真犯人の真意を汲むための見立て(ネタバレあり)

魔法少女まどか☆マギカのネタバレ注意。

見立て

PC遠隔操作「真犯人」からメール届く 「ミスしました。ゲームは私の負けのようです」

まず写真に着目する。

首吊り自殺を仄めかすなら中央のフィギュアはマミさんであるべきだ。少なくとも、まどかではない。ここまで完璧に事を運んできた犯人が写真を撮る際に「マミさんのフィギュアが手元にないからまどかでいいや」と妥協するとは考えにくい。

ここまで足が付かないよう行動に気を配り、かつ警察を挑発するようなメールを突き付けて劇場型犯罪を作り出した、このようなタイプの犯人が送ってきた写真に対して考えるべきは、勿論「見立て」である。

犯人

まず、まどかの横にキュゥべえがいることに気付くべきだ。これは、犯人が複数犯であることを示している。魔法少女の中でなぜ犯人はまどかを選んだのか。キュゥべえを側に配置しても違和感が無いキャラクターである点が、大きな理由の一つであると考えられる。

まどかとキュゥべえの原作での関係性から推測するに、

このような役割分担だったと想像される。

その周囲

フィギュア以外に目を向けてまず気付くのが、下に引かれている「新聞」と囲うように配置されている「LANケーブル」だ。まどかとキュゥべえとの位置関係を踏まえると、これは新聞が「マスコミ」、LANケーブルが「インターネット」のメタファーであることは容易に導き出せる。

まどかとキュゥべえが新聞の上に位置しているのは、被疑者を犯人として扱ったマスコミを翻弄し、犯行声明にて世間の話題を掌握したその力関係を示している。そして、周りを取り囲んでいるLANケーブルは、犯人の近くに存在するが、まだ犯人には辿り着けていないインターネットの存在を示しているのだ。

さて、写真にはまだ写っているものがある。ガムテープとカッターだ。首吊りを示唆するだけならこれらは写す意味が全くないわけだが、わざわざ写真に収まっているこれらにも、勿論意味がある。この見立ては消去法でも分かることだが、これが「ワルプルギスの夜」こと「警察」だ。

ガムテープとカッターは、(ガムテープで塞ぐように)被疑者の口に蓋をして、(カッターで脅すように)自白を強要したとされる警察の取り調べの暗喩とみて間違いないだろう。LANケーブルのコネクタがこの「警察」と真逆に位置しているのは、インターネット技術に疎かった警察への痛烈な皮肉だ。

ワルプルギスの夜に立ち向かおうとしているまどかとキュゥべえ。これが見立てのテーマだ。

文面

さて、原作を思いだそう。このワルプルギスの夜と立ち向かうシーンにて、キュゥべえにとって予想外の出来事があった。それは、魔法少女になったまどかの願いだ。

今回の犯人からの文面、これは思想面担当であるキュゥべえからのものだろう。となると、ミスをしてゲームに負けたのはキュゥべえで、その原因はまどかの行動にあると考えるのが自然だ。思想面担当の犯人が希望していたように事が進まなかった、技術面担当の犯人と行き違った、これこそが文面の真意だ。

今後

まどかの行動、まどかの願い。これは何だろう。

原作ではまどかは願いを叶えて「概念」となった。これを今回の犯行に照らし合わせて技術面担当の犯人が概念化できる内容を推測すると、「犯行方法が共有される」という解が導き出される。

ここからは想像になる。

キュゥべえこと思想面担当は、ワルプルギスの夜こと警察の権威を崩壊させることが目的だった。ただ、まどかこと技術面担当は、警察の不適切な捜査方法を指摘したかった。

犯行声明の発表までは二人が行動する方向は一致していた、しかし犯行声明後に二人の方向性は異なってしまう。まどかと共にこのまま身を潜め、警察を牽制する存在であり続けたかったキュゥべえ。しかし、まどかは自らの手法を公開することで、警察や世間が、より安全な技術知識を持つ世界を望んだのだ。

結果、二人は袂を分かつこととなり、まどかによって手法が公開されることになる。まどかを失ったキュゥべえにとってこの結末は失敗だ。

恐らくまどかはインターネットのどこかに犯行方法のヒントを落とすだろう。もしかすると、もう落としているかもしれない。きっとヒントはインターネットの「法」を作り替えるだろう。

そしてまどかを失ったキュゥべえは、別の魔法少女=技術者を探すだろう。まどかによって作り替えられた世界でもう一度、自分にとっての秩序を取り戻すために。