少女不十分 / 西尾維新

少女不十分 (講談社ノベルス)

道を外れた奴らでも、間違ってしまい、社会から脱落してしまった奴らでも、ちゃんと、いや、ちゃんとではないかもしれないけど、そこそこ楽しく、面白おかしく生きていくことはできる。

この小説で語られるのは、とある小説家の物語作りの基礎になった出来事。
作家志望の大学生と少女が織りなす、せつない物語がいま明らかに。


西尾先生の最新作『少女不十分』です。
これはすごかった。
帯にある「この本を書くのに、10年かかった」という言葉は偽りじゃなかった。


西尾先生の自伝ような描写っぷりに、本当にフィクションなのか疑ってしまう内容でページを進めるのが止まらなかった。
有川浩先生の『ストーリー・セラー』に近く、何を思って物語を書いてるのかが垣間見えた気がします。
ただ、嘘つきだから作家になったと作中にあるとおり、全てが本当ではないのでしょう。
それでも、物語込めたメッセージはきっと本物だと思います。
今まで描いてきた作品があったからこそ、この10年があったからこそ、できた物語でした。


主人公が語る自分像はかなり冗長な部分があるのですが、そこはそこで結構楽しめました。
特に三十路に対する見解は、後数年で三十路に突入する私にとって、共感するものが多かった。
成熟していないまま、歳だけとってしまった感じがするのは、私だけではなかったんだなと。


中盤から終盤にかけては一気に物語に引きこまれ、42章では気づいたら涙が零れてました。
最後も綺麗にまとまってて、読後感はかなり爽やかでした。


個人的には凄く楽しめたのですが、逆にこの物語が初西尾作品だった人はどんな感想を持つんだろう。
化物語のようなラノベっぽいノリを期待していた人には合わないだろうなとは思いましたが…。


次は今月末に出る鬼物語
楽しみにしてます。