- 作者: スーザン・E.スクワイヤ,ロルナマクドゥーガル,シンシア・J.スミス,ウィリアム・R.イーク,森田松太郎,Susan E. Squires,Lorna McDougall,Cynthia J. Smith,William R. Yeack,平野皓正
- 出版社/メーカー: シュプリンガーフェアラーク東京
- 発売日: 2003/12
- メディア: 単行本
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世界に8万5千人の従業員を擁し五大監査法人の一つだったアーサーアンダーセンが、破綻したエンロンの会計処理を巡って有罪となり、消滅してしまった経緯や背景を、元社員が記した本。専門用語が結構でてきて、固有名詞もたくさん出てくるので、読み進めるのに苦労したが、いかに成功していた大会社でも、あっという間に崩壊してしまう恐ろしさはよくわかる。また、有罪となったきっかけが、社内弁護士が送った一通のEメールだということも衝撃的ではある。misleading(誤解を招く)という言葉を変更するようにと助言し、自分の名前を削除するように要求した内容で、これを陪審団が、意図的な変造で証拠隠しのように判断したという。(p23:訳文は意味が取りづらいところあり)
また、背景には、始まりは素晴らしい創立精神をもったまともな会社だったのが、規模の拡大と、監査だけではなくコンサルティング業務が増えて利益が出てきたことで徐々に会社が変質していったことがあげられている。
p200:「公共のためにサービスをしながら利益を維持しなければならない点である」
p209:「かつては公共のために尽くすということに誇りを持った会計業界の価値」が劣悪化し、それが影響してアンダーセンの価値のシステム体系を堕落させていったのだ。ポール・ボルカーのような人達は、監査法人がコンサルティングに関与するようになったことが、ひいては、アンダーセンの失敗に繋がったとし、「監査法人がコンサルティングビジネスに深く関わったことで、監査法人の文化が変わってしまった」と言っている。
また、一事務所のローカルな問題にとどまるはずが、全体まで波及してしまったことも問題で、監修の森田松太郎氏は、企業を人にたとえて、末端に起きたことも脳に伝わらないと対策が講じられずに死に至ることがあるとして、「組織の中における情報の伝達、共有は大変重要である。確実な情報を早くつかみスピーディに対処することが肝要である」(p214)と説明している。
「企業は社会の変化に絶えず見直す柔軟性が必要である」という監修者のことばは、わかりやすい。
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