読書録

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勤勉は美徳か? 幸福に働き、生きるヒント

 1963年生まれの著者の「幸福に働き生きる」というテーマと内容に、とても共感した。はじめに、ヒルティの幸福論を引用して「人生の中で一番長く使う時間を幸せに過ごすこと」が大切で、多くの人にとっては仕事をしている時間を意味する(p16:『生きる喜びは 仕事ととともにある ヒルティの幸福論』齋藤孝訳・解説)から論を進めていく。労働は苦役か創造p42か、生活のためにお金をかせぐだけだと不幸が忍び寄り、むしろどれだけ自分なりの作品をつくり出すことができるかp46、さまざま事例を引きながら論を進めてく。

 あとがきの中でで終章について、「第1章で提起した主体性の意味をもう一度問い直し、幸福な働き方の鍵は、一人ひとりの日常の仕事のなかで創造性を追求し、そこに非物質的な満足を見出すことであることを確認しました。とくに重要なのは、時間主権を回復することです」(p255)とし、ホワイトカラー・エグゼンプションについて、「時間規制を取り除き、労働者が仕事において時間主権を取り戻し、創造的な活動をするための主体性を実現することにあります」という主張している。この点はさまざま議論があるが、何が幸せかを考えた場合、とても重要なポイントだと思う。


出版した光文社のサイトに目次あり⇒ http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334039080


 引用したいポイントはたくさんあるが、いくつかを以下に
◇正社員の「いつでも」「どこでも」はこれまでは受動的な意味だったが、テレワークでは社員自らの意思により能動的な意味になるp102⇒場所的時間的に自由な働き方が一般化すると、転勤や残業といった問題は生じにくくなり、「ITは労働者の働き方のための重要なツールといえるp106」+もう一つ「何でも」があり、プロとしての働き方が必要になるp124

◇職務専念義務をめぐり、大阪府橋下知事時代に勤務時間中の全面禁煙が話題になったが(p113)、私用メールなど裁判例では「会社にどれだけの損害を与えたか」(p119)がポイントになる→メールの監視はプライバシー保護の観点から要件ありp122⇒会社の職場環境配慮義務違反になる可能性もあり典型はセクハラパワハラp123⇒就労することは義務か権利かで論点あり⇒適職請求権は会社の人事上の裁量から難しいが、「幸福な職業生活を送っていくことができる権利としてキャリア権の重要性を仕事と幸福の観点から再認識しておく必要があるp137+社内不倫で解雇をめぐる裁判で、会社に実害がなければ処分は無効p219

◇夫が500万円以上であれば日雇派遣のパートをしてよく未満はダメとか(p144)、女性が産後8週間は就業させてはならないなど、法律が労働者のために一定の働き方を禁止したり休みを強制したりするなどの余計な介入によって、かえって労働者の選択肢を減らし、不幸の原因を作ってしまうおそれがある(p148)+残業に関する規定も

◇日本の労働法には、仕事と休みをきちんと分離する考え方が弱く(p177)、ドイツのような閉店法がないため、年間休業日1日のような状況が出現(p179)+最高裁は、社員が長期連続休暇をとろうとしても会社から時季変更権を行使されても文句が言えない(時事通信社の記者が1か月不在になる年休申請で、2週間ずつに分けるよう求めたが無視)p186⇒意識改革の必要性も

◇自分のセールスポイントは、決して会社が使いやすい人材であるという意味での勤勉性にあるのではなく、企業が求める技能を提供できるだけの高いプロとしての能力にある、と言えるようにならなければなりませんp222⇒陽気で、自由で、幸福に。

◇『下町ロケット』の佃製作所のように、仕事に没入している社員に、長時間労働だからダメというのは野暮で、満足していない場合は苦役(labor)だが、成果(work)が得られた時の快感はたとえようもないもので、「そうした働き方を抑制していては何も生まれてきません」p235⇒創造的な活動においては、法廷労働時間など不要+自営的に働いた方がよい+自由に働かせた方が生産性が高くなる+縛りをなくすということは、会社と社員、双方に利益となるp236⇒★ホワイトカラー・エグゼンプションの思想★

◇労働時間の規制を撤廃し何時間働いても割増賃金を払わなくてもよいという制度に「残業代ゼロ」というが皮相な見方。会社に残業代を払わせないことによって、社員が思う存分好きなだけ働けるようになるというのが、この制度の主眼+仕事と休息の時間配分といった時間管理は本人に任せるべき+健康被害の懸念については、会社主導のチェックは必要+割増賃金があるとたくさん働く可能性もあり、欧州では割増はなくドイツでは休暇の積み立てになる⇒「仕事における時間主権と幸福追求権を、社員が回復する試みとだとみるべきp239⇒創造的な仕事をする人の数が少なく、イノベーションを支える人材が不足している、創造性にあふれた優秀な人材の育成は喫緊の課題p242


←多くの部分を概略引用したが、この論点はとても難しいが、ICTの急速な発達、アメリカのグーグルやフェイスブックの働き方、などなど考えると、「いつでも」「どこでも」という働き方が、一つの鍵を握っているとは感じる。子育てや介護など、時間や場所に制約があるケースでは、この方向ではないかとも感じるが、働きすぎないように意識改革も進めていく必要もあり・・・引き続きいろんなケースを見ていきたい。


{16/7/15-20読了、記入は24}