透明雑誌ジャパンツアー@京都メトロ (2011.10.29)

台湾のロックバンド「透明雑誌」の来日ツアー。
ナンバーガールからの影響丸出しなのがいっそ清々しい透明雑誌のライブも勿論楽しみだったのだけれど、更にその対バンで進行方向別通行区分と宇宙人が来る、ということでライブ発表から本当に楽しみにしていたライブ。

宇宙人

高知出身の10年代っぽいポップバンド。
相対性理論とタイプが似ているのだけれど、相対性理論よりはトラック重視でポップ弱め、影響を受けているような印象はない。
終始マイペース。独自の世界感の演奏を披露して終了。京都のフェスに出ると評価されそうなのだけれど、今日のような、ロックを求める観客からの反応は今ひとつだった。(「深夜メトロ」でない)「夜メトロ」の観客っぽい見守り方ではあったかな。

進行方向別通行区分

相対性理論のドラム西浦さんが超新星β(たまに名前変わる)としてドラムを、ベース真部さんがくそネジ(たまに名前変わる)としてギターを担当するバンド。
……という相対性理論ありきの説明をすると、東京の人は「このにわかファンが!」と怒るのだろうなあ。相対性理論よりこちらのバンドの方が歴史は古いので、進行方向別通行区分相対性理論の礎を作ったと言うべき。

音源は全国流通してないわ、ライブは東京でしか演らないわで、ネット越しでしか接点が無く、関西に住んでいる限りライブを観ることはないだろうなあと思っていたのだけれど、今回遂に関西でライブをしてくれるということで本当に楽しみにしていた。

入場SEは戦場のメリークリスマス
「リンとして電話」からライブがスタート。まずは生でもボーカル田中さんの声がキレイなことに感動。そして、特徴的なリフのギターとベースに馬鹿テクのドラムが突き刺さってくる。ライブ映像はYoutubeに幾つか上がっているけれども、やっぱり生の演奏は情報量が全然違うわ。特にメンバー全員の目力の強さに圧倒されてニヤニヤする。

「海の王者シャチ」や「水の惑星ハイレグーン」辺りで、進行方向別通行区分の事を知らない観客もこのバンドがどうやら「変」だということに気付きだし、ちらほらと失笑が漏れ出す。様子見していた観客も反応が柔らかくなってきて、徐々に観客も進行の世界に飲まれていく。

初聴でもノリやすい「タイフーン17」などで観客の心を掴んできたところ、盛り上がりの一つの山が「宗谷岬はるかなり」で到来。ラストの「I CAN FLY〜」をメンバーが一人ずつ、歌いながら舞台袖にジャンプしてはけていく、という演出で皆声を上げて喜ぶ。

全員がジャンプしてはけ、これで終了?との雰囲気が流れ出した頃、場内に流れ出したのが入場SEとしても流れた戦場のメリークリスマス。そしてしれっと普通にメンバーが再入場して観客爆笑。この演出で完全に観客を掴んだ。

ここからが後半戦。
理論武装」や「宇宙警察サクラ・ダーモン」を演ってくれたので感動。これらの曲ではイントロで歓声が上がっていたので、恐らくこのライブは東京からの遠征組も少なからずいたんだろうな。
後になるにつれ「鳴門海峡で、家、建てたけかけた(?)」などとボーカル田中さんのMCの意味不明さも増し、観客の失笑やざわつきも加速。

ラストは「ダイナマイト・卒業式」。ギターのリフのメロディで「yeh×5 wow×5」を、またメンバーが一人ずつ歌いながら舞台袖にはけていく再度の演出で観客爆笑。最後に一人残った超新星βはしれっとサバイバルダンスのサビを歌って帰っていった。ルミナスオレンジでは真面目にドラムサポートしてるのにお茶目さんだわ!。

3バンドの対バンの曲数とは思えない15曲で終了。セトリ覚えようと思ったけれど知らない曲が多すぎて曲カウントだけで断念。上げていないところでは「俺ファントム」とか「独身ボクシング」とか「不惑(誘惑)」とか「梅を吸いすぎた男」を演ったかな。

「才能の悪ふざけ」だった。ゲラゲラ笑った。このライブは癖になるわー。独占していた東京が羨ましくて、ライブがあったら東京遠征まで考える程だわ。

ライブでしか販売しないCDも今回は物販で4種類用意されていたので、ありがてえありがてえと思いながら全種類購入。もうストリーミングで聴かなくて良いんだ。嬉しい。

透明雑誌

台湾のナンバーガール、なんて言われる透明雑誌ナンバーガールや、ナンバーガールが影響を受けているバンド(PixiesやTelevisionなど)等の影響丸出しのバンド。
ここまであからさまなフォロワーは日本では出てこないだろうなーと。日本でやったらパクリだパクリだとネットで叩かれると思う。

EIGHT BEATERのイントロ丸出しの「夜明け晩餐」でスタート。三曲目辺りで演った「僕たちのソウルミュージック」でモッシュ組が前に乱入してきてパンクバンド的な盛り上がりに。そこからの「ANORAK」の盛り上がりは鉄板。

音源を聴くに、もしかすると捏ねくり回すような線の細い演奏をする可能性もあるなーと思っていたのだけれど、心配は杞憂だった。別段演奏にテクニックがあるわけではないのだけれど、観客を盛り上げるようなエモーショナルな演奏がとにかく真っ当に上手い。恐らくは台湾で相当のライブ経験を積んでいるのだろうな。台湾オルタナ界では人気者のはずだ。パワーがあってライブで映える正統派バンドって日本でもなかなかいないので羨ましいわ。

後、驚いたのはボーカルのMCが、辿々しいながらもちゃんと日本語を勉強したそれだったこと。カンペを読むようなMCでなく、内容を考えながら、日本語を思い出しながらのMCだった。その辺りのMCのクオリティも盛り上がる要素の一つだった。
そういや、韓国のチャン・ギハと顔たちも日本語を勉強したMCをしていたんよね。ロックバンドにとっても日本市場ってそんなに魅力的なのかしら。外資系レコード店でニッチに売れるだけなのにねえ。
透明雑誌の場合は、恐らく単純に日本が好きなのだろうけれどね。SHAZNAなんて単語がMCに出てくる位だし。

ラストでは観客にダイブしてメトロの天井によじ登るという、メトロが壊れちゃうパフォーマンスで怒濤のように終了。アンコールはドラムが手を痛めた影響で一曲だけだったけれど、それでも全体として満足できたライブだった。

サマーソニックが似合うと思うのだけれど、クリエイティブマン、来年どうかな?