断面スケッチを改めて。 

道南は5年あまりの間、二つの住宅の設計に
携わり通う機会があった。
観光地ではあるけれど、観光をした事が
殆どなく、仕事の際はその余裕もない。


訪ねる際は常に、感じる事に努めていた。
自分自身が住まう事を想像するに十分なだけ
知る事を心掛ける。様々な天候も寒暖も、
一つ一つが設計では大切な事に思われる。


・・・でも、折角遠くまで行ったのに?
と思わないでもない。そういう時は食べる。
函館はラッキーピエロだった。
仙台の時は牛タン、今の帯広は豚丼
けれど大抵は通り道にある入り易いお店が
馴染みとなる。
日常を感じる方が好きなのかもしれない。




DOMA/道南のオーナーより便りがあり、
この週末に、久しぶりに訪ねる予定。


この機会にもう一つの住宅も訪ねたいと
思うもののオーナーの都合が付かず。
一枚目のスケッチはその住宅。
内装はほぼ未完での引き渡しとなった住宅、
コツコツと御自身で手を加えられている。
どのような具合なのか?気になっていた。
家族が増えたとの連絡もあり、
さぞ賑やかになるのだろうと思う。


この住宅も思い入れ深い。
初めて見た敷地の印象はとても素敵だった。
しかし高低差のある変形の角地には難儀した。
既存の樹木を残し庭を広く確保しようと努め
建物を計画したために、エスキースは膨大、
小さな規模にも関わらず平面的な猶予はなく、
断面的にも様々な工夫を凝らす結果となり、
再現の難しい構造の建築が出来上がった。


出来るだけ構造ルールを簡単にはしたものの、
プレカットでは対応できない斜め加工もあり、
現場には相当な苦労を掛けてしまった。


改めて断面のスケッチに昨夜、挑戦した。
どこから手を付けようか不安になる複雑さ。
階構成の自由さを思うとこの家はつまり、
ジャングルジムなのだと思う。


スキップフロアの空間、想定した床の
レベルは7つ程になる。これを変形した
敷地に合わせた複雑な平面の中で達成させた。
小規模にも関わらず動線を多数確保出来た。
上下階を含め3つの基本ループがある。
手を加えると、もう少し増やせそうでもあり、
テーブルや調理台も含めると・・・
実は十分に鬼ごっこが出来る。


子供達が友達を連れてきたりしたら、
走らずにはいられない、はずなので、
奥様はその時は大変かもしれない。
でも日常では、便利にも使えるはず。
プランは何度も何度も微細に変更を
繰り返しては提案をさせて頂き、
様々を検討した上でオーナーが選ばれたもの。
それが果たしてどう機能しているのか?
未完の部分がどう手を加えられているのか?
これを確かめるの機会が待ち遠しい。


絵での印象とは違い、街並みから一歩引いて建つ、
とても小さな建築。初めて訪ねる人には気付かれ
ないかもしれない程にそっと建っている。
そして、見えない高みに庭があり、ドマを通じて
室内と一体的に繋がり、広がり、様々な床構成が
連続する内部空間は本気で鬼ごっこが出来る。


複雑な構成ではあるけれど室内は至って端正。
竣工時は未完の塀、通りより庭は高い位置に
あるので、低い塀でも視線は入らない。
既存の樹木が茂る季節は外の視線は防がれ、
けれど室内から見通せ、庭は開放的でもある。