『ライトノベル☆めった斬り!』 大森望・三村美衣 太田出版

 本書のメインとなる大森望と三村麻衣との対談なんだけども、両人ともセンスが古臭くて、俺はあまり楽しめなかった。これは俺がラノベにあんまキョーミがないせいかな。それともこの本が年配向けに作られているせいかな。正直な話、ラノベの話はネットみたら腐るほどあるしね。「ラノベの歴史を総括」みたいなモンは読みたかねえな、俺は。
 対談自体はあまり楽しめなかったけど、巻末のラノベ作家一覧はけっこう便利な気がする。やっぱりこういうガイドブックはデータが充実しているやつがいいしね。作家一覧だけをもっと充実させたラノベ作家事典とかは欲しいかもね。

 『陽気な容疑者たち』 天藤真 創元推理文庫

 江戸川乱歩賞の最終候補に残るものの、戸川昌子の『大いなる幻影』と佐賀潜の『華やかな死体』に負けてしまって、乱歩賞を逃したという天藤真の記念すべきデビュー長編。3重ロックの密室殺人を扱ったミステリ。デビュー作にも関わらず、天藤真のその後の作風が顕著に現れた一冊。
 密室トリック自体は決して誉められた出来ではないのだが、それ以外がかなり秀逸。特に266頁の被害者である吉田辰造の助けを呼ぶ声を家族が無視して、次々と明かりを消していくシーンなどは天藤真の小説の中でも屈指の名場面。仕事に精を出し、家庭を顧みなかった男の末路を、ここまで哀しくも、それでいてどこかしら滑稽に描けるなんて、天藤真は本当に稀有な作家だよ。