Hatena::ブログ(Diary)

Danas je lep dan.

2009-02-15 昨日は2次元からいっぱいチョコを貰いました♪

[][]セルビアクロアチア語ブルガリア語の姓と父称

 昨日の続きで,バルカン半島スラヴ系言語の命名法について。というか,主にセルビア・クロアチア語とブルガリア語におけるそれについて。

 取り敢えず,一番シンプルなのがセルビア・クロアチア語*1。苗字の変化は殆どない。苗字の語尾に「〜イッチ(-ić)」が多いのが特徴。

 物凄く余談だが,人によって苗字の日本語表記にブレがある。代表的なものを幾つか*2

 1.「-vić」→「〜ビッチ」,「-ić」→「〜イッチ」

 マスコミなどが用いる最もポピュラーな表記法ジャーナリスト木村元彦*3はこのように表記している。ただし,原語表記が示されていない場合,「〜ビッチ」が「-vić」を指すのか「-bić」を指すのかわかりづらい。個人的にv音は「ヴ」で示す方が好きなので好きではない表記。

 2.「-vić」→「〜ヴィッチ」,「-ić」→「〜イッチ」

 正確な表記だけど,個人的には「〜ヴィッチ」の部分がくどいのであまり好きじゃない。神戸大の月村太郎氏*4はこのように表記している。

 3.「-vić」→「〜ヴィチ」,「-ić」→「イチ」

 これも,「ッ」の文字を介在させないという事で筋の通った表記法だけど,「〜イチ」だとすわりが悪いので個人的に好きではない。跡見学園女子大の石田信一氏*5はこう表記する。研究者の間ではメジャー。

 4.「-vić」→「〜ヴィチ」,「-ić」→「〜イッチ」

 ぼくが使う表記はこれ。2と3の折衷で,研究者の間では3と同じくらいメジャー。ただし,統一性があるとは言いがたい。東大の柴宜弘氏*6が用いる表記。

 下の名前は,セルビア人,クロアチア人,ボスニア人によって多少違う。たとえば,セルビアではイヴァン(Ivan)やイェレナ(Jelena)の方が多いがクロアチアではヨヴァン(Jovan)やヘレナ(Herena)の方が多い,など。ボスニア人の名前はイスラーム風のものが多い。アフメド(Ahmed),アルマ(Alma)など。

 苗字でいうなら,ボスニア人は見分けやすいといえる。ボスニア内戦中に「西ボスニア自治州」を樹立したアブディチ(Abdić)なんかは,見るからにムスリムの名前だ。あとは,BiHの大統領だったイゼトベゴヴィチ(Izetobegović)とか。トルコ語アラビア語の響きがある。セルビア人とクロアチア人の区別は,よくわからない。

 ブルガリア語は,南スラヴ諸語の中でもロシア語の影響が強く,苗字の語尾もロシア的だ。ただし,ロシア語に比べて「〜スキ(-ski)」という語尾の比率が高い(実は,ロシア語の苗字の三大語尾は-in,-ev,-ovであり,-skijは少数派)。

 ブルガリアの人名で特筆すべきは,父称がある事だ。父称は,スラヴ諸語の中では東スラヴ諸語(ロシア語,ウクライナ語,ベラルーシ語)にしか見られないと思っていたので驚かされた*7。これが,東スラヴ諸語以外ではブルガリア語のみに見られる現象なのか,それとも普段表記しないだけで南・西スラヴ諸語の他の言語にも見られるのかは,浅学にしてわからない。

 しかしその父称の形は独特だ。たとえば,ブルガリア最後の国王で,冷戦終結後に帰国し首相となったシメオン・サクスコブルクゴツキ(Simeon Sakskoburggotski)*8の父称は,Borisovという。父王ボリス(Boris)の名を取った事は明らかなのだが,父称が「-ov」で終わる場合があるとは初めて知った(無論,「-vich」で終わる父称もある)。ちなみにこの父称,女性の場合は「-ova」となる。トドル・ジフコフ(Todor Zhivkov)の娘リュドミーラ(Ljudmila)の父称はトドロヴァ(Todorova)だ。

 スロヴェニア語とマケドニア語については,よくわからない,残念ながら。

 最後に。ぼくはセルビア・クロアチア語の初学者であり,ブルガリア語については囓ってすらいないので,これらの知識は多くを経験則Wikipediaに頼っている事を表明しておきます。

*1:現在は,セルビア語,クロアチア語,ボスニア語,モンテネグロ語に分化。

*2:慌てて追記。「〜ディチ」「〜ティチ」は「〜ヴィチ」に準じます。

*3:『オシムの言葉』(集英社文庫,2008)など。

*4:『ユーゴ内戦――政治リーダーと民族主義』(東京大学出版会,2006)など。

*5:『ダルマチアにおける国民統合過程の研究』(刀水書房,2004)など。

*6:『ユーゴスラヴィア現代史』(岩波新書,1996)など。

*7:他に父称が見られるのは,ロシアの影響を強く受けた中央アジア諸国,グルジアなど。

*8:サクス=コーバーグ=ゴータ(Sachsen-Coburg und Gotha)家。

久間知毅久間知毅 2009/02/15 19:58 ドイツ人でも、戦争論の著者「カルル・フォン・クラウゼヴィッツ」のように、「〜ヴィッツ」とつくのはスラヴ系だとわかったり。ドイツ名の「-ヴィッツ」がスラヴの「-ヴィッチ」に対応するらしいです。
(まぁ、ドイツには「〜スキー」といういかにも東方のにおいがする苗字もいっぱいありますが)

MukkeMukke 2009/02/15 20:10 久間知毅さん>
>「〜ヴィッツ」とつくのはスラヴ系
地名でもわかりますね。東方植民で多くのスラヴ系住民を同化していますから。確かドイツ国内にはドイツ系地名とスラヴ系地名の境界線のようなものがあったように記憶しています。まあ,もっとも,何十世代も前の話になりますが(苦笑)。

>いかにも東方のにおいがする苗字
ドイツなら,ポーランド系かチェコ系,オーストリアならチェコ系になるんでしょうね。ウィーンで取材するにはドイツ語とチェコ語のどちらかができないと不便,という話を聞いた事があります。

スパム対策のためのダミーです。もし見えても何も入力しないでください
ゲスト


画像認証

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/Mukke/20090215/1234692185