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Danas je lep dan.

2008-12-21 この前12月に入ったばかりかと思えば……

[]今年読んだ中で,特に印象に残った10冊

 さて,もう平成20(2008)年が終わろうとしている訳だけれど,今年読んだ本の中から特に印象に残ったものを10冊選んで軽く紹介してみたいと思う。

 勿論ユーゴスラヴィア関連とかナショナリズム関連とかのは抜いて。配列はどうしようか迷ったけれど考えるのが面倒くさくなったので読んだ順で。

 中世ロシア(ルーシ)は,モスクワ大公国以降の中央集権的なロシアとは違って,多くの都市国家が分立する緩やかな纏まりだった。その中で異彩を放つのが,貴族による寡頭制という政体を採用し,君主の権限を極力制限しようとしたノヴゴロドだ*1。本書は,発掘された「白樺文書」*2の読解に基づいて,中世ノヴゴロド史の泰斗である著者が,その実態を初心者向けに解説している。

 多少ロシアに関する知識はあった方がいいと思うが,なくても十分読める(と思う)。著者が新しい文書を発見した時の喜びとか,子供の落書きとか手習いとか,遺産相続についての文書とか,中世都市の諸相が生き生きと脳裏にイメージされる良書だ。

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

 ぼくは中学生の頃から数学や理科が嫌いだったが,それは計算などが煩わしかったというかさっぱりわからなかったからで,理論だけ聞いているというのは楽しい。物理なんてちっともわからないくせにシュレディンガーの猫について語ってみる,とか。

 という事でこの本は世の中の数学嫌いの同志たちにもお薦めできる,というかそういう人たちにこそお勧めしたい。数式の意味がわからなくても,それを解いていく過程を見るのは楽しい。数学界最大の謎が,古今東西何人もの数学者たちによって徐々に解き明かされていく興奮。下手なフィクションよりも遥かに面白いと断言する。

国際紛争―理論と歴史

国際紛争―理論と歴史

 軍板FAQで何度も言及されていたので読んでみた本。去年から読み始めてはいたんだけど読み終えるのに予想外の時間がかかってしまった。といっても難解という訳じゃなく,むしろ平易。丁寧に国際紛争の構図を解説してくれている。実際にアメリカで使われてる教科書なのだから当然か。

 第一次大戦第二次大戦の原因についての考察の辺りが,特に面白かった。

大学生の論文執筆法 (ちくま新書)

大学生の論文執筆法 (ちくま新書)

 色々な意味で大人気な千秋たん石原千秋教授の本。めがっさ厳しい授業で有名だけど,「石原節」が本書のあちこちから読み取れる。

 引用のやり方とか,註の付け方とか,当たり前の事が書いてある箇所はちょっと退屈だけど,それ以外は文句なしに面白い。流石文学者という感じ。ナショナリズム論とかカルスタとかにも言及しながら大学生に「知性とは何か」を説いている。

 笑った後に考えさせられた箇所。

 知的でない人間は,対話や議論を拒む。「いけないことは理屈ではなく,有無を言わさずいけないと教えなければならない,それが品格というものだ」などという人間に知性は存在しない。こういう知的でない言説が大衆受けするのは,「いけない」ことの内容を自分で勝手に代入して,現在の自分の立場を無反省に正当化できるからにほかならない。これが大衆の保守化である。平成大不況の中で疲れ果て,知的に考えることが面倒になってしまったのだろう。しかし,何度でも繰り返すが,そこには知性はない。(pp.135-136)

インシテミル

インシテミル

 文句なしに面白い! 米澤穂信渾身のクローズド・サークル。「実験」の為に集められた人たちが,予期せぬ殺人の発生で疑心暗鬼に陥っていく様を鮮烈に描写している。謎を解いた探偵役までもが猜疑の目で見られるようになる,という展開は凄く面白い。最初から最後までノンストップで読み切れる。そしてオチが秀逸。

 今年,ジュネーヴ郊外でCERNが設置した大型ハドロン加速器LHC)が稼働し,ブラックホールができるんじゃないかとか話題になったけれど,本書はそれが稼働した時に地球上のすべての人の意識が未来に飛んでしまった,という設定。

 主人公の物理学者は,未来に自分が誰かに殺されていた事を知る。彼は「未来の犯人捜し」に着手する。一方では,知ってしまった未来に絶望する人たちの姿が描かれる。成功できない未来,他の女性を愛している未来,その他……本書はSFミステリの奇蹟的な融合だと思う。

幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))

幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))

 言わずと知れた名作SF。人類の進化の果てにあるもの。オーヴァーロードの正体。凄く幻想的な寓話。これを,クラークが生きている内に読んでおくべきだったと激しく後悔。

別冊 図書館戦争〈2〉

別冊 図書館戦争〈2〉

 「図書館戦争」シリーズの最後の一冊。『戦争』『内乱』『危機』『革命』と続いた本編の「その後」を補完する形の別冊シリーズの2冊目。まあ,『別冊』の1巻が堂上夫妻の話だったんだから,この巻は当然柴崎と手塚のターン!

 高校生の頃からリアルタイムで読んできて(年がばれるな),ようやく迎えた最終巻に感無量です。『戦争』の時から格段に成長したけど未だに朴念仁な(?)手塚と,素直になれない柴崎の2人がもう可愛すぎる! 有川先生,ありがとうございました。

 でもあのドロドロな展開だけはガチで勘弁して欲しかった……(涙)

動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)

動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)

 あちこちで批判されている東浩紀の著書。2001年に出たものだけあって俎上に上げられている題材が皆古いのはご愛敬か。ぼくはとても面白いと思って読んだのだけど(「データベース消費」のくだりとか),ぼくみたいなヌルオタとは違うちゃんとしたオタクの人からみれば,確かに許し難いのかもなぁ,とは思った。けれど一読の価値はあると思う。

 というかこれ基本書ですよね多分orz

伝奇集 (岩波文庫)

伝奇集 (岩波文庫)

 読んだきっかけは『サマー/タイム/トラベラー』というSFで主人公が読んでいたからなのだけれど,実際に読んでみると凄かった。まさに「伝奇」。南米マジックリアリズムの先駆けみたいな人と聞くけれど,さもありなん。

 特に好きなのは「トレーン,ウクバールオルビス・テルティウス」,「円環の廃墟」。

 今年1年,こんな感じの本を読んできました。来年も,多くの面白い本に出会える事を祈りつつ,このエントリはお終いという事で。До свидания!

*1:ノヴゴロドの政体については,ノヴゴロド共和政とリューリクの末裔たち - nasturtiumも参照。

*2白樺の樹皮を削って書かれた文書。保存にすぐれ,大量に残存する。日本の木簡のようなものか。

MIBMIB 2008/12/21 18:42  幼年期の終わりといい、クラーク御大はすごい『SF作家』だったよなあ、と毎度のように思います。一番『好き』なのは別の人の『夏への扉』ですけど。
 あと、ロバート・J・ソウヤーはホミニッドが面白かったですねー、昔のSFって感じで。

RASRAS 2008/12/21 21:54 はじめまして。耕様のブログ経由でこちらを知り、拝読しています。色々勉強になります。
ソウヤー作品はミステリ要素が含まれたものが多くて私は好きですが、ゴールデン・フリース、イリーガル・エイリアン、ターミナル・エクスペリメントも面白いです(既読でしょうか?)。
今年はSF関係の著名人逝去のニュースが続き、しんみりしました。クラークや野田大元帥その他の方々は今、星々の海のどの辺りにいるのでしょうね。

ふぃふぃ・ふろりあふぃふぃ・ふろりあ 2008/12/21 22:47 ソウヤーは既に挙がっていますが、倒叙ミステリーな「ゴールデン・フリース」も良いです。ボルヘスの良さは言わずもがなということで。
ちなみに今年の歴史の本では、一般向けでチャールズ・C・マン『1491』や、専著で長谷川亮一『「皇国史観」という問題』を興味深く読みました。Mukkeさんなら、トンデモや歴史修正主義の界隈で長谷川さんを既にご存じかもしれませんね。

久間知毅久間知毅 2008/12/21 23:33 サイモン・シンの『フェルマーの最終定理』は読みましたね。
うーん……数学が専門じゃなくてもわかる数学ネタの作品で言うと、結城浩さんの『数学ガール』、小川博子さんの『博士の愛した数式』あたりも面白いかもしれませんね。まぁ数学がわかればさらに面白いんですが……。
……まぁ、私も数学専門じゃない人にその面白さを伝えていければいいのですがね……いろいろやっているんですが^^;

MukkeMukke 2008/12/21 23:40 MIBさん>
>『夏への扉』
あれもいいですよね! ちゃんと幸せになる,っていうのが。ピースがかちりかちりと嵌っていく快感もありますし。

>ホミニッド
うう,未読です。

RASさん>
はじめまして。

>ゴールデン・フリース、イリーガル・エイリアン、ターミナル・エクスペリメント
実は,ソウヤーは『フラッシュフォワード』しか読んでいないのですよ。後2作品はいずれ読みたいなぁと思っているのですが……

>今年はSF関係の著名人逝去のニュースが続き、しんみりしました
クラークはともかく,大元帥まで亡くなられたのは哀しかったです。大元帥については,Nippon2007の成功を見届けられて良かったんだろうと思います。クラークが天国への軌道エレヴェーターに無事乗れますように。

ふぃふぃ・ふろりあさん>
>「ゴールデン・フリース」
上でRASさんにも勧められているので,是非読まなければなりませんね。

>長谷川亮一
申し訳ないですが知らないです。ぼくは日本近現代史にそこまで詳しい訳ではないんです。すみません。

MukkeMukke 2008/12/21 23:48 久間知毅さん>
>数学が専門じゃなくてもわかる数学ネタの作品
『数学ガール』は知りませんが,『博士の愛した数式』は読みました。いい作品ですが映画化する程じゃねえよなぁ,と思った記憶が。

>私も数学専門じゃない人にその面白さを伝えていければいいのですがね
ぼくも東欧知らない人に東欧の面白さを伝えていければいいと思っているのですが,如何せんブクマがつかないというw

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