『遠きに目ありて』 天藤真 創元推理文庫

 おかゆまさきと並んで、最近の私のお気に入りの作家・天藤真の短編集。車椅子に乗った少年が難事件を解決する安楽椅子探偵モノ。1話目、2話目では相棒の警官の話を聞くだけで事件を解決するが、3話目以降は自らも現場へ赴いたりする。ミステリとして出来がよい。しょぼい作家なら長編にしていそうな話を短編にうまくまとめている。
 私のお気に入りは第3話『出口の無い街』。
 あと天藤真のキャラクターは探偵役の岩井少年や相棒の真名部警部に代表されるような、いわゆるいい人が多いのに、ストーリーは何故若竹七海西澤保彦ばりの鬱話になるのだろう。読んでいてきつかった。

 『プレイバック』 レイモンド・チャンドラー ハヤカワ・ミステリ文庫

 私がまだガキだったころ、チャンドラーの作品は中学生のポエムだと馬鹿にしていたことがあって、長いことチャンドラーは好きではなかった。だが最近は、かっこつけているだけのチャンドラーのキャラたちが、非常に魅力的に思えるようになった。年齢を重ねて私も成長したのだろうか。
 本書はあの『長いお別れ』から4年後に描かれたチャンドラーの遺作らしい。前作に比べれば地味な作品だが、私は気に入った。ラストのリンダ・ローリングがよい。