気がつけば被告? イライラ社会の法律トラブル (日経ビジネス人文庫)
- 作者: 山田薫
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2016/08/02
- メディア: 文庫
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日経新聞電子版ライフコーナー(現NIKKEI STYLE)の連載「法廷ものがたり」(全40回)が書籍化されたものとのこと。
裁判担当記者が、あまり知られていない裁判や判決とその後を紹介している。
原告側にモンスター的な提訴が結構ある一方、被告側にもなぜこんな不条理が通るのかと疑問を抱くケースがあり、いまの世相を切り取っている。
短編としてケースごと別々に読むこともでき、通勤電車の中で読むにはとても良いと感じた。
日経は、経済紙とのイメージが強いが、土曜の女性面など含め、こうした社会的な連載があるのは嬉しい。
発行した日本経済新聞出版社のサイト⇒ https://eb.store.nikkei.com/asp/ShowSeriesDetail.do?seriesId=D3-00019801C
備忘録として、印象に残った裁判ケースを、いくつか以下に引用↓
◇1-5:ホームヘルパー、悪意のブログ:「文化人もボケる」投稿で、プライバシー侵害と名誉棄損で、女性に150万、会社に130万円の賠償命令、高裁で和解⇒「この世で最も恐怖すべきは災害でも事故でもなく、人間の悪意と不満と自己顕示欲です」p44
◇1-7:SNSが招いた退学処分、保育士の卵の誤算:退学処分は違法、慰謝料は10万、入学金や授業料は返還⇒「私が将来母親になったとき、日常を赤裸々に公開し、コンピューターリテラシーすら持ち合わせていない保育者に子供を預けたくない。経営者も同じで、そんな人間を雇おうと思わない。友達や家族でも同じ。本当にバカなことをしてきたと反省してます」p55
◇2-8:倒れた夫、労災基準に挑んだ妻の闘い:倒れてから6年半後に、「部長の決裁拒否」は異常な事態と、高裁で労災認定の逆転勝訴に。「疾病と業務に因果関係があるかは個別具体的な事実認定の問題、基準に該当しない事例で当然のように因果関係が否定されるという論理的な関係はない」と、杓子定規に基準をあてはめる姿勢を戒めたp114
◇3-6:高原の別荘地、自治会、泥沼の内紛:不正請求など名誉棄損については元会長側が全面敗訴し自治会分断の傷跡深い&正常化をめざしていた役員は去るp153←同じようなことはいろいろあるものだと実感…知っているケースでは、裁判にならなくてよかったが。
◇4-2:熱血校長の通じなかったジョーク、不登校の理由は:貼り紙と不登校の因果関係なし判決確定、メモで「それで欠席しているわけではないのに母に『校長のせい』と言ってしまった…母の怒りとの間で困っています」←いわゆる学校現場におけるモンスター的な親の動き
◇5-4:アイドルからメール、サクラ商法の冷徹な実態:送受信2か月で590万、正社員20人バイト150人が日常的に業務、リーダーは組織的詐欺の罪で懲役5年6か月の実刑判決を受け控訴中、総額7680万円の賠償命令。バイトは「詐欺ではないという社員の説明を信じ、バンド活動の夢のためにやめられなかった」、被害女性は「善意の気持ちをもてあそばれた…だまされた自分が恥ずかしくて死にたい。毎日自分を攻め続けています」←このメールは、何度も受け取った覚えがある。組織的な詐欺活動があり、摘発から判決までこうした結末になっていたとは、知らなかった。あやうく自分も引っかかりそうになっただけに、どこまで信用していいのか…肝に銘じておかないといけない。
+この裁判が記事検索できるか調べたが現時点ヒットせず。国民生活センターのサイトには、6年前の2010年に、被害証明が困難だとして、注意するよう呼びかける内容にとどまっている⇒ http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20100901_4.html 「悪質な「有料メール交換サイト」にご注意!−「会いたい」「悩みを聞いて」「お金をあげる」というメールを安易に信用しないで!−
{2016/11/1-11/3読了、記入は11/6}