『伊達政宗(四) 黄金日本国の巻』 山岡荘八 山岡荘八歴史文庫

 よーしよしよし、随分とカッコよくなってきたぞ、政宗。戦国武将としても人間の器をみても、相変らず家康の方が一枚も二枚も上手だけど。それでもお前さんが着実に成長していくのが読み取れて、俺は非常に嬉しい。無意味な挑発を仕掛けたり、安い挑発に乗ったりしなくなったのはホントにえらいぞ。その調子でいつか家康を負かして見せろ。残りの四巻、それを楽しみにして読むから。

 『水妖記(ウンディーネ)』 フーケー 岩波文庫

 水に棲む妖精・ウンディーネと騎士・フルブラントとの悲恋を描いた物語。非常に良くある異類婚姻譚物かね。
 ウンディーネの恋人役の騎士・フルトブラントが脳味噌空っぽな野郎で非常にダメ。読んでいて不快。この小説の最大のミスは、この騎士が全く凛々しくないことか。男ならもっといいとこみせろや、このダボが。
 ただし、約束を守らなかった騎士を殺そうとするウンディーネが登場する第18章は最高の出来。148頁での「あの方を涙で殺しました。」とウンディーネが告白するシーンのためだけに、この小説はあるといっても過言ではない。この別れのシーンはとにかく秀逸。
 つくづく恋人役の騎士がちゃらんぽらんなのが悔やまれて仕方が無い。このラストシーンをさらに盛り上げるために、恋人役のフルブラントはもっとかっこいい男の方がいいと思うんだがな。どういう意図があって、ウンディーネの恋人をこんな情けない男にしたんだ、作者のフーケーは。全く理解できん。