2008-12-21 この前12月に入ったばかりかと思えば……
■[読書]今年読んだ中で,特に印象に残った10冊
さて,もう平成20(2008)年が終わろうとしている訳だけれど,今年読んだ本の中から特に印象に残ったものを10冊選んで軽く紹介してみたいと思う。
勿論ユーゴスラヴィア関連とかナショナリズム関連とかのは抜いて。配列はどうしようか迷ったけれど考えるのが面倒くさくなったので読んだ順で。
- 作者: V.L.ヤーニン,松木栄三,三浦清美
- 出版社/メーカー: 山川出版社
- 発売日: 2001/05
- メディア: 単行本
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中世ロシア(ルーシ)は,モスクワ大公国以降の中央集権的なロシアとは違って,多くの都市国家が分立する緩やかな纏まりだった。その中で異彩を放つのが,貴族による寡頭制という政体を採用し,君主の権限を極力制限しようとしたノヴゴロドだ*1。本書は,発掘された「白樺文書」*2の読解に基づいて,中世ノヴゴロド史の泰斗である著者が,その実態を初心者向けに解説している。
多少ロシアに関する知識はあった方がいいと思うが,なくても十分読める(と思う)。著者が新しい文書を発見した時の喜びとか,子供の落書きとか手習いとか,遺産相続についての文書とか,中世都市の諸相が生き生きと脳裏にイメージされる良書だ。
- 作者: サイモンシン,Simon Singh,青木薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/05
- メディア: 文庫
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ぼくは中学生の頃から数学や理科が嫌いだったが,それは計算などが煩わしかったというかさっぱりわからなかったからで,理論だけ聞いているというのは楽しい。物理なんてちっともわからないくせにシュレディンガーの猫について語ってみる,とか。
という事でこの本は世の中の数学嫌いの同志たちにもお薦めできる,というかそういう人たちにこそお勧めしたい。数式の意味がわからなくても,それを解いていく過程を見るのは楽しい。数学界最大の謎が,古今東西何人もの数学者たちによって徐々に解き明かされていく興奮。下手なフィクションよりも遥かに面白いと断言する。
- 作者: ジョセフ S.ナイ・ジュニア,田中明彦,村田晃嗣
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2007/04/09
- メディア: 単行本
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軍板FAQで何度も言及されていたので読んでみた本。去年から読み始めてはいたんだけど読み終えるのに予想外の時間がかかってしまった。といっても難解という訳じゃなく,むしろ平易。丁寧に国際紛争の構図を解説してくれている。実際にアメリカで使われてる教科書なのだから当然か。
第一次大戦や第二次大戦の原因についての考察の辺りが,特に面白かった。
- 作者: 石原千秋
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/06
- メディア: 新書
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色々な意味で大人気な千秋たん石原千秋教授の本。めがっさ厳しい授業で有名だけど,「石原節」が本書のあちこちから読み取れる。
引用のやり方とか,註の付け方とか,当たり前の事が書いてある箇所はちょっと退屈だけど,それ以外は文句なしに面白い。流石文学者という感じ。ナショナリズム論とかカルスタとかにも言及しながら大学生に「知性とは何か」を説いている。
笑った後に考えさせられた箇所。
知的でない人間は,対話や議論を拒む。「いけないことは理屈ではなく,有無を言わさずいけないと教えなければならない,それが品格というものだ」などという人間に知性は存在しない。こういう知的でない言説が大衆受けするのは,「いけない」ことの内容を自分で勝手に代入して,現在の自分の立場を無反省に正当化できるからにほかならない。これが大衆の保守化である。平成大不況の中で疲れ果て,知的に考えることが面倒になってしまったのだろう。しかし,何度でも繰り返すが,そこには知性はない。(pp.135-136)
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/08
- メディア: 単行本
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文句なしに面白い! 米澤穂信渾身のクローズド・サークル。「実験」の為に集められた人たちが,予期せぬ殺人の発生で疑心暗鬼に陥っていく様を鮮烈に描写している。謎を解いた探偵役までもが猜疑の目で見られるようになる,という展開は凄く面白い。最初から最後までノンストップで読み切れる。そしてオチが秀逸。
- 作者: ロバート・J.ソウヤー,Robert J. Sawyer,内田昌之
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2001/01
- メディア: 文庫
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今年,ジュネーヴ郊外でCERNが設置した大型ハドロン加速器(LHC)が稼働し,ブラックホールができるんじゃないかとか話題になったけれど,本書はそれが稼働した時に地球上のすべての人の意識が未来に飛んでしまった,という設定。
主人公の物理学者は,未来に自分が誰かに殺されていた事を知る。彼は「未来の犯人捜し」に着手する。一方では,知ってしまった未来に絶望する人たちの姿が描かれる。成功できない未来,他の女性を愛している未来,その他……本書はSFとミステリの奇蹟的な融合だと思う。
- 作者: アーサー・C・クラーク,福島正実
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1979/04
- メディア: 文庫
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言わずと知れた名作SF。人類の進化の果てにあるもの。オーヴァーロードの正体。凄く幻想的な寓話。これを,クラークが生きている内に読んでおくべきだったと激しく後悔。
- 作者: 有川浩
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2008/08
- メディア: 単行本
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「図書館戦争」シリーズの最後の一冊。『戦争』『内乱』『危機』『革命』と続いた本編の「その後」を補完する形の別冊シリーズの2冊目。まあ,『別冊』の1巻が堂上夫妻の話だったんだから,この巻は当然柴崎と手塚のターン!
高校生の頃からリアルタイムで読んできて(年がばれるな),ようやく迎えた最終巻に感無量です。『戦争』の時から格段に成長したけど未だに朴念仁な(?)手塚と,素直になれない柴崎の2人がもう可愛すぎる! 有川先生,ありがとうございました。
でもあのドロドロな展開だけはガチで勘弁して欲しかった……(涙)
動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)
- 作者: 東浩紀
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/11/20
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あちこちで批判されている東浩紀の著書。2001年に出たものだけあって俎上に上げられている題材が皆古いのはご愛敬か。ぼくはとても面白いと思って読んだのだけど(「データベース消費」のくだりとか),ぼくみたいなヌルオタとは違うちゃんとしたオタクの人からみれば,確かに許し難いのかもなぁ,とは思った。けれど一読の価値はあると思う。
というかこれ基本書ですよね多分orz
- 作者: J.L.ボルヘス,鼓直
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1993/11/16
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読んだきっかけは『サマー/タイム/トラベラー』というSFで主人公が読んでいたからなのだけれど,実際に読んでみると凄かった。まさに「伝奇」。南米マジックリアリズムの先駆けみたいな人と聞くけれど,さもありなん。
特に好きなのは「トレーン,ウクバール,オルビス・テルティウス」,「円環の廃墟」。
今年1年,こんな感じの本を読んできました。来年も,多くの面白い本に出会える事を祈りつつ,このエントリはお終いという事で。До свидания!
*1:ノヴゴロドの政体については,ノヴゴロド共和政とリューリクの末裔たち - nasturtiumも参照。
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