概念についての問い(信念についての問いではなく)

もしわれわれが、アザンデ族が信じている事柄という観点で彼らの妖術制度について考えるとすれば、「では、彼らが信じていることは真なのか偽なのか」という問いを招いてしまうと思われる。私はここで、この問いを招くと思われると述べた。それは実際問題、「信念」(たとえば、「他者の心に存在する信念」)と呼んでまったく問題ない事柄について、しかしつねにこうした問いを立てることができるわけではない、と私は考えているからだ。とはいえしかしこの文脈においては、議論の主題はアザンデ族の信念なのではなく、アザンデ族の概念なのであると述べた方がよいだろう。もちろん、アザンデ族の概念は彼らのもつ信念のなかで用いられ、機能する。そして、特定の文脈において彼らの持つ様々な信念を学び、またその文脈のなかでこれらの信念が彼らに対して意味することや、生活のなかにおけるそれらの信念の意義を探求することによって、アザンデ族の概念が何であるかをわれわれは学ぶことができるのである

  • Winch, P., 1970, "Comment," Borger, R. and F. Cioffi, eds., Explanation in the Behavioural Sciences, Cambridge U. P., 257.