ひと味解説を加えている。プレスリリースを疑う所がないのが少し残念。
柳田充弘の休憩時間 Intermission for M. Yanagida
今ではかなりの生命科学者が眺めていると思われる有名研究者のサイト。
5号館のつぶやき
北大科コミ講座でより有名に。一般の話題も冷静な切り口で解説している。
幻影随想
http://blackshadow.seesaa.net/
ファン教授の疑惑などで一躍有名に。
今後は、これらのブログのように固定客が獲得できるブログに加えて、固定したブログを読まなくても人気の記事を抽出するソーシャルブックマークを活用して、ブログによるコミュニケーションが進んでいくと考えられる。
http://b.hatena.ne.jp/hotentry
科学者リング
http://scientist.ring.hatena.ne.jp/
サイエンス -Blog People
今日のその他の日記
■[sts][books] 「新しい高校生物の教科書」
新しい高校生物の教科書が出ました。
新しい高校生物の教科書 - 講談社BOOK倶楽部
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2575078
新しい高校生物の教科書 - 5号館のつぶやき(編著者の1人のブログ)
http://shinka3.exblog.jp/3405864/
かねてから*1高校生物は、「現代社会で生きるのに必要な知識」を考えたとき、他の理科に比べて圧倒的に少ないのではないか?といつも問題意識を持っていました。
特に、
・生物をどう科学的に扱ってきたか?
が高校生の段階で重要なのに、しばしば強調されていないのではないか、という点が気になっています。
健康食品ブームを見れば、
・何を知るにも「コッホの原則」的な考え方が欠かせないこと
・in vivoの実験とin vitroの実験がしばしば違うこと
は全く世間に浸透していない気がします。
そして、それに続く
・遺伝学的な考え方とそれでわかった遺伝子群の多様な働き(例えばcdcの多様性、階層性)
が生物学という学問を知って、これからの情報を考えるのに欠かせない気がします。
新しい高校生物の教科書の帯には「これだけは学んでおきたい!現代人のための「検定外教科書」現代社会で生きるために必須の科学的素養が身に付く」とありますので、もちろん上のような内容を含む教科書なのではないかと期待していました。が、結論として言えばその期待は裏切られたようです。
この本では、高校生物の教科書に出てくる内容が(もとの高校生物の教科書だとほとんどとりつく島がないのですが、)少し興味を持たせるような感じで博物学的知識としてたくさん載っています。確かにどの内容もある程度、高校から大学につながる内容だとは思います。優等生のノートといった感じでしょうか。ボクは最近生物好きなので、高校生物のまとめとして楽しめました。
が、帯にあるように「現代社会を生きるのに必要」といわれると疑問符を付けざるを得ません。そもそも、生物をあんまり好きじゃない人は、これを最後まで読み解けるのでしょうか?原核生物の扱いや生物間の関係性の扱いが非常に小さいので、植物や菌類をここまで知る必然性が小さいような気がしました。ただ、特に植物の項目については、他ではあまり見かけない資料写真やトピック的な内容が掲載されており、植物に愛着のある人には興味を喚起する内容となっております。(これは著者の中に、クイズ 植物入門の田中先生がおられるからでしょうか。)
しかし、現代社会との関係といえば、遺伝子操作の項も注目されるわけですが、この項はかなり期待はずれでした。
どの項にも、最初にクイズがあるのですが、そのクイズが
「遺伝子組み換え作物は安全といえるのか」
(1) 動物実験によって十分に安全性が確かめられているから心配はない
(2) 安全性は長い期間かけて確かめられたものではないので、まったく危険性がないとはいえない
(3) 危険なので食べるべきではない
という設問で、答えが
(2)
とのことなのですが、これは(1)も正解でしょう。
現在、私たちが食べている作物で、安全性が長い期間かけて確かめられている作物ってあるのですかね?
実際は、野菜だってお米だって、かなり最近に出来た新品種を食べているわけです。人間の文明は南でしか育たなかったイネをどんどん北でも育てることが出来るイネへと遺伝的変異を蓄積させ、アンデスの雑草を大きな実がなるトマトへと劇的に変えて生きてきたのです(それが人間文明の本質でしょう)。誰も調べてないですが、単純な品種改良ではゲノム中にかなりの箇所の変異を抱えているでしょう(そうでなければ、品種は改良されません)。
しかし、ジャガイモには芽に含まれる毒があり、トマトにもほぼ同様の毒を作る能力があり、重要な食中毒原因の一つに数えられています。この毒を作る能力が、普通に行われている単純な品種改良の結果として、いつ表に出来てくるやもしれません。
遺伝子組み換えなら理論上、元の品種から1カ所の変異でつくれるのに、交雑による品種改良においてはかなり多くの変異が入ることは、重要な基礎知識ではないでしょうか。そして、もし「長い期間安全性を確かめないと心配ないとは言えない」のならば、ほとんどの農作物は心配した方がいいということを記載すべきです。
または、次の設問として
「非遺伝子組み換え作物は安全といえるのか」
(1) 動物実験によっては全く安全性が確かめられていないが、心配はない
(2) 安全性は長い期間かけて確かめられたものではないので、まったく危険性がないとはいえない
(3) 危険なので食べるべきではない
(4) イネは外来種であるにも関わらず、村々の風景を激変、画一化させ生物多様性を損っているので、駆逐すべきだ。
とでもして、答えを
(2)
と書いておけば、フェアというものです。
そのほか、もし遺伝子操作の事を検定外のことも含めて書くならば、原核生物の遺伝子組み換え生物について書かないのは不自然な気がします。私たちの医薬品は、遺伝子組み換え生物と切っても切り離せない関係にあるはずです。
と、遺伝子組み換えについては特に専門ではないのですが、あんまりにあんまりなのでコメントしてみました。
専門について言えば、p.73に
リン脂質の膜だけでは細長い形をとることはできないので、細胞の内側には細胞骨格という、細胞の形を変えたりその形を維持したりするための繊維状の構造がある。
とありますが、リン脂質の膜だけでも細長い形になります。リン脂質が1種類だけの膜なら球*2でしょうけど、普通は多種の脂質が混じっていて、その中には細長い形になるものもあります。脂質だけで作ることができる形が実際に何らかの機能と結びついているか否かは、最先端の重要なトピックの一つです。多分、細胞骨格は後半の記述のようにリン脂質だけでは実現できない力学的な構造や、機動的な変化を行うために活躍していると思います。
と、期待はずれだ、遺伝子組み換えの説明は偏っているだ批判しまくってしまいましたが、総じて言うと、青臭さも含めて高校で優等生のノートをコピーしたようで、高校時代に生物に没頭するのを逃してしまった人に非常に良い本だと思います。
・コメント欄に編著者の方からコメントをいただけました!
・1/24 01:00 後半部に追記
・1/24 14:50 追記し切れていなかった部分を追記
今日のその他の日記
■ *
先ほどのエントリに書いた「新しい高校生物の教科書」には、項の最初にクイズがある。
真核生物の遺伝子の本体(実体)は何か。
クイズといえば、化学同人の月刊「化学」でも、科学リテラシー研究会がクイズ記事を掲載している。
こたえてナンボ ぼくらの科学リテラシー
http://www.kagakudojin.co.jp/kagaku/literacy/index.html
しかし、どちらのクイズも、解答があまりに直接的(実用的?)すぎて、学習効果が低いような気がします。
ねえねえ知ってる?と明日の会話のおかずにするのも難しいし、クイズを解き終わったら忘れてしまいそうな気がしませんか?
クイジングというマーケティング手法を提案する弘中勝さんは、顧客と語らえ!クイジング入門で、効果的なクイズの作り方を述べています。
- 作者: 弘中勝
- 出版社/メーカー: 現代書林
- 発売日: 2005/09/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- クリック: 5回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
例えば、訴えたいものは直接クイズにせず、
「現在、世界で最も人口の多い国は中国です。では、2番目に人口の多い国はどこでしょう?」
「えっ、1番目の中国は分かるけど、2番目…? アメリカ合衆国?」
「はずれ。正解はインドでした!」
「へー、インドって世界で2番目に人口が多いのか!」
のように、1問目は知識欲を喚起する問題にして、2問目以降で本当に伝えたい内容を伝えられるよう、知識の流れを誘導すれば効果的なクイズになるとし、効果的な誘導のためにどうすれば良いか解説しています。
生命科学への知識欲を引き出す弘中勝が、まさに求められているのです。
クイズといえば、最近ブログ上ではこんなクイズがありました。
gcatagcacgcccccccgtattagaacgagtggtagtacgaagcgcgc
同業者向けに。
今年もよろしくお願いします♪
文字化けじゃないです。
暗号。
ヒビノデキゴト。- 2006年01月01日
このクイズに対して、複数の(バイオインフォマティクス系)関係者のブログが反応しました。
新年問題 - h09ed
http://hoged.tdiary.net/20060102.html
http://bonohu.jp/t/20060102.html#p03
某所の問題への解答・BioPerl編 - chalk-less::weblog::thecla
http://chalk-less.org/~thecla/d/?date=20060103#p01
生命科学関係者で無い方は、Translate tool - ExPASyに文字列をコピーし、アミノ酸の一文字表記で見てみると、暗号の意味が分かるでしょう。
このクイズのこれまでにない特色は、ひとひねり頭を使うところです。生命科学の知識を使ったパズルゲームとして、知識だけでは解けない面白さがあるのです。
そういう意味では、理研CDBのEmbry王に近い試みのようにも思えてきます。
Embry王 理研CDBゲームカード
http://www.cdb.riken.go.jp/jp/index.html?CDBdirect#05_development/0506_cardgame03.html
ブログ界には、このような頭を使って学問に親しむ活動を既に実践されている方がおられます。結城浩さんです。
結城さんは普段からブログでクイズを実施し、また、数学を題材にした小説や各種、入り口となるようなわかりやすい本を執筆され、人気を得ています。
音楽シャッフル・クイズ - 結城浩の日記
http://www.hyuki.com/d/200510.html#i20051020190000
テトラちゃんと相加相乗平均 - 結城浩の日記
http://www.hyuki.com/d/200511.html#i20051122144014
これからの生命科学には少なくとも弘中勝さんと結城浩さんのような人が必要だと思うのですが、みなさん、どう思われますか?
今日のその他の日記
*1:自分が高校生だったときは、何か違うという理由で高校生物を必修分しか取らなかった。そして、理1に入学し紆余曲折して生物学科に進学し、生物で教育実習しながら、やっぱり違うと思い始めた。
*2:リン脂質によっては単一種では膜を作れないものもある。


