『黄金を抱いて翔べ』 高村薫 新潮文庫

 約10億円もの金塊を盗もうと企む6人の男達の物語。“人間のいない世界”に行きたい幸田、計画の首謀者の北川兄弟、爆破工作の専門家、コンピューターに詳しい野田、内部事情に詳しい岸口老人等々エンターテイメントの王道をいくキャラクター達が活躍する。


 「主人公の内面描写がウゼー」と思いながらも(学生時代に左翼と戦った主人公とか書かれてもねえ…)、なるべく気にしないようにして読んだ。作者との世代の違いはこっちが我慢するしかないだろう。それと文章がちょっと硬質で読みにくかったのが難点かもしんない。
 お話自体は非常によい。中盤は退屈だが、終章の銀行襲撃シーンは文句のつけようがないくらいすばらしい。分刻みでの強盗描写は緊張感に溢れていて、読んでいて本当に気持ちがよかった。